血濡れた出会い
この作品は、作者の抱える厨二心を開放するための作品です。初投稿ゆえ拙い文章とは思いますが、「こんな痛い時期もあったなぁ」と生ぬるい目で見守っていただけたら幸いです。
“人は社会の歯車だ”
誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。
世にありふれた、退屈な社会への皮肉文句。
あるいは自分よりも伸び伸びと生きる者達への僻み。
別に何も間違ったことは言っていない。
実際、人は何かのシステムの一部になる事に安心感を覚え、依存する。その依存先はバリエーション豊富で、学校や会社、部活、サークル、etc…。
悪いことでは無い。自身の短所を他者の長所で保管したり、何かとリソースが増えたりと利点は多い。
皆、そんな利点を求めて歯車へと成り下がるのだろう。
─────────気に入らない。
何故自ら自由を放棄するのか。
生まれながらに“歯車”であることを強いられた者達の気も知らず、媚びへつらい、その場をやり過ごす生き方がどうにも鼻につく。
皆、ただ酔っているのだ。この狂った日常に。
気づかないのだ。間違った社会構造に。
こんな世界、俺が壊してやる─────────。
都内某所、まだ朝と呼ぶには早い時間帯。
とあるビルより喧騒が聞こえる。
「なんなんだコイツは!?」
「殺せ!はやく!」
「た、助け───────」
様々な声が飛び交うが、そこに共通するのは眼前の何かへの恐れ。
霞んだ灰色の髪と、それを留めるバツ型のピン、深い紫の眼と、夜によく溶け込む黒のコート。夜の星が放つ僅かな光に照らされ、微かに笑む口元が見える。何ともオツな雰囲気を醸し出している。
製造番号22番G型改造機“Eli:イーライ”。
とある組織によって造られた人型兵器、“戦闘機”である。
悲しいかな、彼は命乞いなどものともせず、ただひたすらに剣を振る。
夜の闇のように黒い剣を、振る。
1人死ぬ。
また振る。
今度は一度に2人死ぬ。そんな作業の繰り返し。
初めこそ手間取ったが、今ではもう慣れたものだ。
「…うるせぇな。」
その声に慈悲はなく、その様はまるで殺人の為と仕込まれた“機械”の様だ。
今回彼に課せられた任務は“とある敵対組織の排除”。
その最も楽な方法は今繰り広げられている惨殺に他ならない。
あらかた、と言うか全員殺し終えたところで、耳にかけた無線機を使い、連絡を入れる。
どこにって?
勿論、彼の所属する“組織”だ。
察してくれているとは思うが、先程惨殺されていたのは一般人ではなく、いわば“裏の住人”と言うやつだ。
それともこの彼が、一般人を虐殺する様な非道な奴にでも見えたかな?
…まぁ、指示があれば実行するだろうがね。
「あー…任務を完了した。今から帰還する。後処理はしてあるから人を寄越さなくても大丈夫だ。あゝ。特に異常や報告事項は無かっ─────────」
さて、先程の文章を一つ訂正しよう。
全員殺した、と言ったが、彼は一つ見落としていた。
わざわざ排除しなければならないほどの裏組織だ。誘拐、拉致、監禁にまで手を出していても何ら不思議では無い。
背後のドアより覗くのは、ひたすらに赤い長髪と、こちらを警戒する様な視線。先刻の阿鼻叫喚に寄せられたのだろう。その服装はとても良い待遇を受けていたとは想像できないものだ。
「あー…やっぱり一つ報告。少女を1人保護する。ああ、面倒は俺が見る。部屋とか色々用意してくれ。」
この日、一つの殺人兵器は少女を拾った。
この血まみれの出会いが、世界を大きく変えていくことを今はまだ、誰も知らない─────────。
もしお気に召したなら、是非ともいいねとコメントしていってくれれば幸いです(深々)