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見張り台でナラクが見たものは、魔力で練り上げられたもの特有の赤熱光――それも、頭上の太陽すら越えるほどの直径をした高威力のものが、恐るべき速度で迫り来ている。
――なっ……魔工砲を、ヴェナントに直接向けやがっただと!?
閃光に包まれるこの光景の中で、無力なナラクはただの一歩すらも動くことができない。
直後――――――
ヴェナントに直撃した魔工砲の光が、城壁を半円状に打ち砕いていた。
見張り台もろともに吹き飛ばされたナラクは、宙から絶望的な光景を見下ろすことになる。
魔術を封じられ浮くこともできなくなったナラクにとって、それも瞬く間の出来事だ。
市街を一直線に貫く光筋。そして、とどめのように横薙ぎに切り払われる。魔力が生み出した高熱で、扇状に融解する都市。舞い上がった煉瓦を、熱風が吹き飛ばしていく。高層から崩落していく建築群と、戦火の中を逃げ惑う生存者らの影。
ヴェナントを薙ぎ払っていく魔工砲――出力源の魔工石が間もなく尽きるのか、その緋の光は次第に衰えていく。だが、光は〈白竜眠りしヴェナール城〉をかすめ、屋根の小尖塔を削り取り、その終着点は突き出した塔の一つとなった。
魔工の光は、残酷にもその壁を溶かし、遂には熱を遮れなくなって貫き通る。
――あそこは、まさか………………シャ…………ル……の……。
不思議と脳裏に浮かび上がってきたその顔は、悪戯好きな人間の子どものものだ。その奇妙な喪失感だけを胸に、自由落下していくナラクが見た最後の光景。
より輝かしき閃光が、視界でもうひとつ瞬いていた。
その閃光が一瞬のうちに、ナラクの世界を白一色で埋め尽くしてしまう。途端に現実感が消し飛んで、このまま地面に叩きつけられる結末が一向に訪れることもなくて。
――なんだ、こいつは…………鳥の、羽根…………?
視界一面に降り注いできたそれは、灰色をした羽根だ。真っ白な光景でもはっきりと視認できる、灰の妖精めいた何かが無数に舞い踊っている。
今、ナラクを宙で抱き留めているものがいた。
【――かような結末など来てほしくなかったが。さあ、わらわが裁きを下す時間じゃ】
そしてナラクのすぐ耳元で、怒りとも悦びとも悲しみともつかない声色でそう囁いたのだ。




