4
――同時刻、ヴェナント都市内。
南側城壁に設置された見張り台にて、新魔王軍の軍勢を視認。急遽鳴らされた警報の鐘により、長らく平穏を保ってきたヴェナントが、予告なしに緊張を高めることになった。
陽が天頂を目指し、次第ににぎわい始めていた都市部では、行き交う多くの人々が足を止め、あるいは建物から飛びだしてきた。
――魔王が町に攻めてくるぞ! 大軍を率いて向かってくるぞ!
だが、長らく平穏を享受してきたヴェナントの民衆にとって、いかなる災厄がこの町へ迫り来ているのか、理解が及ぶのはもう少し先のこと。
それ故に、突如現れた英雄が民を導くのは容易いことだったろう。
――我らはリュクテア聖王国が聖堂騎士なり! 憎き魔界の軍勢より諸君らヴェナントの民を救出すべく、遥か彼方より最強の一万騎を引き連れ、ここに馳せ参じたり!
トロネ代行大神官が遣わした早馬の騎士が、中央噴水広場にてそう名乗りを上げる。それは民衆にとって、迫り来たる敵が本物の魔王である証明となり。同時に、その脅威を打ち払う勇者の参上に他ならなかったのである。
――我らが芸術王は民を守る気がないのか! 魔王と決闘する勇者はいないのか!
この時ばかりは領主が威光を示せなかったことも、あるいは災いしたのかもしれなかった。
こうなれば、あとは堰を切ったがごとく。
混迷のヴェナントに堂々とリュクテア勢力が踏み入るのは、もはや時間の問題だった。




