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 ヴェナントに異変が訪れたのは、その翌日のことだった。


「――――――た、た、たいへんなの、ナラクゥ――――!!」


 大声を上げたシャルルマキナがドタバタと城の廊下を走り去っていったかと思えば、通り過ぎてしまったらしい自室まで引き返してきた。


「ナラクゥここにいた! めちゃんこたいへん、いちだいじ、国家ぞんぼーのぴんちなのよ!」


 国家存亡と言いたかったらしいシャルは、彼女のベッドで日向ぼっこしていたナラクにのし掛かり、一気にまくしたてる。


「まず落ち着くのだシャルよ。そんなに走り回ると体に障るぞ」


 元より健康に不自由があったからこそ、ナラクが話し相手になってきたのだ。額に汗を浮かべて息を荒らげているシャルを見ずとも、無理を押しているのは明らかで。


「ククッ……この魔王にはお見通しだぞ。お前が大騒ぎするということは、実はぜんぜん大したことじゃないな? また処方された新しい薬が苦くて飲めない話か?」


「ちがうちがう、ちっが~う! うち、おクスリくらいちゃんとひとりで飲めるし、たいへんなのはお城の外のほうだもん!」


 シャルが地団駄を踏みながら否定している間に、もう一人が部屋へと飛び込んできた。

 現れたのはユーフレティカだ。しかも、許可なく勝手に突破してきたのだろう。その後ろから追ってきた憲兵二人に両腕を掴まれそうになるが、


「アイドルにさわるな、無礼者!」


 ひらりと身をかわすとシャルの傍らに跪く。


「――シャルルマキナ姫殿下、お休み中のところ唐突なる我が無礼をお許しください」


「よい、ゆるすぞ、ちゅーじつなるわが騎士ゆーふれちかよ。さあ、わらわのかわりに、例の件をナラクゥに説明するのじゃ」


 またシャルの新しいごっこ遊びかと、悠長な気でいられたのはこの時までだった。


「ナラク、大変な事態になった。リュクテア聖王国の新しい使節団がヴェナント入りしてきたんだ。しかも今回は聖堂騎士団を引き連れてる」


「……聖堂騎士団、だと?」


「そうだ、リュクテアの精鋭が送られてきてるんだ。それも、まるでこれから戦争でもはじめるかのような一大軍勢。どうしよう、ナラク……」


 大げさすぎるほどに動揺を隠さないユーの声。

 そしてすぐに、それがごっこ遊びでも何でもない現実だと証明する声が、城内の方々から聞こえ始めたのだ。


 リュクテア聖王国から新たに送られてきた使節団と、聖堂騎士の軍勢。それは、先日の使節団を半ば強制的に送還したラパロ辺境伯への報復かと思われたが、どうやら少し事情が違うようだった。

 程なくして玉座の間に、ラパロを中心とした多くの人間たちが集められることになった。

 思わぬことに、その場にはナラクも呼びつけられた。ラパロの臣下のつもりは元よりなかったが、どうやら事態がそれを許さなかったのだ。


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