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輝けりアイドリア・クラウン ~魔王様がわたし達のプロデューサーです!  作者: 学倉十吾
第四楽章 ――いっしょに、歌ってくれませんか
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 結論から言えば、ユーフレティカが初めて人前で披露した歌唱力は、プロデューサー目線では評価が難しいものだった。


 ――まさかとは思っていたが、ここまで声がデカいとはな。それだけでも武器になるのは疑いないが。


 彼女が申し分ない声量の持ち主だった点は、考えてみれば不思議ではなかった。元より、これまで対峙してきた数々の場面でも、ある時は城壁の上から一万の軍勢に名乗りを上げ、またある時は死を覚悟した大切な仲間に向けて真の友情を叫んでいた。つまりユーフレティカは、勇者としてその声量を遺憾なく発揮してきたのだ。


『かつて あなたは手紙で 別れを告げた』


 軽やかなステップでステージを踏みならすと、ミュゼが〈声の翼〉の一節を自然と歌い始める。手にした魔杖をユーに差し向けるような合図を送る。自分に続けと促したのだ。


『けれども? カノ……ジョは もーそこにはない これは ひとにコイした妖精のハナシ~』


 戸惑いがちの歌声も、たどたどしい歌詞のなぞり方も、初めてであれば致し方ない。音程が案外と外れていないのは救いがあるが、それでも歌というには抑揚が足りず、ただ大声を出しているだけだ。ただ、魔杖からあんなに唇を離した持ち方をしていて、なのにミュゼの歌が掻き消されれかねない声量にはナラクも絶句するしかない。


「よし、ユーはもう少し声を抑えてみろ。あんまり大声ばっか出してると、ステージ半ばで喉を潰しかねないからな」


 だが、こっちの指示が全く伝わっていなかった。ユー自身がとにかく必死なのもあるが、自身の声に周囲の音すべてが掻き消されてしまうので。


 ――それよりも、こいつはホンモノと言っていいのか。この人間め、あまりにも堂々としていやがる。羞恥心とか躊躇いとか、そういう素人にありがちな雑念が微塵にもねえ。


 このように歌詞がたどたどしいのだって、歌うことが恥ずかしいからではなく、単に覚えきれていないだけなのだろう。ミュゼに追随しようと必至なそのまなざしを見るだけでもわかる。

 これまでにナラクは、ミュゼ以外のアイドルたちの活躍現場も数多く見てきた。先週に取材訪問した魔工石工房では、映写記録用の新商品を宣伝するために雇われた新人アイドルが、まだアイドルを演じきれず素の町娘に戻ってしまう場面を目のあたりにした。

 では、このユーフレティカ・アールビィはどうだろう。この人間は、自分が何ものかを、ずっと幼いころから自覚しているのだ。人の前に立ち、己が力を使う。それも他人のために、だ。

 だからユーフレティカは、アイドルとしての素質については何の心配もなさそうだ。声量には特筆できるものを持っている。総体的な歌唱力については、ボイスレッスンで何とか鍛え上げていける将来を期待しよう。なにせウィスパーボイスなどと形容できるミュゼとは相反する、いわばハスキーボイス寄りの声質の持ち主だ。本人が歌唱のコツを掴むことができれば、一つ目の殻を破り、きっと本物の歌い手へと成長できるはずだ。

 課題はまだ山積みだが、早めに考えておくべき事柄がいくつかある。

 その筆頭が、彼女たち新人アイドルの活躍の場を、ナラクがいかに用意するかということだ。


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