試験・実技
「全く……魔術学園もなかなか無茶苦茶だな」
頭上の木漏れ日を見上げて独りごちる。目を細めさせる穏やかな陽光は、ヴァンの蒼く長い髪をきらめかせた。しかし、もはや普段着となった漆黒のフリルドレスは白い肌を際立たせるだけにとどまっている。
「普通、魔術を習い始めて数ヶ月しかたってない学生に魔獣を当てるか……?」
周囲に誰も居ないことを良いことに、ヴァンは愚痴に似た言葉をため息と共にこぼした。形の良い眉の間に皺が寄ってしまっている。
顰め面をさせている原因は、今この場所に居ることと、これからなさねばならないことに他ならない。
今ヴァンが居るのは学園に隣接する森の一つで、学園側が所有している。校舎自体は国の中にあるのだが、この森はそこから外れていた。つまり、魔獣除けの外側。危険な外界というわけだ。
何故そんな場所にいるかというと、それには先ほどあげた『なさねばならないこと』が関係してくるのだが、理由はすでにヴァンの口から落ちている。
平たく言えば、つまり、魔獣の討伐である。しかも、単独で。
「……なんというか、やばい試験だな……」
右腕に嵌められた腕輪に目を落とし、三度つぶやく。
そう、何故学生のヴァンが魔獣討伐をするかというと、これが学園から与えられた試験であるからだ。いわゆる期末試験。その実技。
誤解のないよう述べておくと、何も学園側は生徒の数を減らそうと――ぶっちゃけ殺そうと――しているわけではない。
現在、この森には特殊な結界が張られており、魔獣の侵入は不可。しかも教師陣が結界の周囲を巡回中という念の入れよう。
ならば試験の魔獣が居ないのでは、と思われるだろうが、そうではない。
試験の魔獣は、教師陣が追い回して無理矢理結界内に入れているからだ。無論、今回試験を受ける生徒で倒せる程度の魔獣である。
さらに、万一に備え、監視兼保護の魔道具が配られており、もし命の危機に陥るほどであれば結界内のみ有効な転移魔術が発動する仕組みだ。
監視の役割も持つのは、不正の防止である。この試験は二人以上で進めることは許されておらず、一定距離に別の腕輪が存在する場合、激しい警告音と共につけられた宝石が明滅。それでも無視していると、失格となる。
以上のことから、学園側は大真面目に魔獣の討伐を試験に組み込んでいたことが分かってもらえるだろう。
「それにしても、こんな長い時間一人っていうのは久しぶりだなぁ」
再度、周りに誰も居ないことを確かめる。一瞬、金色の魔女と気弱な少女の微笑む姿が頭をかすめた。ともすれば、すぐ隣で二人が居るような錯覚を受ける。
それほどまで彼女たちが傍に居たのかと苦笑し、ついで、寂しいと思っている自分へとさらに苦笑を深めた。
気弱な少女は学科が違うため、同じく試験は受けていないが、金色の魔女――アリアはどうしているだろう。今回の試験は期限が三日、その間、森から出ないことも条件に入っているのでどこかで魔獣と戦っているかもしれない。
「っと、あまりぼんやりしていられん」
ヴァンがこの森を彷徨って今日が二日目だ。魔獣の数は試験者の数と同じほどらしく、今のところ遭遇はしていない。
代わりに、冒険者として生きていた頃の自分を思い出せた。音を頼りに水を探し、目を頼りに食べ物を探し、経験を鼻を頼りに毒を捨てる。
一応、生存技術も試験内容に含まれているが、その点はヴァンは楽に合格といったところだ。
しかし、二日目。もう二日もアリアたちに会っていない。
「……いかんな。どうしても思考がそっちにいってしまう」
三度目の苦笑は自嘲の混じったものだった。
ヴァンは軽く頭を振り、歩き出す。とりあえずの目的は何かを食べることに決定した。魔獣は放っておいても向こうから来るだろうし、何より太陽の傾き具合からみて今は昼時だからだ。少々弱気なことを言ってしまうのも、腹が減っているからだ。
内心言い訳を繰り返すヴァンの視界に、赤い何かが見えた。確かめるよう視線を飛ばすと、何かは赤く小さな実だった。瑞々しいそれらはいくつも集まって一つの果実のようだ。
「お、良いの発見。こいつは甘くて美味かった……気がする」
鼻歌交じりに果実を根元から引きちぎり、匂いを嗅ぐ。少し青臭いが、まぁまぁ甘そうだ。次に他の果実を見て、食われているかどうかも確認。擬態している有害植物であれば、試験どころではなくなる。
「俺の知ってるやつみたいだな。それじゃ、いただきます」
ヴァンは上を向いて口を開き、果実を一気に頬張った。食べない部分を口から少しずつ引っ張り、ちゅるんと茎を引き抜く。口内に置き去りにされた果実たちは一噛みごとに甘酸っぱさを滲み出し、その味に思わず頬が緩んだ。
「んー、美味い。人の作った料理も良いが、たまにはこういうのが食べたくなるなぁ」
さて、もう一つと続けて次の果実を……選ぼうとしてヴァンの目が鋭く尖った。視線を動かす前に横へと跳躍し、遅れて蒼髪が光をはじいて踊る。
瞬間、ヴァンが居た場所に何かが落ちてきた。確認するまでもなく、ピリピリと肌を突くような殺気で分かる。魔獣だ。
だが、転がるように距離をとったヴァンは、その姿を確認して首をひねった。
「なんだこいつ」
その魔獣は今まで見たことがない形をしていた。大きさで言えば、食用にする耳の長い小動物が一回り大きくなったくらいで、四肢で立っている。灰の体毛は鋭い針のようだと思うが、何かの液体でぬらぬらと光っていてへたれていた。
そこまではいい。なんらかの動物に酷似している魔獣というのは大半がそうだ。耳の長い小動物に似ている魔獣ははじめてみるが、居ないことはないだろう。故に、ヴァンが首をかしげたのはそれではない。
それは大の男の腕ほどもある、巨大な触手だった。排水のようなくすんだ緑色に、ぬめりのある表面。一見すれば濡れた巨大な蔦に見えなくもないが、その先にある少し丸めのもののせいで植物には見えない。
その触手が魔獣の背、少し後ろ……尻の辺りから伸びているのが、ヴァンが首をかしげた理由だ。
「……触手にはあまりいい思い出がないんだが……」
これとは比べ物にならないが、過去、暴力的で破壊的で――そして悲劇的な、形だけ似ているモノと戦ったことを思い出し、ヴァンは小さく俯いた。
しかし、それは一瞬ですぐに魔獣を見据え、戦いの思考に切り替える。
「サラマンダー……」
自らの『武器』をつむごうとして、止めた。今回使えるのは自身の得意の魔術ではない。
「魔放系だけだったな」
ヴァンが得意とするのは、本来ならば魔放系とは真逆の魔装系。だが、試験ならば仕方なしとさらに魔獣から距離をとる。
が、その瞬間には痺れを切らしたように魔獣が突撃してきた。尻から伸びる極太の触手が暴れる。ヴァンは舌打ちを一つ鳴らし、身をかがませて横殴りを避け、その勢いを全身のバネに乗せ、地面を強く蹴った。
かなり離れることが出来たか、と思ったところに、触手がヴァンの眼前に伸びる。長さと離れる速さからいって届かないはず。が。
「っ!?」
触手の先が四方に分かれ、まるで口のように開かれた。中には白い牙が大量に並んでいて、いつぞやの巨蟲魔獣を思い出す。
そして、ヴァンの予想をあっさり裏切り、触手は跳ぶ以上の速度で見た目以上の長さで勢いを増して迫ってきた。
「うっ、おああッ!」
顔に喰らいつかんとする触手に対し、ヴァンは後ろへ倒れこむように仰け反り、さらに右足で触手を蹴り上げる。
そのまま背中が地面に叩きつけられ痛みが走るが、構わず後ろ回りで一転二転。両足で地をついた頃には蒼髪もドレスも木の葉まみれだった。
転がっている最中にも確認したが、触手は蹴られたことで体勢を崩しているようだ。正確には、その先についている小型の魔獣が、だが。
ともあれ、ヴァンはこの機会を逃さない。右手を突き出し、詠う。
「我が身に巡る魔の力よ、炎となれッ。我求むは爆ぜる炎塊なり!」
詠唱と同時に、ヴァンの掌に炎が集まる。炎は貪欲に魔力を吸収し、最後にはヴァンの身長の半分ほどになっていた。
その大きさにヴァン自身軽く目を見開いたが、魔獣が慌てて逃げようとするのに気づき、空色の相ぼうを鋭くさせる。
「ファイアボール! 逃がさんッ!」
魔獣に向けて大火球を放つ。下級と思えない魔術は直線の軌跡を描きながら、魔獣に直撃した。
轟音と熱気が周囲の空気に伝わる。ヴァンは思いがけない爆発に火事が起きないかと不安になったが、それは杞憂に終わった。
軽く燃えている少ない枯葉の消化をしつつ、火球が飛来した場所に近づく。
「おおう……」
ヴァンは爆心地を見て思わずうめいた。円形に黒こげた土の上で、元魔獣の肉片が転がっている。こんがり焼けて中々美味そう……もとい、悲惨だ。
原型は留めさせるつもりだったが、どうにも最近、というか、あの戦い以来魔術を手加減が難しい。恐らく、常に全力だったので細かな調整をすっ飛ばしているのだろうとヴァンは思っている。
「……ん?」
試験合否の要である証明部位を探しながら、ふと気づいた。肉片が少ない。獣部分ならこれで十分だろうが、この魔獣は極太の触手がついていたはず。その部分がない。
「ッ!? 炎よ、我を護れ! ファイアシールド!」
右からの気配にヴァンは即座に詠唱する。瞬間、右の掌を中心に全身以上の炎の盾が出現した。心中で予想外の大きさに戸惑うが、そんな余裕はすぐになくなる。
甲高い音を鳴らし、中心となる掌のすぐ近くに黒い何かがぶつかった。それを確認する前に、ヴァンの表情が歪む。
「しまったッ」
失敗は二つ。障壁は大きければ大きいほど、小さく、貫通力の高い攻撃に弱くなること。そして、飛び道具に対して障壁を真正面から受けてしまったことだ。
咄嗟に掌を動かし障壁を斜めに構えるが遅かった。黒い何かは障壁を貫通し、ヴァンの左胸へと飛来してくる。
「くそッ!」
せめて致命傷は避けるべく、ヴァンは体を捻った。完全に避けることは出来なかったが、幸運にも黒い何かは心臓ではなく左肩に深々と突き刺さる。
「がッ……!」
凄まじい衝撃だった。途中までは自身の意思で体を捻ったが、今はもう、体の回転を止められない。両足は地から離れ、小柄な肢体は空中での横回転を余儀なくされた。あるいは、左肩が吹き飛ばないよう、本能によって動いたかもしれない。
地面に叩きつけられ、全身に激痛が走る。とりわけ左肩からの痛みは壮絶だった。今すぐにでも叫び声をあげたかったが、先にすべきことがある。
「わ、我が身に巡る魔の力よ……! 我が意思に通じ、炎となりて形を創れッ。我求むは敵を貫く尖矢なり!」
荒くなる呼吸を無理矢理抑え、寝転んだ状態で右手から炎の矢を発生させ。
「フレイムッ……アロー!!」
すぐに撃った。狙い先は無論、これを贈ってくれた奴へ。
炎の矢はヴァンの腕よりも太く大きく。矢と呼べるものではなかったが、しかし、今はその予想外の巨大さが頼もしく、嬉しかった。
「塵も、残すな……」
巨大な尖矢はそして、主の命を聞き入れる。再びの轟音と熱気。燃え尽きる前にヴァンからみえたのは、あの巨大な触手だった。どうやら分離が出来たようである。
「あぁ、くそ。情けない……」
仰向けになってため息をつく。今まで冒険者として生きてきたとは思えない痛手だ。自己嫌悪に浸りそうになるが、左肩からの激痛でそれは取りやめとなった。
「ぐっ、そういえば、刺さってたな」
左肩に刺さった黒い何かに視線を落とし、右手で触れる。
「これは……木片か? いや、あれが死ぬ間際に出したとなると、種が近いか?」
黒い何かは妙なほど皺があり、太めではあるが、細長く飛び出ている先は尖っていた。種に見えなくもない。それはさておき、ヴァンが次に気になったのは出血の少なさ。
左肩にこれだけの物が突き刺さっているのに、あまり血が出ていない。隙間が出来ないほどの衝撃で刺さったのか、はたまたこの種もどきが栓になっているのか。
後者のほうが正しく思えるが、異物が刺さっているのは気分が良くない。ヴァンは意を決して右手で飛び出ているほうを掴み、分かった。分かってしまった。そしてその事実に顔を青ざめさせる。
「こい、つ……!」
握った手の平から伝わる感触は微妙なやわらかさと何かを吸い上げるような躍動だった。
そう、この種はヴァンの血を吸っているのである。それを裏付けるように何やら皺が少なくなって少しつやつやしているような。
「冗談じゃない! 栄養にされてたまるか!」
貫通はしてないが骨までは達しているだろうから、引き抜くと激痛に苛まれる。が、そんなことに構ってはいられない。抜いた直後に来る痛みに対して覚悟を決め、思い切り引っ張――。
「なっ、なんだ?」
ろうとして、出来なかった。別に激痛に躊躇したわけでも、抜けないほど深く刺さっていたからでもない。
握った右手を弾くように、飛び出ていた部分が四方に力強く開いたからだ。実際、ヴァンの右手は弾かれた。
広がった部分にはあの触手のような牙はなかったが、代わりに穴が無数にある。ヴァンが疑問に思う前に、その答えが出てきた。
「げっ」
さらに細かい触手だった。それが無数にうごめくように伸びてくる。その細長い触手はヴァンの左腕に絡み付いていき、指の先まで届いた。力は弱いのか、刺したり締め付けたりはしてこないが、感触が気持ち悪い。しかもそれが顔にまで伸びてきているのだから、慌てるなというほうが無理である。
「くそっ、なんなんだこいつは!」
悪態をついて無数の触手を引きちぎった。寝転んでいるのも嫌になり、立って無理矢理引き抜こうと足を動かす。
しかし、妙な抵抗を左足に感じた。まさかと思い目を向ければ、左手までに絡んだ無数の触手が左の足首に絡み付いている。顔のほうにだけ意識を向けていたせいだ。一応動かせはするが、左足だけ伸ばして千切ろうとすると触手どもは伸びきってしまい、無理だった。左腕が動かせればいいのだが、少し動かすとかなり痛い。その前に力が入りそうにない。
ならば大元をと四方に開いている種もどきを掴む。内側はまた妙な液体でぬめりがあって、別の意味で気持ち悪かった。
ヴァンは掴みにくい種もどきを掴み、深呼吸。
「すーはー……いくぞッ! って、ふぁっ!?」
いざ引き抜こうとして、まるでそれを邪魔するように細長い触手が耳をくすぐった。ヴァンはその意味不明な行動に困惑するが、次の触手どもの動きでその理由を思い知る。
「うあっ、き、気持ち悪い!」
触手どもは緩やかな動きでヴァンの耳の中に入ろうとしてきたのだ。刺す力がないから、元々ある穴から体内に侵入しようとしているらしい。
「こいつまさか、俺を乗っ取るつもりか!」
耳に向かっている触手を一気に掴み、思い切り逆方向へ引っ張る。種もどきから触手が引っこ抜かれる際、衝撃で肩の奥が痛むが構わない。
今のうちに種もどきを抜こうと握るが、今度は鼻がくすぐられる。というか、侵入されそうになる。最初は気にせず種もどきに集中したが、鼻の奥でずきりと痛みが走ったとき、無視することはできなかった。慌てて鼻から触手を引っ張り、さらに種もどきから引き抜く。再度の痛みに軽く顔をしかめる。
しかし、今度は耳とは違ってこれで終わらなかった。
「はっ? はっ……くちゅんっ。いっ!? いだだだっ!」
くしゃみをしたせいで体が強張り、左腕も少し動いてしまった。触手を抜いたときとは比べ物にならない激痛が走る。
さすがに腹が立ってきた。今度こそぶっこ抜くと種もどきを掴み。
「ひあっ!? あっ、ちょ、おい待てまさか!」
ある部分……具体的に言うと胸とその先端に違和感と感触が走った。さらに触手どもは動きを止めず、腹の上をつるつると蠢く。
何故そんな場所にと見れば、二の腕あたりまでしかない袖から入り込んだようだった。
「なんて冷静に考えてる場合か! おいばかやめろ! 確かにあるけど! あるだろうけど!」
我武者羅に暴れたいが左腕の激痛がそれを許さない。ドレスの上から触手を掴み引っ張るが、服自体がほとんど伸びないせいで効果がなかった。
そして。
「がっ!? ぎっ、あぐっ、かっ、かはっ……!」
今までに経験したことのない痛みだった。両胸の先と臍から伝わる激痛で視界が明滅する。右手でドレスをかきむしり、右足は地面を何度も削った。
その間でも、触手は耳、口、鼻と穴を探り、胸の先と臍を抉り進む。
「ぎっ、あが、はぁっ! んっ、んんっ、ぐっ、おえっ」
あまりの理解不能な痛みに、口の中に入った触手を噛み千切る。そのまま喉に落ちてきたせいで、呼吸が出来ない。
気持ち悪さと痛みの中、触手が腰と太ももを撫で、両足の付け根に触れようとしたところで。
ヴァンの頭で何かが切れた。
「良い加減に……しろぉぉぉッ!!!」
瞬間、魔力が大気を震わせ、ヴァンの四肢から業火が噴出する。四つの業炎は一つ一つがヴァンの体より巨大で、体にまとわりついていた触手どもを一瞬で灰にしただけでなく、周囲の枯葉も、木々の瑞々しい葉も同じく灰にしてしまう。
炎を纏う蒼と漆黒の少女はゆっくりと立ち上がり、燃え盛る右手で種もどきを引き抜く。瓶から水が溢れるように左肩の傷から血が噴き出るが、ヴァンはそれを気にせず塵を見る目で種もどきに視線を向けた。
飛び出ていた部分はすでに灰となってなく、ヴァンの血によってかろうじて燃えなかった部分も、血が蒸発したせいですでに業火で炙られている。
「…………」
ヴァンは種もどきを無言で握りつぶした。小気味良い音とともに砕けたそれを、地面に落とす。燃える細々とした塵を右足で一度踏みつける。
「……このっ」
また踏みつける。さらに踏みつける。またもや踏みつける。
「このっ! このっ! 痛かった! 痛かったぞ! しかも魔装まで! くっ、失格にっ、失格になったじゃないか! どうしてくれる! この! 死ね! 消滅しろ! 食物連鎖の中に入ることなく存在ごと消えろ!」
周囲に誰も居ないことを良いことに、少々歯止めがきかない。しかも意味不明で理解不能な痛みを受けたことと、どうしようもなく腹のそこから湧き出るこれまたよく分からない怒りで、ヴァンは絶賛混乱中なのである。行動があまりにも子供じみてしまうことを、一体誰が責められようか。
この後、
結界入り口にいる女教師に傷を治してもらいながら「魔放系つかって倒せとはいったけど、他の魔術使っちゃだめなんていってないわよ」と言われて脱力したり、
同じく治療してくれたアリアに「ヴァンは絡め手使ってくる魔獣に弱いのね」と言われて頭を撫でられたり、
心配そうにずっと付き添ってくれたリシャに「その、魔獣は寄生型、だね。種を、相手の中に、入れて、中から乗っ取る、らしいよ」と教えてもらったり、
そのとき「でもあの種もどき、俺のちく」と言いかけて顔を真っ赤にして誤魔化したり、
さらにドレスの上半身が血でさらに黒くなっていたことで脱げといわれ、どこから血が出てるか簡単に予想できたので必死になって抵抗してさらに誤魔化したりと、
一悶着あったものの、とりあえずヴァンは合格になったそうな。
咳のしすぎでおなかが筋肉痛で地獄です。コヅツミです。
さて、今回のお話ですが。
べ、別にヴァンをいじめたかったわけじゃありませんよ?
こういう魔獣もいるとか、ヴァンがこれだけ成長してるよーとか、ヴァンでも状況によっては苦戦するから、下級の魔獣でも危ないんだよとか、魔術学園って育て方間違ってね?とか、そういうのをお見せしたかったんです。本当です。
あと、ヘソとかに入り込めるなら普通に皮膚させるんじゃない?っていう疑問は、まぁ、あれです。先っちょが丸めだとか、刺すには向いてない形状だとか、脳内保管で是が非でもお願いしたい。
ちなみに、魔術には色々種類があります。とある鉤爪さんが使って見せた透視とかですね。これはほかにも水の場所を探したり索敵したりとたくさんあって、補助魔術とか呼ばれていて、対抗する魔術もいっぱいありますが…
作中で出てきた人たちで補助魔術も満遍なく使えるのはぶっちゃけヘリオスとセレーネしか居ません。しかも二人でも魔術の形式が違うので、地上のやつは効いたり効かなかったりします。
アリアは治療術はかなりのものですが、補助魔術はからっきしです。リシャはまぁまぁ覚えてきてます。
だってほら、ヴァンたち教えてた人が戦闘と攻撃に特化したあのお二人ですし。
しかもその使い方が身に染み込んでますし。リシャはまだ日が浅いので種に染まっておらず、授業などでぐんぐん覚えてます。
ヴァンとアリアは苦労してます。
とまぁ、長くなりまくりましたが、今回はこんなところで。
読んでいただきありがとうございました!
来年のご挨拶は明日にとっておきまふ。
ではではっ!