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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 最終章 ~天地神焉記~

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23話「運命の刻」

過去に、未来に、


そして運命に、


刻まれる時の音色。

~十四日目~


深層世界・無意識領域



「(血…?)」



ハイドはラグナロクの瞳からこぼれる血の涙を見る。


ラグナロク本人は血の涙を拭きハイドに向かう。


ハイドは臨戦態勢に入る。



真理の神秘ダブマを開放するハイド。



「(その能力は知っている…この身体が十分に味わったのだか………ッ!?)」



突如、無意識領域の景色が変化する。


その光景に足を止めるラグナロク。






—イド!見て——よ!




俺はさ、この———ように———の未来を———たいんだ!




あぁ!未来が—————幸せに———は繁栄を続けて———だよ!






「これは…!?」



ラグナロクの脳裏にリベルの記憶が呼び覚まされる。


周囲の景色は無数の星空を浮かべた景色へと変わっていく。


ラグナロクは自身の頭を押さえながら呼び覚まされる記憶を抑え込もうとする。



だが、すでに目の前にはハイドが迫っていた。



「おらぁあ!!」



真理の神秘ダブマに内蔵されたあらゆる情報を拳に纏い強力な一撃をラグナロクに与える。



激しく血を吐き出すラグナロク。


反撃の暇を与えないようハイドはラグナロクに攻撃を繰り出し続ける。



「ゴフッ…!!(なんだ!?この重みは…!!真理の神秘ダブマによるものだけじゃこれほどの…!!)」



ラグナロクは自身の受ける攻撃が想定以上の威力を持つものであるとして驚きを隠せないでいた。



いくらリベルの記憶によって初撃をもろに受けたからとはいえ、ラグナロクは先のヘーロスとの戦いで受けた一撃よりもハイドの拳に重さを感じる。



「(そうか…!!コイツが取得している情報には魂がある…!!)」



ラグナロクは理解した。


今のハイドは真理の神秘ダブマによって取得したカニスの魂から、的確に魂にダメージを与える[[rb:術 > すべ]]がある。


それにより自身の寄生先であるリベルの魂を削り取り、魂としてのリベルを葬り去ろうとしているのだと…!


当然、リベルが死してもラグナロクは死という概念が存在しない。



だが、このまま魂、そして肉体へと攻撃を受け続ければラグナロクはまた以前のように存在のみの超常体になる。


それは現実世界への帰還を不可能にするのと同義。



「ッ!」



ハイドの拳が空を切る。


ラグナロクがハイドもとから姿を消す。


そしてハイドの死角をとるラグナロク。


リベルの能力である未来跳躍を使用したのだ。



僅か先の未来へと飛び、攻撃を回避したラグナロクはハイドに反撃を開始する。



ハイドは足に水流を纏い、滑るようにラグナロクの攻撃を回避する。


だが、自身の攻撃と同時に触手による攻撃を行っていたラグナロクの方が一歩勝っていた。



「ゴフッ…」



触手はハイドの腹部を貫いていた。


触手を引き抜くと大量の血液と同時に腸が体外へ飛び出る。



ハイド真理の神秘ダブマから放出された炎で傷口を焼くことで出血を抑える。


激しい痛みに耐えるべく歯を食いしばるハイド。


口からは血がにじみ出る。



「その傷は致命傷になる。」


「(まだだ…まだ死ぬわけには…)」



ハイドは重傷を負った身でラグナロクへと向かう。



「理解できない、お前のその行動には…」






お前たち生命は己の命を存続すべく抗うのは知っている。


だが、


お前たちには恐怖という感情があるはずだ。


その感情を僅かながらに体感した私ですらその感情を前には抗うことは無意味だと理解できる。


なのに、


なぜ、ハイド…


お前は己が勝てないとわかっている相手を前にここまで立ち向かえる。



仲間に託されたからか?


自分でやると決めたからか?


それが恐怖を、生命としての感情を打ち破る理由になるのか?



わからない、



何がお前をそこまで…






ハイドの攻撃を避けながら触手による攻撃を行うラグナロク。


ラグナロクの触手は存在自体を操作し攻撃に転じる。


故に防ぐことは不可能。



ハイドは次々と迫りくるラグナロクの触手による攻撃を受け続け、全身からおぞましいほどの血が噴き出る。



すでに息をしているのも不思議な状態だ。



「…なるほど、魂を肉体に固定させているな。」



本来であれば死している状態でありながらなんとか息をするハイドを見てラグナロクは触手による攻撃を中断する。



魂が消失すれば、生命は死に至る。


ハイドは魂が消失しないよう真理の神秘ダブマにより肉体に魂を融合に近い形で固定させた。


肉体が消失しない限り今のハイドは瀕死であろうと生命を保つことができる。



「だがあくまで肉体が耐えれればの話、肉体もろとも打ち砕けばお前のその奮闘も無意味になる。」



ラグナロクは自身の触手を無数に放出する。


無数に出現した触手は一つの触手へと形作り、ハイドに襲い掛かる。



「!!」



しかし、触手がハイドに直撃する瞬間、ハイドは凄まじい速さでラグナロクに接近する。


ラグナロクはハイドの動きに驚愕するが、すぐに攻撃に転じる。


だが、その攻撃すらハイドは容易に回避する。



「なんだと…!?」



ハイドの攻撃を受けるラグナロク。


先ほどと同様魂に直接伝わる攻撃によりラグナロクは激しく痛みを伴う。



「ぐッ…!!」



ハイドの攻撃を回避するため再び未来跳躍の能力を使用するラグナロク。


死角を取りハイドに攻撃を試みるが…



「なに…!?」



その攻撃を見もせずに受け止めるハイド。


ラグナロクはその後、幾度も未来跳躍による奇襲を仕掛けるもすべて完璧なタイミングでハイドに防がれる。



「(なぜだ…なぜ攻撃が…)」



ラグナロクは自身の攻撃をすべて読まれていることを疑問に持つ。


戦闘の最中、ラグナロクはハイドの瞳を見る。



「まさか…お前…」



その瞳を見たラグナロクが震撼する。



「この状況を…すでに体験しているな…!?」


「あぁ。」



その声に反応するハイド。


そう、ハイドは過去跳躍を使用し、ラグナロクの攻撃を何度も受け続けそのたびに攻撃を回避する術を身に着けていたのだ…!!



「(だとしてもだ…これほどの攻撃…一体どれほどの…)」



ラグナロクの触手による攻撃速度は通常の攻撃の比ではない。


対象に攻撃を与える直前まで存在していないラグナロクの触手には空気抵抗や物理法則は通用しない。


そのため、ラグナロクの触手は音速を無視した攻撃と化し、攻撃を察知することもできない。



いくら過去跳躍の能力を持つハイドといえど、回避することは不可能といえる。



かつてヴォルフガングとの戦いで利用したような過去跳躍による幾度の戦闘から得た経験値で迫りくる攻撃を回避しようにも、今回とは状況がまるで異なる。


数百、いや千を重ねても現状を打開することは不可能だろう。



「…無限と思える時をお前と相対した。」


「!!」


「この瞬間ですら俺にとっては数えきれない時のひとつにすぎない。」






コイツ、正気か!?



コイツはこの私を倒すべく過去に戻ることを繰り返し続けた。



その眼、すでに百や千などといった生半可な回数ではないだろう。






ラグナロクはハイドの冷めたような目つきを見て、このやり取りでさえも幾度に及んだものなのだと理解する。



「…過去に戻ろうと、未来へ行こうと…わかったことがある。」



ハイドは静かに自身の手を挙げる。


ラグナロクはハイドが次の行動に移る前に自身の触手を向ける。



真理の神秘ダブマが取得した情報はリセットされないこと。」


「!?」



ハイドがラグナロクの触手を掴みだす。



「どういうことだ…私の触手は…」


「お前との戦いで何度もソイツに触れる機会はあった…だから…」



ハイドの触れている触手が消失する。



「まさか…」


俺の真理の神秘ダブマに取得したのさ、ソイツの情報を。」


「!!!」



ハイドは過去跳躍を繰り返す中で取得した真理の神秘ダブマの情報は過去に戻っても元に戻らないことに気が付く。


ラグナロクの触手を回避することができないのであれば真理の神秘ダブマに情報として取得することで、情報を書き換えればどうにでもなると。


だが、存在しないものを俺の真理の神秘ダブマに情報として取得するのは不可能。


だからハイドは幾戦の過去跳躍の中で、僅かに触れることに成功した触手の情報を蓄積させ、俺の真理の神秘ダブマに情報を取得させることに成功したのだ。



「まぁ…それだけじゃないけどな。」



ハイドは自身の手を挙げると周囲の光景が変化が生じる。


すると周囲に炎や水流、暴風などが出現する。



俺の真理の神秘ダブマに取得できる情報は5つまでだ。

ここに来るまで俺の真理の神秘ダブマには岩、炎、空気、水、そしてカニスの魂が取得されていた。」



ハイドは周囲の炎や水流を手で自在に組み替え周囲に様々な建築物を創造する。



「なんだ…これは…」


「驚くことじゃない、この空間は無意識領域。

ここには無数の量子が存在している。」


「まさか…!!」


「量子さえ取得できれば、俺は…」


「ッ!!」


「すべての物質の情報を手にすることができる…!!」



ハイドは周囲の建造物を組み替えてラグナロクを襲わせる。


攻撃を回避するラグナロクだが、その表情はかつてこれまでにないほど焦りを見せていた。



「(私の触手だけでなく量子までをも取得したというのか!?)」






今のコイツにはラグナロクわたしの触手、量子、そして魂が俺の真理の神秘ダブマに取得されている。



そしてこの私に再び攻撃をすべく先ほどのように動けていることからおそらく己の肉体の情報ですら俺の真理の神秘ダブマに取得しているとみて間違いないだろう。



となれば…最後の情報、5つ目の情報は一体何だ…?






ラグナロクはハイドの攻撃を回避に徹しながら考える。



すでに自身の触手による攻撃は無意味。


未来跳躍をしようとも、過去跳躍の能力を持つハイド相手には迂闊に多用すべきではないと判断する。



「(これは…!?)」



ハイドは目の前の光景に足を止める。



「その表情…どうやらこの光景までは体験していないようだな。」



ラグナロクは無意識領域に散在している無数の魂に進化の意欲エクセレクシを使用する。


それによりハイドの前には数えきれないほどのテロスが出現する。



以前にリベルがハイドとの戦いで使用した原理と同じものだ。


だが、それとは比較にならないほどのテロスの数がハイドに襲い掛かる。



ハイドは鼻血を流しながらも俺の真理の神秘ダブマから取り出した量子の情報をもとに様々な現象を生み出し対応していく。



「無理をするなハイド、それは自殺行為だ。」



量子を俺の真理の神秘ダブマに取得したことでハイドはあらゆる原子からなる事象を再現できるようになった。



量子の情報を手にしたハイドは原子を構築してから、自身の状況に応じて原子で再現可能な現象を生み出す。



この世の万物を意のままに書き換えられる文字通りの真理の覇者となった。



だが、



俺の真理の神秘ダブマは取得された情報を書き換えるたびに体力を消耗する。


それは書き換える情報が複雑であればあるほどだ。



これまでの炎や水から情報を書き換える工程とは異なり、量子から目に見える現象を生み出すために行う工程はハイドの身体に計り知れない負荷を強いる。



己の肉体を俺の真理の神秘ダブマに取得させある程度負担を軽減してもなお、それはハイドを死へと追いやるには十分すぎた。



「お前…ここで死ぬ気か?」



ラグナロクは無数のテロスを倒し続けるハイドを見て呟く。



たとえ幾度も過去へ行きやり直しても、ハイドの精神は元に戻ることはない。



「その痛みや…苦痛は刻まれ続ける…」



なのに…



「なぜ…!お前はまだそんな眼をしていられる…!!」



ラグナロクはハイドの眼を見て激昂する。


その瞳はいまだ光を失わず己が討ち取るべく超常体あいてへと向いていた。



するとハイドは無数のテロスを蹴散らしながらラグナロクに向けて俺の真理の神秘ダブマに取得されたラグナロクの触手を取り出す。


ラグナロクは自身に襲い掛かる触手に己の触手をぶつけ相殺する。



「私に効くとでも思ったか…!?……ッ!!」



突如、口から血を吐くラグナロク。


吐血だけでなく目からも血の涙を流し、思うように身体が動かなくなる。



「(何だ!?これは…!!私はコイツの攻撃を食らってなど…)」


「俺じゃない、お前自身が招いた結果さ。」


「なんだと…!?」


「お前はヘーロスさんとの戦いで負傷したはずだ。それもかなりの重傷をな。」



ラグナロクはその発言でヘーロスの戦いを思い返す。



それは空間の崩壊を前にしてヘーロスが自身を胴体を分断したときの瞬間だ。



「まさか…」



そう、ラグナロクはあの時、肉体に修復困難な傷を負っていたのだ。


進化の意欲エクセレクシによる肉体変異の効果を利用して自身の肉体を結合させたが、ラグナロクが支配するリベルの肉体はあの時点で限界を迎えていた。



「俺たちは肉体と魂から出来ている。ましてや自分の肉体の異常なんかすぐに気が付く。」



ハイドは俺の真理の神秘ダブマにより自身の肉体を再生させる。



「だが俺ら人間の身体を…器としてしか見ていないお前なんかにはわからないだろうがな。」


「クッ…!」


「散れ、超常体。」



ハイドは俺の真理の神秘ダブマに力を込めて走り出す。



その様子を見たラグナロクは焦りを見せながら周囲のテロスを操作しハイドへと仕向ける。



しかし、周囲のテロスはハイドが操る無数の現象により無効化される。






超常の禍殃かおうは震撼する。



己に迫りくるこの感情を。



超常の禍殃かおうは驚嘆する。



己に迫りくる者の姿に。



理を逸脱した無数に伸びる己が手を向かわせても、



欲という肉に穢された魂をも物ともせず、



真理の覇者は走り続ける。






運命の秒針が音を鳴らす…

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