12話「超越者」
超越せし者の物語は加速する。
~十四日目~
9:45 レヴァリィ世界
アロガンティア大国・王都内部
「アローラ、そっちはどうだ?」
「王都の民は大方避難したみたいだ。」
レオンハルトとアローラは王都に住まう民たちの安否を確認する。
上空に深層世界への穴が開いたことで現実世界からやってきた機械兵は王都で市民を攻撃した。
なんとかアローラたちによって王都に現れた機械兵は倒すことに成功するが、それでも王都には倒壊した民家が見える。
「(王宮はまだ被害が出ていないか…)」
アローラは先に王宮へ向かわせたルークたちを案じる。
それを察したレオンハルトはアローラの肩に手を乗せる。
「王宮へ向かえ、俺たちは市民の方に行く。」
「レオンハルト…」
「おいおい~…俺たちって僕は行くって言ってないんだけど~…」
ウォルターが口を挟む。
そんなウォルターの発言は無視するようにふるまうレオンハルト。
「悪いな、王を倒したら合流しよう…!」
アローラは王宮の方向へ向かう。
それを見届けたレオンハルトは王都の下町へと向かうべくウォルターに声をかける。
「おい、行くぞ。ウォル……」
するとレオンハルトの背後に凄まじい衝撃と共に何かが降り立つ。
あたりに民家が衝撃で亀裂が走る。
「!!」
レオンハルトはすぐに降り立った者の正体を察し、臨戦態勢をとる。
「来たな…」
砂埃から姿を現したのは…
「やはり王都にもいたか、邪魔が。」
ヴィクトール総督だった。
王都に降り立つヴィクトール。
その全身にはエネルギーを纏っており周囲の瓦礫が宙に浮かんでいる。
そんなヴィクトールの姿を見てレオンハルトとウォルターは驚愕する。
「おいおい~…いきなり…」
「ウォルター!構え…」
レオンハルトが叫ぶよりも速くヴィクトールがウォルターに接近する。
「!!」
「そこを退け、死神。」
ヴィクトールの強烈な蹴りがウォルターに直撃する。
蹴り一発を放っただけで周囲に風圧が起こり、下町までウォルターは吹き飛ばされる。
「ウォルター!!」
「次はお前だ、鬼神…!!」
レオンハルトがウォルターを気に掛ける頃にはすでにヴィクトールがレオンハルトに迫っていた。
ヴィクトールの迫りくる拳をレオンハルトは暴虐の縄で縛ることで防ぐ。
しかし、
「なっ…」
「出力40%…」
ヴィクトールが掌をレオンハルトに向ける。
すると膨大なエネルギー波をレオンハルトに浴びせるヴィクトール。
エネルギー波はそのまま下町に直撃し大きな爆炎を上げる。
「ほう、今の出力では灰にならなかったか。」
ヴィクトールが言い放った先には赤い蒸気を発しながらなんとか攻撃を防いだレオンハルトがいた。
「クッソ…なんて威力だ…(極限化を使用しなきゃ死んでた…)」
レオンハルトは自身の能力”極限化”を使用することでヴィクトールのエネルギー波からなんとか身を守っていた。
しかし、レオンハルトの能力は驚異的な身体能力を発揮する代わりに能力の持続は10分が限界だ。
「(10分の間にこいつとの戦闘にケリをつけないとだな)」
レオンハルトが鬼の形相で周囲に暴虐の縄を展開する。
「最初から本気で行く…!!」
レオンハルトは暴虐の縄でヴィクトールを襲いながら自らも攻撃に転じる。
ヴィクトールは暴虐の縄の攻撃を纏ったエネルギーの出力を上げて防ぎ、レオンハルトの肉弾戦に対応する。
「まるで獣だな。」
ヴィクトールの一撃がレオンハルトの腕に直撃する。
するとレオンハルトの腕が吹き飛ぶ。
しかし、ヴィクトールがレオンハルトに気を取られているうちに、背後を取っていたのはウォルターだった。
「!!」
「僕も仲間に入れてほしいな~…」
ウォルターの蹴りがヴィクトールに直撃する。
さらに吹き飛ぶヴィクトール相手にウォルターは断絶の籠から槍を放ち追い打ちを仕掛ける。
だが、ヴィクトールは自身の纏うエネルギーをさらに大きく放ち迫りくる槍を破壊し、宙に浮かぶ。
「ただの武器じゃ俺には効かんぞ。」
「んじゃこれはどうだい~…?」
すでにヴィクトールの背後に石を断絶の籠に誤認させて投げていたウォルター。
そこから出現したウォルターはヴィクトールに拳を向ける。
しかし、そんなウォルターの不意打ちも難なく防ぐヴィクトール。
「いい戦法だ、だが威力が足りんな。」
ヴィクトールが両足にエネルギーを込めることで空中で軌道を変え、ウォルターの背後を取る。
「!?」
「奇襲とはこうやってかけるものだ。」
「ッぐ…!」
ヴィクトールの強力な一撃を食らい吐血するウォルター。
激しい勢いで地面に落下するウォルター。
周囲の民家が吹き飛ぶ。
激しく土煙が巻き起こる中、レオンハルトがヴィクトールに向かう。
レオンハルトの拳を受け止めるヴィクトール。
「こちらは威力は十分だが、単調すぎるな。」
拳を受け止められたレオンハルトは暴虐の縄で追撃を行おうとするが、ヴィクトールが放つエネルギー波の方が速くウォルターと同様に吹き飛ばされてしまう。
圧倒的な力を見せるヴィクトール。
ヴィクトールはレオンハルトの方を見つめる。
「なるほど。鬼神、お前の能力は肉体の再生も可能なのか。」
そこには徐々に失われた肉体が戻りつつあるレオンハルトがヴィクトールを見ていた。
レオンハルトはヴィクトールから目を離さずに瓦礫から姿を現したウォルターに声をかける。
「ウォルター、無事か?」
「ふぅ…そんなわけないじゃないか~…
君と違って僕は再生できないんだから…」
「そう返せるってことはまだいけるな。」
ヴィクトールの攻撃は食らいはしたものの、ウォルターは地面との衝突の瞬間に断絶の籠に入ることで衝突のダメージを防いでいたのだ。
「んでどうする~…?
僕の攻撃じゃ決定打になりにくいみたいなんだけど。」
「俺の攻撃は違う。
奴はちゃんと防ぐ姿勢を見せていた。」
それを聞いたウォルターが以前にレオンハルトと闘ったことを思い出し、自身の腹をさする。
「あぁ…だろうね~…
だけど君のその能力はあと…8分くらい…かな~…?」
「だからそれまでに奴に決定打を与える…!
作戦はお前に合わせる、協力しろ。」
「りょーかーい~…」
ヴィクトールがこちらに迫る。
ヴィクトールがエネルギー波をこちらに向ける。
レオンハルトとウォルターは左右に散らばり攻撃を回避する。
エネルギー波は地面に直撃すると地面を大きく抉り巨大な大穴を作る。
ヴィクトールはばらけたレオンハルトとウォルターの行動から目を離さぬようにしていた。
「(互いに散り散りに回避したな…
何か策を練っていると考えるべきか。)」
ヴィクトールは全身にエネルギーを込め始める。
「うわ~…これはまずいな~…」
するとヴィクトールは全方位にまるで降り注ぐ雨のようにエネルギーの矢を飛ばす。
ヴィクトールの能力は”エネルギー操作”
自身が蓄えたエネルギーを自由に放出・変化・増幅させることで攻守における強力な戦闘を可能とする。
エネルギーは熱や電気などといった外的なものから取り入れることも可能で、ヴィクトールは自身のエネルギーを高濃度に圧縮し常人が触れれば消し炭になるほどの威力を誇るエネルギー波を放てる。
ヴィクトールが放ったエネルギーの雨は次々と王都の民家を破壊し、瞬く間に王都が壊滅状態と化す。
「こいつ…王都を破壊する気か…!?」
「範囲が広すぎだって…」
レオンハルトとウォルターは降り注ぐエネルギーの矢を王都の街を遮蔽として回避し続ける。
依然ヴィクトールは攻撃を空から放ち続ける。
するとヴィクトールのもとに大きな民家の瓦礫が飛んでくる。
ヴィクトールは自身に纏うエネルギーで傷一つなく瓦礫から身を防ぐ。
しかし、瓦礫が破壊された先にはレオンハルトがヴィクトールに迫っていた。
レオンハルトの強力な拳を防ぐヴィクトール。
「(あの瓦礫…死神の仕業か…)」
ヴィクトールは先ほどの瓦礫がウォルターの能力によるものだと判断する。
ウォルターは王都を駆け回りながらヴィクトールとレオンハルトのいる上空を見つめながら笑みを浮かべる。
「(僕の能力は総督に割れていない…
そのアドバンテージを生かす…!)」
「!?」
レオンハルトの拳を防ぐヴィクトールの周囲が突如、王都の景色のものではなくなる。
それを見たヴィクトールは驚愕する。
ヴィクトールに見えたもの。
それはアロガンティア大国の王都ではなく、暗闇が広がる巨大な森の中だった…!
「(どういうことだ…!?)」
”偽りの楽園界”
ウォルターの能力”認識誤認”の応用技術。
空間に能力を適応させ、本来いる場所とは異なる空間に誤認させる。
能力下においた空間を対象が目視することで能力が自動的に発動し、数秒の間周囲は誤認された空間と化す。
自身の任意で発動できないリスクからウォルターはこの技を多対一の状況下でしか使用しない。
そして、その条件は死神と鬼神の共闘という本来叶うはずのない二人によって満たされる…!!
誤認すれば数秒の間、誤認したものと同様の性質を持つウォルターの能力を空間に適応することで、本来の空間である王都の上空から深い森の内部へと誤認させ、さらには空中から地へと足場も誤認させたことでヴィクトールは状況の理解が遅れる。
僅かに拳を抑える力が弱まったのを確認したレオンハルトはヴィクトールに向けてさらに力を込める。
「よそ見をしてる場合か?」
「ッ!」
ヴィクトールの周囲に暴虐の縄を展開するレオンハルト。
ヴィクトールはレオンハルトの拳を受け流し後方に移動するが、先ほどの上空と異なり森での空間が把握できず背中に森林がぶつかる。
「クソッ…!」
レオンハルトの猛攻がヴィクトールを襲う。
ヴィクトールは僅かな怯みからレオンハルトの攻撃に防戦一方となる。
レオンハルトはヴィクトールに攻撃を仕掛ける最中、先ほどのウォルターとの作戦を思い出す。
「僕の能力は空間にも適応できるんだ、それを使って強引に君と総督の1対1に持ち込むよ~…」
「お前…そんなこと…
なぜ俺との闘いで使わなかった。」
「だって意図しないタイミングで発動しちゃうから~…
嘘はオンオフを使い分けるからこそ意味があるものだし…」
「まぁいい、それでいくぞ。」
「誤認が発動したら任せたよ~…」
「(隙はできた、後は…)」
全力で!
削る!!
暴虐の縄と自身の肉弾戦を絶え間なくヴィクトールに振るうレオンハルト。
だが、
「慣れて来たぞ…お前の攻撃が…!!」
徐々にレオンハルトの猛攻に対応していくヴィクトール。
自身が不意にも生んでしまった隙を埋めるようにヴィクトールは先ほどよりもエネルギーの出力を上げていき、自身の防御性能を高めていく。
「チッ!!」
加えて高められたエネルギーを纏ったヴィクトールに触れたレオンハルトの拳は皮膚がめくれ血が滲み出始める。
「(再生で持ち堪えているが、奴のエネルギーの衣が俺にダメージを…!)」
「そんなものか?鬼神!!」
ヴィクトールの強烈な反撃を受けるレオンハルト。
しかしレオンハルトはヴィクトールの拳を押さえつけ、自身とヴィクトールの身体を密着させる。
そこに暴虐の縄がレオンハルトもろともヴィクトールを貫く。
咄嗟に態勢をずらしたことで致命傷は避けたヴィクトール。
レオンハルトの自身を顧みずに行った攻撃もヴィクトールには決定打にならなかった。
それに笑みを浮かべるヴィクトール。
「この程度で…」
「終わるかよ。」
「なに!?」
レオンハルトの手に握られたものを見るヴィクトール。
それは大量の小型爆弾だった…!!
爆弾が連続的に爆破しレオンハルトとヴィクトールを包み込む。
上空で大きな爆破を目にするウォルター。
「やっぱ、渡しておいて正解だったね~…」
ウォルターは先ほどの作戦をレオンハルトに伝えた後、自身の能力の影響下に置かれた小石を複数授けていた。
その小石は全て小型の爆弾に誤認され、レオンハルトは自身を巻き込んでヴィクトールに放ったのだ。
「これで…」
ウォルターは上空を見上げる。
「…!!」
そこには爆破による負傷は負ったものの、依然と空中に浮かぶヴィクトールの姿があったのだ…!
「いい策だったぞ。
おかげでかなりエネルギーを消耗した。だが…」
ヴィクトールの周囲に突如現れる複数の断絶の籠。
そこから大量の武器ともに奇襲をかけるウォルター。
ウォルターの攻撃を難なく受け止めるヴィクトール。
「ようやく温まってきたんだ、お前はくたばるなよ…死神。」
「温まる~…?
逆上せたの間違いじゃないかな~…?」
「あれは…」
同時刻、王宮へと向かったルークたちと合流すべくアローラは王都の高地で上空の爆破を見る。
それがレオンハルトとウォルターの仕業であると察し、さらに二人が対峙している相手が王都を飛び出る前にヴァレンティーンが言い放ったヴィクトールであることも理解する。
「いや、二人に任せたはずだ。」
アローラは自身の目指す場所、ジョージ王のいる王宮へと目を向ける。
すると王宮の入り口付近で倒れる人物を発見するアローラ。
「お前は…クヴィディタス大国の…!」
それはヴァレンティーンの指示でルークたちのいる王宮へと向かったクリスティーナ大佐だった。
クリスティーナ大佐は負傷した肩から流れ出る血を抑えながらアローラに声をかける。
「気を付けてください…!彼らが…!」
「彼ら…?」
そんなアローラの背後に迫る二人の影が…
「!!」
「これで衛兵は全て片付けた、終わりだジョージ王…!」
一方、王宮内へと侵入に成功したルークたちはレタと共に王宮内部にいるジョージ王の衛兵を全て倒し、玉座の間でジョージ王を追い詰めていた。
「まさか、貴様まで俺の邪魔をするとはな、ウリエル!」
「もうその名は捨てた、俺の名はルークだ!」
ルークが飛び出しジョージ王に剣を振りかざす。
だが、ジョージ王は追い詰められているにも拘らず笑みを浮かべていた。
それに気が付いたレタがルークに向かって叫ぶ。
「ルークさん!」
「!!」
するとジョージ王は懐から真理石を取り出しルークに向ける。
真理石からは凄まじいエネルギーが放出されルークに浴びせる。
「クッ!!」
ルークは自身の剣に内蔵された神秘の欠片による水の放出で威力を軽減させるが、部屋の壁まで吹き飛ばされる。
「俺が何の準備もなしにただお前たちの襲撃を待っていたと思うのか…!?」
「その真理石…ミカエルのか…」
ルークが負傷した身体を剣で支えながらジョージ王の持つ真理石を見る。
アロガンティア特務機関ではウォルターとミカエルことヴィンセントに真理石が与えられていた。
ウォルターは西部都市でジェシカ王女を蘇らせるべくバーバラに真理石を託した。
そしてヴィンセントはジョージ王にあらかじめ自身の真理石を託していたのだ。
「大丈夫ですか!?ルークさん!!」
「レタ!アイヨ!用心するんだ、今の王にうかつに近づけば消し炭にされるぞ!」
レタはアイヨを自身の後ろに回しジョージ王から目を離さぬようにする。
ルークは血を吐きながらジョージ王の持つ真理石について自身を考えを語る。
おそらく今の膨大なエネルギー。
あれはヴィクトール総督の能力だ。
すでに王は総督と接触した際に真理石で総督の能力を情報として所持していたのか…!
「それだけじゃない…!」
ジョージ王はそう言うと玉座のすぐ横にある窓から王宮の外を見つめる。
「エネルギーとは俺たち生命体の生きる根源そのもの…
俺がなぜウォルターにカマエルの死体を持ち帰らせたか…」
「!!まさか…!!」
ルークは窓の外でここ王宮に向かおうとするアローラを見る。
その背後に迫る二つの影にも。
そう、この[[rb:エネルギー > ちから]]があれば不完全ながら死者を蘇らせることができる…!!
「クッ!!」
背後に迫る攻撃によって背中を負傷するアローラ。
だが、甲冑によって致命傷は防ぎアローラは奇襲した二つの影から距離を取る。
「お前たちは…!!」
アローラは奇襲してきた者たちを見る。
それはカマエルとアズラエルだったのだ!!
「どういうことだ!?(たしかこの二人はすでに…)」
カマエルはハイドとの戦いで、アズラエルはグリーンに憑依された後エヴァによって倒されていた。
だが、今アローラの目の前には全身継ぎ接ぎだらけの状態ではあるものの、たしかにこちらに向かう二人がいたのだ。
カマエルの攻撃を防ぐアローラ。
カマエルごとアローラに向かって攻撃を仕掛けるアズラエル。
アローラはカマエルの足を攻撃することでバランスを崩し、アズラエルの攻撃を捌く。
「ジョージ王のやつ!!」
死者ですら自身の野望のために利用するジョージ王の行為に激しい怒りを露わにするアローラ。
「かつての彼らほどの戦闘力はないが…死しても俺のために働き続けるのが、お前ら天使の役目だ!」
ジョージ王がカマエルとアズラエルを相手にするアローラを王宮の窓から覗きながら言い放つ。
その発言に怒りを覚えるレタが飛び出す。
「それは違う!!」
レタは自身の手から音波を放つ。
「バカだな。」
「うっ!!」
ジョージ王は真理石をから放つエネルギーでレタの音波をかき消す。
「そんな攻撃が通用すると思うか!」
「レタ!!」
ルークがエネルギー波に巻き込まれるレタを叫ぶ。
だが、レタはエネルギー波に直撃することはなかった。
「ほう…」
ジョージ王が見た先にはレタの目の前で必死にエネルギー波を耐えるアイヨの姿があった。
「アイヨ!!」
「アイヨ、レタのことッ…守るッ…!!」
アイヨの再生能力によりなんとかエネルギーからの攻撃を防ぐ。
しかし凄まじいエネルギーによりアイヨの身体は徐々に焼け焦げ、再生が間に合わなくなっていく。
「ダメだ!アイヨ!」
「やだ!アイヨがどいたらレタが殺されちゃう!!」
「ハハッ!喋る秘宝の副産物が!この俺に歯向かうか!!」
「クソッ…!(はやくレタ達のもとに…!)」
レタとアイヨのもとへ向かおうとするルークだが、先ほどのエネルギーを受けたことですでに身体のいたる箇所の骨が折れていた。
中々立ち上がることができないルーク。
立て…!!
あの二人を死なせるな…!
俺の責任と役目を果たせ…!!
身体は折れようと、心が折れない限り…!!
まだ救える!!!
「あ"あ"ぁあ"あ"!!」
歯を食いしばり立ち上がろうと試みるルーク。
「ぐッ…クソッ…」
瓦礫の中から目を開けるレオンハルト。
自身による自爆覚悟の爆破によってヴィクトールにダメージを与えたレオンハルト。
極限化の能力で爆破による負傷は再生したものの、あまりにも肉体の損傷が激しかったことで能力が発動時間よりも速く解除され気を失っていたレオンハルト。
「クソッまずい…!」
自身の捨て身の攻撃も空しくヴィクトールには決定打とならず、依然ウォルターと戦闘を繰り広げている。
レオンハルトは重たい身体を起こしウォルターのもとへ向かう。
その頃、自身の能力と秘宝の力で上手く立ち回っていたウォルターにも限界が差し迫っていた。
「うぐッ…(そろそろマズいな~…)」
すでに身体中にエネルギーによる火傷や負傷を起こしているウォルター。
極限化したレオンハルトには劣るものヴィクトールのエネルギーを纏った攻撃によりすでにウォルターの体力は限界に近かった。
「死神、お前の能力では俺に勝つことはできん。」
ヴィクトールはすでにウォルターの能力”認識誤認”の特徴を理解していた。
「(誤認できるとはいえ、あくまで誤認したものに振る舞うのはせいぜい長くて10秒が限界…!)」
ウォルターの蹴りを避け、腹部に強力な一撃を放つヴィクトール。
大量の血を吐きながら吹き飛ばされるウォルター。
「能力自体は大したことはない、あくまでお前の技術力ゆえに厄介なだけだ。」
するとヴィクトールの頭上から攻撃を仕掛けるレオンハルト。
しかし、その攻撃はヴィクトールには通じなかった。
「そして鬼神、お前の能力は強力だが、使用できる時間が限られているのだろう。」
先ほどの爆破による攻撃以降、ヴィクトールは全身にさらなる膨大なエネルギーを纏っていた。
それにより極限化を使用していないレオンハルトの攻撃はすでに通用しなかったのだ。
ヴィクトールはレオンハルトの顔面に拳をぶつける。
「再生能力もあくまで極限化による肉体強化に耐えるための副次的な効果。
その証拠に貴様はその失った片腕を能力発動中も再生することはなかった。」
ヴィクトールの攻撃でレオンハルトは重傷を負う。
消えかかる意識の中でレオンハルトはかつてイラ大国で自身の父であり、王であったレオパルド王の言葉を思い出す。
己の誇りを守るのだ。
…お前はその拳を殺すためではなく、守るために使うと決めたのだろう?
あぁ、そうだ。
かつては他人を傷つけまいと自分の力を封じてきた。
そしていつしか自身を見失い、父の誇りを傷つけたジューバルを倒すための復讐心に取りつかれた。
だが、今は違う…!!
「!!」
凄まじい闘気を感じ取るヴィクトール。
「ほう…まだ使えたか。」
そこには再び極限化を使用したレオンハルトが立っていた。
レオンハルトが飛び出し、ヴィクトールと拳がぶつかり合う。
「!?」
ヴィクトールはレオンハルトの異変に気が付く。
そのまま力負けしたヴィクトールにレオンハルトが追撃を繰り出していく。
「(なんだこれは!!)」
先ほどの極限化によるレオンハルトの身体能力はすでに把握していたはず。
しかし、自身の想定以上の速さと強さでヴィクトールは翻弄されていた。
それは自身の疲労にくるものではなく、レオンハルトの能力の…
「(精度が増しているとでも言うのか!?)」
ヴィクトールは上空に飛び上がりレオンハルトの攻撃を回避する。
しかし、ヴィクトールより先に上空で待ち構えていたのはウォルターだった…!
「!!」
「悪いね~…ここは満席だよ~…」
ウォルターの奇襲により地上に叩きつけられるヴィクトール。
すかさずレオンハルトが追撃を行う。
ヴィクトールは全身からさらにエネルギーを放出する。
その威力を感じ取ったウォルターは断絶の籠によってレオンハルトのもとに向かい、レオンハルトをヴィクトールから離す。
「ウォルター!?」
「君の能力が総督を倒せるカギだ、命は大事にしようね~…!」
ヴィクトールのエネルギーの余波は王都の下町の民家を次々と破壊していく。
ヴィクトールは自身の能力を最大限にまで引き出す。
「もう出し惜しみはせんぞ、全霊を持ってお前たちを殺してやる。」
ウォルターはヴィクトールの周囲に断絶の籠を放ち、そこから武器や瓦礫を放つ。
だがすでにヴィクトールから放つエネルギーの出力は凄まじく、ウォルターが放つ物量攻撃はほぼ無意味なものとなった。
そこにレオンハルトが接近する。
ヴィクトールはレオンハルトの能力を分析した。
”極限化”
先ほどまではレオンハルトの肉体を極限にまでリミッターを外し、驚異的な身体能力を獲得する。
そしてその極限にまで高められた肉体に耐えるべく肉体は再生をし続ける。
そういう能力だと思っていた。
ヴィクトールは自身の放出するエネルギーの形状を無数に伸びる鞭のように変化させ、周囲の建造物ごと切断し始める。
「うっ…!!」
凄まじいエネルギーの広範囲攻撃、そして破壊された民家による余波でウォルターは攻撃を回避するので精一杯だった。
だが、そんなヴィクトールの攻撃に動じずレオンハルトは突き進み続ける。
”極限化”の真価は…
発動回数を重ねれば重ねるほど、
己の限界を超えれば超えるほど、
能力の精度が増していくもの!!
お前は先の戦闘でおそらく自身が維持できる能力の限界を迎えた。
そしてそれを乗り越えた今!
お前は己の壁を超越した者となった!!!
「まずはお前から叩く!!」
ヴィクトールは自身の拳に高密度なエネルギーを蓄える。
「!!」
それを見たウォルターはレオンハルトよりも速くヴィクトールに接近し、ヴィクトールの注意を逸らす。
「死神、今となってはお前の攻撃は無力だ。
誤認も数秒の間、耐えればいいだけのこと。」
ヴィクトールは背中にエネルギーの腕を生やしウォルターを攻撃する。
「酷いねッ~…!
僕には見向きもしてくれないのかい~…?」
「後で相手してやる、そこで寝てろ…!!」
「グフッ…!!」
ヴィクトールのエネルギー波を受けるウォルター。
自身の目の前に誤認させた瓦礫を出すが、瓦礫ごとエネルギー波に巻き込まれるウォルター。
だが、ウォルターがヴィクトールの注意を逸らしたことでレオンハルトがヴィクトールの懐にまで接近する。
レオンハルトは暴虐の縄でヴィクトールを多方面から襲いつつ、肉弾戦を繰り広げる。
「世界を終わらせるのにお前は邪魔だ鬼神!!」
「世界は終わらせねぇ!!」
二人の激しい攻防が王都全域の空間に響き渡る。
ヴィクトールが放つ高出力のエネルギーによりレオンハルトは全身が欠損するほどのダメージを負ってもすぐさまに再生を繰り返し、攻撃を繰り返す。
その止まることを知れないレオンハルトの猛攻にヴィクトールは終止符を打つべく自身の放てる最高の一撃をレオンハルトに加える。
「グハァッ!」
ヴィクトールの拳がレオンハルトを貫き、内部からエネルギーが炸裂することでレオンハルトに断続的にダメージが蓄積される。
そのまま民家を数軒破壊しながら吹き飛ばされるレオンハルト。
「はぁ…はぁ…これで……」
自身の保持するエネルギーが底をつきかけてくるヴィクトール。
だが…
「なっ!?(まだ来るか…!!)」
息をつく暇もなくヴィクトールに向かうレオンハルト。
その容姿はすでに肉体が再生していた。
「(やはり限界を超えた能力使用のせいか?今の攻撃でも復帰が早い!!)」
レオンハルトは肉弾戦を交えながら暴虐の縄をヴィクトールに串刺しにしていく。
「グハッ…!!(攻撃手段を変えた?だが…!)」
ヴィクトールは暴虐の縄で串刺しにされた箇所を自身のエネルギーによる治癒で止血する。
レオンハルトの体力も限界故か、先ほどよりも攻撃の間隔に遅れが出ていることに気が付いたヴィクトールはその僅かな隙を見逃さなかった。
「ングッ!!」
迫りくるレオンハルトの攻撃をヴィクトールは態勢を低くして、自身の拳をレオンハルトの腹部に直撃させる。
ついに力尽きたかのようにレオンハルトが動かなくなる。
エネルギーによる炸裂こそできなかったが、すでに互いに体力の限界が迫っていた中で、ヴィクトールのエネルギーによる強化された拳でも今のレオンハルトにとってはかなりの痛手だった。
ヴィクトールはレオンハルトの首を掴み持ち上げる。
「終わりだ、鬼神。」
「ヒッ…」
「?何がおかしい。」
「いや~…やっと僕の方を向いてくれたな~って」
「なに!?」
なんとヴィクトールが掴んでいた者はレオンハルトでなく、ウォルターだったのだ…!!
ウォルターは自身の能力で自身をレオンハルトに誤認させていたのだ!
「(まさか!あの時か!!)」
ヴィクトールは自身が込めた全霊の一撃をレオンハルトに与えた。
そしてすぐに復帰したレオンハルトだったが、その頃から僅かだが攻撃が以前のレオンハルトとは異なっていた。
その時点でウォルターにすり替わっていたのだ!
「さぁ~…幕引きだ。」
「ッ!!(しまった!!)」
ヴィクトールの背後には断絶の籠が置かれていた。
そこから出現したのは…
レオンハルトだった!
背後からの攻撃、すでにヴィクトールは防御することも間に合わなかった。
レオンハルトは自身の極限化による力を暴虐の縄で形作った拳に集める。
「これは!お前を倒すために!!世界を守るために!!」
「!!」
「俺が授かった能力だ!!!!」
”獅鬼神の一撃”!!!!
レオンハルトの極限化の力全てを込めた拳がヴィクトールに炸裂する。
「うがぁッ!!!!」
ヴィクトールは大量の血を吐きながら王都を破壊しながら吹き飛ばされる。
「うッ…!(痛い…!!)」
その頃、ジョージ王の真理石から放たれるエネルギー波に耐えるアイヨだが、再生が限界を超えはじめたことで身体が焼け焦げていく範囲が広がる。
「アイヨ!」
それを見たレタが音波を放ち少しでもジョージ王の攻撃からアイヨの負担を軽くしようと試みる。
「チッ…!中々しぶといガキどもだ!!」
ジョージ王はさらに力を真理石に込める。
すると真理石はそれに呼応するようにエネルギーの出力を上げる。
真理石は使用すればするほど使用者の体力を消耗する。
ジョージ王は目の前にいるレタとアイヨを消し去るべく真理石にさらに自身の体力を授ける。
「お前たちは誰にも望まれることもなくこの世に生まれた!!」
ジョージ王が二人の戦意を削ぐべく罵倒を繰り返す。
それでもなおレタとアイヨは抗うべくジョージ王のいる玉座に向かうべく階段を上り近づいていく。
「チッ!(こいつら…!)
そんな不用品がこの俺に!この世界を統べる俺に!歯向かうか!!」
「黙…れ!!!」
ジョージ王のもとまで近づいたレタが拳を振るう。
しかし、いくら特異な能力を持つ者であってもまだ少年。
ジョージ王に容易く蹴り飛ばされるレタとアイヨ。
二人はそのまま階段から落ち倒れる。
「望まないだと?」
「なッ!?」
だがそんな倒れる二人を支えたのはルークだった。
ルークを見たジョージ王が再び真理石に自身の力を込めようとする。
「クソッ!力が!」
しかしレタとアイヨに自身の体力を多く使用していた影響によりすでにジョージ王の体力は真理石に使用するほど残されていなかった。
ルークが剣を抜きジョージ王に近づく。
「望まぬ者なんて存在しない…!!
お前以外はな!!!」
「クソッ!」
「この世界を統べると言ったな!
なら止めてみろよ!」
ルークが息を整え力を振り絞りジョージ王のもとに走り出す。
「ま、待て!!」
「俺たちの物語を!!!」
ルークの剣がジョージ王の胸を貫く。
その光景を目に焼き付けるレタとアイヨ。
二人の目に映ったのはこの戦いを終わらせるべく、平和を願う天使の勇士だった…!
物語は歩みを止めない…
~十四日目~
10:10 レヴァリィ世界
アロガンティア大国・王都内部
「はぁ…はぁ…」
「ふぅ~…僕たちこの国のヒーローじゃない~…?」
「フン…ここまで街をめちゃくちゃにしたのにか…?」
「!!」
「おいおい…嘘でしょ~…?」
「俺はぁ…まだぁ…死ぬわけ…には…!!」
「ウォルター!奴から離れろ!」
「これは…」
「(周囲のエネルギー…いや、王都にいる民の生命エネルギーを供給しているのか!?)」
「俺は死ねない!!
ウィルフォード様が成し遂げるまで!!
神になるのは…ウィルフォード様だ!!!」
「ほう?神になる…か。」
「!!!」
「誰が神になると?」
降臨せし古代の神…!!




