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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第1章 ~第一次リヴィディン大国侵攻~
8/98

8話「真理を享受せし者」

まことことわりは…


覇者に呼応する。

ハイドは薄れゆく意識の中、アンドリューを見上げた。

その男の表情は自信に満ちあふれていた。


それだけじゃない、心の奥底で怒っている。


仲間を傷つけられたことに…。


始めて会ったばかりなのにハイドはアンドリューの存在に安堵し、信頼できる人物だと確信した。


エルトロがアンドリューを見てこう叫ぶ。



「そうか流浪人…!てめぇもこのガキの仲間か!なら望み通りてめぇから殺してやる!!」



エルトロはハイドからアンドリューに狙いを変え襲いかかる。


激しい肉弾戦が繰り広げられる。


アンドリューはエルトロの攻撃を防ぎつつ拳を繰り出す。



「やるじゃねぇかよ!!」


「そりゃどうも…!」



アンドリューとエルトロの攻防は続く。


エルトロは地面を思いっきり殴り、岩の瓦礫を周囲に飛び散らせる。

そしてその瓦礫がアンドリューの近くに散ったときのタイミングでエルトロは自身の能力である”爆破”を用いてアンドリューに攻撃を仕掛ける。


アンドリューはその攻撃を難なく躱す。


アンドリューはそのまま間合いを詰め、エルトロの顔面を殴る。

しかし、アンドリューの拳の間に瓦礫の破片を挟んだエルトロはその瓦礫を爆破し、アンドリューの拳が自分に届く前に攻撃を相殺した。



「へっ、残念だったなぁ。」



アンドリューは一瞬驚きの表情を見せたものの、爆破の衝撃を受けた自分の腕をまじまじと見つめ、やがて笑い出した。



「ははは…!!なるほど…!お前の能力は”爆破”か!」



アンドリューはエルトロの能力を看破するとすぐさま間合いを詰める。

エルトロの腹に膝蹴りを入れ、すかさず腹部に拳を入れる。


アンドリューの連撃に怯むエルトロだが、自身の両足に爆破の能力を適応させ、その衝撃でアンドリューと距離を置く。



「(なるほど…!触れた物だけでなく、自分自身も爆破が可能なのか…!それも自分に使用した場合はダメージなしか)」


「次は…!もう少し速くいくぞ!!」



エルトロは自分の足を爆破させ、先ほどの戦闘よりも高速でアンドリューに接近する。

爆破の衝撃で推進力を得たのだ。


そしてアンドリューもそれを迎え撃つため自身のパラフィシカーとしての能力を解放する。

アンドリューは自身の拳に炎を纏った。


アンドリューの能力は”火炎”、周囲にある炎を吸収または操作ができ、自身からも炎を放出することが可能となる。


二人は互いの拳に能力を込め、ぶつかり合う。爆風と火炎が両者を包み込み周囲の地形が崩れていく。



「ア、アンドリューさん…!!!」



爆炎の先には拳に炎を纏ったアンドリューと膝をつくエルトロがいた。


アンドリューは先ほどの一騎打ちでエルトロに打ち勝ったのだった。



「くっ…!そがぁ…!!」


「俺の勝ちだな!」



アンドリューは拳にさらに炎を込める。



「終わりだ!!」



アンドリューの拳がエルトロに炸裂しようとしたそのとき、突如、何者かがエルトロを抱えアンドリューの攻撃を避けた。

エルトロが自身を助けた人物を見ながら叫ぶ。



「てめぇは…!テオバルトか!!」



エルトロを助けたのは同じ殲越十二戦士のひとりテオバルトだった。


テオバルトの能力は”テレパシー”、自身の周辺にいるものの心情を把握したり、脳内に声を自身の声を伝えることが可能だ。

王都でエルトロと離れたテオバルトは街で偶然すれ違ったラインハルトの心情を読み取り、ハイドの居場所を特定したのだった。


テオバルトはすぐに動き、ハイドとアンドリューを囲むようにエルトロの反対側に移動した。



「まさか、クヴィディタス帝国軍の大佐がこの青年に助力しているとは思わなかったが。」



ハイドは声の方向に目を向ける。

自分のせいでラインハルト大佐に何かあったのではないかと疑ったのだ。

しかし、今は他人を心配している余裕はない。


アンドリューが来たとはいえ、自分を殺しに来ている人物が二人も目の前にいるのだ。


ハイドは先ほどの戦闘でかなりダメージを負っているも、アンドリューに提案する。



「アンドリューさん…!俺も戦います…!一人は俺がなんとかするので…もう一人をお願いします!」


「おい!いくらさっきより動けるようになったからってとても一人じゃ…」


「大丈夫です!やれます…!!」



ハイドのまっすぐな眼差しを見てアンドリューはハイドが本気であること悟り、承諾した。



「わかった。なら俺はこっちのヒョロいのをやる!!お前はあのデカブツを頼むぞ!!」



アンドリューはテオバルトのほうを向きながら言う。


ハイドはアンドリューに背を向け、エルトロの方を向いた。

そして、ハイドは構える。


ハイドは先ほどの戦いから、近距離攻撃を主体に戦うエルトロに対し、どのように立ち回れば良いのかを考えていた。


エルトロはハイドに向かって攻撃を仕掛ける。

ハイドはその攻撃を避け、エルトロと距離を置く。



「(こいつの爆破は厄介だ…!当たれば衝撃で吹き飛ばされる…!!)」



しかし、エルトロと距離を離したのもつかの間、追撃を開始するエルトロ。

ハイドは避けきれずに自分の腕でエルトロの攻撃を防ぐが、その瞬間、エルトロの腕が爆破しその衝撃でハイドは吹き飛ぶ。



「ぐはっ!!!」


「考えてばかりじゃ俺には勝てねぇぞ!!」


「ハイド!!」



アンドリューがハイドの身を案じるも、テオバルトがアンドリューに攻撃を仕掛ける。



「自分の身を案じた方がいいじゃないか?」


「くっ!!」



アンドリューは体力の有り余っているテオバルトよりも先の闘いで傷を負っているエルトロをハイドに任せたが、さすがは殲越十二戦士。

各々が1級テロスを単体で倒せるほどの実力を持つと言われる戦士たち、いくら負傷してるからとはいっても一般市民だったハイドを追い詰めることなど造作もなかった。



そしてアンドリューもテオバルトに苦戦を強いられていた。


先の闘いの疲労だけでなく、テオバルトはエルトロとは異なり肉弾戦ではなく、中距離武器として連接棍れんせつこんで攻撃してくるため、近接戦の得意なアンドリューは防戦に回るしかなかった。


テオバルトの連接棍れんせつこんを短剣で受けるアンドリュー。そしてテオバルトが自身の能力でアンドリューの心情を読み取る。



「ほう?お前の愛する者は今はインビディア大国にいるのか…。

……名前は……エヴァ・クリコフ…と言うのか…。」


「てめぇ!!」



精神面でも揺さぶりをかけるつもりのテオバルトだったが、アンドリューの心情を読み進めていくうちにテオバルトは驚愕する。



「…!?…な、なんだ…!一体これは…!!!レ……レヴァリィ…世界…?…とは…何のことだ…!!」



テオバルトの猛攻が続き、アンドリューの短剣にヒビが入る。


テオバルトの連接棍れんせつこんがアンドリューを襲う。



アンドリューは剣を捨てると拳で受け止めた。



「(こいつ…!!拳で受け止めた…だと!?)」


「知りすぎだな…。」



アンドリューの渾身の一撃がテオバルトに命中する。



「がはぁっ!」



アンドリューの蹴りを喰らったテオバルトはそのまま地面に倒れる。

不意を突かれ吐血するテオバルトだったが、立ち上がり不敵に笑う。



「フフフッ……!!流浪人…貴様らに興味が出てきたぞ…!お前の”世界”をもっと見せてもらうぞ…!!」


「…。そんなに…地獄が見たいのか?」



場面変わり、ハイドはエルトロの猛攻にギリギリで耐えていた。



「チッ!!(こいつ…!動きが慣れてきてやがる…!こっちも思ったより傷が深ぇ!!速く片付けねぇと…!!)」


「はぁはぁ……(まずい…!もう立っているのでやっとだ……!このままじゃ…!)」




ハイドはついにエルトロの猛攻に耐えきれずに壁に打ち付けられた。アローラにもらった剣も破壊され、攻撃を防ぐ術がない。


エルトロは勝利を確信し、とどめを刺そうとする。



「終わりだぜ。ガキ…!(これで任務完了…!)」



すると、ハイドが身につけていた腕輪の装飾にある宝石の一部が光り出す。



「な、なんだ!?」



腕輪の宝石から巨大な岩石がエルトロに向かって放たれる。

ハイドと至近距離にいたエルトロは防御が間に合わず、もろに岩石に直撃する。



「こ、これは……いったい……」



ハイドは自身の身に起きたことが理解できずにいた。

すると岩石を放った直後にハイドの身体に一気に疲労がたまる。


ハイドは目の前にある巨大な岩石を出したのは自分が身につけた腕輪の仕業であることを理解した。

そしてハイドはその腕輪に内蔵されている装飾の一部である5つの宝石に目を向けた。


岩石が出現したのはこの宝石のうち、一番左側からだった。


すると先ほどの岩石が爆破し、エルトロが姿を現わす。



「く、くっそ……!!(まさか、今のは10の秘宝か!?)」



ハイドはもう一度に自身の意識を腕輪に集中させた。

すると先ほどと同じ宝石の部分が光り、岩石を出現させた。


それは先ほどの岩石とは異なり、鋭利な形状をしていた。


まるで攻撃に特化した形のように…。


その攻撃を爆破でなんとか防ぐエルトロ。



「(これが…俺の秘宝の力なのか…!?なんて強力な力だ…!)」



ハイドはまるで秘宝と共鳴したかのように秘宝の能力を理解し始めていた。


ハイドは岩を出現した宝石とは異なる宝石に周囲の空気を吸収させた。


その光景を目撃したアンドリューとテオバルトは互いに驚愕する。



「あれが…」


真理の神秘ダブマの能力か!!」




秘宝の宝石部分が周囲の空気を一定量吸収したのを確認したハイドは何かを確信した様子でエルトロに向かって走り出す。

エルトロもハイドを迎え撃つため自身の”爆破”で攻撃を仕掛けるが、エルトロの爆破能力による爆破を喰らってもなお、ハイドはダメージを受けることなくエルトロに近づいた。



「なに!?」



そのままエルトロの顔面に拳を叩き込む。

だが、エルトロはハイドの腕を掴み爆破能力を発動するが、爆破は発動しなかった。



「!?」



エルトロは動揺しすぐに距離を置こうとするが、ハイドはエルトロの腹に蹴りを入れる。

エルトロは爆破で反撃しようとするが爆破はまたもや起こらない。


今度はエルトロに槍の形状と化した岩石をハイドは飛ばす。



「くっ!どうゆうことだ!!!!」



エルトロは一旦、ハイドから距離を置く。



「なんだあの力は……エルトロの爆破を無傷とは……!」


「!!!(酸素だ…!爆破には酸素が必要…!!爆破の瞬間だけ空気中の酸素を取り除いたんだ…!)」



エルトロはハイドの力を警戒すると同時に、自身の攻撃が効かなかったことに驚いていた。

だが、酸素を一時的とはいえ、周囲の空気中から取り除いた分、エルトロだけでなくハイド自身も酸欠状態に陥っていた。



「(意識が朦朧とする…!!早く倒さないと…!)」


「(能力が使えなくとも、俺がこのガキに負けることはねぇ…!)」



エルトロは冷静に考え、自身の能力が通用しない相手であっても油断せず、肉弾戦でハイドを追い詰めることを決心する。

しかし、ハイドは次の攻撃に自分の今ある体力全てを賭け、地面に手をかざす。


すると大きな地割れが起き、エルトロだけでなく、アンドリュー達の地面も抉れ始める。



「おっと…!」


「こ、これは……!!!!」



ハイドの所有する秘宝、”真理の神秘ダブマ”はあらゆる物質の情報を書き換え、そして操る。

物質は秘宝に内蔵されている5つの宝石から物質の情報を取得し始めて能力が扱える。


すでにハイドは岩石の情報を取得していた。

そしてその力で岩石でできている地面を崩したのだ。


先ほどのエルトロの爆破を無効化したのも直前に取得した空気の情報をもとに酸素を取り除いたのだ。


だが、この絶大な力は体力を大きく消耗する。


ハイドはこの一撃が自分にとって最後の攻撃になると分かっていた。



「(これで倒せなかったら、俺はあいつらに殺される…!!ここで…!!終わらせる…!!!)」


「この……!……ガキ……!!!」



まさに「世界の法則を壊す力」。


一瞬にして広範囲の足場が崩れ、その土砂にエルトロとテオバルトは飲み込まれる。




真理を享受せし者にはいかなることわりも通じない…


それがこの世の真理に沿うものであるかぎり…


そして、この世の法則に縛られない神秘と化す…




「くっ……!」



テオバルトは崩れゆく瓦礫に自身が持つ連接棍れんせつこんを引っかけ、瓦礫の大穴から脱出しようと試みる。

しかし、そんな中、アンドリューはテオバルトを見下ろし、拳に炎を纏い攻撃の姿勢を取る。


だが、テオバルトは分かっていた。アンドリューの能力の射程距離を…。



「ここからじゃお前の攻撃は届かないことは分かってる!(登り終えた瞬間に攻撃をするつもりだろうが、そうはいかないぞ…)」



テオバルトは登り終えたと同時に攻撃を仕掛けてくるであろうアンドリューのカウンターを狙うつもりでいた。


しかし……


アンドリューは自らの懐から酒を取り出す。



「そんなことは俺も理解してるさ!だが…これならどうする?」



アンドリューは取り出した酒をテオバルトめがけて投げたその軌道には当然、酒が巻き散っている。


その様子を見たテオバルトは察してしまったのだった。



「まさか……!」



状況を察したテオバルトに答えるかのようにアンドリューは自身の拳に纏った炎を巻き散っている酒の軌道上に向かって放った。


それにより広範囲にアンドリューの炎が勢いよく広がり、テオバルトに降り注ぐ。



「うわー!!!!!!」



テオバルトは大量の燃えた酒を浴び、炎に包まれる。

身に纏った服も装備も全てを焼き尽くし、テオバルトは瓦礫の大穴に吸い込まれるかのように落ちていった。



その頃、体力の限界を迎えていたハイドは膝をつき、周囲を見つめる。

すると、重症を負ったエルトロが倒れていた。



「あとはお前だけだ。爆破野郎!」


「く……っそ……!……テオバルトは……やられたか……!」



すでに抵抗する力も残っていないエルトロにアンドリューはトドメを指そうとする。



「!?」



すると背後から殺気を感じ取ったアンドリューはハイドを担ぎ、エルトロから急いで離れた。


アンドリューが殺気を感じ取った場所には何もなかった。


だが、アンドリューはそこにいる”何か”にこう放った。



「殺気が漏れてるぜ!殲越十二戦士!!」


「おいおい…。これでも抑えてた方なんだけど?流浪人ってのは一体どんな訓練積んでんのさ…。」



アンドリューが言い放った先で徐々に姿を現わした男はそう答えた。


いかにも不健康そうな枝のような身体をした男は見かけによらず力強いのか、がたいのいいエルトロを抱えた。



「デニス……てめぇ…!……なんで…ここにいる……!」


「クヴィディタス大国は広いんだ…

君ら二人じゃお目当ての青年は探せないだろうと思ってね…。

…まぁ、探し当てたみたいだけど。」



デニスと呼ばれたその男はエルトロと同様に殲越十二戦士のメンバーだった。

おそらく姿を消していたのも彼のパラフィシカーとしての能力なのだろう。


だが、アンドリューは今の体力での連戦はこちらが不利であると理解していた。


ハイドも秘宝の力の影響で意識を失い、もう闘える状態ではない。

アンドリューは隙を見てハイドを連れて逃げることを考えていた。



「安心しなよ…。今は君と闘うつもりはないんだ…。」



デニスはアンドリューの心を見透かしたかのように答えた。


デニスはそれだけを言い残し、エルトロとともに姿を消した。

アンドリューは警戒を解き、ほっとする。



数時間後、デニスはハイドたちと離れた後、とある街でエルトロを療養していた。


そこでエルトロはデニスになぜ戦わなかったのかを問う。


デニスの答えはハイドの持つ秘宝の危険性、そしてエルトロを救出する直前にテオバルトの能力で脳内にあることを語りかけられたと言う。


それは……



「あの流浪人は俺たちなんかよりも世界の真相を知っている。ってね…。」



それを聞いたデニスはハイド殺害の命で必ず邪魔をするはずであるアンドリューを殺害しては世界の真相に近づけないと判断し、あの場で退散したのだった。


デニスの見立てではアンドリューの戦闘能力は甘く見積もっても自分達、殲越十二戦士2人分だった。

次は複数人で襲えばハイドだけでなく、流浪人も生け捕りもしくは殺害することが可能となることからデニス達、殲越十二戦士は次なる機会を伺うのだった。



一方、あの闘いから意識を失っていたハイドは目を覚まし、アンドリューに改めて自分を助けてくれたことへの礼をした。

アンドリューはすでにアドルフからハイドがクヴィディタス大国に連れて行かれたことへの連絡を受けており、爆破がした方に向かったところ、ハイドを発見したとのことだった。


ハイドはアンドリューとしばらく親交を深めたあとに戦闘中にテオバルトが言っていた発言をふと耳にし、それについて質問した。



「アンドリューさん、あの…”レヴァリィ世界”ってなんですか?」


「あぁー聞いてたのか!…まぁ…簡単に言うと……俺らはハイドがいる世界の人間じゃねぇんだ!」


「え…!?…え、…えぇ!?」



場面変わり、アローラとロクアはリアムと合流し、クヴィディタス大国のとある街に潜伏していた。


アドルフとリアムのおかげでミニーシヤ、ボロフ、サムエルもクヴィディタス大国に向かっていることを知り、さらには同じ流浪人のアンドリューが殲越十二戦士との戦闘になるもハイドを保護した連絡が入り、アローラ達は安堵する。


ハイドがいる場所からはまだかなり離れているが、この街で合流することをアローラはリアムを介してアンドリューに伝える。



「まったく、へーロスにも言ったことあるけど、その連絡ってどうやってるんだ?」


「!!こ、これは内緒です!」



リアムは慌てて誤魔化すもそのあまりにもあからさまな様子にため息をつくアローラ。

アローラ達はハイドやミニーシヤ達と合流するまでの間、街の様子を確認するために各々に分かれ、探索を開始した。


アローラはハイドの親友である3級テロスのカニスとともに街中を歩いているとカニスが街のとある地区で反応を示す。



「カニカニ!!!」


「どうした?カニス?」



カニスは勢いよく走り出し、アローラはカニスのあとをついていくとそこはこの街の監獄塔だった。


アローラは勘の良いカニスがここに何か重要なものがあると訴えていることに気が付く。


アローラはカニスとともに、警備が厳重な監獄塔に侵入した。

内部にはどの大国にもいるような犯罪者が収容されていた。


するとアローラは地下に続く道を見つける。



「(地下牢か…?相当危険な人物が収容されているのか…?)」


「カニ!」



アローラは地下牢の入り口に入るクヴィディタス帝国軍の兵を速やかに倒し、鍵を取って地下牢に続く扉を開けた。


その先は薄暗い廊下が長く続いていた。


僅かに聞こえるかすかな声。


それを頼りにアローラは歩を進める。


だんだんと声が近くなってきた。


その先には囚われている少年がいた。

その少年はアローラに気が付き、この世の全てを憎んだかのような目つきでアローラを睨み付ける。



「…。何しに来た。」



その少年を見たアローラは言葉を失う。



「そんな…。その目…レタ……なの…か…?」



その名前を聞いた少年は少し驚いた様子をした。




人には語れない過去がある。


その過去の思い出は時に自らを苦しめ、他者をも苦しめる。


アローラは今、この瞬間分かったのだ。


自分の振りほどけないあの過去が…。


未だに自分のみならず、あの人の…


自分の愛した者の形見…


守るはずだった者が残した宝物を苦しめていたことを…。



秘められし過去には…

読んでいただきありがとうございました。


ようやくハイドが主人公らしく活躍してきましたね…!笑

この調子でハイドには活躍してもらいたいところですが、次回はどうやらアローラさんの過去が明らかになるみたいですね…

次回の9話、お楽しみに!

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