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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第5章 ~古き終焉と新たな創生~

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7話「Code-ζ」

土を捏ね、世界に存在を与え、


水を撒き、世界に意味を与え、


泥に己を宿し、世界は動き出す。

~??日目~


深層世界 意識領域・第5層



「Code-ζゼータ」……


その文字のあとに現れる景色。


そこは金属で構築された無機質な空間が見える。



「…んで、その指輪にはどんな危険があるってんだ?」



そう自身に問う銀髪の男。



どこかで見たことのある人物…



誰だ?




「あぁ、これははめた者の脳を昏倒させるんだ。」


「それは聞いた、それの何が危険なのかを聞いてんだよ、ハイド。」


「脳は眠りに入ると意識を強める、この内在せし指輪エンシャイエンはそれを強制的に引き起こさせるんだ、兄さん。」



ハイドはそう言って自身の手にある内在せし指輪エンシャイエンを兄に見せる。



「意識の果てには魂が存在する、これは自分の魂に干渉できるんだ。」


「夢を見た延長で魂に至るかよ…

その魂はどこにいくんだ?体は一時的に眠ってるんだろ?」


「どこって…それが深層世界さ。」



場面が暗転する。


次に見えたのは自分や兄さんと言われる銀髪の男が自由に世界を組み替えている姿だ。



「すげぇなこれ…なんでも思い通りってことか…」


「自分の夢の世界だからね、さらに深く眠ればより法則を曲げた世界も構築できる。」


「ここは2層目…?だっけか…ならもっと深くに…」



そう言った兄は内在せし指輪エンシャイエンをはめようとするが、ハイドがそれを制止する。



「深層世界は魂が混在する不安定な空間、潜り過ぎると今ある原子じゃなく、量子の世界に干渉することになる。」


「はぁ?もっとわかるように説明しろ。」


「うーん…つまり、深く潜れば潜るほど現実にも影響を与える可能性があるってこと。」


「けど、お前がこれを作ったのは…」


「あぁ、魂が混在するなら過去の亡くなった人の魂も存在するはず。

彼らに出会い、時には知恵を授かりよりよい世界のために、時には空いた自分の心を癒すために、理想の世界を創ることが目的だ。」


「なら、リスクも承知の上だろ…お前の目的、遂げようぜ。」



それを聞いたハイドは少し間を空けてからこう言い返した。



「兄さん、リスクを無視して目的を成すことはできない。

…この秘宝は可能性より危険性を考えるべきだよ。」



それを聞いた兄は少し表情を曇らせた後、小さな声でこう呟いた。



「…そんなんじゃ…何一つ…救うことなんかできやしねぇんだよ…」



意識が遠のく……



「まただ…また記憶だ。」



ハイドは目を開ける。


自身の内に眠る古の記憶“Code”、そこでハイドは内在せし指輪エンシャイエンの可能性と危険性を説いていた。



「この秘宝はもしかして…俺が作ったものなのか…?」



ハイドは自身の指にはめられた内在せし指輪エンシャイエンを見つめる。




ひとつ前の階層でウォルターと出会った。


アイツは奇跡と破滅の種で一命を取り留めた。


そんなアイツがどうして深層世界で俺と出会ったのか、




「さっきの記憶を見るかぎり…やっぱりこの世界の行きつく先は魂が混在する世界…なのか?」



ハイドは周囲の身ながら呟く。


まわりの世界はゆっくりだが、少しづつ姿を変えている。


先ほどの階層までの世界とは異なり、自分自身の思うような世界を実現させていない。


もっと人が持つ根底にある意思に呼応して世界が変動しているかのようだ。



「えぇ、その通りだよ。」



背後から声がする。


ハイドは声のする方向へ振り向く。






「(この人、どこかで…)」


「私はイヴ、現実世界で君のお仲間に会ったわ。」



声の主は現実世界からエヴァをレヴァリィ世界に入るのを協力してくれたイヴだ。


彼女は現実世界でレヴァリィ世界を構築している「REVERIE」のプログラムに侵入し、より深いプログラムの内部、深層世界に行きついた。


深層世界の構造を理解していた彼女はそのまま階層をさらに下っていき、現在ハイドのいる第5層にまでたどり着いたのだ。



「お仲間って…まさか!?…現実世界にいるみんなは無事なんですか?」



ハイドの問いにイヴは正直に答えた。


暗躍する組織「TZELツェル」の動向、


フランシスコとアイザックの大規模テロ、


そしてオルガの死についても。



「そんな…オルガさんが…」


「彼女のおかげで私は目覚めることができたの、そしてエヴァをレヴァリィ世界に向かわせることもね。」


「じゃ、エヴァさんは今レヴァリィ世界に…?」


「彼女のその後の動向はわからないけど、少なくとも君を待っているのは確かだよ。」



イヴは答える。



だが二人が会話しているこの時、レヴァリィ世界ではアロガンティア大国、西部都市で戦いが起こり、エヴァは現実世界の施設の崩壊により命を落としていることは知る由もなかった。



「ウォルターのやつ、俺の伝言、ホントに伝えたかな…」


「君はなぜ、この世界に?」



イヴはハイドに単刀直入に尋ねる。



まだ会って間もない中でハイドは少し動揺するも答えた。



「なるほど…君はこの深層世界の最奥に眠るであろう“何か”を見つけたいと。

それで、見つけて何をするの…?」


「それは…わからないけど…それがこの深層世界や現実世界、さらにはレヴァリィ世界にも関係がある気がするんだ。」


「へぇー…気がする…その根拠は?」


「え、えっと…死んだはずのウォルターが前の階層で会って…」


「死者の魂に出会ったことが先ほどの“何か”とどんな関係が…」


「あー!もう!そんなの俺だってわからないよ!

とりあえず勘でそうじゃないかなって思ってるだけなんだって!」



ハイドは自身にも確信のないようなことを質問攻めしてくるイヴに言い返す。


イヴはハイドの発言を聞いて、少し表情を柔らかくする。



「ごめんなさい、人間の気持ちを完全に理解するのは難しくって…少々詰めすぎたね。」


「(人間らしいのか、機械らしいのかわからないな…)」



ハイドは素直なイヴに翻弄される。


イヴがハイドに話しだす。



「さっき君が言っていたことだけど…

大方当たっているよ、この階層は意識領域と無意識領域の狭間…

君が第4層で出会ったウォルターとかいう男はおそらくこの階層よりさらに深い場所から登ってきたんだろうね。」


「!?」



ハイドはイヴの発言を聞いて表情を変える。



「も、もしかして!この世界について何か知っているんですか!?」


「えぇ、私はここで生まれたからね。」


「え!?」



ハイドは次々とイヴの口から衝撃的な内容を聞かされる。




アイザック・T.B.Cティナ.ベアトリス.シビル・シュレディンガー。


シュレディンガー家が生んだ怪物。


彼は6つという若さで自身の妹ティナ・Cセルマ・シュレディンガー、


シュレディンガー家当主ブラッドフォード・Cセルマ・シュレディンガーの第二夫人であり自身の母であるベアトレス・ヴァルデンストレーム、


そして第三夫人のシビル・ホワイトフィールドを殺害。



彼らはアイザックが初めて食した人間となった。


そしてアイザックはその騒動により、シュレディンガー家と縁を切られ、企業と政府によって隠された。



だが、彼の功績は政府や企業が決して無視できない程に優れたものだった。


わずか数年であらゆる専門知識を蓄え、遺伝子生物学、行動心理学、量子解析学の分野ではアイザックに秀でる者はいなかった。



そんなアイザックが目をつけたのは、いまだ未知の存在である“量子”だった。



彼は世界中のあらゆる地点で量子の解析を進めた。


そして“ある地点”で彼はこれまでの人類の想像を遙かに超えるものを目にした。




「魂…アイザックがあのとき見つけたのは遙か昔にその場で命を落とした者の魂を見つけたの。」



イヴは答える。



「魂…?」



ハイドはイヴの発言を聞いてこう思った。


現実で魂を目視できるわけがないと。



「えぇ。その場で落とした魂は人類が繁栄するよりもさらに太古の昔、古代人の時代のものだったの。」


「!?」



ハイドはその発言に驚愕しつつ、ある記憶が脳裏に浮かび上がる。



その記憶はかつて古代人として自身が恋をした人物、機械生命体のR-07との記憶だった。



なぜ、その記憶が浮かび上がったのか…



「その魂の主は…」



イヴの次の発言をするまえにハイドは理解した。


なぜ、イヴを始めて見たとき既視感を覚えたのか、


なぜ、彼女とこんな短時間ですぐに馴染めたのか、



それは…



「魂の主はR-07…だろ?」


「あら、もしかして知ってるの?彼女のことを。」



イヴは自身が言う前に発言したハイドに近寄りながら問う。



「あぁ、知ってる。

イヴ、お前の身体に組み込まれた魂がそのR-07のものだろ?」


「…私にR-07の面影を感じたのね。

けど…申し訳ないけれど、私はR-07ではないの、彼女の魂はあくまで私を形成する情報の一部でしかない。」



イヴはアイザックによって生み出された人工機械生命体。


AIで動く機械と違い、人間の感情を完全ではないが理解はできる。


彼女はハイドがR-07に対してどんな感情を抱いていたのかを理解できたのだ。


だから謝った。



「謝る必要はないよ、俺も正直言って…知らないんだ。

彼女のことは。」



ハイドはこれまでに自身の記憶を多く見てきた。


どれも実際に起きた記憶だ。



だが、



それを見るまで知らなかった。


見ても心の底から自分のだと思えなかった。



悲しみも感動も全て記憶を見たとき、共有できた。


だが、どうしても自分自身のものとは実感できなかった。




まるで、壮大な物語の中にいる主人公をゲームとしてプレイヤーが操作しているかのように。



「もしかしたら…」



イヴがつぶやく。



「君も私と同じ存在なのかもね。」


「はっ…まさか。」



と軽く流したハイドだが、ありえない話じゃないと思った。



かつての記憶はたしかに古代人である自分のもの。



だが、あくまで“古代人”としてのだ。



今の自分はレヴァリィ世界を生きた人間。



「俺は…ハイドという人の情報をもった何か…なのかもな。」



ハイドが力ない声でつぶやく。


それを聞いたイヴはハイドをしばらく見つめる。


そしてハイドの腕を引っ張り歩き出す。



「ちょ…!ちょっと…!」


「君は…運命を信じる?」


「え…?意味がわから―」


「私は信じてる、この先に私が生まれてきた意味が、私が私であるための“何か”が待っているはずなの。」


「イヴ…?」


「それが何かはわからないけど…自分にはそう思う魂がある、それを行動に起こす肉体がある。君も…でしょ?」



それを聞いたハイドが立ち止まりイヴを見つめる。


イヴもハイドをしっかりと見つめる。



「たとえ、今の君が誰かの情報を持った何かでも君は君。

自分を見失っては果たせるものも果たせなくなるよ。」



それを聞いたハイドは思い出す。






もっといろんな人に会って聞きたいんです。その人の物語を。




この世界にもね、北側には広大な自然が広がる景色がまだあるんだって…!そこで…ハイドと…その景色を眺めたいんだ…




できれば、私も君に着いていきたかった。けど君が自身の役目を全うするなら、私たちも自身の役目を全うすべく動きます。




すべての世界はひとつに繋がっている…そしてその中心には必ず“何か”がある…それを見つけるまで…どうか待っていてほしい。




自分の夢、愛する者の夢、尊敬する師の想い、自身が仲間に伝えた想い。



どれも自分が自分たらしめるもの…!



互いに交わした夢を果たし、己と皆の想いに答える…!



ハイドは決意する。



「行こう、イヴ。」


「さっきよりもいい目をするようになったね。」



そう言うイヴが見つめるハイドの表情は悩みや不安など一切ない自信に満ちた眼差しをしていた。


ハイドは自身の指についた内在せし指輪エンシャイエンをイヴにはめた後、自らに再びはめる。



最果てに待つ運命と向き合え…!

読んでいただきありがとうございました。


物語は再び深層世界のさらなる深淵へと踏み込んだハイド側の話へ戻り、イヴと出会うハイド。


自身に待ち受ける運命と向き合うべく進みだ物語の行く末とは…!


次回8話をお楽しみに!

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