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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第5章 ~古き終焉と新たな創生~

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6話「心は永遠に」

永遠とわに続くものはあなたと私の心だけ。

~十一日目~


5:20 アロガンティア大国・西部都市:礼拝堂付近



昇る日、陽光が西部都市を照らし、スードを照らす。


ジョージ王は目の前に立つスードを前にして自身が焦がれた“神”と重ねる。



「紛い者如きが!俺の!命を奪えると思うなぁ!!!」



ジョージ王は激しく声を荒げてスードに言い放つ。


そんなジョージ王を見下ろしながらスードは剣を振り下ろす。



しかし、その剣を振り下ろした先にジョージ王は存在していなかった。



「なに!?」


「そう簡単に王の首を…討てると思うな…」



スードの背後でそう言い放つミカエル。


ミカエルはジョージ王を抱え、すぐにその場から去った。



「スードさん!」



バーバラとルークが駆け寄る。



「すまない、ミカエルを取り逃がした…」


「瞬間移動、あの能力がある以上、こちら側に引き留めるのも困難ね…」



スードたちはミカエルがジョージ王を連れ逃げたことで、断念し武器を収める。


バーバラはすぐにその場付近に倒れるジェシカ王女のもとに駆けよる。



「王女!私です…!」


「バー…バラ…ジョージは…?」


「すみません…取り逃がしました…」



ルークがジェシカ王女の胸の傷を止血する。



「王女、それよりあなたの身です。」


「よしなさい…自分でも…怪我の度合いくらい…理解できているわ…」



ジェシカ王女はすでに自分が長くないことを理解していた。



到着するのが遅かったのだ。



「悔やむことはないわ、二人とも…

私の命一つで民を守ることができたのだから…」



ジェシカ王女は礼拝堂に避難している民の命と自分の命を天秤にかけた。


そして自分の命で守れるものを全て守り抜いたのだ。



ジェシカ王女の言葉に涙を流すバーバラ。


バーバラはかつて自身がジェシカ王女の護衛の任務に就いたばかりの日を思い出す。






「本日から、アロガンティア特務機関のアリエル、あなたを護衛するようにとジョージ王から仰せつかりました。」


「よろしくね、アリエル。

ところで…あなたの本当の名を聞いてもいいかしら?」


「王女、我々は自らの名を名乗るようなことは致しません。」



初めての王女の指示に私は組織としての任を遂行すべく、応じることはしなかった。


おそらく王女は私の発言を聞いて不満に思うだろう…


だが、それを聞いた王女は私に笑みを浮かべ答えた。



「あら、残念!でも、いつかは教えてね、あなただけの名前なのよ?」



それを聞いた当時の私は彼女の発言を仮面の下から黙って聞くことしかしなかった。



そして、ある日、私は王の目的を知った。



「この世界の…神になる…?」


「そーらしいよ~…秘宝を全て集めて神になるなんて馬鹿げてるよね~…

秘宝の所有者である僕を組織に入れたのもそれが理由だよね、きっと~…」



それはラファエルことウォルターがふと私に呟いた発言からだった。


彼は他人を常に弄ぶ癖を持つ…


故にその頃はとてもじゃないが、王の目的が本当にそんなものだということが信じられなかった。


だが、日を重ねるごとにその内容に信憑性を感じざるを得なくなっていた。



「王の目的が果たされたら…この世界に二度と平和は起こらない。」



私がアロガンティア大国に忠誠を尽くすのは、世界に平和が訪れる日が必ず来ると信じてきたからだ。



そのために、


家を捨て、


私情を捨て、


己を捨ててきた。



それで世界が平和になれるのならと信じて。






「ん?今日は遅かったのね、アリエル。」


「…バーバラです。」


「?」


「私の名はバーバラ・カヴァーデイルです、王女。」



そう言って私はアリエルとしての仮面を取る。


アロガンティア特務機関に入って初めて、晒した自分の素顔、それを見たジェシカ王女は目を輝かせて私にこう言った。



「なんでそんな素敵な容姿を持っているのに見せなかったのバーバラ!」


「お、王女…!他の者に聞かれてしまいます、もう少しお声を…」


「いいからいいから!ほら、ここに座って!

今夜は二人で食事でもしましょ!」



そういって王女は私を自身の座る席に座らせた。



「い、いけません…!ここは王女の…」


「今夜はアリエルとしてじゃなくて、バーバラとしていろんな話を聞かせてね。」



その日、私はこれまで自分が封じ込めたものを彼女に全て晒した。


自分の名、私情、そして自身の内に秘めた忠誠心を。






「王女、あなたの使命が民を守ることなら…私の使命はあなたをお守りすること…!!」



そう決心したバーバラは懐からあるものを取り出す。



「バーバラ、それは…!?」



バーバラの手に握られているそれは真理石だった。



真理石はアロガンティア特務機関の皆が所持しているわけではない。


特定危険物質に認定されている秘宝の副産物などそもそもレヴァリィ世界に多くは存在していない。


そのため、真理石はアロガンティア大国内でも王に忠誠を持つミカエル、カマエルとその物質をうまく転用することができるとされるラファエルウォルターの三人にのみ所持を許されていた。



そして先刻、ウォルターと合流を果たしたバーバラは彼から真理石を託されていた。



「受け取った時は理解ができなかった。

けど…今なら理解できる…!!」


「!?…ま、まさか…!?…本当にやるつもりかアリエル!!」


「ウリエル、私の名はバーバラよ。

私だけの…本当の名前。」



バーバラは真理石をしっかりと握り、ジェシカ王女の胸に当てる。



すると真理石がまばゆい光と共にバーバラとジェシカ王女を包む。



真理石、


それは触れた者の体力を奪うかわりに周囲の情報を取得できる。


そして、触れた者は取得した情報の形状を変化させて放出することが可能となる。




王女、あなたは私の閉ざした心を開いてくれた…!


一度見失った自分を取り戻させてくれたんです!


今度は私があなたの心に応えます!




二人を包む光が徐々にジェシカ王女のみに集中していく。



「私の心はあなたの中で永遠に…光り続けます…」



今にも消えそうな声でバーバラがジェシカ王女の耳元に囁く。











「はっ!」



目を覚ますジェシカ王女。



「私は…いったい…(あの傷で生きているなんて…)」


「お目覚めですか、王女。」


「ウリエル!」



ルークはジェシカ王女を立たせる。


あたりには礼拝堂から出て、西部都市の兵やスードに先導されながら歩く民の姿があった。



「よかった…民は無事だったのね……

バーバラは?無事なの?」



ルークに問うジェシカ王女。


ルークは静かに視線を後ろの方に向ける。


そこには都市の城壁にもたれかかるバーバラがいた。



バーバラは目を閉じ安らかな表情をしていた。


それを見たジェシカ王女は彼女の様子を察し涙を流しながら、バーバラのもとへ走る。



「そんな…!バーバラどうして!!」


「彼女は最期まであなたを守り続けた。」



ルークがジェシカ王女の後ろに立ち静かに言った。



ジェシカ王女は涙を流しながらバーバラを抱きしめる。


彼女はルークの発言で全て理解したのだ。



[[rb:彼女 > バーバラ]]が自身の魂の情報を自分に与えたことで自分を救ったこと、


ルークがなぜそれを止めようとしなかったのか、



これまでのバーバラとの記憶が脳内に浮かび上がる。



「あなたも…私の守るべき大切な…民だったのに…」



ジェシカ王女は涙を拭きバーバラの肩に自身の衣服をかける。



「このままじゃ冷えるわ、バーバラ。

あなたの心はたしかに受け取ったわ。…絶対に世界を平和にしてみせる。」



ジェシカ王女は静かにバーバラの額に口づけをする。


バーバラの亡骸を抱えるルーク。



「行きましょう、ウリエル。

まだ私たちにはやることが残っているわ。」



ジェシカ王女の後に続くルーク。



「ルークです…王女。」



そう言うとルークは心の内でバーバラに誓う。




お前は自分の命を懸けてでも王女を守りぬいた。


今度は俺が自分の責任と役目を果たす番だ。


見ていてくれ。






~十一日目~


5:20 アロガンティア大国・西部都市:街道付近



同時刻、街道付近ではスライム型の特級テロスを自身の最高出力の一撃で打ち倒したヴァレンティーン。


その間にもエヴァはレオンハルトや聖騎士団のメンバーと協力して敵兵とテロスを倒していく。



「これで大分片付いたな。」


「テギィ、無事か!?」


「は、はい…!

ちょっと無茶しすぎただけで…」



腕に傷を負ったテギィを介抱するシャルケル。



「にしても…」


「あぁ。」



武器を鞘に納めながらネルコフとロイフはヴァレンティーンの方を見つめる。



「(いくら相性が良かったとはいえ、あの威力…いずれ敵に回すとなると…)」



ロイフはヴァレンティーンの本気の一撃を垣間見て自然と身体に力が入る。



「ロイフさん!」



そこにレタが駆け寄る。


レタを西部都市に同行を許可したのはロイフ本人だ。


だが、本来は一般市民。



自身の師であり、部隊の隊長でもあった今は亡きフォートがいたらこうはならなかっただろう。


守るべき対象を戦場に向かわせてしまったことにロイフは一定の不安と後悔を感じていたのだ。



「あいつは立派な志を持っている。

お前ら聖騎士団のようにな。」



ロイフの肩に手を置きながらまるで自身の心のうちを聞いていたかのように言ったのはレオンハルトだ。



「お前が思ってるほどあいつは弱くはねぇ、弱者と未熟者を間違えるな。」


「あぁ、そうだな。」



レオンハルトの言葉を聞いて心の[[rb:靄 > もや]]が取れレタのもとに向かうロイフ。




そのときだった。



「あれは…!!」



少し離れた地点でヴァレンティーンのもとに向かおうとするクリスティーナ大佐が上空を見上げる。


クリスティーナ大佐が見上げたタイミングでロイフや他の者も上空の異変に気が付く。



「これは…!」



上空に見えたのは大量の瓦礫の雨だった。


それがこちらに向かって降り注ごうとしていたのだ。




そして、クリスティーナ大佐やロイフは上空から降り注ぐ瓦礫の雨をこれまでにも見ていた。



「こんなことができるのは…」



「やつしかいない…!!」



激しく周囲に瓦礫の雨が降り注ぐ。



以前、クヴィディタス大国が行った第一次リヴィディン大国侵攻…


そこでクリスティーナ大佐が率いる軍と交戦した聖騎士団第二部隊のメンバーは後から加勢に来た殲越十二戦士と相まみえた。


1人は隊長であるフォートによって倒されたが、もう1人は逃げおおせた。


ロイフ達は見ていた。


その際にその男の能力を…



「ロイフこれは…」


「やつだ、殲越十二戦士だ…!」



土煙が舞う中で、ロイフは目の前を見る。



「!!」



そこには拘束されたレタと殲越十二戦士のアシムスがいた。



「お前…!」


「それ以上近寄るとこの少年の命は助からんぞ。」



瓦礫を振らせてロイフたちを襲ったのはアシムスだった。


彼は重力を操作するパラフィシカー。


リヴィディン大国侵攻にも見たその攻撃を察したロイフたちはなんとか攻撃の回避に成功するも、レタが囚われ、瓦礫により他の者たちとも分断されてしまったのだ。


むやみに行動することができないロイフたちだが、彼らが驚愕して言う理由は他にもあった。



「なんだ…その姿は…」



それはアシムスの容姿だった。


以前までは鮮やかなオレンジ色のした長髪に右半身に覆ったタトゥーが印象を強めていた。



だが、今の彼の姿にはかつての面影がほとんど残されていなかった。


欠損した左腕、皮膚は大きく歪み口元の歯がむき出しとなった右顔、左足もよく見ると引きづって歩いている。


まるで生きた屍のような容姿をしていた。


その姿を見たロイフはアシムスにかつての戦闘能力はないと考えた。



「よせ、もうイラ大国は滅んだ。

お前がいくら足掻こうと無駄だ。」


「黙れ…」



7大国決戦にて、アシムスはそのほかの殲越十二戦士5名と共にヘーロスの封印場所を護衛していた。


だが、そこに現れた二人の人物によってヘーロスは復活を遂げ、戦況が大きくひっくり返った。



ヘーロスの放った奥義“[[rb:虚殲 > きょせん]]”により空間ごと消失されたことで、他のメンバーは一瞬にして消された。



アシムスも例外ではなく“虚殲きょせん”に巻き込まれた。



だが、彼は土壇場に周囲に自身が放てる最大出力の重力波を放ち、僅かに空間の消失を遅らせた。


それにより、一命を取り留めていたのだ。



「大国が滅ぼうと、王が死のうと、俺の役目は変わらない…!!

貴様らの築き守りあげてきたものを壊す…!!!」


「!!(まずい…!こいつ…!)」



ロイフはアシムスの殺気を感じ、自身の命関係なく、レタを殺す気でいることを察した。


ロイフや他の聖騎士団の者たちが行動に出ようとする。



「遅い…!……うっぐはぁ…!!」



アシムスがレタに攻撃を行おうとした時だった。


突如、アシムスが背後から何者かによって胸を剣で貫かれる。



「きっ…貴様…!!」



アシムスが振り向いた先にいたのは…



「俺のレタむすこに近づくな。」



そこに見えたのはリヴィディンの守護者、アローラだった…!!



「アローラさん…!」


「アローラ!?」



ロイフが立ち止まり、思わず声を上げる。



「遅れて済まない、ロイフ。」



7大国決戦が終わり、第一部隊の捜索があった。


しかし、見つかったのはテロスと化したミニーシヤの亡骸だけだったことから、インビディア大国は第一部隊は全滅したと思っていた。


だが、現れたのはリヴィディン大国の守護者。


聖騎士団の士気が上がり出す。



「た、隊長生きておられたんですね。」


「あぁ、数か月ぶりだなシャルケル。」



涙ぐむシャルケル。



「アローラ、お前一体…」


「奇跡だよ、ロイフ。」



アローラはレタやロイフたちに自分がここまで辿ってきた経緯を説明した。



ヘーロスを復活させるべく7大国決戦でアローラとクヴィディタス帝国軍でありながら、アローラに協力をしたラインハルトは殲越十二戦士と交戦した。



そして、アローラは全身の骨を砕かれ、片目を失うほどの重傷を負う。


それでも最後の力を振り絞りヘーロスの復活を見届け息を引き取った。



「!!」



一同、全員が驚愕する。



「待て待て、話はここからだ。」



アローラが死亡したとき、半身を欠損するという重傷を負い、同じく死を待つだけの存在となったラインハルトは、クヴィディタス大国にてジャック王が死する際に見つけた奇跡と破滅の種を発見していた。



奇跡と破滅の種


それは貪欲の華ピーナフラワーから生まれた秘宝の副産物。


取り込んだ者が適合者であれば、欠損した部位を再生させ、食物をとらなくてもしばらく生きていられるほどの養分を得ることができる。



本来、死した者に使用しても意味のないものだが、アローラは死して間もない状態、そして死して失った生命エネルギーを養分から得ることで奇跡的に息を吹き返したのだった。



「これは…ラインハルトくんが紡いでくれた奇跡そのものだ。

俺にはまだやり残していることがあると教えてくれた…」



アローラは息を吹き返した後、ラインハルトの遺体を埋葬し、そこで誓ったことを思い出す。






君の心は俺が引き継いだ…


共に世界を守り抜こう…!!






アローラは自身の手を握り決心する。



「…約束したんだ、最後まで守り抜くと。」


「アローラさん…」



アローラの決意の固い表情を見てレタはつぶやいた。


それを見たアローラはいつもの調子でレタたちに言い放つ。



「まぁ、今はお前たちに会えたことを喜ぶべきだな!」



ロイフはいつものアローラの様子に戻ったのを見て、少し複雑そうな表情を浮かべる。



他のメンバーが喜び合う中、アローラがさりげなくロイフに近づき耳元で囁く。



「俺の部下のことはわかっている。

フォートさんのこともな。」


「!!」


「一人で抱え込むな、昔俺にそう言って騎士団に入れたのはお前だろ?」


「…あぁ、済まない。」



アローラはロイフの肩に手を当てながらレタのもとに向かう。



「みんな怪我は!?」



すると瓦礫を退けたエヴァやレオンハルトたちがやってくる。



「エヴァちゃん無事だったんだね!」



後からサフィーナがエヴァのもとに駆けよる。



「サフィーナ隊長、あなたもここに…」


「第二部隊のみんな…!」



サフィーナがロイフたちと久しぶりの再会を分かち合う。



「よかった…みんな無事で…」



エヴァが安堵している横でウォルターが口を挟む。



「けど、なんか人がたくさんいて鬱陶しいな~…」


「黙れ。」



レオンハルトが言う。


サフィーナはエヴァに気が付くと王宮の屋上にてガブリエルことカロライナ中佐が最期に言った発言を伝える。






「破滅へ向かってもなお星は輝き続ける…眠れる世界を見つめて。」



「秘宝を得ることも敵わず…総督を暗殺する機会も失った…こんな愚かな私をお許しください…

あなたの悲願を叶え、私も見てみたかった…そのひっくり返った世界を……クリス…様…」






「なるほどな。」


「将軍?」



同時刻にて、同様の内容をクリスティーナ大佐から耳にするヴァレンティーン。


ヴァレンティーンは笑みを浮かべながら、クリスティーナ大佐に言った。



「大佐、あんたは大国に帰れ。」


「え、えぇ?急にどうしたんですか?」


「やっと理解した…|アロガンティア特務機関やつら]]の言っていたことが…!

これが…世界の真相だったてわけか…!!」






その頃、サフィーナからの内容を聞いたエヴァの表情が変わった。



「クリス…その名は…!!」



エヴァはそこで気が付いたのだ。


カロライナがここレヴァリィ世界の住人ではなく、現実世界の住人であることに…!!



「ヴァイオレットちゃん!!今の内容をアドルフさんに伝えて!!」


「う、うん…!」



現実世界にいるヴァイオレットがエヴァの指示に従う。



「エヴァちゃん…?」


「ほう…」



突然、この場にいない人物の名を叫ぶエヴァを不思議に思うサフィーナ、そして何かを察したウォルター。



エヴァはカロライナの発言を自身の脳内で反復しながら考える。




ガブリエルは現実世界の住人だった…!


けど、目的は…?なんでクリス・A・ウィザースプーンに従ってるの…?


それに総督暗殺って…やつらは仲間のはずでしょ…!?




エヴァは考え込む。


その様子を少し離れた場所から見つめるレオンハルト。


そして考え込むエヴァのもとに向かうウォルター。



「考え込んでる最中悪いけど、ハイドからの伝言ね~…」



そういうとウォルターは深層世界でハイドに言われたことをエヴァに伝える。






「すべての世界はひとつに繋がっているそしてその中心には必ず“何か”がある…それを見つけるまで…どうか待っていてほしい。」






それを聞いたエヴァは何かを察した表情を浮かべる。


レオンハルトからはエヴァはウォルターにあることを伝えているようだった。


そしてエヴァがレオンハルトの方へ走り出す。



「傭兵さん、あなたにこれを…!」


「!?…これは…」


「10の秘宝のひとつ、[[rb:超越せし指輪 > アポクリプシ]]よ。」


「なに…!?」



レオンハルトは驚愕した。


なぜ、この女は自分にこの秘宝を託すのかが理解できなかったからだ。



だが、エヴァは決意を固めた目でレオンハルトに伝える。



「きみが守って!やるべきその日が来たら!」


「何を…言って…」



エヴァはそのままレオンハルトに超越せし指輪アポクリプシを半ば強引に押し付け、ウォルターのもとに戻る。



「ウォルターも頼んだよ!」


「え~…」



エヴァはやる気のないウォルターを睨みつけながら、懐からもうひとつの秘宝、内在せし指輪エンシャイエンを取り出す。



そのときだった。



「!!」



鼻と口から血を吐き出すエヴァ。



「!?」



突然のエヴァの吐血に驚いた表情をするウォルターだが、次第に理解したような表情をとる。



「なるほど、そいうことね…」


「みんな!!」



するとサフィーナが遠方を指さしながら叫ぶ。


それはジョージ王の残党の兵がこちらに迫ってきていたのだ。



「まだ、撤退していなかったのか!!」


「全員、武器を構えるんだ!」



アローラが指示をする。



他の者たちが敵兵に気を取られている中、ウォルターはエヴァに向けて断絶の籠ディアスタスケージを開く。



「まだ、僕と鬼神以外には知られるわけにはいかないんだろ~…?」


「ご…めん…ありがとう…!」



エヴァは自身の鼻から出た血を拭きながらウォルターに感謝を述べる。


その表情は大量の汗を額から流し、すでに意識を保つのもギリギリの状態だ。






~十一日目~


5:40 アセティア大国・???



地平線から顔をのぞかせる太陽に照らされる静かな波。



美しい自然とどこまでも続く海と砂浜、そこに置かれている箱。



一見どこにでもあるような普通の箱だ。



箱が開き始める。



「っとっと…!」



するとエヴァが姿を現わす。


エヴァはあたりを見渡しながら、近くの大岩にもたれかかる。



「すっごく…いい場所じゃん…」



エヴァは消えそうな声でそうつぶやく。



少し間を空けてエヴァはひとりでに喋り出す。



「もういいの…ヴァイオレットちゃん…」



それは、現実世界にいるヴァイオレットに向けて放った言葉だった。



「いやだ!しっかりして!!エヴァちゃん!!」


「もうダメだ!ここを離れるよ!!」



ヴァイオレットの叫び、イヴリンの叫びがエヴァの脳内に響く。


エヴァはその自身の様態、そして二人の様子からしてすでに察していた。



「私たちが…いるって…バレちゃったんだよね…?」



現実世界にいるヴァイオレットの目の前には…







天井の瓦礫によって身体が潰されかけたエヴァの姿があった。




シュレディンガーエンタープライズ研究施設にて「REVERIEレヴァリィ」のハッキングを行ったエヴァたちは、その場でレヴァリィ世界に入った。



だが、その場所は敵がいた施設だ。


数日もすれば、場所を特定されるのは当然のことだ。


エヴァはレヴァリィ世界に入る前からそれを理解していた。



時間との勝負だと。



「でも…なんとか…間に合ったね…」



ハイドのことを脳裏に浮かべるエヴァ。


エヴァの掌には内在せし指輪エンシャイエンが入っていた。



「…ヴァイオレットちゃん、最期にお願い…」


「最期だなんて言わないで!!」


「アンドリューに…繋いでくれる?…後悔して逝きたくないから…」



エヴァは声を震わせながら言う。


それは必死に涙をこらえ、ヴァイオレットに自分の決意を示す故のものだ。



「まずい…!!」



研究施設がどんどん崩壊していく。


敵は外側から研究施設ごと破壊しているとイヴリンは考えた。



「早くして!このままじゃ二人とも死ぬよ!!」



イヴリンは武器を構え出口を見張りながら、ヴァイオレットに再度叫ぶ。



ヴァイオレットはエヴァを今すぐにでも現実世界に戻し、ここから共に脱出したかった。


だが、それが叶わないことは本人が一番理解している。



なぜなら、プログラム装置の大半も天井の瓦礫によって下敷きになっており、今できることとすればエヴァとの連絡および外部との通信を行うことくらいだった。



自分の力不足に涙するヴァイオレット。


だが、一番泣きたいのはエヴァのはずだ。



そんな彼女が痛みと涙を堪えて自分に頼んでいる。



それに応えなくてどうする…!



ヴァイオレットは涙をぬぐい、決心してアンドリューに繋ぐ。



「さよならは言わないよ、エヴァちゃん…!」


「えへへ…じゃ今度、幽霊になって…脅かしにでも行っちゃおうかな~」



ヴァイオレットは黙ってイヴリンと研究施設を出た。



ヴァイオレットがその場から離れたことを察するとエヴァはアンドリューと繋がるまでの間、呼吸を整える。



「スゥーー…スゥーー」




「ん?どうした?ヴァイオレットか?」



アンドリューの声が聞こえる。


エヴァは震えた声と痛みをぐっとこらえ笑顔で答える。



「残念!私でしたー!」


「っ!…なんだよお前か…んで、用はなんだ?レヴァリィ世界にいるんだろ?ソフィア呼ぼうか?」


「ううん、アンドリューだけに…言いたいことがあるの。」



血が滲んだ腹ではなく、喉を押さえながら震えを無理にでも止めて話すエヴァ。



それはアンドリューに今の状態を悟らせないようにするためだ。






アンドリューにバレたら絶対焦って話遮られちゃうから…






「私たちが初めて会った場所のこと覚えてる?」


「はぁ?なんで今それを」


「どうなの?」


「…そりゃ覚えてるよ、俺が一番…好きな場所だし…」


「それがね、」



エヴァは満面の笑みで涙を流しながら言う。






「目の前に見えるの…!」



エヴァは消えかける意識をなんとか保ち、あたりの景色を目に焼き付ける。



それは、かつて二人が最初にデートとして選んだ海辺だ。



現代にしては珍しく鮮やかな透き通った海、そしてゴミひとつない綺麗な砂浜…



そこで、日が暮れるまで遊んだ思い出、



その記憶をまるでなぞるように目の前には二人の男女が海辺で手をつなぎ歩いている。



「どした?」


「私には…生まれた時から大事なものがなかった…」






生まれつき奇妙な髪色だとされ、両親は私を気味悪がり捨てた。



私が覚えている最初の記憶…



それからは街の路地裏にあるゴミ溜めとの生活。



生きるために必要な食べ物すら腐っているものか泥にまみれたものくらいしかない。



盗みに手を出しちゃう人や人を殺してでも食べものを奪う人もいた。



他の人は生きるのに必死だった。



でも私はみんなほど自分の命が大事じゃなかった。



世の中に必要とされていないんだからダメなときはダメでいいじゃん。



なんでそこまでして生きたいの?



なんでそこまでして死ぬことを拒むの?



苦しいだけなのに…






「幸せになりたいからさ!」




それは初めて、自分に希望が持てた言葉。




「幸せになってどうするの?」


「幸せな瞬間が思い出になって、それが自分の人生になるらしいぜ!」


「なにそれ…」


「ってダニーのやつが語ってたんだ!」




人生に希望なんか持てない私を不器用なりに元気づけようとしてくれたんだよね。


ダニーの言葉だけど。



でも、私はそれで幸せを見つける人生を歩もうと決めたの。






「アンドリューは…幸せ?」


「えっ?…そりゃー…まぁ、エヴァやヘーロスさん達に会えたしな…」



すごく大好きな人と出会い、


すごく素敵な仲間…いや家族を持てた。



「私も幸せだったよ…」


「だった…って……おい…エヴァ、お前まさか…!」




アンドリューの幸せが私の人生そのもの、


そしてこの幸せは絶対に守りたい


そう思ったの。



だから…




「最期まで…アンドリューには幸せであってほしいなって」


「おい、何言ってんだよ…」


「最初はすごくつらかったけど、それを振り払っちゃうくらい今の生活が大好きだった…」


「まて、エヴァ!」


「ソフィアみたいな楽しい友達ができて、オルガさんみたいな綺麗な人とも出会えて、それにかわいい弟みたいなリアムもいたし…

…あーそうそう、ヘーロスさんとアドルフさんもかっこいいよね~

モーリスさんは最初来たときはちょっとビビったけど…」


「やめろ、エヴァ!」


「リアムには…ご飯あげすぎちゃったかなー…自分があの歳の頃は食べ物なんか…全然食べれなかったから…」


「やめろって!!」


「アンドリュー、ダニーとは仲直りしてよね?

じゃないと“こっち”に来ても相手してあげないからー…!」


「おっ…前…!!」



エヴァは自身の口から洩れる血を拭きながら、最期の言葉を振り絞る。



「大好きだよ…アンドリュー、永遠に。」


「エヴァ!!」



通信が途絶える。


とうとう通信機器も瓦礫によって破損した。



「いい…タイミング……だぁ…」



エヴァは我慢していた血を吐き出す。


すでに視界までも朦朧としている中、エヴァは目の前の海辺と砂浜を見つめる。











「(最期くらいは君の好きな景色を見せてあげるさ…いいことに気付かせてくれたからね~…)」



ウォルターは自身の内で呟く。






エヴァが見つめる海辺や砂浜が徐々に消えていく。



まるで、自分の記憶を閉じるかのように。




残ったのはアセティア大国のとある森林地帯。




その大岩にもたれ込むエヴァの表情は幸せに満ちた表情をしながら目を閉じていた。



指に内在せし指輪エンシャイエンをはめて。





幸せな最期…

読んでいただきありがとうございました。

バーバラとジェシカ王女、エヴァとアンドリュー、それぞれの内に込められた気持ち。

その気持ちは彼らにとって心に残り続けるものとなる。


みなさんにも永遠に続く心を分かち合う人と出会いますように。


次回7話をお楽しみに!

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