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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第5章 ~古き終焉と新たな創生~

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4話「天使たちの誓い」

星の輝きを夢見る。


それが一夜の儚い幻想であろうとも。

~十一日目~


1:10 アロガンティア大国・西部都市:正門付近



「夜明けを見ずして散ってもらおう…」



ジョージ王の合図とともに兵が一斉に動き出す。



「まずい…!」



アリエルは剣を抜き、兵と戦い始める。


スードも正門付近に待機していた味方兵に合図し応戦する。


しかし、前衛の兵では敵兵を抑えきれず、次々と都市内部に敵兵がなだれ込む。



ジョージ王とミカエルも都市に入っていく。



「スード!私たちのことはいい!

王女のもとに彼らを行かせてはならない!!」



ジョージ王たちが都市内部に入ったことを確認したアリエルがスードに声をかけるが…



「バーバラ!」



スードが剣を投げ、アリエルの背後を襲おうとしたテロスを倒す。



「…!!…全兵、携帯型射出装置の使用を許可する!!

テロスを都市に入れるな!!」


「これは、一体!?」



アリエルたち西部都市の兵は腰に身に着けた装置を起動すると、駆動音とともに迫りくる2級テロスの軍勢に巻き付けて拘束や、攻撃を繰り出していく。



ジェシカ王女自身が兵器や軍事面などの統制を担っていたこともあり、西部都市はアロガンティア大国の中でも軍事兵器が発展していた。


そしてこの、携帯型射出装置はジェシカ王女が考案した武器の中でも最も汎用性が高い兵器として西部都市では知られていた。


腰に装着した装置から特殊な加工を施したロープを射出し、敵を拘束したり、引き寄せたり、建造物に放ち移動することなど幅広い用途を持つこの装置を西部都市の全兵に装備させていたのだ。



テロスの大群を次々と倒していく西部都市の兵。



アリエルも自身の剣に内蔵された神秘の欠片から炎の情報を放ちながら応戦するが、依然と敵兵は都市内へ押し寄せてくる。



「このままじゃ都市にいる中衛部隊も全滅する…!」



スードは敵を切り伏せながら都市の方を見つめる。






~十一日目~


1:20 アロガンティア大国・西部都市:地下水道



「うーん…さっきのイデリスの言ってたこと…」



エヴァはアリエルの指示のもと地下水道付近にて待機している中で先ほど、王宮の地下でジェシカ王女に見せられたもののことを思い出す。






「これは…まさか……真理石…!?」


「そうよ、これが…あなたの力になってくれるはずよ。」


「これが私の役に…ですか…?」


「この真理石には、イデリスの記憶情報が内蔵されているの。」


「え!?」



エヴァは驚愕する。


真理石が情報を取得することは知っていたが、まさか記憶などといったものまでを情報として取得できるとは思わなかったからだ。


ジェシカ王女はエヴァをその場に残し王宮へ戻る。



「あのー…」



エヴァが真理石に声をかける。



「まさか、これを使うことになるとは…」


「わかっていたんですか?」



するとイデリスの記憶が答える。




アロガンティア特務機関が私を狙っていることは想定内でした。


ですから私は自身の一部の記憶をこの真理石に納め、信頼できるジェシカ王女に渡したのです。


そして、あなたは王女によって招かれたのでしょう、だとすれば私に聞きたいことがあるということですね?




「あ、はい!」



エヴァはイデリスの記憶に仲間であるハイドやリベル、アダムと名乗る少年までもが[[rb:内在せし指輪 > エンシャイエン]]によって姿を消したことを伝える。


そして、その現象の理由と救出する方法を聞いた。



内在せし指輪エンシャイエンは深層世界に入るためのカギです。

本来であれば、使用者は肉体をこの世界においていき、精神いわゆる魂のみを深層世界へと向かわせる。」


「やっぱり…魂を保存する方法に内在せし指輪エンシャイエンは繋がっている…!!」


「ですが、彼らはこれまでにない現象ですね、少なくとも私の知る記憶では。」



エヴァは次にグリーン・ウィザースプーンについて質問した。



「なぜ、彼の名を?」


「彼とハイド君には関係があるように思えるんです。」


「ハイド…といいましたか?」


「はい。」


「…なるほど、グリーン・ウィザースプーンはそのような…」



意味深な発言をするイデリス。


それを聞いたエヴァは少し強めに問う。



「知っているんですね?ハイドくんを。」


「彼らは…古代人、そしてグリーン・ウィザースプーンは一度そこで…」



その次の発言を聞いたエヴァはすぐにヴァイオレットに伝える。



「ありがとうございます。イデリスさん。」


「お言葉ですが、もし本当にグリーン・ウィザースプーンが深層世界でハイドとリベル二人を手中に収めているのなら…

残念ですが、世界はまもなく破滅へと向かうでしょう。」


「それを防ぐのが私たちですよ。」



そう言ってエヴァはその場を去る。






「この音は…」



イデリスの記憶との対話を思い返していた頃、地上の地響きを聞いてエヴァは戦いが始まったことを理解した。



「この都市は陥落する、このままではな。」


「っ!?」



エヴァが声のする方向を振り向く。


暗い地下水道をゆっくり歩み、エヴァの方へ近づいてくるのはウリエルだった。



「やっぱり…アロガンティア特務機関、来たわね。」



臨戦態勢に入るエヴァを見たウリエルは自身の仮面を外す。



「俺たちの仕事は10の秘宝を集め、王に謙譲すること…」


「!?」



ウリエルは外した仮面をその場に落として、話を続ける。




だが…俺は知った…王が、王女が秘宝によって堕落し秘宝の力に呑まれることを。


俺はあの人を助けたかった…


彼女は…自身の姉が堕落していく姿など見たくなかったはずなのに…


俺は彼女が苦しむ姿なんて見たくなかった…




「君、もしかして…」



エヴァがウリエルの発言を聞いて、何かを察する。



「俺の目的は秘宝を破壊することだ。」


「!!!」



エヴァはウリエルの本当の目的を知り驚愕する。


そして、それと同時にこの青年が想い焦がれている人物が誰なのか、それを理解した。



「ウリエル…あなたは…キャシィ…ジュディ王女の妹さんに恋をしていたのね。」


「もうウリエルじゃない…ルークだ。

俺の名はルーク・レイヴンズクロフトだ。」






~十一日目~


2:00 アロガンティア大国・西部都市:中央広場



「戦いが開始して1時間といったところか。」


「はい、ジョージ王。」



ジョージ王の横で答えるミカエル。


戦いが始まってから1時間が経過し、西部都市の兵は数を減らされていき、すでに中衛部隊までほぼ壊滅状態に追い込んでいた。



「王、おそらく王女は王宮にはいないかと。」


「あぁ、そんなことわかっている。

あの女がここまで準備していた戦いだ、わざわざ王宮で待ち構える馬鹿な真似はしないだろう。」



ジョージ王は王宮の奥に佇む礼拝堂を見つめる。



「じきに“あれ”がこの都市に来る…ミカエル、いつでも退避できるようにしておけ。」


「承知。」






~十一日目~


2:00 アロガンティア大国・西部都市:王宮屋上付近



「はぁ…はぁ…」


「得意の弓はもう使いものにならないな。」



壊れた弓を持ちながら、腕の傷を押さえるサフィーナ。


それを冷たい視線で見つめるのはガブリエルだ。



「あなたは…一体何が目的なの!?…ジョージ王とはまた違った…」


「じきに世界は破滅へと向かう…その前に…私は…」



ガブリエルが発言を詰まらせているその隙に突如、サフィーナの背後からガブリエルに向かって弓矢が飛んでくる。


その攻撃をなんとか剣で弾くガブリエルだが、次の瞬間死角から何者かの攻撃で屋上から投げ出される。



「うっ…!」



ガブリエルは短剣に内蔵している神秘の欠片から岩の情報を放出することで空中に足場を作り難を逃れる。



ガブリエルを攻撃した人物は負傷したサフィーナを起こそうとするが、その人物の服装を見て、サフィーナは表情を変え、腕を振りほどく。



「お前は…!!」


「安心して、私たちは敵対するつもりはないわ。」



そう言ってサフィーナの背後から声をかけたのは、クリスティーナ大佐だ。


サフィーナを起こそうとしたのはクリスティーナ大佐とともに西部都市に潜伏していたアルフォンス中佐だったのだ。



「クヴィディタス帝国軍の人間に助けられる筋合いはない…」



サフィーナは腕を止血しながらクリスティーナ大佐にそう言い放つ。



「私たちも組織には属していても、すでに軍令違反として大国から追われる身よ。」


「…それを信用しろと?」



二人の会話中にアルフォンス中佐がクリスティーナ大佐に合図する。



「えぇ、そうね。信用はしなくていいわ。

でもお互い敵は同じ…でしょ?」



そうクリスティーナ大佐が言う目の前には先ほど屋上から空中に投げ出されたガブリエルが立っていた。



「大佐、そこを退いてくれませんか。」



ガブリエルはそう言うと自身の仮面を外す。



「!?」



その姿を見たクリスティーナ大佐とアルフォンス中佐は驚愕する。



「うちにアロガンティア大国のスパイがいると予想はしていたけど…

まさか…あなただったなんてね、カロライナ中佐。」



二人は武器を構える。


サフィーナも疑心暗鬼ながらもクリスティーナ大佐に並び、ガブリエルに再び攻撃を仕掛ける。






~十一日目~


3:35 アロガンティア大国・西部都市:礼拝堂近辺



西部都市のなかでもかなり奥に位置する礼拝堂、そこでジェシカ王女は数十名の兵とともに民を礼拝堂に誘導する。



「女性と子供を優先に、力ある者は怪我人に手を貸してあげてください!」


「王女、西部都市の民を大方礼拝堂に避難させました。」


「ありがとう、あなた達はここを死守して、もう都市の半分近くがジョージの兵が侵攻してる。

私は中央広場で…」


「その必要はない。」


「!!」



ジェシカ王女のもとに現れるジョージ王。


礼拝堂を守護する兵では守り切れないほどの兵を引き連れたジョージ王は焦るジェシカ王女を見て笑みを浮かべながら、発言する。



「そう緊迫するな、ジェシカ。…民の命までは奪わんさ…“俺”はな。」


「なにを…」


「王女!あれを!!」



すると、礼拝堂の塔で見張りをしていた兵が正門の方向を指さす。



「そ、そんな…あれは…!!」


「俺たちの軍も“あれ”を前にすればかなりの被害が出る…

貴様の命をもらった後、早々に撤退せねばな…」



正門付近に現れたのは正門全体を飲み込むほど巨大な液状の塊をした何かだった。


だが、その姿を見てジェシカ王女は口に出す。



「特級テロス!!」



まるでスライムのように不定形の形状で都市を徐々に飲み込んでいく特級テロス。


かつて、アロガンティア大国の都市1つを滅ぼしたスライム型の特級テロス。


不定形な姿ゆえにどんなものも飲み込んでいき、物理攻撃も意味をなさない。


まさに手の打ちようがない存在。



「(これじゃ、バーバラや聖騎士団の方も…)」






~十一日目~


3:35 アロガンティア大国・西部都市:中央広場



「あれは…一体…!?」


「特級テロスだ、以前お前の仲間が対峙したゴーレム型よりも厄介だぞ。」


「急ぐよ!ルーク!」


「わかっている。」



敵兵を倒しながら中央広場を駆けるのは、エヴァとウリエルことルーク・レイヴンズクロフトだ。






二人は地下水道にて会話を交えた。


そこでルークの目的がグラ大国にいたキャシィを救い出すことだと判明した。


そのために秘宝の所有者にして秘宝によって堕落した姉のジュディ王女を救い、キャシィかのじょの苦しみと、秘宝による負の連鎖を砕こうと試みていたのだ。



ルークはエヴァに自身の目的を打ち明け、仲間になることを申し出た。


そしてルークのこれまでの覚悟と想いを感じたエヴァはルークにある提案をした。



「この戦いや…今の状況が落ち着いたらインビディア大国に行って、自分の想いを彼女にちゃんと伝えて。」


「!?…何を言って…グラ大国は滅んだ、彼女も…」


「王女は自分の責務を果たすべく大国に留まり続けたの、民を守ってね。」


「!!…まさか…生きているのか…キャシィは…」



エヴァはその問いに答えるかのようにウィンクをして、ルークの肩を叩く。



「だから行こ、国を救って彼女のもとに。」






~十一日目~


3:55 アロガンティア大国・西部都市:王宮屋上付近



一方、共通の敵を前に一時的に協力関係となったサフィーナとクリスティーナ大佐たちはガブリエルことカロライナ・レインウォーターとの戦いに決着がつく頃合いだった。



「なんとか…作戦通りに…」



肩に受けた傷を押さえながら座り込むクリスティーナ大佐。


彼女の目の前にはカロライナが自身に刃を向ける状況の中、瀕死のアルフォンス中佐が剣を素手で握ることで動きを封じ、その背後からサフィーナがカロライナに刃を突き刺している様子が映っていた。



「うっ…!」



血を吐き、その場に倒れるカロライナ。


それを見届けたアルフォンス中佐の瞳から生気が失われる。


腹の横に穴が開いた状態でもなんとか意識を保ち、上司を守り抜いたのだ。



サフィーナはクリスティーナ大佐に肩を貸し立ち上がらせる。



「ありがとう…あなた達がいなかったら…」


「礼は私じゃなくて、アルフォンス中佐に言って…」



サフィーナはクリスティーナ大佐を屋上の壁側に寄りかからせ、まだ息のあるカロライナのもとに向かう。



「まずい…もう特級テロスがあんなところまで…」



サフィーナはスライム型の特級テロスが徐々にだが都市を侵食していっていることに焦りを見せる。



「言ったでしょ…?…世界は破滅へと向かうと…」



瀕死の状態の中でサフィーナにそう言い放つカロライナ。



「教えなさい、あなたは一体何者?

クヴィディタス帝国軍やアロガンティア特務機関の人間でもないでしょ?」



サフィーナがカロライナに剣を向ける。



「破滅へ向かってもなお星々は輝き続ける…眠れる世界を見つめて。」


「(眠れる世界…)」


「答えなさい!」



カロライナの消えゆく声に耳を傾け内でつぶやくクリスティーナ大佐の横でサフィーナは声を荒げる。




秘宝を得ることも叶わず…


総督を暗殺する機会も失った…


こんな愚かな私をお許しください…


あなたの悲願を叶え、私も見てみたかった…そのひっくり返った世界を…


……クリス…様…




カロライナは夜空に浮かぶ星々を見つめながら息を引き取った。






~十一日目~


4:30 アロガンティア大国・西部都市:街道付近



次々と街や兵を飲み込んでいくスライム型の特級テロス。


特級テロスのいる場所までたどり着いたエヴァとルークだったが、予想以上に巨大化していく特級テロスにこのままでは為す術がなかった。



「どんどん大きくなっていく…」


「おそらく取り込んだ兵から養分を吸い取っているんだろう。」


「ッ!…ルーク!まだなの!?」


「まだだ、もう少し待つんだ。」



すると特級テロスの真下には負傷した兵を運ぶ二人の影が見える。



「あれは…!」


「アリエル!」



スードとバーバラは特級テロスに飲み込まれる寸前だ。



「ルーク!!」


「ッ…!」



しびれを切らしたエヴァはスードたちを助けるべく走り出す。



「よせ、エヴァ!」



ルークがエヴァを止めようとするが、エヴァはスードたちの方へ向かっていく。



「お待たせ~…」



するとルークの背後から声が聞こえる。



「遅いぞ…!…ラファエル!!」



背後にある民家の屋根からルークを見下ろしていたのはウォルターだった…!



「その名は止めてくれないかな~…僕の名前はウォルターだよ?」



死神、再び…!

読んでいただきありがとうございました。

この回でアロガンティア特務機関のメンバーそれぞれの行動に注目されましたね!


実のところアロガンティア特務機関はこの作品のかなり初期の構想で設定を考えていたキャラクターたちです。

個人的には組織での偽名(天使に因んだ名前)と本名が別にあるので読者を混乱させてしまうのではないかと思っていましたが、思い切ってどちらも作中に盛り込むことに決めました。

(すでに混乱状態となっている読者のみなさま申し訳ありません…!)


次回5話をお楽しみに!

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