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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第5章 ~古き終焉と新たな創生~

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2話「秘宝が残したもの」

神に仕えし天使は…


その天命にて生を全うする。

~九日目~


12:00 アロガンティア大国・国境付近



「すみません、少し止まってくれませんか?」



何かに気が付いたスードはエヴァに声をかける。



「どうしたんですか、スードさん。」



エヴァとスード、サフィーナの三人がインビディア大国から出発して約2時間。


アロガンティア大国の国境に入った三人は馬を走らせてしばらくした後、スードはテロスの死骸の跡を目撃する。



「これは…」



ただのテロスの死骸であれば、ここアロガンティア大国にとって別に珍しいことではない。


だが、スードが気になったのは…



「これは…僕ら仲間がここにいた証だ。」



スードは地面に刺さったダガーと折れた剣を指さす。


スードとサフィーナはその武器の特徴的な金属の輝きを見て理解した。



地面に刺されたのは聖騎士団のみが所有することを許される武器、聖装備だ。


よく目を凝らすとあたりには聖装備の甲冑部分が落ちていた。


粉々になった甲冑部分に僅かに見える聖騎士団の騎士団章を見てサフィーナが呟いた。



「ここで、命を落としたのね…第一部隊は。」



聖騎士団は各部隊で騎士団章のカラーが異なる。


第一部隊の騎士団章はブルー。



7大国決戦が終わりを迎え、クヴィディタス大国ではテロスの死体と化したミニーシヤの亡骸を見つけていた聖騎士団はすでに第一部隊の者はアローラを含め、すでに帰らぬ者となっていることは想像できていた。



だが、



「彼らに敬意を。」



スードが突き刺さった二つの聖装備の前でサフィーナと共に敬礼する。



改めて仲間の死を痛感した二人は心に刻んだ。


仲間の痛みと覚悟を。



「…。」



エヴァはレヴァリィ世界に転送された際にヴァイオレットから聞いた提案を思い出す。






~五日目~


23:00 クヴィディタス大国・古城跡付近



「考えって何?ヴァイオレットちゃん。」


「リアムの話によるとアロガンティア大国に意思の疎通が可能な特級テロスがいるみたいなんです。」


「え!?そんなことリアムから聞いてないんだけど…!」



エヴァが古城に響く自身の声を聞いて思わず口を手で塞ぐ。


ヴァイオレットが話を続ける。




イデリスそいつはどうやら最初のパラフィシカーであるらしく、うちらが想像しているはるか昔からこの世界に生きているみたいなんです。」


「それだけじゃない、彼がリアムに伝えた名…グリーン・ウィザースプーン。」




「ウィザースプーン…」



エヴァはその姓を聞き、自身の口からも呟いた。



「えぇ、そうです。その名は現実世界でよく知られている名門の一族。」


イデリスそいつは彼ら一族のことを何か知っている…ということ?」


「はい。」


「なんでレヴァリィ世界の住人が現実世界の一族のことなんか知ってんのよ…」



エヴァが困惑し頭を抱える。



「うち、エヴァちゃんがレヴァリィ世界に転送されている間、調べたんです。

…ウィザースプーン一族のこと。」



そう言ってヴァイオレットがエヴァの脳内に映像を見せる。


これもソフィアやリアムが現実世界で作製したプログラムの恩恵だ。



ヴァイオレットがエヴァに送った映像には、現実世界でアドルフと戦闘を行っていたウィリアム・Gグリーン・ウィザースプーン、そして研究施設にてエヴァやイヴリンと戦ったアルハンブラ姉妹の映像だ。




「ウィザースプーン家とアルハンブラ家は親戚の関係にありました。

それだけじゃない…シュレディンガー家やハイデンライヒ家とも関係がある…これらの家系全てでウィザースプーン一族だったんです。」



「つまり、今回現実世界で私たちを襲撃したあいつらは仲間同士…ってこと?」


「はい。以前、H.U.N.T.E.Rの人がエヴァちゃんやアンドリューくんに教えてくれたT.Z.E.Lツェルという組織…おそらく彼らはその一員…

そしてウィザースプーン一族が世界の根幹に何かしら関与していると思って間違いないと思います。」


「ウィザースプーン…まるで私たちが生まれるずっと前から生きていた存在みた…い…」



エヴァは言葉を詰まらせた。


その理由は以前、7大国決戦でクリストファーの肉体に憑依した何者か…


その人物との戦いを思い出していた。



「ど、どうしたんですか?」


「もし…魂を保存できる方法…あるいはそんな能力があるのだとしたら…?」


「はい…?」


クリストファーあいつはハイドくんをなぜか知っていた。

そしてクリストファーあいつの身体には別の何かが憑依しているとアドルフさんは言ってた…!


もしそれがグリーン・ウィザースプーンだとしたら…?」


「!!」



ヴァイオレットとエヴァの二人は声をそろえて発言する。




「グリーン・ウィザースプーンとハイド(くん)には関係がある…!!」



二人はハイドとグリーンには自分たちの知らない何かしらの関係性があると予測した。



エヴァはアロガンティア大国にてイデリスと接触し、グリーン・ウィザースプーンについての情報を聞き出すことで、ハイドを助ける手がかりを見つけようと考えたのだ。



「でも、それには一人じゃ危険すぎますよ…」


「うん、だからとりあえず協力者を探しにインビディア大国に向かうよ。」






~九日目~


12:00 アロガンティア大国・国境付近



「本当に…ごめんなさい…」



エヴァが二人の敬礼する姿を見て、謝罪の言葉を漏らす。



「エヴァちゃんが謝ることないよ。」


「あぁ、僕たちは騎士団に選ばれた人間だ。」



スードは墓に刺さったロクアのダガー、そしてサムエルの剣を抜く。



「第一部隊の任務はハイド君を守ること。そして彼らはやり遂げたんだ。」


「だから、私たちはこうして今もここにいて…仲間を想うことができる。」



二人はロクアとサムエルの武器を身に着け、馬に乗る。



「すみません、少々感傷に浸ってしまって。

…行きましょう。」


「はい…!」



三人は再びアロガンティアの草原を駆ける。






~九日目~


12:00 アロガンティア大国・イデリスの住処



アイヨを取り返すべくイデリスの住処に現れたミカエル。


イデリスはミカエルに殺気を解き放つ。



「あなたの能力は以前見せてもらいました。」




”事象反転”


それがイデリスの能力。



自身が展開する結界内のあらゆるものを本来の働きとは逆の働きにできる。



死にゆく生物であれば、生に向かい…


前に進めば、後ろへ進む…



「だから…私の結界内に入り込まないわけですね。」


「ここに来る前に時間はいくらでもあった。」



ミカエルはイデリスの能力適応範囲の外で武器を構える。



「結果内に入ればこちらが不利…ではどうするか?」


「!!」



ミカエルの姿が一瞬にして消える。




ミカエルの能力は”瞬間移動”


目視できる地点に予備動作なしに距離を移動できる。


そしてこの能力はイデリスにも知られていない…!




イデリスの背後に現れるミカエル。



「自分の利点を生かして攻める…」



ミカエルの剣がイデリスの腕を斬りつける。


イデリスの腕が宙に舞う。



「っ!」



イデリスはミカエルに意識を向けるも、すでにその場にはミカエルは姿を消していた。



「そこにはいない。」


「!?」



少し離れた場所に移動したミカエル。


そこからダガーを槍のように投げるミカエル。



「うっ…!」



肩に突き刺さり、イデリスはバランスを崩す。



「仕上げだ。」



再び姿を消し、イデリスの懐に姿を現すミカエル。


イデリスの喉元に剣が迫る。



「…甘い。」


「…!!」



ミカエルの剣は空を斬る。


状況に理解が追い付かないミカエルの背後にイデリスが現れる。



「君が油断するタイミングを見逃すとでも?」


「なるほど…事象の反転とはこんなことも可能とは。」



そう言うとミカエルは瞬間移動し、イデリスの結界外へと移動する。


イデリスは自身の切り落とされた腕を拾い、再び切断部に着けると徐々に腕が身体に馴染んでいく。



「…!!(能力によって“切断された”という事象を反転させたのか?)」



ミカエルはイデリスの再生した腕を見て考察した。


そして自身がイデリスの喉元に剣を向けた際も能力によって向きを反転されたことに気が付く。



「不意をつけたつもりでしたが…やはり一筋縄ではいかないですね。」


「パラフィシカーの能力は能力者の解釈次第で可能性を広げられる…

生憎、私は君たちより多くの時間を生きてきた。」


「フフッ…その長い時を生きてきたあなたが、ここで命を落とすことになるのはさぞかしこちらも心が痛みますね。」



ミカエルは仮面を取り、首を鳴らす。



「…想ってもいないことは口に出さない方が身のためですよ、アロガンティア特務機関。」


「テロスの分際で…よくほざく…」




とはいえ…


イデリスかれの能力は概念が絡む非常に厄介な力だ。


応用も利く、先ほどのように迂闊に近づけば、次は確実に致命傷を負うだろう。


そんな超越者を果たしてこの私一人で死に追いやれるだろうか…






瞬間移動…


ミカエルかれの能力はそれで間違いないだろう。


移動範囲は恐らく目視できる地点、そしてあの手の能力は予備動作が存在しない。


故に不意をつかれた。






二人が互いの能力を考察し分析する。






結界内ではどうあがいても事象を反転させられる。


そして先ほどの発言から予測するにイデリスかれはさらに能力を応用させた切り札を隠し持っているに違いない。


だが、結界はせいぜい拡張しても20mが限界だろう。


そして先ほどの不意をついた際に理解した…



ダメージを負った時と能力行使した際に僅かに結界に綻びが生じることを…!






移動とはいえ、リアム・リシャールのように実際に移動しているわけではない。


ミカエルかれの場合は目視した瞬間に自身の存在そのものを一時的に消し、目視した地点に存在させる。


かなり厄介だが、目視した場所さえ注意すれば私の結界内で対処可能だ。


問題なのは、その能力を応用できるのかということ。


可能であれば、ミカエルかれの解釈次第でいくらでも発展ができる…






「互いに厄介…」



先に口を開いたのはミカエルの方だ。



「そんな中で自分の能力を出し惜しみする理由が見当たらないですね。」


「!!」



ミカエルが言い終えると先ほどイデリスの肩に突き刺さったダガーがいつの間にかイデリスの腹に突き刺さっていた。



「これは…!!(私が先ほど肩から抜いたはず…)」


「予想通り…」



腹に攻撃を受けたことでイデリスの結界が弱まったことを察したミカエルは自身の能力で接近する。



「(やはり、自身が触れた物体にも能力の適応が可能…!)」



イデリスはダガーを腹から抜き砕くとミカエルに集中する。



「(先手を打たれたが、彼はすでに私の結界内…!…これ以上好き勝手にはさせない…!!)」



イデリスがミカエルに向けて能力を使用する。



「なっ!?」



しかし、目の前に迫りくるミカエルには変化がなかった。



ミカエルにはイデリスの能力が効いていなかったのだ。



「(私の能力の利点は瞬時に移動できることじゃない…一時的にだが存在を消せることこそが私の能力の利点…!)」


「まさか…!?」



ミカエルは目視した地点に存在を現わすことができる。


その能力を応用させ、ミカエルは自身が今いる地点を目視することでほんの僅かな間だけ、存在を消し再びその場に姿を現していた…!



イデリスの能力使用のタイミングを見計らい、その瞬間だけ結果内から存在を消す…


そしてイデリスが能力使用後に再び姿を現わす。


これを絶え間なく瞬間的に行うことでイデリスからはただこちらに迫ってきているだけに見えていたのだ…!!



「誤算…私の能力に対する解釈を測り違いましたね。」



ミカエルの剣がイデリスの胸を貫く…!



「ッぐ…!!」



負傷したことでイデリスの結界が解除される。


地べたに倒れるイデリスを見下ろしながらミカエルが言い放つ。



「最初からあなたは結界を最大範囲まで広げ無理にでも私との距離をとるべきだった。」



ミカエルが折れたダガーを拾う。



「物質に能力を適応できるのは一度限り…

ですが、ここまで優位に運べるとは正直思いもしなかった…感謝しますよ、イデリス殿。」


「……私もですよ…」



負傷したイデリスがミカエルの脚を掴む。



「足掻きが過ぎますね。……ッ!?」


「本当に…そうでしょうか…?」



突如、ミカエルが自身の異変に気が付く。



眼や鼻などの全身の穴という穴から血が噴き出る。


それだけじゃない、血が噴き出たことで体内の酸素濃度が低下し、意識まで朦朧とする。


そして、自身の肉体が徐々にだが、若々しくなっていく。



「これは…まさか…!!…時間の反転…!!!」


「時間も事象…結界はあなたのみを包んだ…このまま時間に抗い続けるといい…」



ミカエルはすぐに剣を抜き、脚を掴むイデリスの腕を切り離そうと試みる。



そのときだった。



天井が、壁が徐々に崩壊していく。



「…!!」


「…あなたの言う通り…私は結界を最大範囲にまで広げるべきだった…だがそれをしなかったのには訳がある…!」


「これは…!!」



壁や天井の崩壊…


それがただの崩壊でないことに気が付くミカエル。



「あらかじめ…この住処を…覆うほどの…結界を展開させていたのか…!!」


「御名答。」






ということは…


この住処自体は私がここで戦う前からイデリスかれの能力によって反転させられていたことになる…!


つまり、


すでに住処など存在していない…!!






「あなただけじゃないんですよ…準備をしていたのは…!」


「がはぁっ!!」




まずい…!


時間の反転で体内の血液が逆流を…!!


それだけじゃない…!


肉体が若返っていく…


下手をすれば私の存在自体を消されかねない…


先のように能力で存在を一時的に消しても、崩壊する瓦礫には巻き込まれてしまう…!


時間が反転したこの結界から出たくても、この結界は私の身体のみを纏っている…


おそらく別地点に移動しても逃れられない…!!




徐々に反転から解放された住処の瓦礫は時間に抗うことなく崩壊していく。


消えゆく意識の中でイデリスはレタとアイヨを想う。






彼らはこの世界の希望…


決して消えてはならない光


かつて選択を誤った私にできることは…


彼らを支える柱となること。



どうか…


どうか、その光で世界を灯し続けてほしい。



秘宝が残した奇跡たちよ…






~九日目~


12:50 アロガンティア大国・イデリスの住処




崩壊したイデリスの住処。


ひとつの街程の規模を誇る住処がイデリスの結界を開放したことで瓦礫が注ぎ込まれる。



そんな中、瓦礫が動き出す。



「…やって…くれたな…イデリス殿…」



瓦礫をどかしたのはミカエルだった。


服もはだけ、全身血まみれの状態だ。



彼は時間の反転によって死ぬ間際で、自身の能力をさらに応用させた。




瞬間移動、それを自身や触れた物体にではなく…


自身の細胞ひとつひとつに適応させたのだ。




それにより、逆流する血液粒子全てを瞬間移動することで平常時と同じような状態に振る舞う。


これにより時間の反転で起きた血液の逆流を克服。


そして、瓦礫が降り注ぐよりも前に別の地点に移動することで致命傷を避けたのだ。



あとはイデリスが息絶えるまで、凌ぐことで時間の反転を付与された結界は消滅する。


時間の反転による若返りよりもイデリスの命が尽きるのが遅ければ、今の自分は存在していなかっただろうとミカエルは身に染みて思う。



「助かるとは思ってはいなかったが…即興にしては上出来だろう。」



よろめきながらその場を後にするミカエル。



「さらば、古き賢者よ。」



原初の超越者、ここに眠る…

読んでいただきありがとうございました。

5章の序盤から早速、特級テロスとミカエルの戦いが繰り広げられましたね!

今回の章ではアロガンティア大国を舞台として流浪人や聖騎士団、アロガンティア特務機関の動向に注目してみてください!


次回3話をお楽しみに!

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