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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第4章 ~交錯する理想と現実~

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12話「生ける生者」

何も見えない、何も聞こえない…


その中に宿るひとつの記憶…


それを頼りに私は向かい続ける。


電子の波に抗い、彼岸で待つ君のため。

~五日目~


21:45 ストレンジャー拠点内部



「うっ…ううっ…!」


「オルガ……あんなに…言ったのに…!!」



時刻は遡り、ストレンジャー拠点の内部では、機械工場からの映像でオルガの首を発見したアドルフを見たことで、リアムとソフィアはオルガの死を理解する。


泣き続けるリアム、手から血が滲み出るほど強い感情にかられるソフィア。



「…?…これは…ソフィアさん!…ちょっとこれ…」



ヴァイオレットは機械工場から発信されているデータをソフィアたちに共有する。



「これは…映像チップの…」



映像チップ、それはリアムの開発したB.H技術ブリーチホライゾンオペレーションによって利用できるアイテムのひとつ。


B.H技術は短時間であれば、サイバーインプラントを施していない者にも対象のあらゆる事象を識別することができるプログラムだ。



映像チップは本来、カメラや機材の見た映像を遠隔で送信するために用いるアイテム。


しかしB.H技術を用いることで、対象の生体組織と映像チップの機械情報を識別し、体内に取り込んだ映像チップは生体情報を持つ生物をカメラや機材と同様の機材と認識する。


それにより脳内データ、いわゆる本人の知覚情報を映像に転用できた。



「けど、なんで今…」



ソフィアはデータの映像を映し出す。


その映像を見たソフィアたちは驚愕する。




「これって…」


「もしかして…!」



それは…



オルガが研究施設の地下室で見た映像だった…!!




「うち…!すぐに解析します…!」



映像を見たソフィアとリアムが唖然とする中、ヴァイオレットが行動を速やかに開始する。


ソフィアは考えていた。




なんで、今…?


オルガはすでに…


なのに、なんでオルガが見た映像が送られてきた…?


研究施設内部は通信を妨害されている…


オルガが私たちに送信したくても、施設を出ないとならない…


でも、それは叶わなかった…!!


それなのにどうして…




「ソフィアさん…あれ…」



リアムが機械工場のオルガの首を指さす。



「…!!…オルガ…!…あんたって人は…」



それを見たソフィアが、涙を流す。




オルガの首には映像チップが埋め込まれていた。


それも無理矢理に。



ソフィアはそこで理解した。




オルガは自身の死を悟り、仲間に情報を届けられないことを理解していた。


そこで彼女は、映像チップを自身の首に埋め込んだのだ…


自身の遺体が施設の外に出されることを願って。



再生系バイオインプラントを施しているオルガであれば、無理に埋め込んでも傷口は再生する。


敵が相当オルガの肉体を注視しなければ、バレることはない。



フランシスコとアイザックの手によって彼女の首は機械工場に運ばれる。



だが…!


それにより外部との通信が可能となった今、映像チップのデータが仲間たちの手に届く…!!


それは…


死んでもなお、仲間たちに繋いだオルガの想いそのものだ。



「ソフィアさん!解析完了です!」


「よし、こっちに寄こして!…リアム!ハッキングの準備!」


「う、うん!」




やつらはオルガかのじょの肉体を弄んだ…!!


その償いはお前らの命で償え!!


命の価値もわからないクズが…!!




ソフィアはすさまじい速度でデータのプログラミングを開始する。



「オルガの想い、たしかに届いたよ…!!」


「ソフィアさん、ドローンのハッキング完了したよ!」


「こっからは、ストレンジャーこっちの番だ…!!」






~五日目~


22:30 シュレディンガーエンタープライズ研究施設内部



「エヴァちゃん…!…助けに来たよ…!」



イヴリンの背後から顔を出し、エヴァに向かって発言するヴァイオレット。



「ヴァイオレットちゃん…どうして…!」


「ここに向かう道中でイヴリンさんと会って…」



ヴァイオレットはここに向かう道中でイヴリンが率いるH.U.N.T.E.Rが乗る車に出会ったことを思い出す…






「あんたは…」


「H.U.N.T.E.Rの方ですよね…!…う、うちをここに…」



そう言ってヴァイオレットは研究施設までの座標をイヴリンに見せる。



「…こっちもちょうどそこに向かおうとしてたところだけど…」


「お願いします…!…仲間がいるんです…!!」


「…わかったって…けど、足手まといにはならないでよね。」



イヴリンはヴァイオレットを車に乗せ、研究施設に向かった。






「話は後、まずは状況の打開でしょ。」



イヴリンがヴァイオレットの話を遮る。



「ウフフ…イヴリン、あなたどういう風の吹き回し?私たちはT.Z.E.Lツェルとしてここに来ているのよ。」


「私はH.U.N.T.E.Rの一員として、ここに来たんだけど。」


「…偉そうに…じゃあなたを始末しても叔父様は文句なし…ということでいいのね?」



ララの問いにイヴリンは行動で示す。




もう一族なんかに縛られない…!




イヴリンは心でそう誓い、ララと戦闘を開始する。


イヴリンが全身から液体金属を放出し、ララは拘束される。



「何よ!これ…!?…(聞いてないわ…!こいつが…ナノテックインプラントを施術してるなんて…!!)」


「私が望んだ力じゃない…けど、今は[[rb:ローレン > あいつ]]に感謝すべきかもね。」


「あれは…あのときの…」



ヴァイオレットはイヴリンの身体から放たれる液体金属を見て、数ヵ月前にハイドとともにアポカリプス計画の餌食となった市民に襲われた際に助けてくれたイヴリンの姿を思い出した。



そのときも今と同様に液体金属のようなもので市民を制圧していた…


当時は命からがら助かったこともあり、気に留めていなかったが…



「サイバーインプラントじゃない…」



イヴリンは幼い頃に父であるローレン・グリーン・ウィザースプーンによって試作型のナノテックインプラントを強制的に施術されていたのだ。


試作型故に精度や汎用性は液状の金属を放出するのみとなっているが、それでもかなり強力な力といえるだろう。



「これを使うのは…ローレンあいつを思い出すから使いたくはないけど…」


「ま、待って…!!…私たち親戚でしょ?…私も一族の繁栄を願ってここまで尽くしてきたのよ…!!」


「ッ…!!」



ララの必死の媚びにイヴリンは怒りを露わにする。



「これ以上、一族おまえらの都合に…従ってたまるか!」


「待って…!…イヴリ…」



イヴリンの怒りの攻撃でララは頭部ごと壁に打ち付けられる。


その光景を見たアイザックはヴァイオレットを見つめ、不審に笑みを浮かべる。



「おや、[[rb:妹君 > いもうとぎみ]]はやられてしまったようだ…」



アイザックはそう言いながらすでに瀕死のベロニカの方を向く。



「まぁ…君も似たような状況かな?」


「くっ…そっ…!!」



アイザックはベロニカの千切れた腕を見ながら語り出した。




私は生まれた時から…


特別だ。


この身体も、心も。


人の肉をどうしても欲す、この気持ちは誰にも理解できまい。


だが世界で唯一、2種のバイオインプラントの施術成功者になったとき、


私は確信した。


これは天命だ、私が私であるための…


それから私は自身に通うこの血が欲するままに動いてきた。


母や妹、そして父が連れてきた三人目の妻であるシビル様を手にかけたのも、この血が望んだこと。


決して悪意があったわけではない。




「その証拠に…私の名には彼らの名を加えたのだから。」


「てめぇの…言動に正当性なんかあるわけないだろ…」


「その通り、これはあくまで私が私たらしめるための行動だ…正当性や倫理観などは関係ないのだよ。」



アイザックがベロニカの腕を投げ捨てる。



「君は身体の半分以上をサイバーインプラントに改造してしまっている…

それではこちらも肉の味を愉しめない…さすがの私も金属の味には興味ないのでね。」



アイザックがベロニカにトドメを指そうとしたその時、



「ッ…!!」



間一髪でエヴァの攻撃を避けるアイザック。



「わからないな…君らは敵対しているだろう?」


「それはあんたともね。」



エヴァの後に続いてヴァイオレットもアイザックの前に立ちはだかる。


ヴァイオレットの顔を見て、アイザックは舌を出し自身の指を舐める。



「やはり…君はシビル・ホワイトフィールドの子だね。」


「!?…なんで…母を…!!」



ヴァイオレットが政府の機密事項にハッキングしてまで見つけたかった母の情報…


それを目の前の男は知っていた…



「何も知らなかったのか…

彼女は最後のホワイトフィールド家、彼女は我がシュレディンガー家に嫁ぎ、父と婚約を結んだ…」



それを聞いたヴァイオレットが驚愕する。



「まさか、隠し子がいたとは…どうりで、彼女の子宮をスライスしたときに通常と比べて大きかっ」



アイザックが言い終える前にエヴァが怒りの蹴りを繰り出す。


バランスを崩し、アイザックは壁に頭を打ち付ける。



「まったく…君は本当に行儀の悪い女だな…」


「ヴァイオレットちゃん!これ以上あいつのことは聞かなくていいから…少し離れてて!」


「エヴァ…ちゃん。」



激しく動揺しているヴァイオレットを優しくエヴァは抱きしめ、涙をふく。



「彼女はいわば私の義理の妹に当たるわけか…」


「それ以上その汚い口を動かさないで。」



すると、突如研究施設が大きな衝撃に包まれる。



「!?(これは…)」



壁に亀裂が入るほどの衝撃にアイザックは驚愕する。



「言ったでしょ?…私は…ここにH.U.N.T.E.Rとして来たって…!」


「まさか…!」



衝撃の発生元は、この研究施設の最上階と最下層…


この施設を維持するために用いられる主電源の地点であった…!



「私よ。…了解したわ。」



一通の連絡を受けたイヴリンはヴァイオレットに目で合図を送る。


状況を理解したヴァイオレットはすぐにあらかじめ持参していたパソコンを開く。



「これで…ここの主電源は破壊した…」


「っ…!!」



イヴリンの発言で状況を察するアイザック。


そしてエヴァもまた…



「ということは…」



エヴァの予測通り…


主電源を破壊されたことで外部との連絡が可能となる…


つまり、それは…






「反撃開始だ!!」



ソフィアが研究施設の妨害電波が絶たれたことを確認すると、行動に出る。






~五日目~


22:40 セントラルエリア 機械工場付近



「!?」


「やっとですか。」



突如として、周囲のドローンが全て空中から落ち始める。


それだけでない、目の前のO.Sオーバーショック化したウィリアムが倒れる。


すでに死亡していたのにも関わらず、O.S化の影響でサイバーインプラントに支配された肉体はアドルフや周囲の建造物や市民を襲っていた。



「どういうことだ…?……まさか…!」



フランシスコはドローンやウィリアムまで自身の制御から外れたことで、携帯型ホログラムから公共電波塔の映像を映す。



「!?」



そこには、O.S化が解除された人質…


そして…



「マジか…?」



フランシスコは爆破し火の海となった電波塔内部から、市民を抱え現れるヘーロスを見て驚愕する。



「ないだろ…普通………ッ!!」



フランシスコが呟いたのも束の間、背後にはアドルフが接近していた…!


咄嗟に振り向くフランシスコだが、アドルフの短刀による攻撃で、腕を切り落とされる。



「ッ…!!!」



痛みに耐えながら距離を取るフランシスコ。



「あれでヘーロスかれがやられると…?」


「くはははっ…前回は一度追い込んだからね…

いけると思ったけど…彼の弱点は僕という存在だしね…」


「この世に完璧などありはしない…そして…それは彼も例外ではない…」



アドルフが鋼線を再び周囲に貼り付ける。



「ですが…相棒かれの出来ないことは私が補う。」


「…やれるのかい?…君に。」


「お前の弱点は私という存在だ。」






~五日目~


22:40 シュレディンガーエンタープライズ研究施設内部



外部との連絡が可能となったことで、ソフィアとヴァイオレットは互いの通信を繋げる。


また、ストレンジャー拠点内部ではソフィアが研究施設の地下施設の全扉を開け始める。



「お前らは自分の生み出した死者にでも遊んでもらえ…!!」






「これは…」


「大丈夫です、エヴァちゃん……オルガさんは…私たちに見せてくれたんです…こいつらの目的を…!!」



ヴァイオレットたちがストレンジャー拠点内部で見たオルガの映像チップの内容…



それは…



これまでに死亡した人物の遺体が映し出されていたのだ…!


そこからソフィアは映像のあらゆる部分を分析した結果、ひとつの目的を見つけ出す。




死者の軍団。




アイザックとフランシスコはこれまで、この世界に死んだ者の身体にアポカリプスウイルスのワクチンを投与し、死者を強制的に動かし軍団を生み出そうとしていたのだ。



死者であれば、マッドネスジョーカーこちらの損失はワクチンのみ。



今回の大規模テロはストレンジャーの戦力拡散及びワクチンの性能テストだったのだ…!!



しかし…



「お前らに出来ることは私にもできるんだよ…!!」



ソフィアはオルガの映像データからアイザックが改良したワクチンの構造を暴き、それをこの短時間で自らの改良をさらに加えた。



「これは…」



アイザックは扉の向こう側にいるうめき声の方を向く。



そこには、動く死者が並んでいた…!



「っ…!!」



一斉に死者たちがアイザックに集まっていく。


それを見たエヴァは震撼する。


アイザックは迫りくる死者を蹴散らしながら焦りを見せている。



「(まずいな…こいつらが…動き出したとなると…“あれ”まで…)」


「!?…あれって…」



イヴリンがアイザックに向かう“ある個体”を見つめる。


いまだアイザックはその存在に気が付いていない。


そして、その個体はアイザックの背後まで迫りくると…



「ッ…!!…グフッ…!!」



一突きでアイザックの胸を背後から貫く。



「えっ…!?」



突然の状況に驚きを隠せないエヴァ。



「やっぱり…自力で生み出していたんだ…」



イヴリンが冷や汗を滲ませながら、アイザックの胸を貫いた個体を見る。



「機械生命体を。」



その個体はごく普通の少女の姿をしていた。


アイザックは虚ろな瞳となりながらも、自身を殺めたその個体に問いかける。



「フフッ…こう…なっ…たか…」



アイザックはまるで自身の迎える死を受け入れるかのように目を閉じ息を引き取る。



アイザックを殺めた人工機械生命体がエヴァたちを見る。


エヴァたちは身構えるが…



「落ち着いて…私はあなた達に敵意はないわ。」


「!?」



一同が驚愕する。


それは言葉を発していたことだけでなく、まるで今の状況を理解しているような口ぶりだったからだ。



「あなたは…一体…誰?」



ヴァイオレットが静かに問いかける。


すると、人口機械生命体は笑み放ちながら答えた。



「あなた…じゃなくて“イヴ”って言うの。」


「イヴ…」


「教えてイヴ、あなたはどこまで知っているの?」



エヴァがイヴと名乗る人工機械生命体に問う。



「難しい質問だけど…言うなら…」



三人が息を呑む。



「この文明が誕生してから、あなたがレヴァリィ世界に行けなくて困っているところまで…かな。」


「…!!…なんで…それを…」



イヴはヴァイオレットの持つパソコンを指さす。



「あなたのお仲間が私を目覚めさせたときに、これまでの経緯がネットを介すことで取得できたの。」



イヴはソフィアが先ほど死者に投与されてたワクチンを起動した際にネットを介した。


それの影響でネットのデータから現代社会の情報、そしてストレンジャーの情報を読み取ったのだ。



「そんなことが…」


「まぁ…機械生命体ならあり得ない話じゃない…」



唖然とするヴァイオレットにイヴリンが嘆く。


イヴは先ほどの笑みから打って変わり、真剣な表情でエヴァたちに言う。



「あなた達に協力してほしいことがあるの…そのかわりに…」



イヴの提案を聞いたエヴァは驚愕した。



「…それが本当だとして、あなたを信用する根拠は…?」


「ないわ。」



そういってイヴはエヴァを見る。


しばらくして、エヴァが根負けして言い放つ。



「わかった、信用するよ。…イヴ、あなたすごく正直者だね。」



エヴァはイヴの真っすぐな瞳を見て、すぐに先ほどの言葉に嘘はないと確信した。



「ヴァイオレットちゃん、ソフィアに繋いで。ストレンジャーのみんなに伝えないと。」



エヴァはソフィアを介して、ヘーロスやアドルフにも連絡を共有させた。






ヘーロスさん、アドルフさん、みんな、研究施設はソフィアやイヴリンの協力もあって解決しました。


そこで人工に生み出された機械生命体、イヴと名乗る少女にも出会いました。


彼女は自身を介して一人だけレヴァリィ世界に潜ることを提案しました。


その条件として…




ヴァイオレットちゃんのハッキング技術を通して「REVARIE」に繋げてほしいと。




彼女は信用できます。


だから私を行かせてください。


その代わり…


みんなも約束して…


自分の使命を全うしたら、またみんなで集まるって。





それを聞いた仲間たちは笑みを浮かべ、同時にこう言った。




「当然だ。」



仲間を信じ、仲間に託す…

読んでいただきありがとうございました。


深層世界で自分の出生、そして秘宝や古代人といった多くの謎が判明し、さらなる真相を求めて深淵へと向かうハイド。


現実世界で巻き起こる混沌に立ち向かい、過去に向き合いつつ新たな混沌と希望を目の当たりにしたヘーロスたちストレンジャー。


彼らの行きつく先に待つのは…


4章はこれで完結です!


次回からはエヴァを中心としたレヴァリィ世界編、ハイドのいる深層世界編2つの世界観で物語が進む第5章へと続きます!

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