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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第4章 ~交錯する理想と現実~

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11話「血の奴隷」

血に塗られし己の運命…


流れに抗うことなく進んだその先には、


大義の享受か、己の破滅か。

~五日目~


22:00 セントラルエリア 公共電波塔



かつてベルモンテ兄弟と恐れられた二人の殺し屋。


その二人の物語は幕を閉じることとなった。



「エリック…」



血を吐きながらも自身の腕の中で冷たくなっていく弟を見つめるヘーロス。



それを遠方で見つめる一人の人物…



「兄との再会は楽しめたかな…?…エリックくん…」



ヘーロスとエリックの戦いを遠方で見ていた人物、


それはウィルフォード・G > グリーン・ウィザースプーンだ。


ウィルフォードはエリックの行く末を見届けると、何者かに連絡を入れた。




R-01、ヘーロス・ベルモンテの足止めは成功だ、計画を進めろ。


あぁ問題ない、少々予想外の出来事が発生したが他の地点にも我らの一族を向かわせた。


…心配ない、ヴィヴィアンくんを除けば他は…


…捨て駒だよ。




通話を切るとウィルフォードは運転席にいるヴィクトールに合図し車を走らせる。



「まったく…このタイミングでやってくれるじゃないか…フランシスコ・ウルキオル。」






~五日目~


22:10 セントラルエリア 機械工場付近



「ん?」



フランシスコはアドルフとウィリアムの戦いを観戦しながら、自身の携帯型ホログラムに目を向ける。


そこには公共電波塔の無惨にも殺害されたマッドネスジョーカーの部下たちとそこに佇むヘーロスが映し出されていた。



「こりゃ派手にやってくれたね…ヘーロスくん。

…けど、君にはもう少し踊ってもらうよ。」



フランシスコはホログラムに何やら操作を始める。


一方、その頃アドルフとウィリアムの戦いでは決着が目前に迫っていた。



「っ…!!…くそがぁ…!!」



ウィリアムは液状化した左腕を広範囲に展開する。


アドルフはその攻撃を鋼線術と短刀で上手くいなしていく。



「…!!」



だが、アドルフは液状化した金属に触れた鋼線部分や短刀が徐々にボロボロになっていくのを目にし、すぐさま使用した鋼線と短刀を捨てる。



「(ただの液体金属じゃない…あの液体の粒子ひとつひとつがまるで意思を持っているかのようだ…)」


「ハァ…ハァ…」



すでに鼻血も出しているウィリアム。


アドルフは攻撃を避けつつウィリアムの身体の隅々にまで観察する。



「なるほど…そういうことですか。」



アドルフは何かを確信した表情を浮かべ、先ほどとは打って変わり攻めに転じる。



「ハァ…バカが…!!…その距離なら避けられねぇだろ!!」



ウィリアムは左腕をさらに変形させ、まるで大きな津波の如く巨大な液体金属の波をアドルフに向ける。


しかし、その時、アドルフの目つきが変わる…



「避ける必要はない。」



するとウィリアムの右腕から血が噴き出す。


鋼線によって死角から右腕を切り裂いたのだ。



「!?」



理解が追い付かないウィリアム。


そこにアドルフが接近し、ウィリアムが防御の姿勢を取る前に次々と体術による攻撃を行っていく。



「(こいつ…!!…気付いてやがる…!)」






ローレン・Gグリーン・ウィザースプーンによってウィリアムの左腕に施された最新技術、ナノテックインプラント。


それは渡来のサイバーインプラントとは異なり、ナノサイズで構築された自動認識プログラムを施された装置、ナノテックを自身に搭載する。


ナノテックインプラントは微小ながらもそのひとつひとつが意思を持ち行動する。



まるで生きた金属。



それによりこのナノテックは細胞レベルで細かい動作が可能となる。


故に施術した箇所が腕だろうと、どこだろうと流動的に形を変え、状況に応じて形状を変化させることが可能…!



まさに機械工学と生命工学、叡智えいちの結晶。



しかし…



「(やはり、ここが弱点…!)」



この技術にはある欠陥が存在する。


それは、本人の意思に関係なく行動する自動化されたナノテック自身だ。


施術してから数日の間、ナノテックは施術者の細胞に潜伏し、その者の遺伝子情報を記憶する。


そしてその遺伝子情報に沿いつつ脳から発せられる電気信号をもとにナノテックは行動を開始する。



「(まずい…!)」



ウィリアムは以前、モーリス・デュフルクとの戦いで、身体の約3割を欠損する。


それにより新たなサイバーインプラントおよび新技術であるナノテックインプラントを施術するに至る。


だが、彼がナノテックインプラントの施術を行ったのはつい2日前…



ナノテックはウィリアムの遺伝子情報を記憶できていない!!






アドルフの猛攻によってウィリアムはその場に倒れる。


すでにナノテックインプラントによって体力が限界に近づいていたウィリアムは反撃することもままならなかった。



「(か…身体が…動かねぇ…)」






遺伝情報の取得が完全でない場合、ナノテックは施術者を認識できない。


その状況でナノテックインプラントを使用した場合、ナノテック自身が施術者の脳から送られる電気信号のみをもとに行動を際限なく開始し、ナノテックに自身の身体が侵食され自滅する危険がある。


それを防ぐべく、ウィリアムは右腕と胸部に搭載されたサイバーインプラントによってナノテックを半強制的に制御下においていた。



だが、アドルフは戦いの中で、ウィリアムの体力の消耗がナノテックインプラントの使用によるものだけでないことを見つける。






「その右腕の腐敗…サイバーバグがかなり進行していますね。」


「くっ…!!」



ウィリアムは度重なるサイバーインプラントによってすでに身体はとうに限界を迎えていた。


重度のサイバーバグを引き起こしていたのだ。



サイバーバグによって、肉体の腐敗化が進む中、ナノテックインプラントで肉体を修復しつつ、ナノテックインプラントはサイバーインプラントによって制御を保つ…


この互いの技術の補完によってなんとか命を繋いでいたウィリアム。



その満身創痍の状態のウィリアムを見つめるアドルフ。



「ハッ…自滅を防ぐために死に物狂いで…施した付け焼刃のサイバーインプラントで自滅する…滑稽こっけいだろ?」


「近代技術を利用しても、利用されてはならない…きみは執着心の果てに自分さえも近代技術に投げ出した。

…彼とは違ってね。」



アドルフはそう言ってモーリスを思い浮かべる。



「モーリスのことか…!?…O.Sオーバーショック化したバカと俺の何が違う!!」


「彼は近代技術を利用しても、己は捨てなかった…守るべき者のために。」



それを聞いたウィリアムはこれまでウィザースプーン一族でおかれた自身の立場を思い出す。




生まれた時から俺は道具だった…



ウィルフォードちちは自身の息子である俺ですら駒としか見ていない…



だが、俺はそれでもウィザースプーンの血…



古代人の血を引く者だ…!!



高貴な二人の血から生まれたのがこの俺だ…!!



父や一族のやつらに蔑まされようとも、[[rb:人間 > おまえら]]に劣るつもりはねぇ…!!



劣等種ごときが俺を見下してんじゃねぇ!!




ウィルフォードは自身の限界を振り切り、起き上がろうと試みる。


そのときだった。



「がぁっ…!!」


「歪んでるね…その感情。」



フランシスコがウィルフォードの背後から首に目掛けて、注射型の銃弾を放つ。



「これは…!」



その注射弾の内部を見たアドルフは表情を変える。



「僕らが作ったワクチンはね、こういうことにも使えるのさ。」


「うぐっ…!…あっ…!…があぁぁ…!!!」



するとウィリアムが苦しみだす。


その光景を見たアドルフが言葉を失う。



「まさか…」


「君も見たことがあるんじゃないかな…?」



それは、かつてモーリス・デュフルクがアドルフたちに見せた姿…



「そう、O.S化だよ。」


「!!」






~五日目~


22:10 セントラルエリア 公共電波塔



フランシスコがウィリアムにO.S化を促した同時刻、人質を救出するためにヘーロスが公共電波塔内部に入る。



「助けてください!」


「この縄を誰か!」


「慌てるな、今行く。」



内部で数十名の人質を見つけたヘーロス。


すると、



「あっ…!っ…!…があぁぁ…!!!」



次々と人質たちがうめき声をあげ始める。



「これは…」



その光景にヘーロスもすぐに察する。



O.S化だと。



「くっ!…フランシスコ…!」



O.S 化した人質が縄を引きちぎりヘーロスに向かう中、突如、公共電波塔内部にサイレンが鳴り響く。



「…!?」



すると公共電波塔が大きく爆破する。






~五日目~


22:10 シュレディンガーエンタープライズ研究施設内部



研究施設内部に侵入したエヴァ、そして内部にいたアイザック、T.Z.E.Lツェルの一員であるベロニカとララの三つ巴の勢力がぶつかる中、遠方で爆破した公共電波塔の映像が部屋に映し出される。


それを見つめる四人。


するとアイザックが開口一番に口を開く。



「とうとう、やったようだねフランシスコ君…」


「あれもお前らの仕業か?」



アイザックと対立するベロニカが問う。



「左様、これでこの世界の全システムの半数以上が完全に停止となった…!!」



それを聞いたエヴァが青ざめる。



「(そんな…!公共電波塔にはヘーロスさんが…!…それにこれでレヴァリィ世界にも…)」



公共電波塔の爆破によって、現実世界に存在する全システムの7割が完全に停止となった。


つまり、ストレンジャーもレヴァリィ世界に向かうことができなくなった今、エヴァは考えうる最悪の事態に陥ったことを理解した。



「あら、よそ見している場合かしら?」


「…!!」



ララの接近を許したエヴァはララの蹴りを受ける。



「うっ…!!(重い…!!)」



想定よりもかなり重たい一撃を食らったエヴァは、部屋の壁に打ち付けられる。



「サイバーインプラントを施しているのがお姉さまだけだと思った?」



ララは両脚にサイバーインプラントを施していた。


ベロニカほどの重装備ではないものの、そのインプラントは通常の肌と見分けがほとんど付かない。


その利点を生かしララはエヴァとの戦闘で油断を誘ったのだ。


エヴァとララの戦いを見つめるアイザック。



「てめぇの相手は私だろ?」


「おっと済まなかった、いかんせ今宵は魅入られてしまうような女性が多くてね。」



ベロニカの強化されたサイバーインプラントによる打撃を受け止めながら、応戦していくアイザック。



「てめぇは一族が生み出した怪物だ!」



ベロニカは自身の腕を変形させ、巨大なキャノン砲をアイザックに発射する。


ギリギリで躱すアイザックだが、攻撃の余波で吹き飛ばされる。



「怪物か…私は自分の血に…意思に…従っているだけのこと。」



自身の粉々に砕けた腕が再生する様子を見ながらベロニカに言い返すアイザック。


彼のその瞳は先ほどまでとは異なり、まるで獲物を食らう野獣のような鋭い眼差しでベロニカを見つめる。






三つ巴の戦いを繰り広げ、20分が経過、エヴァはララの強力な蹴りによって致命傷を受けたことで、徐々に追い詰められていた。



「劣等種が私たちに敵うと思っているなんて…見ていて吐き気がするわ。」



ララがそう言いエヴァを見下すと突如、部屋の壁が大きな音を立て吹き飛ぶ。



「なに!?」


「それじゃ…私ならどう?」



破壊された壁の方から聞こえる声、その方向に視線を送るララとエヴァ。


そこには…



「イヴリン!?…それにヴァイオレットちゃんまで…!?」


「劣等種はどっちか教えてあげるよ、ウィザースプーンの奴隷…!」



血に抗え…!

読んでいただきありがとうございました。

人に血が通う以上血筋というものは存在する。

血筋を重んじたウィリアム、血筋に抗い続けるイヴリン。

皆さんは自分の血筋に対してどのような想いがありますか?


次回12話をお楽しみに!

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