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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第4章 ~交錯する理想と現実~

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1話「Code-σ」

記憶に注ぎ込まれし、


自身の運命さが


現実か夢か、


どちらでも受け入れよう。


先に待つ未来を信じて。

~五日目~


深層世界 意識領域・第1層



「Code-σシグマ」……


その文字のあとに現れる景色。


それは残虐にも多くの人々が襲われている。


人々を襲っているのは逃げ惑う人々と異なり、強力な能力を有している者ばかり…



パラフィシカーなのか?



一人の男がこちらに手を差し伸べてくれる。



「立てるか?」



初めて会うがハイドはその人物を見たことがある気がした…



「(ヘーロスさん?)」



意識が遠のく……



「はっ……!」



気が付くとハイドはとある民家のベッドの上にいた。


だが、このベッドや部屋、あたりを見たハイドは困惑する。



「なんで…」



それはハイドがマルコと暮らしていたときの家、自身が最も馴染みのある場だった。



「カニ!」


「ハイドか、今日は少し遅かったね。」


「そ…んな…」



ハイドは目の前の光景が信じられなかった。


それは死んだはずのマルコやカニスがいたからだ。


ハイドは思わず涙をこぼす。



「カニ?」



カニスがハイドのもとに近寄り手を舐める。



「あぁ…!…嘘だ…カニス…!!」



ハイドはカニスを抱きしめる。




この感触、匂い、すべてが本物だ。



「カニ~?」



カニスはハイドがなぜ泣いているのか分からず、首をかしげる。


その愛らしい姿を見てハイドは今起きていることが現実だと認識する。



「ハイド、変な夢でも見たのかい?」



マルコがハイドに問う。


ハイドは涙を拭き、いつも通りの日常を噛み締めながらマルコに返事をする。



「うん、かなり壮絶だったよ…マルコおじさん」



ハイドはカニスを抱えてマルコのもとに向かう。






「それで、秘宝の力で俺は現実世界って言われる…」


「かなり細かい夢だったんだね。昨日はかなりの量の薪を割ってもらったからかな?」


「あのくらいじゃ全然疲れないって!」


「カニ!カニ!」



カニスがハイドの膝に座りハイドの顔を触ろうとしている。

話に混ぜてもらいたいようだ。



「カニス、お前も俺の夢じゃ…」


「カニ??」



ハイドはカニスやマルコが死ぬ際の光景を思い出す。


そのあまりに残酷な光景にハイドは手に持っていたスプーンを思わず落としてしまう。



「やっぱりかなり疲れているんじゃないかい?」


「べ、別に大丈夫だって!マルコおじさんは心配性だなー」



ハイドの様子を見てマルコは窓の外を見ながらこう言う。



「今日は特に手伝ってもらう用事もないから、気分転換に外にでも行くといいよハイド。」


「うーん、マルコおじさんがそう言うなら…」


「ちょうどクヴィディタス帝国軍の大佐様がこの村に来ているから珍しく村の中心は賑わっていると思うよ。」


「んじゃ行ってみるか!カニス!」


「カニ~!」



カニスが勢いよくハイドの肩に乗り、ハイドはそのまま外に出かける。



村の中心に向かったハイドは多くの村人と商人、そしてクヴィディタス帝国軍の兵で賑わっていた。



「この村がここまで賑わってるの初めて見たな…」



ハイドはカニスに食べ物を与えるべく商人のもとに向かう。



「いらっしゃい!」


「ソフトクリーム、ひとつ下さい。」


「あいよ!ちょっと待ってなー」


「ん?(この人…どこかで…)」



ハイドは金を渡した商人の顔を見て、自身の記憶を辿る。



それは、ハイドが隣町でマルコからの買い出しを頼まれた際に隣町まで送ってくれた人物…。


そして、この男は…

自身の秘宝を狙っていた…夢では。



「エイン…さん?」


「ん?どこかで会ったか?」


「…いや!何でもないです!隣町でとても愛想のいい商人さんがいるって噂で聞いただけで…」


「おぉ!そうなのか!ありがとな!ほら、お待ちどうさん!」



ハイドはエインからソフトクリームを受け取ってすぐにその場を離れる。



「おかしいな…」


「カニ~♪」



カニスがハイドのソフトクリームをもぐもぐと食べている。


ハイドは先ほどのエインの言動が不思議だと感じていたのだ。


それはエインがハイドを見ても、反応がないことだった。


自身の夢では、エインはクヴィディタス帝国軍と共に秘宝を手に入れてた自分を追う人物だった。

だが、夢以前にエインは自身の記憶が確かならば、何度も面識があるはずなのだ。



「人が多すぎて俺だって気が付かなかったのかな…」



ハイドはあまり気にせず、他の賑わっている店に向かおうとする。



「おっと、ごめんね。」


「こちらこそすみません!」



ハイドは考え込むあまりクヴィディタス帝国軍の人物とぶつかってしまう。

ソフトクリームがクヴィディタス帝国軍の人物の服についたことに気が付いたハイドはすぐに謝罪をする。



「大丈夫だよ、君こそ怪我ない?」



その人物を見たハイドはその男が自身の夢にもいたことを思い出す。



たしか名前は…



「ラインハルトさん…?」


「なんか恥ずかしいなー、ここでも俺の名前が知れ渡ってるなんて。」


「あ…あぁ…あなたはこの村では有名ですから…この村出身なんですよね?」


「うん、だから君と同じだね。………ハイド…くん…?」


「え…」



ハイドは自身の名を呼んだラインハルトを見て唖然とする。


それはラインハルトとの面識は今回が初めてのはずなのに、自身の名を知っていたからだった。



「あ…えっと…何でもない、楽しんでね。」



対するラインハルトもまるで先ほどの発言が自身の発言ではなかったかのような感覚を覚える。



「(なんで俺はあの子の名前を…知っているんだ…?)」



しばらく村での気分転換を楽しんだハイドはマルコがいる小屋に戻る。

しかし、道中でもハイドはやはりエインやラインハルトのことが頭から離れない。



「カニ~!」



カニスがさっきからずっと考え込むハイドに耐えかねて、ハイドの頬をつつく。



「ん~、やめろカニス~」


「カニカニ~!」


「わかったよー、今日は考え込むのやめるよー」



帰宅したハイドはマルコとカニスと食卓を囲み、平和な時間を過ごした。



「(俺が体験したのは全て夢だったんだ…あれが現実でいいわけがない…)」



ハイドはカニスを抱きながら眠りにつく。






Code-πパイ……


その文字のあとに現れる景色。


ハイドは金属でできた生き物に向かう。


そして、その者にあるものを渡す。



「本当ニイイノカ?」


「あぁ、これは破壊できない。だからお前らに任せる。」


「コチラモ電子情報ニ組ミ替エルコトハデキテモ、完全ニハ消シ去ルコトハデキナイゾ。」


「それでもやらなければ。グリーンのような者の手に渡る前に…」



意識が遠のく……



「はっ……!」



ハイドは目を覚ます。

まだ、朝日は昇っていない。



「また…変な夢だ…」



昨日もCodeと表示される夢を見て、今回もまただ。


けど…



「あれ…?……じゃ…あれはいつの…夢…?」



ハイドはマルコに話したあの壮絶な体験…


その夢の物語が一体、いつ見た夢なのかわからなかった。



「夢じゃないさ。」


「!!」



ハイドは声のする方へ振り向く。


そこにはラインハルトがいた。


部屋の窓から侵入したのだ。



「おっと、落ち着いて!…別に襲うとかじゃないから…」



ラインハルトはハイドを落ち着かせる。



「君の経験したすべては夢なんかじゃないよ。…きっと。」



ラインハルトがハイドの横に座る。



「俺も…君とは今日初めて会ったはずなんだ。けど…すでに俺らは出会っている…それが脳裏によぎったんだ。」



ラインハルトは昼間にハイドと出会ったとき、自身が経験したことのない記憶がほんの僅かだが、蘇ったのだ。


それは、秘宝を手にしたハイドがクヴィディタス帝国軍に処刑される最中、自らがこの青年を助けたという内容だった。



「普通なら俺の夢、もしくは思い違いのはずなんだけど…」


「それがどうしても現実で起きた気がする…そうですよね?」



ラインハルトはハイドを見てうなずく。



「君が俺を見たときの様子からしてもしかしたら俺だけじゃないのかなって…」


「あはは…すごいですね…当たりですよ。」



ハイドは自身の気持ちを見透かされて頭を抱える。


するとハイドは気が付く。


頭に触れた自身の手に何かが付いていることを。



「これは…」



それを見た途端、それが自身がこれまでに見てきた記憶、そしてCodeと表示された夢で見たものと同じものだと理解する。



内在せし指輪エンシャイエン…」


「それがどうかしたのかい?」



ハイドに問いかけるラインハルト。



「そうか…俺は…」



ハイドは思い出した。


自身がここまで来た経緯を。




秘宝を手にし、クヴィディタス大国から追われ、聖騎士団と名乗る人たちに助けられ、そして流浪人と呼ばれる“彼ら“とこの世界を生き抜いてきたことに…




そこで出会った仲間たち、そして味わった経験が…




夢なわけがない…!!




ハイドは自身が望んだ形で今の世界があることに気が付いた。




この世界こそが夢なんだ…!!



「ごめん…マルコおじさん…カニス…」



ハイドは立ち上がり、外に出る。


それを別の部屋で耳を澄まして聞いていたマルコ。






ハイドはラインハルトに自身がここに来た経緯を説明する。



「なるほど、つまりハイド君はその秘宝を使って今は眠っている状態、そしてこの世界は現実じゃなくていわばハイド君の夢の中ってこと?」


「確信はないですが…そんなかんじかと……あの、疑ったりしないんですか?」



ハイドはラインハルトに説明した内容が意外にもすぐに受け入れていることに疑問を抱く。



「あぁ、まぁ普通に考えたらありえないことなんだけど…」



ラインハルトはハイドにまだ言っていない自身の脳裏によぎった記憶があった。



それは自身が死にゆく瞬間であった…



信じたくもないことだが、ラインハルトは自身の死の経験が夢と言う言葉だけでは説明できないほど、現実味があったのだ。



「(つまり、俺は現実ではもう…)」



ラインハルトはなんとなく自分という存在に答えがついていたのだ。


ハイドはマルコの家を出てすぐ近くにある丘から登る朝日を見ながら気持ちを引き締める。



「ラインハルトさん、俺はもう一度この秘宝を使ってみることにします。…それでどうなるのかはわからないけど…俺には見つけなきゃいけない人物がいるので。」



ハイドはリベルやグリーンを頭に思い浮かべる。





すると家から出てきたマルコとカニスがハイドたちのもとにやってくる。



「カニカニ!」


「マルコおじさん…カニス…」



ハイドは二人を見て、涙を滲ませる。


そのハイドの様子を見たラインハルトは二人の結末を察する。



「(そうか…この二人も…)」



マルコがハイドに声をかける。



「ハイド…」


「カニ…」



ハイドは二人に背を向け、内在せし指輪エンシャイエンをはめようとする。



「うぐっ…!」



ハイドは振り返り、二人のもとに駆けよる。



「ごめん…!!…おじさん!…カニス!…ごめんなさい…!!」



ハイドは二人を抱きしめ涙を流す。


その涙の理由は、別れの寂しさからくる涙か、それとも自身が二人を助けることのできなかった故の涙か…


どちらにせよ、ハイドの気持ちが理解できたマルコはハイドの頭を撫でる。



「ハイド、今まで世話をかけて済まなかったね。…けど」


「違うんだ!!俺が!俺が…悪いんだ…」


「もういいんだよハイド、たとえ、世界が違かろうとお前は私の大事な家族だよ、離れていてもね。」


「うっ…うっ…!」



マルコはハイドの事情を知ったうえで見送ろうと決めていた。


ハイドの涙をカニスが自身の耳で拭き取る。



「カニス…」


「カニ…?」



ハイドはカニスを抱きしめる。


その腕に残る感触は本物となんら変わらない、だがすでにカニスはもう…



「お前は、夢だろうが夢じゃなかろうが変わらないな。」


「カニ!」


「…そういうところもね。」



ハイドはカニスとマルコにレヴァリィ世界ではできなかった最期の別れを交わす。



「じゃ行ってくるよマルコおじさん、カニス。」


「あぁ、行っておいでハイド。」


「カニカニ~!」



ハイドが再び丘を照らす朝日を見つめる。



「ハイド君―!」



ラインハルトがハイドを呼ぶ。



「君を待つ未来にどうか幸福と幸運を!!」



そう言って手を振るラインハルト。

それを見てハイドは深く礼をする。


ハイドは内在せし指輪エンシャイエンを再びはめる。



意識が遠のいていく……



夢の始まりと出会いの終わり…

読んでいただきありがとうございました。

新章に突入しまして、物語はさらなる深淵へと…!


この章では前半はハイドに起きた物語、後半ではヘーロスたち現実世界での物語が描かれます!

次回2話をお楽しみに!

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