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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第3章 ~7大国決戦~

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20話「至高の王」

争いを望む、それは人のさが


支配を望む、それは王のさが


それでも抗う…


憎しみ合う時代の終わりを信じて。


交わした酒の味は嘘をつかない…


交わした人の夢は嘘をつかない…


だから待ち続けよう…


遥か彼方、友の帰還を信じて。

~五日目~


16:15 クヴィディタス大国・国境付近:クヴィディタス帝国軍の野営地



底の見えない大きな穴…


その周辺の空気が、物体が歪んでいる…


いや、その場の空間そのものが歪んだことで生じているのだろう…






数刻前、アローラとラインハルトの決死の行動により、ヘーロス・ベルモンテが復活を果たす。


そしてクヴィディタス帝国軍の野営地にいる殲越十二戦士のメンバー六名と交戦。


ヘーロスの一撃で六名全員が攻撃に巻き込まれ、攻撃の余波による影響でクヴィディタス大国だけでなく、7大国全域に渡って目視可能なほど大きな空間の歪み、轟音と衝撃波を発見。


交戦地域周辺あるいは同刻、クヴィディタス大国にいた者は激しい轟音と衝撃波だけでなく、空間の崩壊を目にする。




ヘーロス・ベルモンテ、最大の奥義”虚殲きょせん


ヘーロスが持つパラフィシカーとしての能力である”空間支配能力”により自身の周囲にある空間ごと極限にまで圧縮することで、疑似的なブラックホールを放つ。

虚殲は放つと同時にブラックホール同様な無限の重力による光をも吸い込むほどの力を保持し、次第に空間が元に戻ろうとすることで大きな空間発散が生じることで周囲の空間を広範囲に”破壊”ではなく”消滅”させる。

その威力はヘーロスの出力調整で30%程度に納めてもレヴァリィ世界の1割の空間を修復不可能にまでにし、現実世界の「REVERIE」に損傷を与えるほどであった。



そんな規格外の交戦の場付近に置かれている息のない遺体…


彼の上には半身がなくなり内臓がずり落ちた者…


ラインハルトが乗せられていた。


ラインハルトは最期の力を振り絞り、手に”何か”を握ったままそれを息を引き取ったアローラの口元に近づける。



「ア……ローラ………さ…ん……どう……か………。」



ラインハルトの目から光が失われる。






これが…俺の役目なんです…


師匠…


この命、大国のためではなく、自分の我儘わがままな選択で使ってしまったことを…


許してください…






~五日目~


16:40 リヴィディン大国・王都内部



今から約1時間前、リヴィディン大国にクヴィディタス帝国軍とイラ国衛兵団、総勢700名の軍が王都内部になだれ込む。


聖騎士団、第五部隊隊長のアレッシオは民間の避難を最優先に第三部隊の先導のもと、避難を無事完了させる。


それからなんとかあらかじめ街中に仕掛けていた罠や配置した兵によってなんとか防衛を続けていたが、すでに王都の半分以上をジューバル王率いる軍に進軍されていた。



「ジャクソン王め、なかなか粘るじゃないか。」


「ジューバル王、どうされますか?」



そうジューバル王に尋ねたのはイラ国衛兵団の五人の国衛隊長の一人、ウォーレスだ。



「よし、ウォーレス。テロスを導入しろ。こちらの方が数は上なんだ。消耗戦などさせん、一気に畳み掛けるぞ。」


「承知いたしました。」



一方で王都にある王宮周辺ではアレッシオと同じく第五部隊のミケルがアレッシオのもとに駆けよる。



「隊長、前衛に配置していた兵はほぼ壊滅状態、さらに仕掛けた罠も全て使い果たしました。」


「そうか…。」


「マジかよ…」



絶望的な状況に頭を抱えるメイコフ。

その横で遠方の敵軍の様子を伺うオルウェル。



「隊長!敵兵が二体の1級テロスを放ちました…!」


「1級テロスだってぇ!?なんでそんなの従えてるんだよぉ~!!」



喚き散らす同じく第五部隊メンバーのボズ。



「泣きわめくな、ボズ!お前も聖騎士団の端くれなら最後まで弱音を吐くな!」



メイコフに胸倉を掴まれ終始、困惑しているボズ。


その二人を仲裁しながらオルウェルの方へ向かうアレッシオ。



「おそらくイラ大国が調教したのだろう、通常の1級テロスより厄介だぞ。」



すでにボズだけでなく周囲のリヴィディン大国の兵士までもが戦意喪失している。

さらに怪我人は増えていく一方で敵は少しずつこちらに向かってきている。


罠も全て使い切り、1級テロスがいるとなれば、30分もしないうちに王都は完全に打ち沈められてしまうだろう。



「絶望的な状況…どうされますか?ジャクソン王。」



アレッシオは王宮の外で甲冑を身にまとったジャクソン王に問う。



「”私”は…ここリヴィディン大国を離れるつもりはない……」


僭越せんえつながら、ジャクソン王。すでにヘーロス・ベルモンテが帰還する望みを持ち続けるには限界があります…!」


「そうですよぉ!!これじゃ…兵が…!…俺たちが無駄死にですよぉ!!」



オルウェルとボズがジャクソン王に反論する。


それを見たアレッシオとミケルがこの状況の危険性を察する。



「マズいですね…」


「あぁ…これじゃ組織の統率が崩れる…」




王はなぜ、これほどまでにも冷静なんだ?


何を見据えている?


本当にヘーロスが帰還すると思っているのか?




アレッシオは考える。



そこでアレッシオは今から30分ほど前に起きた現象を思い出す。



それは…



かなり遠方の方で起きた轟音と衝撃…


あのときは各地でクヴィディタス帝国軍とイラ国衛兵団の進軍が開始されていることからあまり気にもとめていなかったが…



「もしかして…!?」


「どうされましたか、隊長?」



アレッシオはミケルを連れ、ジャクソン王のもとに向かう。


ジャクソン王の周りには不満がついに限界にきた兵士やボズ、オルウェルが絶望な状況に打ちひしがれている。



「私は…何よりもこの大国の民を案じている……私はここに残るつもりだが、君たちは」


「なりません。」


「…アレッシオ?」



ジャクソン王のもとにくるアレッシオ。



「俺はリヴィディン大国とインビディア大国に忠誠を誓った者、王を見捨てて生きるつもりなどありません。」


「アレッシオ…」


「みんな、聞いてくれ」



アレッシオは周囲の兵を起こし、第五部隊のメンバー、そして残りのリヴィディン大国の兵に伝える。




敵は我々のすぐ目の前にまで迫っている。


我々の愛した国を奪うべく、


我々の守るべき大切な家族を奪うべく、


我らが王の命を奪うべく…!


君たちに問う、我々は何者だ?




アレッシオが剣を抜く。




我々は兵士だ!!


王に忠誠を誓い、大国の安全を守る者!!


ジャクソン王がこの大国に留まる決断をされた今!


我々だけが[[rb:怖気 > おじけ]]づいて王に背を向けるのか!


否!!


命ある限り、


生ある限り、


大国を守るため、


家族を守るため、


愛する者を守るために戦い続けるのだ!!!




兵たちに士気が戻り始める。



「そうだ…俺らはこの大国と王のために…」


「戦うぞ!!みんな!!」



兵たちが剣を抜き、ジャクソン王の前に膝をつき、敬意を示す。



「みな…済まない…」



直ちにアレッシオの命のもと、兵たちが配置につく。


ジャクソン王がアレッシオの礼を述べる。



「ありがとう、アレッシオ。

……私は愚かだ。…民の安全をと嘆いておきながら、ここにいる兵の命を…勝ち目のない戦地へ…」


「みんな、それを承知でここにいます。

すでに私も部下や兵を死地に送る悪魔のささやきを投げかけました。…お互い腹を括りましょう。」



アレッシオの返答にジャクソン王は緊張した表情が僅かに緩み、笑みを浮かべる。



「あぁ…そうだな。」


「それに…勝ち目がないわけではありません。」



アレッシオが静かに答える。


その発言にジャクソン王は目を丸くし反応する。



「そ、それは本当なのか!?」


「えぇ。ですが、この作戦を成功に導くには…ジャクソン王、あなたのお力が必要です。」



アレッシオはジャクソン王の耳元で作戦を伝える。

それを聞いたジャクソン王は言葉を失う。


しかし、同時に希望に満ちた表情を浮かべジャクソン王は答える。



「はっはっはっ!!!

…よし!アレッシオ!やろうではないか!!

…ただし、この戦いが勝った後は私の酒に付き合ってもらうぞ!!」


「それは…なかなかにこた]]えますね…。」






~五日目~


16:50 リヴィディン大国・王都内部



王都の最も広い地区である中心街にやってくるジューバル王たち。



「ジューバル王、リヴィディンの兵たちがこちらに来ます。」


「ほう、とうとう守りを諦めたか。…平和ボケした腰抜けどもがどこまで戦えるか楽しみだな。」



軍の先頭に立ち、両手を上げるジューバル王。


そうすると周囲の物質がまるでハイドの所持する[[rb:真理の神秘 > ダブマ]]のように自在に動いていく。



ジューバル王の能力は”原子操作”


自身を中心に範囲は狭いが原子で構成されたもの、すなわちこの世の物質全てを操作できる。

それは物体の単純な操作だけでなく、構成を変化させることで石造りの家でもまるで液体のように操ることができる。



進撃するリヴィディンの兵士に向かって周囲の石造りで構成された民家が襲い掛かる。


さらにジューバル王の背後の兵は弓を用いて兵を射抜いていく。



「王!正面だけでなく、左右からも兵が向かってきています。」


「ほう、少しは頭が使えるみたいだな!」



横方向からもリヴィディンの兵が向かっていく中、ウォーレスは自身の調教する1級テロスを左右に放つ。



「血迷ったか!ジャクソン王!!…戦力で劣る貴様らが今更こんな特攻で勝機を見出せると思ったか!!」


「みな、進むのだ!!」



ジューバル王の前方に現れるリヴィディンの兵を先導するジャクソン王。


それを見たジューバル王が能力をさらに用いて地面の物質を変形していく。



「怯むな!!」



ジャクソン王はアレッシオから聞いた作戦内容、そして直前での兵たちに向かって言い放った演説を思い出す。









兵を前方と左右から出撃させます。


おそらくジューバル王はあなたを殺すべく”原子操作”の能力をあなたにぶつけるでしょう。


ですが、あの能力は1種類の原子しか操作することができず、さらに体力の消耗が大きい。


そこで民家や王都の地面にあなたの秘宝、果ての鉄アペロメタルを混ぜ込み、ジューバル王が能力を使用するたびに微力ですが妨害を行っていく。


以上が作戦です。









ジャクソン王はわかっていた。


この作戦を兵に伝えるのは自分であるべきだと。


そしてジャクソン王は決意を固めて兵に演説を行う。









君たちは敵兵に向かって前方、左右から突撃を私と共に行ってもらう。


当然、敵にとっては格好の的だ。


おそらくここにいる兵の大半は命を落とすだろう。









「うわぁぁぁぁ!!!」


「蹴散らせ。」



ウォーレスの命令によって獣型と猿型2体の1級テロスがリヴィディンの兵を蹂躙じゅうりんしていく。


あたりに飛び散った兵の肉片や血が巻き散る。









私は平和を愛している。


だが、人間とは皮肉な生き物…


平和を望みながらも心のどこかで闘争という本能を隠し持っている。


私もだ。









「!?(なぜ、民家を上手く操作できない…!)」



民家に仕組まれた果ての鉄アペロメタルによって思うように操作ができないジューバル王。



「今だ!」



ジャクソン王の掛け声で猿型の1級テロスに聖騎士団が攻撃を仕掛ける。


さらにミケルの仕掛けた煙幕が作動し敵兵の視界を奪う。









故に”この世界”は7つの大国に分かれ、各々が他国の者を忌み嫌い、隣り合う国の者が持つ全てを奪おうとしてきた。


ここリヴィディン大国もかつてはそうだ。


私が王となったのはその避けようのない人間の本性から抗うべく、同じ生を受け、この世に生まれた人と人とが分かり合える時代を築きたいと心の底から願ったからだ。









「(目くらましか!)こんなもの!!」


「やれ!!ボズ!」



猿型の1級テロスの付近にいたウォーレスにボズが襲い掛かる。


なんとか攻撃を防ぐも、メイコフの追撃を避けることができず、負傷するウォーレス。



「てめぇは俺が差し違えてでも殺す!!」


「聖騎士団め…!…我らイラ大国に敵うと本当に思っているとは…!!」



メイコフがウォーレスに向かう。









人はなぜ戦うのか?


人はなぜ他者の命を奪うのか?









それは私たちの責任を果たすためだ!!









「うぐっ…!!」


「オルウェル!!」



猿型の1級テロスに胸を貫かれるオルウェル。


しかし、彼の目はまだ死んでいなかった…!



「ミケル…頼んだぞ…!!」



自身の胸を貫かれながらも猿型の1級テロスの腕を掴み、ミケルが攻撃を繰り出す。


ミケルの攻撃に気が付いた猿型の1級テロスがもう片方の長い腕でミケルを掴む。



「さ、させるかぁ!!」



ボズの一撃でミケルを猿型の1級テロスの手から開放するが、負けじと猿型の1級テロスはボズを背後から食いちぎる。



「ボズ!!」



ミケルは猿型の1級テロスに向かいながら自身にあらかじめ仕掛けていた爆薬を作動させる。



「リヴィディンのために!!!」



それにより爆破に巻き込まれ、跡形もなく肉体が飛散する猿型の1級テロス。


同時にメイコフとウォーレスが互いの胸に剣を突き刺す。



「ぐっ!!」


「くっ…!!」









私たちは私たちの帰りを待つ者達の期待に応えなければならない!!


私たちはこれまでに散っていった仲間や家族に報いなければならない!!


私たちはこれまでに奪ってきた命に意味を見出さなけばならない!!


あれをただの”殺戮”にしてはいけないのだ!!


私たちは…私たちの帰りを待つ民を!!


守る前に死んではならない…!!!









「もうすぐだ…!!(もうすぐでジューバル王のもとに…!!)」



ジャクソン王の背後で迫りくる矢を弾いていくアレッシオ。


だが…



「くっ…!!」



突如、民家を突き破って現れた獣型の1級テロスがアレッシオの腕に噛みつく。

死角からの攻撃でアレッシオはそのままテロスに襲われ、引きずられていく。

それをジャクソン王が振り向き、足を止めかける。



「アレッシオ!!」


「王!!!振り向いてはいけません!!こいつは俺がなんとかします!!だから!!」



ジャクソン王は前向いて兵を先導し続ける。




たとえ付いてくる兵が次々と地に倒れようと。






どうか、この大国で!!


どうか、この土地で!!


死んでほしい!!


この哀れな王の背中を最期に押してほしい!!


ここでの戦いに勝利するために!!









「ジューバル王!!!」


「しまった!!」



煙幕によって目の前まで接近されていることに気が付くのが遅れたジューバル王にジャクソン王が剣を振り下ろす。


すでに自身の背後にいる兵士は数えるほどしかいなかった。


だが、それでもジャクソン王はこれまでの行為を無駄にしないために攻撃を繰り出す。



「ぐっ…!!」



胸を斬りつけられたジューバル王。


しかし、意識はまだ失っていなかった。



「調子に乗るなよ!!!ジャクソン!!!」



ジューバル王がジャクソン王の剣を自身の能力で跡形もなく粉々にする。


原子ごと分解したのだ。


たとえ果ての鉄アペロメタルでできた聖装備でも再生はできない。


ジューバル王の剣がジャクソン王の腹を貫く。



「やれ!!!」



ジャクソン王が残り僅かな兵に指示する。

しかし、ジューバル王は背後に迫る残りのリヴィディンの兵を自身の兵をも巻き込むほどの原子分解で全員跡形もなく消し飛ばしていく。











「はぁ……はぁ……」



能力を多用した影響で体力を激しく消耗したジューバル王。


しかし、ジューバル王の周辺にいた兵はリヴィディン大国の兵や自身の率いてきた兵もろとも消し飛ばした。


瀕死のジャクソン王のもとに向かうジューバル王。



「…お前だけは…俺が直々に殺してやる…!」


「…フン…」



ジャクソン王は瀕死の中、突撃を開始する直前にアレッシオとの会話を思い出す。









「アレッシオ、先ほどの作戦、仮に成功したとしても他にも敵兵は多くいる。…ジューバル王だけ倒してもこの戦いは終わらないのだぞ?」


「はい、承知しています…この作戦は全て…」









微笑むジャクソン王を見て、激しく怒りをあらわにするジューバル王。



「何がおかしい…!!」


「……遅かったではないか……」









へーロスかれのためです。









「ヘーロスよ…」


「なに!?」



ジューバル王が振り向くとそこには赤眼の男が立っていた…



英雄、リヴィディンへの帰還を果たす…!!

読んでいただきありがとうございました。

今回、二人の王による戦いが繰り広げられましたね!


今回の話を読んで読者の皆様の中に某人気漫画「○○の巨人」のとあるシーンを思い浮かべた方はいますでしょうか?(笑)

実はこの物語を構想していた僕が高校生の頃、ちょうどその作品に影響をかなり受けており今回のようにまれに似た展開となるものが組み込まれていたりします…!


次回21話をお楽しみに!

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