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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第3章 ~7大国決戦~

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12話「希望の守護者」

君を守れなかったこの俺に、


もう一度、


もう一度だけ、


この手でこぼした命と希望を、


守らせてくれ。

~五日目~


15:50 アロガンティア大国・国境付近



武器を構えるロクアとサムエル。


その二人の先にはヴィルヘルムがいた。

ロクアはヴィルヘルムに向かってこう言い放つ。



「待たせたな、ここからは俺らが相手になるぜ。」


「問題ない…。…俺もクヴィディタス大国に用がある…さっさと始めよう……。」



ロクアはボロフのことを思い出し、血がにじむほど自身の唇を噛む。



「よくも…!…ボロフさんを……!!」


「こちらもお前らのおかげで部下を失っているんだ…怒りを覚えているのがお前たちだけだと思うな。」



ヴィルヘルムの手の平から数多のテロスが出現する。



「どう出る…?…聖騎士団…。」



ヴィルヘルムの目の前に現れた五体の2級テロスを見て、サムエルはヴィルヘルムのパラフィシカーとしての能力と予想し、ロクアと挑む。


サムエルが剣で手前の二体の2級テロスを斬りつける。

すぐに背後から他の2級テロスがサムエルを襲うが、それをロクアが死角から短剣でテロスの急所に斬りつけていく。


瞬く間に五体の2級テロスを撃破する二人。


すぐにヴィルヘルムのもとに向かい、サムエルとロクアがヴィルヘルムの左右から攻撃を行う。



「くっ…!!」



サムエルの剣とロクアの短剣がヴィルヘルムの手前で止まる。

ヴィルヘルムが出現させた大樹のようなテロスが二人の攻撃を防ぐ。


すぐに大樹型のテロスは自身の手を伸ばしサムエルを引き離していく。



「(このテロスは…!…アセティア大国の…!!)」



サムエルはこのテロスを知っていた。


そう、それはアセティア大国でジリアン王が密かに民を犠牲にしながら秘宝の副産物を作製するという狂気じみた行為の際に自分たちに仕向けた1級テロスであった。



「このテロスは自然の多いアセティア大国に多く生息していてな…その表情から察するに面識があるようだな…」


「サムエルさん!」



大樹型の1級テロスによってヴィルヘルムから引き離されるサムエル。

それを案じるロクアにヴィルヘルムは体術による攻撃を行う。


武器を用いた戦闘より体術を駆使した戦闘に長けるロクアですら翻弄されるほどの攻撃を放つヴィルヘルム。



「(こいつ…!…体術もいけんのかよ…!!)」



するとヴィルヘルムはまたもやテロスを召喚し、ロクアに攻撃させる。


軽い身のこなしでなんとかテロスの攻撃を避け、サムエルのもとに向かうロクア。



「なかなかに動けるな…。」



ヴィルヘルムはいまだ、一撃も攻撃を受けていない。


ここまで力の差があることを思い知るロクアとサムエル。



「無事ですか!サムエルさん!」


「問題ない、装備もすぐに再生する。」



聖装備でできたサムエルの剣が折れるが、次第に再生していく。


ヴィルヘルムはさらに大量の2級テロスを召喚していく。



その数は30を超える。


さらに先ほどサムエルを攻撃した大樹型の1級テロスも迫りつつある。



絶望的な状況…



だが…



そんな状況のなか、割れたゴーグルの中から覗くロクアの眼差しと、完全に元通りになった剣を見つめるサムエルの表情はどちらも自信にあふれた姿が日の光に照らされる。



「へへっ…サムエルさん…どちらかが多く倒せるか勝負しません?」


「あぁ…。いいだろう…俺もちょうどそんな気分だったところだ…!」



二人は大量のテロスに向かっていく。



二人はたとえ自分の命が散ろうとも…



リヴィディン大国とインビディア大国に忠誠を誓った聖騎士団として…



アローラの部下として…



自分たちの”ハイドきぼう”を守れるなら本望だと…!!



自分たちの想いを託して挑み続けた…。




その光景に目を奪われるヴィルヘルムの目の前にはたとえ敵でも…



敵わない相手でも、自分の託した者を守るために果敢に挑む二人の守護者がいた…




~五日目~


15:50 クヴィディタス大国・国境付近



「……。」



何かを察するアローラ。


その方向には今現在、ロクアとサムエルの守護者としての最期の戦いが行われている方角であった。



「どうかしましたか?アローラさん。」



ラインハルト大佐がアローラに問いかける。


アローラは何かを悟ったように馬を再び走らせる。



「いや…何でもない…行こう…!」



ロクアとサムエルが自分たちの”希望”を守り抜く戦いを始めているのであれば、アローラたちはこれからこの世界の”希望”…


すなわち、ヘーロスを救うための戦いに挑むのだ。


当然、ヘーロスが封印されている場所、クヴィディタス大国とリヴィディン大国との国境付近の野営地には多くの兵が配備されており、厳重な守りで固められていることだろう。


しかし、それでもこの世界の救うためにはヘーロスの力が必要不可欠だとアローラとラインハルト大佐は考えていた。



たとえ、それが自分の命を捨てることになっても…。




~五日目~


16:00 クヴィディタス大国・国境付近:クヴィディタス帝国軍の野営地



ヘーロスが封印されている白い墓石のようなもの…


その周囲に[[rb:佇 > たたず]]む影が六人…


その者の一人がモヒカン頭に無数の傷が顔に並んだ男に問いかける。



「おい、エルトロ…こんな墓石ごときに俺らが六人も必要か?」


「当然だ…!スギム、てめぇはあいつらと対峙したことがないからそう言えんだよ!」



その六人の人物とは…



殲越十二戦士たちだった。




・アシムス 能力:重力操作


・フルメー 能力:行動予知


・エルトロ 能力:爆破


・スギム 能力:対象拘束


・イルーシャ 能力:幻覚


・デニス 能力:透明化




「でも、エルトロが負けたのってほぼ”例の青年”でしょ?」



エルトロに口を挟むイルーシャ。



「それは事実だけど…流浪人は本当に強いよ…。」



デニスが答える。


エルトロは流浪人であるアンドリューとハイドと戦いパートナーだった今は亡きテオバルトを失い、自身も瀕死の重傷を負いながら、デニスによって助けられた経緯を持つ。



「それだけじゃない……他にも危惧すべきは”リヴィディンの暴竜”だ…。」


「あー、聖騎士団のね。」



アシムスの発言にフルメーは答える。


アシムスもまた、第一次リヴィディン大国侵攻にて、フォートによってパートナーであったイェルクを失っていた。



「でも、そいつはあんたが街を全壊させたからそれで死んでるんじゃないの?」


「いや……それでくたばるなら、イェルクはやられていない。」



イルーシャの発言にアシムスは否定的な意見を述べる。

互いを信頼に足る仲間とは一切思っていない殲越十二戦士たちでも、自身のパートナーとなる者たちの実力は理解できている。

いくら能力の相性が悪くてもテオバルトやイェルクがやられたのは、ただの偶然ではないとアシムスは言う。



「あぁ、やつらを侮ってはならない。」



拠点のテントから六人の前に姿を現すジークフリート大佐。


第一次リヴィディン大国侵攻にてヘーロスを自身の能力で封印した人物だ。

彼もまた、油断したことで自身の片腕を失う重傷を負った者だ。


聖騎士団や流浪人の脅威を警戒すべき対象だと殲越十二戦士に伝える。



「ジークフリート大佐!」



すると、拠点の入り口で馬に乗ったラインハルト大佐が現れる。


ジークフリート大佐がラインハルト大佐のもとに向かう。



「どうした、ラインハルト大佐。」


「こいつは?」



アシムスがジークフリート大佐に尋ねる。



「問題ない、仲間だ。」



ラインハルト大佐は焦りをみせた様子でジークフリート大佐にこう伝える。



「ヴィクトール総督からの命令で、ただちにこの場を離れるようにと!!」


「なに…!?」



それはジークフリート大佐にとって思いもよらぬ発言だった。



数分前…



拠点に近づいたアローラとラインハルト大佐は拠点内部の様子を伺っていた。



「殲越十二戦士が六人も…」


「だが、ヘーロスの封印を解くには能力者であるジークフリート大佐を倒すか、あるいは…封印された墓石を破壊すれば…」



しかし、そう発言したアローラはわかっていた。


それが現実的にかなり不可能な内容であることを…。


だが、ラインハルト大佐が決心した様子でアローラに提案する。



「アローラさん!俺もクヴィディタス帝国軍の大佐です。この地位を利用して同時にやってみましょう…!」



ラインハルト大佐の案では、自身が大佐の地位を利用してジークフリート大佐に接近し、ジークフリート大佐の殺害を企てると同時にそれが失敗した時を考えて、アローラは拠点の裏側から直接、ヘーロスの封印された墓石を攻撃するというものだった。




それを脳裏に思い出しながらラインハルト大佐はジークフリート大佐に少しづつ接近していく。



襲撃に十分な間合いまで近づいたとこでラインハルト大佐が剣を抜きジークフリート大佐を斬りつけようと試みる!



「なっ…!!」



しかし、寸前のところでラインハルト大佐の攻撃はフルメーに止められる。



「危ねー…。」



ラインハルト大佐の攻撃を受け止めたフルメーは少し先に起きる出来事を予知できる。

それにより、ラインハルト大佐がジークフリート大佐に向けた攻撃をいち早く気づき、防ぐことに成功したのだ。


だが、ラインハルト大佐は諦めていなかった…!


自分がダメでも、アローラがいることに…!



「今です…!…アローラさん!」


「なんだと!?」



拠点の裏側から密かに接近し、ヘーロスの封印された墓石に攻撃を行うアローラ。



「!?」



しかし、その攻撃は墓石をすり抜ける。


その状況に理解が追い付かないアローラはそのまま壁に叩きつけられる。



「ぐっ…!」



アローラを壁に叩きつけたのはアシムスの能力によるものだった。



「(触れてもいないのに吹き飛ばされた…重力か何かを操るのか…?)」


「残念だったね…聖騎士団…。」



いつの間にかアローラの横にいたデニスに攻撃をされ、負傷するアローラ。


腹に深くナイフが突き刺さる。



「念のため、私の能力を使っておいてよかったわ。」



イルーシャがそう言うと、先ほどアローラが攻撃した場所から墓石が消え、本当の墓石は少しずれた位置に出現した。



「あーこれ?私の能力よ。」



イルーシャは自身から放たれる匂いを嗅いだ者に幻覚を引き起こさせることが可能だった。

もちろん、嗅いだ者に対し能力の適応は本人が自由に制御可能だ。


そのおかげで仲間の殲越十二戦士には、幻覚を見せないようにすることも容易に可能だ。



そんな目の前に希望が見えても手の届かない絶望的な状況下に置かれてもアローラとラインハルト大佐は諦めなかった。



アローラは剣を握り直し、デニスに攻撃を行う。


デニスは能力を用いて攻撃の命中率を下げる。

その隙にアシムスが自身の能力で周囲の岩をアローラに向けて飛ばす。


それを遮蔽しゃへいを利用しながら避けていくアローラ。



ラインハルト大佐もフルメーに止められた剣を無理矢理動かし、攻撃を行っていく。


その二人の間にエルトロが割り込み、ラインハルト大佐の腹を殴る。

その瞬間にエルトロの能力が発動し、ラインハルト大佐は爆破によって吹き飛ばされる。


口から大量の血を吐き出すも、ラインハルト大佐はその血をエルトロに向かって吹くことで目くらましを行い、エルトロの死角をとる。



「させん…!」



すぐにスギムがラインハルト大佐の攻撃を防ぎ、その隙にフルメーが攻撃を行う。

スギムの能力によって身動きがとれなくなりスギムとフルメーの二人に猛攻を受けるラインハルト大佐。


地に伏せるラインハルト大佐の両足に向けてエルトロが爆破を行い両足が吹き飛ぶ。



「うぐっ…ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」




アローラも墓石にまっすぐ進み、攻撃を行おうとする。


すぐにアシムスが反応し、能力でアローラを宙に浮かばせ動きを封じる。

それでもアローラは自分の持つ剣を槍のように構え、墓石に向かって投げる。


それを透明化して墓石に接近していたデニスが弾く。


そして、宙に浮いたままのアローラをイルーシャが攻撃し、アローラは地に叩きつけられる。

すぐに起き上がりイルーシャの追撃を躱し、イルーシャを蹴り上げる。



「このくそ野郎!!」



すぐに方向転換し墓石に近づくアローラをまたもやアシムスが無慈悲に床に叩きつける。

床にめり込むほどの重力をかけられることでアローラの穴という穴から血が噴き出る。


それでも諦めずに墓石に手を伸ばすアローラ。


その手に剣を床に向けて突き刺すデニス。



「うぐっ…ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」




~五日目~


16:00 アロガンティア大国・国境付近



大量の2級テロスの死骸、そして大樹型の1級テロスの死骸が並ぶなか、岩に腰を下ろす二人の影…


しかし、その二人の姿は血に塗れており、武器も装備も粉々に破壊され、息をしているのもやっとの状態だ…



「……ロクア……そこにいるか…?」



サムエルが問う。



「……えぇ……います…よ…。」



ロクアが答える。


二人は互いに横に並んでいるが、片や両目を引き裂かれ、片や両足が原形を留めていないほど損傷している。



「いくつ……やった…?」


「目の前の…ことに…手一杯で…数えてる余裕なんて…なかったです…よ…。」



そんな会話を交える中、いまだ10を超える2級テロスの群れが二人を囲んでいる。


その様子を見て、二人の所有していた剣と短剣を床に刺すヴィルヘルム。



「聖騎士団のロクア、サムエル……お前たちの名は一生覚えておこう…。」




まさしく、守護者たらしめる戦い方だった…。





2級テロスが一斉に二人に襲い掛かる。



二人は笑顔のまま、テロスの群れに自身の血と肉をむさぼられていく…



その地獄絵図のような光景に目をそらさずに見つめるヴィルヘルム。



「………うんざりだ……。」




~五日目~


16:10 クヴィディタス大国・国境付近:クヴィディタス帝国軍の野営地



拠点に鳴り響く悲鳴…



拠点の至る箇所が血の色に染まる。



それでも、二人は進むことを諦めなかった。



しかし、幾度も与えられた攻撃によって二人はすでに虫の息だった…



エルトロの爆破によって両足だけでなく下半身も失い、身体から血液と共に内臓がずり落ちるラインハルト大佐…


聖装備でも再生が間に合わないほどの重力による圧力で身体のいたる骨が砕け片眼が飛び散るアローラ…



ジークフリート大佐が殲越十二戦士にアローラとラインハルト大佐を同じ場所に集めるように指示をする。


アローラの身体の上にラインハルト大佐の半身が置かれる。


ジークフリート大佐はその場に歩み寄る。



「貴様ら二人で何かを変えられると…?」


「……キュー…………キュー……」



弱々しくアローラが息をする。

それは肺が潰れているのにも関わらず、必死に命をつなぎ留めるために身体が足掻いた末に聞こえるものだった。


ジークフリート大佐がしゃがみアローラの耳元でささやく。



「所詮、貴様は何も守ることも救うこともできないのだ…」



また…あの日と同じだ…




消えゆく意識の中でアローラはかつてのエリーナを思い出す。




15年前のあの日に…





救えなかった自分の部下、そしてエリーナを…





ちまたでは”リヴィディンの守護者”とうたわれてもアローラは知っている…





あの日、自分は誰一人、救えなかったことを…





所詮は自分が成し遂げたことなど、取るに足らないことばかり…





また、自分は同じことを繰り返すのか…?





「アローラ……!私は…!この数週間、あなたといれて幸せでした……!!」





アローラの目に再び光が宿る。





俺こそ……!君といられて、幸せだった……!!!





それはアローラがあの日、伝えられなかった気持ち…





もう……後悔はしない……!!!





この手で救えるものは救ってみせる…!!!!











「こいつらの後始末は任せ…」



立ち上がろうとするジークフリート大佐の喉に折れた剣が突き刺さる。



「ゴフッ…!……」



それは…瀕死の身体でもアローラに託したラインハルト大佐の剣だった。


アローラがジークフリート大佐の耳元でささやく。



「大佐……耳元でなくとも…言いたい…ことが…あるなら…あの世で……じっくり…聞いてやる…よ……!!!」


「(まずい…!!!)…大佐!!」



すでに目から光が失われたジークフリート大佐。


その状況に焦るアシムス…





背後の墓石が破壊される…





アシムスたちが振り向いた先には……





ヘーロス・ベルモンテの姿が…





それを目にしたアローラが言う…



「お帰り…この世界の……|希望(英雄)……」



英雄の目覚め……!!

読んでいただきありがとうございました。

今回でまさかのアローラさんを含めた聖騎士団第一部隊のメンバーが戦死を遂げてしまいましたね…

また、敵勢力側にもイラ大国の精鋭「殲越十二戦士」のメンバーが新たに登場しました。


今回の話だけで登場したキャラが多いので、今回登場した殲越十二戦士たちの情報を少し載せたいと思います!


・アシムス

能力は重力操作、以前にリヴィディン大国でフォートさんの部隊と対峙していましたね。

年は若いですが、熟達したパラフィシカーの能力で相手に隙を与えない人物です。


・フルメー

能力は行動予知、普段はスギムと共に行動をしています。

自分が見た状況の数分先に起きる光景を予知できますが連続で発動することはできないようです。


・エルトロ

能力は爆破、以前にハイドを殺害すべく襲った時にアンドリューに敗北しています。

一度流浪人に敗北こそしているものの殲越十二戦士の中ではかなりの実力者です。


・スギム

能力は対象拘束、触れた相手を力量に関係なく拘束できる非常に便利な能力を持ちます。

自身の能力で相手を動けなくさせてから一方的に肉弾戦をする戦法が得意です。


・イルーシャ

能力は幻覚、自身の周囲に幻覚作用のある香りを放ちます。

殲越十二戦士になる前は自身の能力を利用して複数の男性を従えていたみたいです。


・デニス

能力は透明化、以前にアンドリューに敗北したエルトロを救出した人物です。

ですがかなり残虐な性格をしており、過去に殲越十二戦士の者を二人殺害しています。


次回13話をお楽しみに!

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