7話「憧憬」
憧憬を抱き者が残した奇跡の憧憬…
~四日目~
アロガンティア大国のはずれにあるプセマ村で謎の少女アイヨと出会い、渋々次の街までともに同行することになったハイドとリアム。
プセマ村で一泊した後、ウォルターによって聖騎士団の目撃情報のある街まで歩き出す三人。
道中でアイヨは村から出たことで初めて見る世界に興奮を抑えきれないでいた。
「うわー!すごい綺麗!!」
「おーい、離れるなよー」
ハイドが走り出すアイヨを止める。
「もっと綺麗なとこ行きたい!」
「いや、俺らもやらなきゃいけないことがあってさ…」
「じゃ後でいこ!」
「あー…後でな。」
アイヨの自由奔放な言動に頭を抱えるハイド。
道中のアイヨは道すがらにあるものすべてに興味を持ち、まるで小さな子供のようにどこかへ行ってしまう。
ハイドとリアムはアイヨに振り回されてばかりで一向に街に進めていなかった。
「もーアイヨちゃん、おとなしくしててよ~」
「これじゃ、街まで俺たちの体力が…」
二人がアイヨに振り回されて数時間が経過した頃…
「リアムくん!あそこに街があるよ!」
「うんー…そーだねー…(疲れたよ~…)」
「やっとだ…」
アイヨが動かないように背中に担ぐリアムと疲労困憊でヘトヘトになっているハイドはやっと目的の街が目視できる距離にまでたどり着いたのだ。
すると、遠方で自分を呼ぶ声に気が付くハイド。
「……イド…ー!………ハイ………ド…ー!」
「あれは!」
遠くてわかりにくかったが、ハイドを呼ぶ声の主、それにハイドは気が付いたのだ。
「レタ!!」
「久しぶりだね、ハイド!」
「あ、レタくん!」
「カニカニ!」
「カニス!?」
ハイドとリアムは数ヵ月ぶりのレタとカニスの再会に喜ぶ。
しかし、そのレタの後ろにはハイドのよく知る装備を身に着けた人物が五人いた。
そのうちの一人がレタに問いかける。
「レタ君!彼らが君の言っていた”流浪人”かい?」
「はい、フォートさん。」
レタに問いかけた人物はフォート。
聖騎士団第二部隊の隊長であり、残りの四人は同じ隊であるロイフ、テギィ、ネルコフ、シャルケルであった。
そのうちテギィと名乗る人物がハイドに話しかける。
「きみ!ハイドだよね?」
「え!?あ、はい…」
「俺テギィだ!ロクアからきみのことは聞いてるよ!」
話によるとハイドを守護してくれた第一部隊のメンバー、ロクアとテギィは幼馴染の親友であるらしくテギィは何度もロクアからハイドの聞いていたのだった。
ハイドと親交を深めるテギィをどかしてロイフはハイド達にここまでの自分たちの経緯を伝えた。
第一次リヴィディン大国侵攻で西部市街地を守護していたが、イラ大国の殲越十二戦士のアシムスによって街を復興困難なほどの損害を与えられる。
民間の避難は事前に済ましていたため、死亡者は奇跡的にいなかったが、聖騎士団としては喜べるような状況ではなかった。
それから数時間後に第一部隊とレタと合流、ただちに王都でジャクソン王に状況を報告する。
そこでレタはアローラの救出を王に提案した。
ジャクソン王に了承されたレタ達はアローラと共に最後まで特級テロスと戦い続けた傭兵、レオンハルトと名乗る人物がアローラ救出の手助けをしてもらえると考え、第二部隊のメンバーも加え、アロガンティア大国に向かうことになったのだった。
そして、アロガンティア大国に侵入後、すぐに第一部隊と第二部隊は別行動をとることになった。
第一部隊は”レオンハルト”の捜索
第二部隊はアロガンティア大国の動向について
大国に侵入し潜伏した街でアロガンティア大国とクヴィディタス大国との間に同盟が結ばれるとの噂を聞いた聖騎士団はそれを放置すれば新たな戦争のきっかけになりうるとして阻止するために別行動をすべきだと考えたのだ。
「それで今に至るんだ。」
ロイフがハイドに説明する。
ハイドは久しぶりに会ったカニスを抱きながら聖騎士団の動向を理解する。
リアムは自分たち”流浪人”の目的であるヘーロスの封印解除の件を伝えた。
加えてヘーロスの封印を解く手掛かりになりそうな10の秘宝のひとつ、心魂の憧憬についても説明した。
すると、シャルケルがリアムたちにこう言った。
「その秘宝かはわからないけど、ここから少し離れた街でそこに住む人々が10の秘宝について噂していたのを聞いたよ。」
「ほんとですか!?」
ハイドはその街の場所をシャルケルに尋ねる。
フォート曰く、第一部隊と自分たちが別行動を開始し始めた街と距離的にはそこまで変わらないことからもしかしたらその街に第一部隊のメンバーがいるかもしれないとも教えてくれた。
ハイドとリアムはその街に向かうこと決める。
ロイフは万が一、自分たちもしくはハイド側で問題が生じたことを考えてハイド達に自分たちがこれから向かおうとしている街や場所を記した地図を渡した。
「ありがとうございます!…アイヨいくぞー」
「わたし、この子の方行きたい!」
「え、え!?…おれ……」
アイヨが興味を抱いている人物、それはレタだった。
いきなりの発言に誰もが困惑していたが、聖騎士団最強の男であるフォートがいること、そしてハイド達流浪人の任務の危険度から考えてハイドとリアムは第二部隊に預ける方が安全と考えた。
それを了承したフォート達はハイドとリアムを見送る。
アロガンティア大国の西側に向かうレタ達、第二部隊。
目を輝かせながら周囲を見渡すアイヨがレタに話しかける。
「ねーね!きみ、お名前は?わたしの名前はアイヨだよ!」
「それはさっき聞いたって……俺はレタだ、よろしくな…。」
「よろしく、よろしく~!」
レタの手を握り思いっきり上下に振るアイヨ。
アイヨのテンションについていけていないレタだが、先ほどハイド達にアイヨと出会った経緯を聞いたことでレタはアイヨに質問する。
「アイヨは…その…ずっと一人だったのか?あのプセマ村で…」
「うん!そーだよ!」
「そう…なんだ…。」
レタは自身と境遇が似たアイヨに同情の気持ち抱いた。
しかし、アイヨはその後に続けてこう言った。
「けどね!昔はそんなこともなかったんだよ!」
「え…?」
「アイヨちゃん、それはどういうことかな?」
アイヨの発言に少し興味を持ったテギィが尋ねる。
するとアイヨは自身の村、プセマ村について説明した。
プセマ村は心魂の憧憬によって具現化された村。
しかし、具現化されたのは村だけではなかった。
かつてのプセマ村には多くの村人が住んでいた。
だが…
時が経つにつれ、村は朽ち果てていくようになった。
そして村人まで次々と死んでいったのだ。
それはまるで、村そのものが儚い夢のように…
アイヨは物心ついたときから特異体質であった。
傷ついた身体はすぐに再生するのだ。それだけでなく非常に頑丈であり、数メートルある高さの木から落ちても骨折どころか擦り傷すらほとんど付かなかったのだ。
だが、村はアイヨを置いて次々と人が絶え死んでいく。
アイヨは小さいながら気づいてしまったのだ…
村だけでなくここに住む村人も含めて自分も心魂の憧憬による副産物なのだと。
「そ……そんなことが…」
レタはアイヨの村の真実に驚愕し立ち尽くしていた。
それはレタだけでなく、第二部隊の者たちも同様であった。
「でもね!ハイドが来て村の外に出してくれたからこんなすごい冒険できてるんだ!わたし生きててよかったー!」
レタはアイヨの表情を見て、笑みを浮かべる。
なんだろう。
アイヨを見てるとこっちまで心が落ち着くし、励ましてもらっている…
そんな感じがする。
レタはアイヨの手を握り歩き出す。
「じゃその冒険を続けよう…俺も……一緒に…行くからさ…」
「うん!一緒だよー!」
元気よくレタの肩を組み顔を近づけるアイヨ。
アイヨから目をそらしたレタの頬は赤色に染まっていた。
それを前方でほほえましく見ている第二部隊。
レタ達はそのまま歩き続けた。
そこでアイヨが少し小さな声で自分が抱いた疑問を口する。
「けど、なんであの人はわたしのこと欲しがってたんだろ~?」
「ハイドのこと?」
「ううん、変なお面付けてる人だったー!」
「!!」
そう、それはハイドが打ち倒したアロガンティア特務機関のひとり、カマエルのことであった。
~四日目~
アロガンティア大国・王都付近
洞窟のように暗く、まるで霧に覆われた山のような湿気…
そんな中、ひとりの仮面をつけた人物が歩いている…
その者は歩みを止める。
その先はまるで薄いベールに覆われたような薄暗い膜が広がっていた。
仮面をつけた人物はそのベールを通過し、先へ進む。
中は薄暗くどんよりとした空気が漂い、数多のテロスがこちらを見ているが襲ってはこない。
人型をした”何か”の前に立つと仮面をつけた人物は口を開き始める。
「プセマ村の少女の件は失敗したようです。」
それを聞いた人型をした”何か”は仮面をつけた人物の方を向く。
「こちらの条件を吞まないのであれば今回はこれで…」
「いえ、お待ちを。」
仮面をつけた人物は同じ仲間の一人が死亡したことからプセマ村にいる少女の詳細を尋ねる。
「あの子は…秘宝のいわばバグのような存在……心魂の憧憬の対価を必要としない異例の存在です。」
「ほう…異例…ですか。…まるであなたのことを言っているようですね。」
人型をした”何か”の全貌が明らかになる。
それは白い人形のような身体で目や口は存在しない人間とはかけ離れた不気味な姿をしていた。
仮面をつけた人物は続けてこう言った。
「テロスにして唯一、完全な意思疎通が可能な個体……イデリス殿。」
憧憬に見合う対価、それは最果ての夢…
読んでいただきありがとうございました。
今回の話から明確に物語に関連してきた10の秘宝のひとつ心魂の憧憬。
また、今回の話の最後に現れたアロガンティア特務機関の者が企んでいることとは?
次回8話をお楽しみに!




