3話「忘れ去られし村」
古の忘れ去られし憧憬…
それは心魂が望みし儚き現実…
~三日目~
「なんでお前が…!」
ハイドはウォルターを睨めつけながら問う。
それもそのはず、ハイドはアセティア大国でウォルターによって攫われ、クヴィディタス大国でジャック王に殺されるところだったのだ。ハイドが怒るのも無理はなかった。
だが、ウォルターはそんな怒るハイドに対しても不気味な笑みを見せながら口を開く。
「いや~それは悪かったって~……でも、君はちゃんと助かっているんだし気にしないでくれよ~……。」
「気にするに決まってるだろ!!」
ハイドとウォルターの会話に挟まれどうしていいかわからず困惑するリアム。
「(このタイミングでおかわりしに行ったらダメだよね…)」
三人は同じテーブルに座り、話を続ける。
そこでハイド達はウォルターがこのアロガンティア大国出身の者だと知り、この街にいても不思議ではないことを知る。
さらにハイドはウォルターからさらなる情報を入手するため話を続けた。
「…で、あんたがなんで俺たちのとこにきてるんだよ。また誰かの差し金か?」
「今回は違うよ~…ちょうど僕もこの大国に帰ってきてばかりでさ、せっかくだから君たちにこの大国を案内しようかな~って……」
「信じられるわけないじゃないか!」
リアムが大声で答える。
ウォルターは相変わらず笑みを保ったまま呑気に果物を口に運んでいる。
二人は考えた。
現時点でウォルターと戦うことになっても倒すことはおろか、逃げることもおそらく不可能だろう。
状況的には圧倒的にこちらが不利…しかし、そんな中でウォルター本人から大国の案内をかって出た。
本来なら罠だと疑うべきだが、二人にはすでに選択肢はなかった。
理由は大きく分けて二つ。
まず、仮に罠だとしても今の二人にはウォルターを出し抜くことが不可能であること。
二つ目に、アロガンティア大国は”流浪人”でもほとんど情報のない大国、そこで地理的に何も知らない二人が聖騎士団を探すのは困難を極める。
以上の理由からハイド達は他に選択肢はないとして渋々ウォルターを同行させる決断をした。
三人は街を出て、聖騎士団を探すべく次の街に向かう。
道中でウォルターはほとんどハイド達の邪魔をしなかった。
詮索する様子もなくただ、黙って付いてくるのみ。
稀に道の指示する以外はほとんどウォルターから話しかけてくることはなかった。
だが、逆にそれがハイド達の不安をさらに駆り立てる。
「(何が目的なんだ…)」
ハイドは常に後ろにいるウォルターに警戒しながら歩き続ける。
警戒されていることに気が付かないほどウォルターもバカではない、二人の常に臨戦態勢に入れる姿勢を見てウォルターはため息をつく。
「ここまで僕って信頼されていないものなんだね~…」
「当たり前だ!」「当たり前でしょ!」
ハイドとリアムが同時にツッコむ。
「そもそも、お前は何が目的で俺たちに付いてくるんだよ!」
ハイドの問いにウォルターは呑気に両腕を頭の後ろに置きながら話す。
「そりゃ強者と戦いたいからさ~……以前はヘーロス・ベルモンテの所在教えてもらったけど、今じゃ封印されちゃったしね~…」
「そんなこと言うなら手伝ってくれてもいいのに…。」
リアムが小声でつぶやく。
ウォルターの目的は常に一貫して強者との戦闘だった。
以前にもクヴィディタス大国にいるヴァレンティーン将軍と一戦交えるよう願い出て、戦闘を行ったとウォルターは話し出した。
しかし、勝敗は両国の者に制止されたことでお預けとなった。
二人は闘いに自身の美学を持つ者同士、互いの了承の上での戦闘だった。
しかし、根本的に異なる部分が存在した。
それは、闘いにおける価値観だ。
ヴァレンティーンは自身の勝利を以てしての闘い、
ウォルターは闘争のままに殺し合う闘い、
……をそれぞれ望んでいた。
闘争を中断されたウォルターはさらに別の獲物を求めていった。
「いや、聞いてないんだけど…」
「あれ?そうだっけ~…?」
突然、自身のことを話し出したウォルターにハイドは呆れ口調で言う。
ウォルターは話題を変えるべく、アロガンティア大国にまつわる言い伝えについて話す。
最初はくだらない内容だとして聞く耳すら持たなかったハイドだったがなぜだか、徐々にその話にのめり込んでいった。
アロガンティアに古くから存在する村…
その村には人の欲と憧れが詰まった魂が眠っている…
その魂に触れれば自身の憧れを具現化させる…
「と言われていた。」
場面変わり、アドルフとアランの会話に戻る。
アランはその言い伝えに興味を持ち、その言い伝えの発祥とされる村を訪れた。
その村は地図にも載らず、街に住む者の詳細な場所どころかどの方角に存在していたのかすら大半は知らない。
アランはとある街にいたその村を訪れたことのあると発言する高齢の女性から聞いた場所に向かった。
そこは、すでに荒廃した村で、住んでいる人など誰一人いなかった。
だが…
そこでアランは活発な少女が村で一人走り回っていたのを目撃する。
声をかけようとするもすぐに深い霧の中へ消えてしまった少女を見て、アランはそれを自身の幻だと思っていた。
「なるほど。」
その内容を聞いたアドルフは真剣な表情で先ほどの言い伝えの内容を口にする。
「その魂に触れれば自身の憧れを具現化させる…。」
アドルフは何かを確信した様子でアランに礼を言い、アセティア大国を出たのだった。
アロガンティア大国でウォルターと行動を共にしているハイドとリアムはその村の言い伝えを聞き、興味を持つようになる。
「その村は本当に存在するのか?」
「……存在するよ…」
少し間を空けてウォルターが答える。
その様子を見たハイドはウォルターがその村について何かを隠していることを察する。
「じゃ、そこに案内しろ。」
「え、えぇ!?ハイド?」
当初の目的とは異なることに困惑するリアム。
ハイドはウォルターから少し離れた所にリアムを連れ、耳元で訳を説明した。
ハイドはそのアロガンティアの民から忘れ去られた村についてウォルターがさらに何かを隠していると考えた。
本来の目的ではアロガンティア大国に潜伏している聖騎士団に会うことだが、先ほどの村であれば人は近づかない…
他国の者が潜伏するには非常に条件の整った場所だ。
ハイドはウォルターが隠していることが何にせよ、大国内のどこにいるかもわからない聖騎士団を探すためには少しでも可能性のある場所に向かうべきだとリアムに説明した。
「た、たしかに…そーだけど…」
リアムが危惧していることはハイドにも理解できていた。
それは同行しているウォルターが何をしでかすか分からないという点だった。
アセティア大国でウォルターの実力の片鱗を見たリアムの予想では10の秘宝を持つウォルターにはアドルフでも勝てるのは厳しいと考えていた。
仮にその村に行き、聖騎士団と合流できて、ウォルターがこちらに攻撃をしてきた場合、全員で挑んでも相打ちに持ち込めるか否かだろう。
リアムにはハイドを死なせてはいけないという使命感を持っていた。
それは、ストレンジャーとして重要な人物だからではない…
リアムの中で守るべき大切な仲間であり、親友だからだ。
現実世界で仲間のモーリスがハイドや仲間を守るために散ったように、リアムもまた、仲間やハイドのためなら自分の命を犠牲にする覚悟があった。
リアムはハイドの目を見た。
それは仲間として、親友として信頼してほしいと心から願う瞳をしていた。
リアムは自分の想いを胸に抱きつつも、ハイドの意見を汲んだ。
「ウォルター、その村の場所は?」
「意見がまとまったようだね…」
二人は決心した表情でウォルターについていく。
深い森を抜け、霧が濃くなっていく。
冬の季節でもないのに、気温がどんどん低くなっていく。
ハイドは自身の持つ[[rb:真理の神秘 > ダブマ]]の能力で以前にアンドリューの炎を吸収したことで炎を放出し、たいまつを作製した。
それを見たウォルターがハイドに話す。
「へぇ~、ちゃんと秘宝の力も使えるようになっているじゃないか~…」
「…まぁな。」
冷たい態度をとるハイド。
それとは裏腹にウォルターは笑みを浮かべ、そのまま歩み続ける。
しばらくしてウォルターが足をとめる。
「着いたのかな…?」
不安げにリアムがハイドに尋ねる。
ウォルターはハイドとリアムに向かってあることを言う。
「あ~…そうだった…言い忘れていたけど…………この村も秘宝の副産物だよ~…」
「え?」
深い霧の向こう側に広がっていたのは…荒廃した村の姿が徐々にあらわになる。
「これが…」
「忘れ去られし村…知恵のある者は”プセマ村”と呼ぶ…」
人の気配すらない荒廃した村を見たハイド達は言葉を失う。
なぜ、こんな国境のはずれに村が存在しているのか…
村といえども、プセマ村は村と呼ぶにはあまりにも広大な面積を持っていた。
そしてこの、村そのものが…
秘宝の副産物であること…
それがハイドには到底信じられるようなものではなかったからだ。
「ん…?あれは…」
霧の奥に人影を見つけるリアム。
すると突如、二人の脳内にソフィアから連絡が入る。
それはアセティア大国にいるアドルフからの情報、プセマ村に関する内容だった。
それを聞いたリアムはこの村そのものが、心魂の憧憬によって生み出された代物だと理解した。
霧が晴れていく…
二人の前にいた人影…
そこには仮面をした人物が一人の少女を縄で縛り眠らせていた。
「あいつは…!!」
ハイドはその人物と出会うのは初めて出会った。
しかし、仮面を身に着けた別の人物とはすでに面識があった。
そう、アロガンティア特務機関だ。
「オズワルド…」
ウォルターが仮面の男に向かってそう呼ぶ。
これまで余裕の笑みを浮かべていたウォルターにしては珍しく、少し驚いた様子をしていた。
どうやら、ウォルターもアロガンティア特務機関がここにいるということは想定外のことだったようだ。
オズワルドと呼ばれた仮面の男がこちらに気が付く。
「我々は本名で言わないはずだが?……ラファエル…」
「え!?もしかして、ウォルターって…」
そう、ウォルターもまた、アロガンティア特務機関の一人だった。
オズワルド・アシュフィールドこと、カマエル・アシュフィールドはハイドに気づき、ハイドの方に視線を向ける。
「ほう、真理の神秘の所有者か。流浪人と同行しているということは…君は……知ったのだな…”世界の真相”について。」
ハイドとリアムは臨戦態勢をとる。
二人はこのカマエルがどこまでのレヴァリィ世界のことについて把握してるのかは知らないが、謎の多いアロガンティア特務機関をここで一人で倒し、情報を得ることを決める。
しかし…
「なっ…!」
二人の背後から目にも止まらない速さでハイドを襲おうとするミミズのような姿をしたテロスの影が…
先ほどの霧でテロスの存在に気が付くのが遅れたハイドを身を挺して守ったのはリアムだった。
「リアム!!」
テロスはリアムの口から体内に入り込む。
それを見たウォルターはハイドを抱えながらその場から少し離れる。
「離せ!ウォルター!!」
「あれは寄生型…1級テロスだよ…」
ウォルターの話ではリアムを襲ったテロスは1級テロスであり、戦闘能力はさほど高くないが、対象の体内に寄生し、宿主の身体を操るといった能力を持つ個体であった。
これまでもアロガンティア大国にはこの寄生型1級テロスを何度も倒そうと試みて多くの兵が犠牲になったとウォルターは説明する。
「リアムを助ける方法は!!」
「う~ん…殺すのは簡単だけど…助けるのはけっこう骨が折れるな~…」
「なら、不可能じゃないんだな!」
ハイドはウォルターにリアムの助けるように言う。
意外にもウォルターは素直に従うも、かわりにカマエルを倒したらとの条件を提示される。
ハイドは渋々ウォルターの条件をのみ、カマエルの方へ向かう。
「悪いが、リアムのためにお前はここで倒す!」
「構わん…ではこちらが勝った場合、君の秘宝をいただくとしよう。」
これまでの敵とは異なる。
1級テロスを難なく倒すことのできる殲越十二戦士とおそらく同等クラスの実力を持つアロガンティア特務機関…
以前はアンドリューの助けがあったから何とかなったものの、今回は自分一人で立ち向かわなければならない。
勝てるか、勝てないかじゃない…
親友の命を救うために…!!
ハイドは自分の持ちうるすべてをぶつけるために秘宝の力を開放する。
「最初から全力で行くぞ!」
互いの絆のために…
読者の皆様、明けましておめでとうございます!
いつも僕の作品を読んでいただいている方、なんだこれ程度で立ち寄ってくれた方々、読んでいただいているだけでとっても励みになります…!
この作品「ハイド」は一昨年の7月からpixivの方で小説投稿を始めていき、pixivサイトの方で本作品も中盤を越えて終盤に差し迫ってきたところで、もう少し違うサイトで投稿したら反応してくれる方が増えるかなー?という甘い考えの元、こちらの本サイトで投稿を始めてきました。
現在、pixivサイトでは本作も最終章に突入し、内容もかなり壮大となってきました。
また、読者の皆様に僕の素人丸出しの文表現でイメージしにくいであろう各キャラのデザインを素敵な絵師様たちに依頼する形でイラストとしても投稿を行っています!
ぜひ、興味のある方は以下に僕のpixivのURLを乗せておきますのでご覧ください!
pixivのURL⇒https://www.pixiv.net/artworks/114674738
新年あけて新たなことにチャレンジしてみたいと思いつつも、まずは自分がこれまで広げてきたことに責任を持ってやり遂げるべく、今年も小説は毎週土曜に更新していく予定です!
読者の皆さま、今年も小説「ハイド」をささやかに応援していただけると嬉しいです。
次回4話をお楽しみに!




