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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第2章 ~アポカリプス計画~

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11話「代償」

選択による代償、


代償による結果、


それを見届けた者は何を想い、何をするか。

「あ、あの…さっきはありがとうございます…!」



ハイドがイヴリンに礼を言う。


それは先ほどハイドとヴァイオレットがアポカリプス計画の犠牲となった民間、そしてガーディアンズのメンバーによって窮地に立たされていた時、イヴリンが窮地を救った場面に遡る。






「んで、生きたいの?死にたいの?どっち。」


「(この人は…)」



ヴァイオレットはイヴリンの身なりを見てすぐにH.U.N.ハンT.E.Rターの者だと理解した。



「生きたいです…!!」


「え?」



問われたことに対し、素直に答えるハイドにヴァイオレットは動揺を隠しきれなかった。




場面は戻り、イヴリンの車でガーディアンズの拠点を目指すハイドたち。

イヴリンはハイドの先ほどの救出した際の受け答えのことを指摘する。



「まさか、あんなに素直に言うなんて…こっち一応、敵対してる側だからね…?」


「でも、俺らのことを助けてくれたってことは味方…でいいですよね?」


「好きに判断して。とりあえず襲うことはしないから。」



イヴリンはハイドたちを救出する前にH.U.N.ハンT.E.Rターの本部でダニーにアポカリプス計画の内容、そしてダニーが機密書類で発見したT.Z.E.Lツェルと呼ばれる謎の組織について伝えられていた。


そしてストレンジャーの他のメンバーに何かあったときのためにガーディアンズの動向を監視するように頼まれていた。


そのおかげでハイドを助けることができたのだ。



場面変わり、アドルフがアンドリューたちと戦闘を行うエリックのもとに駆け付ける。



「やっと大物の登場だ…」



アドルフは自身の指に纏った鋼線を用いてエリックがいる周辺の建物を切り刻む。


瓦礫がエリックに降り注ぐ。


しかし、なんなくそれを回避やサイバーインプラントで改造された機械の義手で破壊していく。

その間にアドルフは意識を失ったアンドリューとダニーを自身のもとへ引き寄せた。



「久しぶりだね~!アドルフさん…!」


「……。なぜ、君がここにいるんですか…。」


「上からの指示でさ、そこのアンドリューくんたちを殺させてくれない?」


「生憎、そういうわけにはいきませんね。」



睨み合う二人。


お互いの動きを警戒する両者は自分から先手を打たない…


しばらくの沈黙が続き、先に動いたのはエリックだった。


エリックは取り出した銃をアドルフに向け、発砲する。

数発の銃弾はアドルフに直接向かう弾、アドルフとは別方向に向かっていく弾があった。



「(やはり狙いはアンドリューたち…)」



エリックの狙いを察知したアドルフは鋼線を張り巡らせ、自身に向かってくる銃弾、そしてアンドリューたちに向かう銃弾すべてを鋼線でからめとり防ぐ。

しかし、その隙にエリックがアドルフに急接近し、攻撃を行う。


鋼線術の欠点…


それは接近戦であった。

アドルフの鋼線術は中距離戦闘に非常に長けた武器…


幾度も実戦を重ねた歴戦の猛者でも目を凝らさないと目視するのも困難な鋼線、それを自由自在に操作し対象の捕縛や攻撃にいたる全てにおいて可能とするアドルフの技術…


それはたとえ、世界一の射撃の名手でもあるエリック・ベルモンテでも警戒する技であった。


だがアドルフの強みは鋼線術だけでない…


あくまでアドルフにとって鋼線術は中距離や遠距離に対象がいたときの対処でしかなかった。


アドルフの本当の強み…


それはかつて世界一の殺し屋だったベルモンテ兄弟…彼らに匹敵するほどの戦闘能力だった。


ヘーロス、エリックはともにサイバーインプラントやバイオインプラントを施していなくても銃弾の回避、圧倒的な身体能力を保持する現代の異能。


それに対してアドルフは自身の高レベルな暗殺技術を用いてヘーロスやエリック達と同等レベルの戦闘を可能にしていた。



「やっぱりアドルフさんと殺し合うのは楽しい…!!」


「……チッ……。」



しかし、いくら技術で補おうとも相手は怪物…


徐々に防戦中心に攻められていくアドルフ。


近距離でも肉弾戦と絡めて銃を使用していくエリック。


それに対し鋼線を用いて銃撃を間一髪で防ぐアドルフ。


そこに畳み掛けるかのようにエリックがアドルフに肉弾戦で攻め立てていく。


サイバーインプラントによって改造された義手を左腕に身に着けるエリックの攻撃はいくら強化系バイオインプラントを施したアドルフでも骨に衝撃が伝わるほどの威力を誇る。


そして、とうとう壁越しにまで追い詰められるアドルフ。



「もしかしてホントに俺に勝てると思ってたわけ?」


「……。…これで勝てるなら世界も君らに苦労しないですよ。」


「!?」



エリックが気が付く。

アドルフを追い詰めたエリックだったが、追い詰められたのは自分であるということに…。


周囲の壁や建造物が一斉に崩壊する…


まるで災害によって破壊されたかのように…


そしてアドルフは隙を見てエリックにナイフを投げる。


それを目視より先に身体が反応し、避けるエリック。

しかし、アドルフはナイフについた鋼線を自身に引き寄せる動作を行う。


それにより壁に刺さったナイフとアドルフに挟まれたエリックを鋼線が襲う。



「(マジか…!)」



左腕で鋼線を防ぐエリックだったが、アドルフは崩壊する瓦礫にあらかじめ纏わせた鋼線を引き寄せる。

すると瓦礫は一斉にエリックに向かって上空から降り注ぐ。


防ぐことのできないエリックにマンション数軒ほどの質量がぶつかる。


激しい轟音と砂埃が舞う。


その隙にアドルフは瀕死ではあるも意識のあるエヴァとアンドリューとダニーを運び、その場から撤退した。



「アドルフ…さん…」



瀕死のエヴァが車を走らせるアドルフに向かって口を開く。



「エヴァ、今は安静にしてください。」


「ありがとうございます…。」



アドルフはアンドリューとエヴァがダニーのもとに向かったあとに自身も「ボーンクラッシャーズ」と動向を探るために拠点の外に出ていた。


その時にアドルフは民間の者に襲われたこと、それだけでなく街中の人々が自分たちのような政府に反逆を掲げる者たちや犯罪者などに躊躇なく攻撃をし始めたのだった。


勘のいいアドルフはすぐに理解した…


アポカリプス計画が始まったのだと。


アドルフはすぐに行動に移った。


瞬間記憶能力をクリスとの訓練で得ているアドルフはダニーに拠点で送られた暗号の内容を覚えていた。


それを脳内で解読しアンドリュー達がいる場所に急行しなんとか救出することに成功したのだった。



「(まずは…仲間の安否を優先しなければ…)」



アドルフはガーディアンズの拠点に向かう。

その時だった。



「ア…アドルフさん…」



目を覚ましたダニーがアドルフを呼ぶ。



その頃、イヴリンによってハイドとヴァイオレットはガーディアンズの拠点に帰還した。

拠点内部では多くのガーディアンズの者たちの死体が転がっていた。



「みんな……!」



死んでいる者にはサイバーインプラントが施された者だけでなく、施されていない者もいた。



「ここで殺し合いが…」



ハイドはアポカリプス計画によって政府の洗脳下におかれた者が洗脳下におかれていない者と戦いになっていたことをこの惨状から把握した。


イヴリンがヴァイオレットをなだめながら先へ進む。


先のフロアへ進むとそこにはさらに多くの死体があった。


先ほどの惨状と同じだろう、同士討ちにあってやられた者たち…



「これは…」



ハイドが一人の死体の身体を貫いているアンカーを見る。

それはハイドがよく知る者の使用するサイバーインプラントだった。



「モーリスさんのだ…!!」



ハイドは一気に青ざめた。


このアポカリプス計画はサイバーインプラントを施している者に潜伏している”アポカリプスウイルス”が脳内に移行されることで政府の洗脳下におかれるもの…


ストレンジャーにもサイバーインプラントを施している者は二人いた…


ソフィアとモーリスだ。


もし、もし仮にこのアポカリプス計画の犠牲にモーリスが含まれていたとしたら?


モーリスは全身の75%にサイバーインプラントを施している改造人間。

つまり全身のほとんどが常に武装している人物だ。


そんな彼が政府の洗脳下によって自分たちに攻撃を開始したら…



「まずい…!」



ストレンジャーと暮らし数ヵ月、ハイドはモーリスやアドルフの戦闘能力を間近で見ている。


モーリスが自分たちに攻撃をした場合、とめられるのはヘーロスがいない今、アドルフくらいだと。

いや、対人に長けたアドルフに対してモーリスは半分以上が機械でできている。


相性的に考えればアドルフも殺害目的ではなく、拘束目的で考えれば厳しい状況だろう。



「ちょっと…ハ、ハイド…!」



ヴァイオレットたちを置いていき、ハイドはリアムやソフィアがいた場所へと走る。



「(リアム…!…ソフィアさん…!…オルガさん…!……モーリスさん……!!)」



扉を開けるとそこに広がっていた光景とは…



「…!!…そんな…」



そこには気を失っているリアムとオルガがいた。

リアムは胸に、オルガは腹にそれぞれ一発の銃弾を身体に撃ち込まれていた。



「リアム!オルガさん!」



二人のもとへ駆けつけるハイド。


なんとか息はあったが、このまま放置しておけば間違いなく死に至る。

ヴァイオレットは二人を隣の部屋に運び、そこで治療を行う。


ハイドはもう一人の仲間を、ソフィアを探していた。

するとハイドはイヴリンに呼ばれ彼女のもとに向かう。



「ソフィアさん!」



そこには頭から血を流したソフィアが倒れていた。

かすかに意識があるようだった。



「ソフィアさん!聞こえますか?」


「う……うん…………ハイド…逃げ…るん…だ……」


「え?」



そうソフィアが言った途端、壁を突き破りモーリスがハイドに突進してくる。


ソフィアを巻きこまれないようにイヴリンに預けるも、モーリスの攻撃の回避に間に合わずハイドはそのまま隣の壁を突き破り吹き飛ばされる。



「ぐっ…!……」



なんとか手持ちのナイフを壁に突き立て、勢いを殺したことで致命傷を避けたハイド。


アドルフとの訓練によって培った技術だ。


ハイドは立ち上がり、洗脳下におかれたモーリスに向かって必死に呼びかける。



「俺です!モーリスさん!!ハイドです!!」


「反逆…行為……殲…滅……。」



そう言いモーリスは自身の腕を変形させ小型のキャノン砲をハイドに放つ。

周辺にある機材や椅子などを用いてなんとか躱すハイド。



「モーリスさん!!」



ハイドはこれ以上拠点内部での戦闘は危険と考え、先ほどのモーリスの攻撃で外へと空いた穴から外に出る。


外に出れば近辺にいる民間人に危険が及ぶ可能性もあった。

それだけでなく仮にその者がサイバーインプラントを施していた場合は無論、こちらに攻撃してくるに違いない。


ハイドにとってはデメリットな選択だった。


しかし、それを選択する理由にハイドは拠点内部にいるヴァイオレットやイヴリン、それだけでなくソフィアたちにも危害がさらに及ぶ可能性の方が自分の身よりも心配だったのだ。



「(アドルフさんはどこ…!)」



ハイドは猛攻を続けるモーリスに呼びかけながら、戦闘を繰り広げる。


サイバーインプラントによってあらゆる重火器を装備しているモーリスの攻撃は範囲が非常に広く、いくら戦闘訓練を積んだハイドでも無傷で躱すのは困難だ。


次第に追い詰められていくハイド、いまだモーリスに一撃も攻撃を加えられていない。


ハイドはアドルフが来るまでの間、時間稼ぎをしようと試みるも、今の自身の体力的な面から考えても望みは薄かった。


ついにハイドは体力の限界を迎え、モーリスの一撃をもろに食らう。



「はぁ……はぁ……」


「反逆…行為……殲…滅……。」



ハイドの髪を掴み、ゼロ距離でのキャノン砲をお見舞いしようとするモーリス。


この距離で食らえば間違いなく死ぬ…


素人でもわかる…


それほど威力を持った攻撃がいまハイドの放たれようとするなか…


ハイドの目はまだ、諦めていなかった。



その頃、政府の役人が集う国会ではカーク大統領が国会の上役たちが会話をしていた。



「カーク大統領、本当によかったのですか?」


「あぁ、やむを得まい。”アルハンブラコーポレート”襲撃でウイルスのサンプルがとられた。ワクチンを作製され対策をされる前に実行せねばならなかった。……世界の平和のために。」



カーク大統領は平和を望む男だった。


おそらくこの現代に生まれた者のなかでも最も彼は平和に憧れ、平和を愛していた。


彼の生まれはこの世界の中では非常に珍しくなんの不自由のない暮らしができた。


しかし、賢かった彼はわずか10歳の誕生日を向かえる前にはこの世界の現実を理解していた。


なぜ人々は平和を望みながらも争いをするのか……


彼は考えた。


そしてあるひとつの答えにたどり着いたのだ。




人は平和を望む。だが各々が持つ正義のために人は行動する。その正義はときに悪となり、人を傷つけ争いが生まれる。


争いは人に憎しみを植え付け、それはさらなる争いを生む。


ならば、政府となる”正義”が……


数多の正義ではなくたったひとつの正義のもと、人は行動すればいい。


さすれば、正義のぶつかり合いは消え、本当の平和が実現する。




それは、平和を愛すがゆえに歪んだ思想だった。



カーク大統領もこの計画を実行に移した時点で覚悟していた。


一定数の民が犠牲になることを。


その事実に目を背けるほど彼は冷酷にはなれなかったのだ。

しかし、そんなカーク大統領にある者が声をかけた。



「この計画を後悔しているのですか?」



それは同じ政府の上層部にいる者、ウィルフォード・Gグリーン・ウィザースプーンだった。


ウィザースプーン一族の当主にして政府の上層部のなかでも大統領と接することのできる数少ないウィルフォードはこのアポカリプス計画の立案者の一人だった。


彼は計画実行の選択に戸惑いを感じているカーク大統領にこう言った。



「何事にも偉大なことを為すには代償・・が必要なものです、大統領。

そう気を落とさずに…自分の選択を信じましょう。」


「あぁ、そうだな。君の言う通り私の決断した選択なのだ、自分の行いには最後まで責任を持たねばな。」



カーク大統領が国会の仕事を終え、自室に戻るとそこには見覚えのない男が二人立っていた。



「だ、誰だ!君たちは!」


「お初目にかかります大統領、私はH.U.N.ハンT.E.Rター所属のダニー・バーキンという者です。」



すでに負傷し立つのもやっとな男はそう言った。

そして隣の男はストレンジャーのアドルフだと名乗った。


カーク大統領はこの計画によって怒りを覚えた二人が自身を殺すのだと思い、あえて警備を呼ばなかった。



だが…



「私たちはあなたを殺害するつもりはありません。」



そうアドルフが言う。


そして続けてダニーがアポカリプス計画が始動してからすでに数時間が経過したこの状態で政府が予想する以上の多くの人間が被害にあっていることを説明した。

付け加えて二人はカーク大統領に即時、計画の変更を願い出た。



「アポカリプスウイルスはあなたの指示で行動を変えます。今の影響下におかれた者たちは罪のない者にまで攻撃をしてきています!」


「しかし、それは君らのような政府に反感を抱く者にとっての意見だろう…!」


「では、こちらを。」



アドルフが提示した映像には、ここに来るまでの道中にアポカリプスウイルスの影響下にある者が子供連れの母親を惨殺している様子だった。



「こ、これは…!!な、なぜ、彼はこんなことを…!?」



アドルフはこの母親は未成年の頃に一度窃盗を行い、それが政府の反偽行為と認識されこのような惨状になっていると説明した。



「この母親はすでに罪を償い、慈善活動も行っているほど献身的な姿勢を見せています。」


「あ、ありえない…!!こ、こんなことまでしろと私は指示をしていない…!!そもそも、なぜ影響下にある彼らは過去の犯罪歴を持っていた者のことを認識できるんだ…!?」


「!?」



ダニーとアドルフは困惑する。

なぜなら、二人はこの大統領が彼らアポカリプスウイルスの影響下にある者たちにこれまでの政府が保持する国民の犯罪歴を同期して認識させている者だと思っていた。


しかし、大統領はあくまで指示したのは「政府に反逆行為を犯す者を徹底的に殲滅せよ」とだけであった。

ダニーは大統領に尋ねた。



「じゃ…同期したのはいったい…」


「わ、わからない…だが、もしかしたら…」



思い当たる人物を口にしようとするカーク大統領。



「彼かもしれない…ウ…」



すると突然、大統領が頭部が破裂する。


飛び散った肉片は部屋中に飛び散り、大きな音がする。

まるで膨らませた風船が針に刺されて割れるかのように。


衝撃的な出来事にアドルフとダニーは驚きを隠せないでいた。


すぐに行動したのはアドルフだった。



「ここを出ます…!ダニー!」


「アドルフさん…だ、大統領は…」



すぐに警備が来ることを予測したアドルフは放心状態のダニーを連れて国会を離れる。


アドルフは大統領が死亡したことで、計画を変えることはすでに不可能と悟り、ソフィアが作製途中のワクチンこそが最後の頼みの綱だと判断し、ガーディアンズの拠点へ急行する。


それを国会の窓から確認する一人の男がいた。



「周辺の影響下にある者をすぐに向かわせろ。」



場面はハイドとモーリスの戦闘に戻る。


ハイドの髪を掴み、ゼロ距離でキャノン砲をお見舞いしようとするモーリスに対してハイドはモーリスの腕にナイフを刺す。


するとキャノン砲を開いていた部分が誤作動を起こし始め暴発する。

その衝撃でハイドは解放され、モーリスも片腕を大きく損傷する。


解放はされるも目の前で暴発した衝撃を食らったハイドは吐血する。



「俺は…まだ……諦めちゃ…いないですよ……。」



ハイドは諦めなかった。


モーリスがまた帰ってくることを。


しかし、そこに大勢のアポカリプスウイルスの影響を受けた者たちがぞろぞろと集まってくる。

それを見たハイドは、絶望する。今の体力では戦闘を続行することなど不可能だったからだ。



「そ…そんな……!」



ハイドに接近してくる者のうち、一人がハイドに向けて発砲する。


目を閉じ諦めるハイド。


しかし、銃弾を受けていないハイドは目を開けるとそこには…



「さっき…から……うるせぇぞ…」


「モーリスさん…!!」



ハイドを助けたのはモーリスだった。

先ほどハイドの機転の利いた攻撃で片腕がほとんど機能していないが、なんとかハイドの前に立ち、モーリスは続ける。



「おい……ハイド…ソフィアたちを…連れて……ここから……逃げろ…」



途切れながらハイドに逃げるように話すモーリス。

ハイドはモーリスの意識が戻ったことに歓喜極まったが、それと同時にあることに気が付いたのだ。


それは前にも見たことのある状況…


目は開いている、だが、その奥に宿る魂はすでに光を失っていた…


まるで機械に飲み込まれてしまったかのように…


モーリスはO.Sオーバーショックが再発しかけていたのだ。


おそらくハイドが腕に攻撃を加えた暴発で脳内にも大きな損傷が与えられ奇跡的にアポカリプスウイルスの機能を低下させることに成功、だがそれと同時に脳内にモーリスのオーバーショックを抑制させていたB.H技術ブリーチホライゾンオペレーションも破壊されてしまっていた。


すでに次第に自我を失うのを待つだけとなったモーリスは自我と身体が制御できる間に自身を犠牲にしてハイドたちを逃がす選択をしたのだ。



「モーリスさん…それは……モーリスさんも逃げましょうよ……!」


「俺は…逃げねぇ……家族あいつらが……迎えにきてる……から…な……」



そう言ってアポカリプスウイルスの影響を受けた者たちを見つめるモーリス。


モーリスの目には…そこには、かつて共に暮らした家族…ボーンクラッシャーズが見えていた…


頭ではわかっている…


そこにボーンクラッシャーズかれらはいないと。


だが、すでに自分の身体は自分のものでなくなりつつあるモーリスの目には…


自分を慕ってくれるケリーやその仲間たち…


彼らの声が聞こえてくるのだ。



モーリスはハイドの肩をしっかりと掴み、最期にこう言った。



「お前は俺が…俺たちが誇る…ストレンジャーかぞくだ。」


「……!!」



心のどこかでまだ、自分は認めてもらっていないと思っていた。


だが、そんなことなかったのだ。


モーリスは初めから認めてくれていたのだ、自分のことを。


それを最期に理解したハイドは涙を流す…


それを知ってか、知らずか、モーリスはハイドを軽々と持ち上げ拠点の方へ放り投げる。



「じゃあな…ハイド。」






「モーリスさん…!!!」




大勢の人間に囲まれるモーリス。

ハイドはモーリスの方を振り向かずイヴリンと協力してソフィアとリアムを車へ運び、車を急いで走らせる。



拠点の方で大きな爆発が起こる…。



想いの代償…それは最も儚く、尊い代物…

読んでいただきありがとうございました。

世界を脅かす事態が起こる中で、状況はさらに悪化していき、とうとう大統領やストレンジャーの一員の一人であるモーリスも…


さて2章も次回で最後となりますが、どのような形でハイド達はこの状況を乗り越えるのか…!?


次回12話をお楽しみに!

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