10話「人類の統一化」
あなたはその声を知っている。
どこから来るのかはわからないけど、
その声を信じなくてはいけない。
あなたはその声を知っている。
信じて動け、そこに理由や私情はいらない、
導かれるその声を信じて。
不気味なほどに静寂な街…
そこに乗り捨てられているバスが一台…
中には頭に銃弾を三発も入れられ、頭部の過半数が脳もろともはじけ飛んでいる男の遺体があった…
その男の名前はケリー・ヴィッカー…
街の人々はみな、動きを止めてただその場に立っている…
まるで……”誰か”の指示を待つ機械のように……
ダニーにストレンジャーのみが解読可能な文を送られ、そこに示された座標通りにアンドリューとエヴァは向かった。
そこでダニーは二人にアポカリプス計画以上の”何か”を伝える………
つもりだった。
だが、突如ダニーの背後に気配を悟られることもなく接近し、胸に刀を差した人物…その人物を姿を見てアンドリューはどこか初めて見たような感覚が湧かなかった。
「さっさと質問に答えやがれ!!(何モンだコイツ…!だがどこかで…)」
「あーもしかして自己紹介しないと怒るタイプ?」
「ざけんな…!!」
親友のダニーに傷を負わされたことで冷静でいられなくなるアンドリュー。
そんなアンドリューを前に全く怖気けずに男は口にする。
「君たちなら聞いたことない?エリック・”ベルモンテ”を。」
「は?」
その発言を聞いてアンドリューの思考が僅かに停止する。
アンドリューが気が付いた頃には男が目の前にまで接近していた。
「アンドリュー!」
男の攻撃が迫る中、エヴァがアンドリューの態勢を崩し攻撃から身を守る。
すぐにアンドリューはエヴァに支えられる形で態勢を戻し男に反撃を行う。
「へぇー(その戦い方は…)」
男はアンドリューの拳を造作もなく受け止め距離を取る。
「すまねぇエヴァ…!!今のサポートなかったら俺は…」
「しょうがないよ、だってアイツ…今…ヘーロスさんの…」
アンドリューとエヴァは目の前の男が口にした”ベルモンテ”という姓を聞いて動揺していた。
男は銃を肩に背負うように構えて口にする。
「やっぱり……兄さんに少し鍛えてもらってるみたいだね。」
「(兄さんだと…!?)」
「(もしかして…この人…!!)」
あり得ない。
そんな思考が二人の脳によぎる。
自分の家族であり、尊敬に値する人物の兄弟?
兄弟がいるなんて聞いたこともなかった。
ましてや、いるとしたらなぜ今まで…
様々な疑問が次々と浮かんでくる。
目の前にいる人物を見れば見るほど、二人は脳内に映るヘーロスと容姿が重なる。
「ん?もしかして兄さんからそう聞いてない?だとしたら酷いな~」
三人と異なり、やけに楽観的に振る舞うエリック。
ダニーを抱え距離をとったアンドリューはダニーの傷を確認する。
バイオウェアを着ていた影響で致命傷は避けていたが、それでもかなりの傷を負っていた。
それを遠目で確認したエリックは自分の接近戦による技術のなさを嘆く。
「あーまたトドメ刺し損ねたー。やっぱ接近戦は兄さんみたいにいかないや。」
ダニーはすぐに立ち上がり、アンドリューに耳元でエリックを引き付ける提案をする。
しかし、その提案にエヴァが口を挟む。
どうあがいてもエリックとの戦闘は避けられない。
しかし、[[rb:エリック > あっち]]はヘーロスと肩を並べる世界一の殺し屋、ダニーだけでは囮にもならないだろう。
エヴァは三人同時にエリックに挑むことを決める。
三人に殺気が宿ったことを感じたエリックは自身も戦闘態勢に入る。
だが、その表情は兄のヘーロスと異なり意気揚々としていた。
「お、三人で殺る気だね!いいよ、きな!」
場面変わり、ハイドとヴァイオレットの会話では世界の裏で蠢く組織T.Z.E.Lの存在をヴァイオレットが伝える。
「それが政府の…最も重要な情報……」
「そう。」
「!!」
ヴァイオレットと向かい合うハイドが気づく。
ヴァイオレットの背後に待機するガーディアンズの車から降りてくるガーディアンズのメンバー。
その者が銃をこちらに向けていることに…。
「ヴァイオレット危ない!!!」
咄嗟にヴァイオレットを抱え、発砲した銃弾を躱すハイド。
すると先ほどまで普通に会話していたガーディアンズの者たちが一斉にこちらに攻撃をしてくる。
ハイドはほとんど戦闘訓練などしていないヴァイオレットを守るので手いっぱいだ。
いきなり攻撃してくる状況に理解が追い付かないハイドだったが、ヴァイオレットはこの状況を理解したのだ。
「(始まってしまった……!!)」
オーダー”アポカリプス”を実行せよ。
カーク大統領がマイクにて発言する…
すると一斉に国中のサイバーインプラントを施した者たちの目に生気が消え去る…
「あなた、どうかした?」
「お客さん?どうかしましたか?」
「あの人、なんであんなとこで立ってるの?不自然過ぎない?」
「お母さんーお姉ちゃんの様子が変だよー」
「それでさー友達がこーいう……ねぇ、聞いてる?…ねぇ?」
【政府に反逆行為を犯す者を徹底的に殲滅せよ。】
命令を下したと同時に人々が動き出す。
困惑する人々…
困惑する彼らはサイバーインプラントを施していない者だ。
カーク大統領の支配下に置かれていない彼らは、急に同じ行動をし始める人々に困惑を隠せないでいる。
家族も、店の客も、通行人も、兄妹も、恋人も……
「ちょ…ちょっと…!あなたどこ行く気!?」
「お客さん!まだお会計済んでないですよ!」
「あ、あの人急に走り出した…」
「お、お姉ちゃん!!」
「ね、ねぇ…?…大丈夫…?」
すべてが付近にいる犯罪者や犯罪を行っている者に攻撃を行う。
「ほら!さっさと金用意しろってんだよ!!……ん?なんだお前は。」
「………反逆行為……殲滅…。」
「こ、こいつ…!!」
「………反逆行為…殲滅…。」
「?…へ…?」
「なっ……!!(し、しまった轢いてしまった…!!)おーい!!あんた大丈夫か!?」
「は…反逆……行…為……殲滅…。」
「お~い~、そこのカワイ子ちゃん~、俺といいことしねぇかぁ?」
「反逆行為、殲滅…。」
「ちょ……ど…どう…して……」
「反逆行為……殲滅…。」
人々は命令のもと行動をする。
それは犯罪を行っている者、人に注意される程度の行為を行った者、意図せず車道に出た者を轢いてしまった者、よからぬ行為を望み声をかけた者、過去に犯罪歴を持つ者でさえ対象となった。
それが、たとえ自分自身に身の危険が降りかかろうとも人々は止まらなかった。
「ちっ…!……急に襲い掛かりやがって…!」
「きゃーー!!!そ、そんな…!あなたー!!」
「人が倒れてるぞ…!!あんたがやったのか!?」
「……。」
「どうなんだ!!」
「お、おい…あそこで交通事故があったらしいな。」
「なにせ、一人がもう一人の方を轢いちまって、車から出た直後に……だとよ…。」
「お姉ちゃん!!息をして!お姉ちゃん!!」
「(ま、まずい…つい襲い掛かるもんだから…)」
「(なんでよ…私の過去を知っても愛してる…って言ってくれたのに…)…ご…めんね……」
「……。」
計画が開始され、街中の人々が行動し始めるのを”アルハンブラコーポレート”の最上階の会長室にて見下ろすララ・J・アルハンブラ。
「始まりましたわ、お姉様。」
「あぁ、見りゃわかる。」
そこには片腕を新しいサイバーインプラントに改造されたララの姉、ヴェロニカ・J・アルハンブラがいた。
”アルハンブラコーポレート”にてストレンジャー強襲の際にアドルフの攻撃によって自身の兵器を暴発させられ重傷を負ったヴェロニカだったがなんとか一命をとりとめていた。
「マサカ、我々機械ヲ恐レタ人間達ガ我々ノヨウナ機械的ナ支配下ニ置カレルトハ皮肉ナモノダナ…。」
「口を慎みなさい、R-01。あなた達がまだこうして私達と会話ができるのはあの”お方”のおかげよ。」
ララと話す人物は以前にも”アルハンブラコーポレート”でオルガとヴェロニカが対峙する時をララと共に見ていた者だった。
その人物はまるで人間というより機械のような肉体を有していた。
しかし、通常の機械やサイバーインプラントを施した者とはまた異なる異形の姿をしていた。
「その気になればあなた達、機械生命体の身体の隅々をこちらで研究サンプルにしてもいいのよ?」
「は!そりゃ名案だな!もっと面白そうな発明ができる!」
ララの発言にヴェロニカが追い打ちをかけるように機械生命体のRー02と呼ばれる人物に言う。
「マッタク…恐ロシイモノダナ、人間ハ…。」
場面はエリックとアンドリュー、エヴァ、ダニーの三人との戦いに戻る。
アンドリューとエヴァが接近戦を行い、ダニーは後方支援による銃撃を繰り出す。
しかし、二人の肉弾戦にも対応しつつ、化け物じみた動体視力で銃弾を避けていくエリック。
三人も実戦経験豊富な者たちだ。武装し訓練を積んだ者相手でも難なく無力化ができるほどには実力がある。
そんな彼らが殺す気で挑んでも対峙するエリックには余裕の表情が消えていない。
「おっと、今の攻撃は危ないね!」
「化け物が…!!」
エリックがエヴァの腕を強く持つ。
違和感を感じたエヴァがすぐさま自身の腕の関節を外し、エリックの視線から姿を消す。
「(気付くのはやっ)」
その隙にアンドリューがエリックにめがけて、受け止めらていない方の片腕でエリックに攻撃を繰り出す。
死角からの攻撃にも関わらず、それを間一髪で避けて足技で反撃するエリック。
もろに食らったアンドリューだったが、直前にエヴァがエリックの主軸となった足を攻撃したことで威力が落ち、アンドリューは致命傷を避けることができた。
「(エヴァちゃんよく見てるなー)」
しかし、アンドリューがエリックから離れたことでエリックの標的はエヴァに移る。
関節を外して視線をずらしても、腕は依然とエリックに握られている。エヴァには逃げ場がない。
「エヴァ!!」
アンドリューが叫ぶ。
急いでエヴァのもとへ急ぐが、エリックの攻撃速度から考えるに間に合わない距離だった。
だが、そこにエリックの正面から銃弾が飛んでくる。
「あっ……ぶねぇ~!」
エリックが気づいたときにすでに銃弾は目の前にまで迫ってきており、避けることは不可能だった。
しかし、この怪物はその銃弾を手で包み込み、手の中で銃弾を受け止めたのだ。
エリックに有効な痛手にはならなかったが、おかげでエリックから解放されたエヴァはすぐに距離をとり、自身の腕を元に戻す。
「くっそ…あれでもダメか…」
ダニーは銃を装填する。
ダニーのもとへエヴァが駆け寄る。
「ダニー!ありがとう。おかげで死ななくて済んだよ。」
「……あぁ。」
エリックは自身の手の中にある銃弾を見つめる。
それと同時に自身の傷ついた手から出る血を見る。
銃弾を捨てエリックは顔を覆うように片手を添える。
「久しぶりだなー……自分の血を見るのは…。」
そう言って手の隙間からこちらを覗く瞳は先ほどまでと異なり、真紅に染まっていた。
ダニーはそれを見て思い出した。
「ヘーロスさんはなんで目が赤くなるんですか?」
かつてストレンジャーにいた頃のダニーがヘーロス本人に尋ねる。
「……さぁな、俺にもわからん。」
ヘーロスは殺気を放つとき、同時に目も赤く染まる。
この異様な状態は昔からだそうだ。
自分だけでなく弟もこの現象があった…と聞いていた。
だが、その異様な現象は仲間にとってわかりやすい印だった。
目が真紅に染まったとき、この怪物が本気を出すという合図なのだと…
この現象になったらその目が表すように周囲は血に染まる…
両足を撃ち抜かれ身動き取れなくなるアンドリュー、背中に数発の銃弾を撃ち込まれそのまま倒れるダニー、壁にヒビができるほどの勢いで刀によって肩を貫かれ壁に貼り付けにされるエヴァ。
エリックの目が真紅に染まりこの状況に陥るまでわずか11秒。
「君たちは自分の血なんて見飽きてる側かな?」
三人のうち、かろうじて意識が残るエヴァに問いかけるエリック。
「もちろん……こっちは努力…してきてるから……ね……」
エヴァの答えに耳も貸さずにとどめを刺そうとするエリック。
しかしその瞬間、エリックのナイフの刃が切れる。
「!!」
その異変にすぐに気が付くとエリックはエヴァから距離をとる。
すぐに周囲の建造物が切り刻まれていく。
「やっと大物の登場だ…」
エリックの向く方向にいる人物にむかってつぶやく。
そこに立つ者は……
アドルフだった。
一方、アポカリプス計画によって政府の洗脳下におかれたガーディアンズのメンバーの攻撃からヴァイオレットを守りながら逃げるハイド。
周囲の建物などに入るが、そこにいる住民の一部にも攻撃をされはじめ、さすがのハイドも現状を理解し始め、ヴァイオレットに聞く。
「ヴァイオレット…!もしかして…これが…!!」
「うん…アポカリプス計画が…始まってしまった……」
絶望に打ちひしがれるヴァイオレット。
「ハイド、うちを置いて行って!これじゃ……二人とも死んじゃうよ……!」
「何言ってんだよ…!置いていくわけ」
すると廊下の壁を破壊しながらガーディアンズのメンバーがハイドに襲い掛かる。
モーリスに護身用に渡された拳銃を握るハイドだったが、すぐに別の方向から攻撃を受け拳銃を落とす。
「(まずい…!!)」
ハイドは自身が抱えるヴァイオレットの身に危険を感じていた。
この状況じゃ守りきることができないからだ。
ハイドはなんとかヴァイオレットだけでも助かるように思考をめぐらす。
しかし、そんな暇もなくハイド達に攻撃が降りかかる。
「避けて!!」
ハイドの背後から声がする。
その声を信じてハイドはヴァイオレットの頭を抱え姿勢を低くする。
すると、背後から液状化した金属のようなものが伸び、ハイドたちを襲おうとする4人をなぎ倒す。
「狭い通路にいてくれて助かった。」
その声がする方向へハイドが視線を向ける。
そこにはH.U.N.T.E.Rでダニーのパートナーのイヴリン・C・ウィザースプーンがいた。
ハイドが入った建造物は民間人の住むアパート。
そこの通路脇にある窓から侵入しハイドたちを助けたのだ。
あまりに急なことで硬直するハイドたちにイヴリンは問う。
「んで、生きたいの?死にたいの?どっち。」
ついに始動した人類統一化計画……待ち受ける結末とは……
読んでいただきありがとうございました。
そして、この作品を読んでいただいている読者の皆様、更新遅れてしまい申し訳ありません…!
多忙につき、更新日である土曜日(12/2)に行うことができませんでした。
さて今回の内容ですが、現実世界側にいる人類の約6割が政府の支配下におかれるというこれまでとは一線を画す最悪な展開となりました。
この世界では日本以外の国が全てひとつとなった連合国となっています。
そんな世界の約6割の人類が本人の意思と関係なく政府の言いなりと化しました。
言葉ではわかりづらいかもしれないので、参考までに数字で例えると…
現在の日本を除いた世界人口が”約77億人”
そのうちの6割だと”約47億人”となります。
…恐ろしいですね。
自分で書いておきながらゾッとする数字です。
そんな政府の計画の前にハイド達はどう挑むのか…
次回11話をお楽しみに!




