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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第2章 ~アポカリプス計画~

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21/98

9話「秘密」

闇を孕む秘密…


そのフタは開けてはならない…。

ハイドとヴァイオレットがマッドネスジョーカーの拠点から脱出したあと、拠点内部では多くの倒れたマッドネスジョーカーのメンバーたちがいた。

そこでわずかに意識のあるメンバーがハイド達を拘束していた拷問室に向かう。



「フランシスコさん!大丈夫っすか!」


「…は……くはは………くはははははは!!!!」



そこにいたフランシスコはなんとか一命をとりとめていた。


ヴァイオレットによるハッキングによって頭部サイバーインプラントを施していた者たちは自身の脳内に大きな損傷を受けた。

なかには意識だけでなく息絶えた者もいた。


そんな中でフランシスコは自身の頭部から出血した血を舐めながらこう言った。



「まさか、あの短時間で拠点にあるネットワークのハッキングを済ましていたなんてね、面白いことしてくれたよ、ほんと。」



フランシスコは立ち上がり、先ほどまでの騒動が何もなかったかのように呑気にコーヒーを淹れ始めた。

それを飲みながらヴァイオレットが拘束されていた場所の床であるものを発見する。



「(カプセル…なにかのサンプルか?)」



それは”アルハンブラコーポレート”でオルガが採取した”アポカリプスウイルス”の複製品だった…。



その頃、無事ガーディアンズの拠点に帰還したハイドとヴァイオレットの二人はフランシスコと機械生命体との関わりについて皆に伝えた。


それを聞いたオルガはアポカリプス計画以外にも何か別の脅威がうごめいている可能性について示唆する。



「でも、とりあえずは政府の動向に意識を向けた方がよさそう…。」


「みんなー!お待たせー!」



ソフィアが駆けつける。その手には”アポカリプスウイルス”が入ったケースがあった。



「このウイルスの解析が終わったよ!」


「さすがソフィアちゃん、それでどんな構造してるの?」



オルガの問いにソフィアが答える。


このウイルスは人為的な手が加わった人工ウイルスに間違いはなかった。

しかし、このウイルスの原形はすでに生物学的に既存の代物であった。


だが、渡来のウイルスとは全くの別物ともいえる構造をしていたとソフィアは語る。



本来、ウイルスとは無生物と生物の中間に位置する存在である。


生物であればどんなに小さなものでも細胞を持ち、複雑な構造と段階を得て生命を維持する。

しかし、ウイルスには細胞は存在しない。


あるのは自身を設計するために必要な遺伝子とそれを守るタンパク質の殻のみだ。


しかし、このウイルスは異なる。


自身を殖やすためには必要不可欠な自身の遺伝子を持たず、かわりに微量なエネルギーを保持していた。

そのエネルギーの正体までは不明だったが、そんな自身を殖やさない異例のウイルスに企業と政府は改良を加えた。


タンパク質で構成された外殻を金属物質に置き換えたことで、より外的要因に強固で機械などの金属物質にも効果のあるウイルスが誕生した。


そして現代では人類は機械との融合を可能とした技術、サイバーインプラントを手に入れた。



つまり、機械にも生物にも有効なウイルスが誕生してしまったのだ。



「なるほど……これで政府は人類を思い通りに支配できる……てことだね…。」


「やっぱ、ボーンクラッシャーズで見た内容は正しかったのか…。」



ヴァイオレットとハイドが事の重大さを改め実感する。



「じゃはやくこのウイルスの抗体をつくらないと…!」



ハイドの横で座っているリアムが言う。

ソフィアは抗体作製までには数週間かかることを皆に伝え、ハイド達ストレンジャーとヴァイオレット率いるガーディアンズは協力して行動に出る。



それからというもの二つの組織はより忙しくなる日々が続く。



「ハイド!そこの機材をこっちに移してー!」


「ソフィアさん、これですか?」



拠点内ではソフィアによるアポカリプスウイルスの抗体作製の準備…。



「ハイド……一緒に…行かない?」


「あ……お…おう……いこ…。」



外部での偵察および情報収集は主にハイドとヴァイオレットが行っていた。


二人が良好な関係を築いているのを見て安心したような表情を見せるアドルフとリアム。

ハイドとヴァイオレットが外部で偵察を行っている際、拠点ではとある人物から情報が届く。



「リアム、誰から?」



エヴァがリアムに尋ねる。



「うーん、わからないけど…この暗号は……」



届いた情報は厳重な暗号によって守られていたものの、それはストレンジャーのメンバーのみが解読可能な特別な暗号だった。


それを外部で知る者はただ一人だけ…。



「ダニーか!」



アンドリューが答える。


それはダニーから届いた暗号化された情報だった。

内容を解読すると以下の文章が得られた。




アポカリプス計画はカーク大統領が発令権を持つ。


計画はすでに実行段階にある。


詳しい情報を以下の座標にて直接伝える。


暗号解読から2時間以内にこい。




座標によって得られた場所はアンドリューがよく知る場所でもあった。



「俺がいく。」



アンドリューは地理的に自身が周知していることと、罠であっても相手がダニーであることから名乗り出る。



「私も行くよ、アンドリュー。」



罠の危険性やダニー以外の者がいることも考えてエヴァがアンドリューに同行を申し出る。


二人ともダニーとは親友も同然の仲だ。

アドルフは二人の出動を許可し、二人はダニーに送られた座標の場所に向かう。



その頃、ハイドとヴァイオレットは他のガーディアンズのメンバーと共に街の各地区にある情報機器からアポカリプス計画に有力な情報を取得していた。



「どう?」


「うん…今日はここまででいいかなー。」



二人はガーディアンズが待機する車に乗り込もうとする。



「ハイド…」



そのときにヴァイオレットがハイドに声をかける。



「昨日、リアムから聞いたんだけどさ…」



それはハイドの生い立ちについてだった。

ハイドがレヴァリィ世界から来たこと、その世界でも親は知らずこの世界でもアドルフやストレンジャーの者たちによってここまで来たこと……

ヴァイオレットは1週間前にフランシスコの動向を偵察した際に放った発言を後悔していたのだ。



きみ、こんな当たり前のことを親から教えられてないの?……



ハイドの事情を知った今、ヴァイオレットは心からハイドに謝罪した。

それに対してハイドは笑顔で答えた。



「別にそこまで気にしてないから!俺もまだこの世界に馴染めてなくてごめんな!」


「…うちも…なんだ……。」


「え?」



ヴァイオレットはハイドに打ち明けた。


それは彼女のこれまでの生い立ち。


彼女もまた、自身の親を知らないのだ。

いや、正確には所在がわからないでいる。


ヴァイオレットが天才ハッカーとして世界中に知れ渡るころ、彼女は政府の機密情報から自身の姓に隠された秘密を知る。



ヴァイオレット・ホワイトフィールド、彼女の姓である”ホワイトフィールド家”は歴代でも優秀な頭脳を持つ人材をこの世に排出してきた一家だった。


しかし、ホワイトフィールド家の者はほとんどが短命であった。


そのためヴァイオレットが生まれる前まではヴァイオレットの母である”シビル・ホワイトフィールド”のみが最後の”ホワイトフィールド家”の者だった。


シビルの経歴は政府の機密情報にはこれ以上記されていなかった。


だが、


ヴァイオレットは世界屈指の天才ハッカー、彼女はすぐに政府がシビルに関する記録を削除した痕跡を見つけた。


それ以来、彼女は自身を生んだ母親を探し続けている。



なぜ、自分を生んだのか?


なぜ、自分は捨てられたのか?


なぜ、母親の記録は政府に削除される対象だったのか?



それを知るまでヴァイオレットは探し続ける……



「ヴァイオレット……」



ハイドはこれまで誰にも打ち明けなかった自身の秘密を教えてくれたヴァイオレットを見つめる。


ヴァイオレットは他人と関わりを持つことを極力避けていた。それは、周囲の者は自分のことを知ったように寄り添い、戯れるからだ。


自分を本当に理解できる者などいない…


そう心の中で思っていたからだ。


しかし、自分と似た境遇を持つハイドが現れ、自分はそんなハイドのことを知りもせず、自分が最も嫌うことをハイドにしたのだ。


だが、ハイドはヴァイオレットの心に本当の意味で寄り添い、感謝の言葉を述べた。



「ありがとう。」



その言葉を聞いたヴァイオレットはこれまでの重荷が下り、一気に気持ちが軽くなった。

そしてヴァイオレットは決心した表情でハイドに伝える。



「うちが…政府にヘーロス・ベルモンテと同じく重要危険人物に認定されている理由……」



その頃、ガーディアンズの拠点でアポカリプスウイルスの抗体の試作型が誕生したことを知らせるソフィアがいた。



「みんなー!一応、試作型だけど完成したよー!」


「え、もう完成したんですかー?」



ソフィアの報告に驚きつつも、いつも通りに大量の食べ物を頬張るリアム。



「ほらほら、リアムもそんなもの食べてなくていいから!すごくない!?やっぱ私天才じゃん!!」


「あー!僕の食べ物ー!」


「ソフィアちゃん、それちゃんと機能するの?」



オルガが興奮気味のソフィアをなだめながら尋ねる。



「わかんないけど、私には投与してみたよ!ほら、モーリスも試してみてよ!」


「………。」


「モーリス?」



ソフィアに背を向けたまま黙り続けるモーリス。

その表情はソフィアたちからは見えないが、ソフィアは違和感にすぐに気が付いた。



場面はハイドとヴァイオレットに戻り、ヴァイオレットは話を続ける。



「それは母の記録以外にも…政府の機密情報に触れたからよ…」


「それは、どんなもの?」



ハイドがヴァイオレットに聞く。



ダニーから送られた座標を頼りにダニーがいると思われる場所にアンドリューとエヴァが降り立つ。

それを確認し、車から降りるダニー。



「久しぶりだね、ダニー。」



エヴァがダニーに話しかける。

ダニーは軽く微笑みつつも、すぐに真剣な表情に戻りアンドリューたちに伝える。



「今から話すことは俺がH.U.N.ハンT.E.Rターの機密書類で発見した内容だ。書類やデータの記録は痕跡が残る…だからお前らに直接言う。」



バスに揺られながら目を閉じる……。



「ボス、もう着きます。」


「……あぁ。」


「けど、よかったんですか?あのとき、ストレンジャーを逃がして。」



バスに乗る集団はボーンクラッシャーズだった。


現リーダーのケリーは自身の拠点支部でのモーリスとの戦いを得て、自分の気持ち、そしてモーリスの気持ちにも決着をつけた。


これまで同様に敵対関係には変わりない。

しかし、自分たちの真の敵は政府であり、モーリスかぞくじゃない…。



「どうせ、あいつらとはまた会うことになる。その時に礼はたっぷり返してやるさ。」



ケリーの部下が立ち上がる。

ケリーは窓を見ながら、街の様子を眺める。




これまで世界の闇を見ながら、地べたを這いつくばってここまで抗い続けのし上がってきた。


しかし、そんなこの世界の闇に住んでいても、この世界の光を見ると、心が安らぐ…。


そう感じる……。


このまま目を閉じている間に、世界が光に包まれればどんなにいいことか…


サイバーバグによって自身に課せられた命も長くない。


そんな中でもこの世界の光が本当に存在するなら…



もう少しくらい生きていてもいいんじゃないかと感じさせる…。


ケリーはそんなことを思いながら目を閉じる…。












バンッ!バンッ!バンッ!






三発の銃声がバスに鳴り響く。


倒れる死体がひとつ。


窓には血と飛び散った脳の欠片が張り付いている。

それでもバスは進み続ける。



「モーリス?」



モーリスの違和感に気づくソフィア。

それと同時にモーリスがソフィアたちの方へ振り向く。


そんなモーリスは自身の懐から取り出した銃をソフィアたちに向ける。











バンッ!バンッ!バンッ!



ヴァイオレットはハイドに話を続ける。



「この世界の闇の根源…。」






ダニーがアンドリューたちに話を続ける。



「政府や企業…俺ら組織もやつらの手の上…。」


「(今、どこかで銃声が…??)」






ヴァイオレットが続ける。



「この世界の影で蠢くうごめ組織…。」






ダニーが続ける。



「その名は…」






ヴァイオレットが続ける。



T.Z.E.Lツェルよ。」



「ゴフッ……!」



吐血するダニー。

ダニーの胸を貫く一本の刀。



「ダニー!!!」



アンドリューがダニーを叫ぶ。

ダニーを刺した人物が姿を現す。



「ちょっと知りすぎじゃない?正義の番人さん。」


「!!!」



ダニーを刺した男はダニーから刀を抜き、自身の顔についた血を舌で舐める。


刺されたダニーを抱えながらエヴァとともに距離をとるアンドリュー。

アンドリューが怒りを露わにしながら叫ぶ。



「テメェは誰だ!!」


「へぇー…ストレンジャーと知り合いなんだ…」



秘密に眠りし、光と闇…

読んでいただきありがとうございました。

歴史の裏で蠢く組織の名がついに判明しましたね。

物語は次回から一気に最悪の展開へと…!


次回10話をお楽しみに!

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