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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第1章 ~第一次リヴィディン大国侵攻~
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2話「聖騎士団」

過ぎ去りしは己の過ちか、


来たる未知は己の故意か、


それはついを見たものにしかわからない。

クヴィディタス大国とリヴィディン大国の国境付近にある街に向かったハイドとへーロスは、国境をまたぐ出国検査を受ける列に並んでいた。



「大人しくしてろ、俺もお前も今となってはこの大国のお尋ね者だ。」


「も、もちろんわかってますよ!カニス、静かにしてるんだぞ。」


「カニ…!」


「…厄介なのがいるな。」



そう言ってへーロスは出国検査を担当しているハインリヒ軍曹を見た。

ハインリヒ軍曹、クヴィディタス帝国軍の7人の軍曹の1人。これまでに多くの犯罪者や国に仇なす者を摘発してきた非常に優秀な軍曹の1人だ。

ハインリヒ軍曹はへーロスたちの入国許可証を確認すると……。



「おい、そこの二人止まるんだ。」


「えっ!?」


「……」


「その小動物はなんだ?」


「カニ!」


「3級テロスか。お前たちどちらの所有物だ。」


「所有物じゃないです!こ、これは俺の親友です!」


「どちらでもいい。この書類にサインしろ。」



ハイドは渡された紙を見ると、そこには【クヴィディタス大国での3級テロス所持の許可書】と書かれていた。



「あ、あの……これはどういうことですか?」


「貴様、小村の出身か。本来、3級テロスは他国ではここクヴィディタス大国のように共存関係は認められていない。出国にはテロス所持の許可証を提出してもらう。」


「はぁ……。(俺らのことじゃなくてよかった…)」


「さっさと書類の手続きを済ませろ。」



ハイドは書類の手続きを済ませた後、カニスを連れて、無事にクヴィディタス大国を出国した。



「よし!これでやっと国に出れるぞ!カニス!」


「カニー!」



へーロスはそんなハイドを見ていた。

へーロスはしばらくすると、口を開いた。



「ハイド、お前は本当にそれでいいのか?このまま俺と一緒にいればお前もクヴィディタス大国に追われる身になるかもしれないんだぞ。」


「俺、ずっと気になってたんです…」



ハイドは自身の夢を語り始めた。



他の大国がどんなところかなって。


今はマルコおじさんもどうなってるかわからないし、それどころじゃないけど、


今回の件が片づいたらいつかもっといろんな人に会って聞きたいんです。


その人の物語を。



「そうか。いい夢だな。」



へーロスはそんな自身の夢に希望を抱く青年を見て、僅かに微笑む。



「だから俺は行きます。それに、カニスとも離れたくない。カニス、行こう!」


「カニ!」



ハイドはカニスと共に再びリヴィディン大国を目指すのであった。


一方その頃、ハインリヒ軍曹は物思いに1人ふけていた。



「あの青年どこかで見たような…。そしてあの男もだ。ただ者ではないはずだ…」



するとクヴィディタス帝国軍の兵が緊迫した表情で報告する。



「失礼します!ハインリヒ軍曹!先ほど通達でリベル軍曹から商人のエインが捜索していた”あれ”がとある青年が所持しているとの報告が!」



その報告を聞いたハインリヒ軍曹は目を見開く。



「やはりあの2人か!お前は下がれ、俺がコンスタンティン少佐と話す。」



クヴィディタス大国のとある場所で、ハインリヒ軍曹はある人物と会話をしていた。


ハインリヒ軍曹は敬礼をしてから、話し始めた。



「コンスタンティン少佐。例の”あれ”を身につけた青年を見つけました。ですが、通達が間に合わず、出国を許してしまいました。私の責任です。」


「そうか。では、ハインリヒ。すぐに分隊を編成し、リヴィディン大国に向かえ。上には私から伝えておく。」


「はっ!ですが、我が国クヴィディタス大国とリヴィディン大国は冷戦状態。隊を率いては戦争の火蓋が切られることになりかねません。」


「そのための”分隊”ではないか。…くれぐれも内密に動き、混乱を招くのだ。」



ハイド達はリヴィディン大国に入国し、大国にある王都に向かった。



「なんか賑やかなところですね。(こんなに賑やかな場所来たの初めてかも…)それにしてもよくこんな場所知っていましたね。」


「ああ。実は昔、俺は……リヴィディン大国に住んでいたんだ。だから、ここの地理については詳しい。」



ハイドは王都の店に立ち寄りながらへーロスについて行く。



「この大通りを真っ直ぐ行けば、王宮に着く。そこでハイド。お前に合わせたい人物がいる。」


ハイド「はい…(王宮?誰に会うつもりだろ…)」



王宮に到着するとハイドは辺りを見渡している。



「うわぁ~!すごい!初めて見るものばかりだ!」



ハイドは興奮気味ではしゃいでいる。

そんな様子をへーロスはどこか穏やかな眼差しで見ていた。



「ここの扉の向こうが謁見の間となっている。行くぞ。」



へーロスはハイドを連れて扉を開く。


そこには玉座に腰を掛けている男性がいた。

その男性は王冠を被っていて、髭を生やしていた。


ハイドはその男を見て、驚いた表情を見せた。



「あ、あなたがこの国の王ですか?」


「いかにも。私がリヴィディン大国の王、ジャクソン王だ。君は…」


「俺は、ハイドと言います。あ、あの、へーロスさん、どうして俺に会わせたかったんですか?」



ハイドはかなり緊張した様子でへーロスに尋ねる。


するとへーロスはジャクソン王に挨拶を交わす。



「ジャクソン王、お久しぶりです。今回、王に見てもらいたいものがあり、この青年を王宮に無断で連れてきたこと、お許しいいただけると助かります。」



へーロスは丁寧な言葉遣いで王に向かって膝をついた。

その様子にハイドも無意識のうちに膝をついていた。



「我が友、へーロスよ。お前が急を要して連れてきたのだ。何かよほどのことなのだろう…。聞かせてくれ。」


「はい、王。こちらの青年ハイドはクヴィディタス大国のはずれの小村出身の者です。そこで領主であるエリオットの屋敷にてとある腕輪を身につけているのですが、この腕輪が俺は”10の秘宝”の可能性が高いと考えています。エリオットと親交があった王も何か心当たりがあるのでは?」



へーロスの問いにジャクソン王は答えた。



「あぁ、エリオットとはたしかに親交はあった。互いに争いを無くそうとする理念のもとにな。彼からつい数日前にその10の秘宝について聞かれたのだ。そして、そのエリオットは先日亡くなった。」


へーロス「ということは…」


ハイド「あ、あの…」



ハイドが2人の会話に口を挟む。



「なんだい?ハイドくん。」


「その”10の秘宝”って何ですか?」



ハイドは首を傾げながら王に尋ねる。

ハイドの言葉にその場の空気は凍り付いた。



「……ふむ。そういえば、君はクヴィディタス大国のはずれの村出身だったね……。知らないのも当然か。」


「はい、すいません…」



ジャクソン王は王座を照らす窓から見える王都の街並みを眺めながら説明した。




この世界には常識を覆す程の力を持つものがある。

それが、「10の秘宝」と呼ばれるものだ。


”10の秘宝”それはどんな術を用いても破壊することが不可能な10種の秘宝。


秘宝には、


果ての鉄アペロメタル

蟲惑の実キリアチアフルーツ

断絶の籠ディアスタスケージ

暴虐の縄エレフィリアロープ

貪欲の華ピーナフラワー

進化の意慾エクセレクシ

真理の神秘ダブマ

心魂の憧憬シール

超越せし指輪アポクリプシ

内在せし指輪エンシャイエン


の10種があり、名称のみ代々伝えられている。


また、未だに2つの指輪は確認されておらず、指輪の秘宝含め、真理の神秘ダブマ心魂の憧憬シールは能力までも不明だ。


秘宝の所有者は秘宝が決めるとされているが、持つべくして持つ者の前に現れるともされている。



「それが10の秘宝だ。」


ハイドには理解が追いつかないほど現実離れした内容だった。

それも実際に自分の腕に付いているこの腕輪もそのうちのひとつである可能性があるなら、なおのことである。



「は、はぁ…(話が壮大すぎて訳がわからない…)」


「はっはっはっ!何を言っているんだって顔をしてるね。」


「そりゃそうですよ!そんなもの伝説か何かじゃないんですか?」



そう言ったハイドに対して、ジャクソン王はニヤリと笑みを浮かべる。



「では、わかりやすく見せてあげよう。」



そう言ってジャクソン王は自身が身につけていた金属板をハイドに見せた。


金色ともいえるし銀色ともいえる、他の色に見えると思えばそう思えるような特殊な色をした金属だ。



「これは果ての鉄アペロメタルだ。もちろん所有者はこの私。これは所有者が望む金属になる万能な秘宝でね。」



ジャクソン王はその秘宝を容易に千切って見せた。

まるで金属ではなく粘土のように。


そして千切られた金属は色を変え、金色の金属、いわゆる金に姿を変えた。



「す、すごい…金になった…」


「そして、この金属には特殊な効果があってね。非常に容易な加工、そして自己再生能力を持っているのさ。」


「はい?」



秘宝は千切った箇所がみるみるうちに元の形状に戻っていく。

そしてジャクソン王は金となった秘宝の断片を自身の剣で傷を付けた。


そうすると傷ついた部分はまるで何事もなかったかのように再生していったのだ。



「これこそが、10の秘宝の1つ、果ての鉄アペロメタルの能力さ。私はね、ハイドくん。君が身につけている腕輪は未だ能力が不明とされる真理の神秘ダブマもしくは心魂の憧憬シールのどちらかじゃないかと思っているんだ。」


「この腕輪が今みたいな不思議な力を持つ秘宝なのか…」



ハイドは自分の身につけているものがいかに不確定未知数の代物であるかを理解した。



「秘宝はどの大国でも狙われやすい。ハイドくん。君には我が大国の精鋭部隊”聖騎士団”の監視のもと、しばらく安全な地で身を潜めていてほしい。」


へーロス「監視…ですか?」



ジャクソン王の提案にハイドよりも早くへーロスが口を挟んだ。



「あぁ。その秘宝がどのような能力かも私やハイドくん含めわからないのだ。」



ジャクソン王は自身の考えをへーロスに伝える。




その腕輪の能力が突然発動して民が危険にさらされるとも限らない。

それに我が大国は今やクヴィディタス大国と冷静状態。


この大国も決して安全とは言えない。

ちょうど聖騎士団の第一部隊が隣国のグラ大国に向かうところなのだ。

そこにハイドくんを任せたいと思っている。




「それでは俺がハイドの監視役に適任では?」



へーロスはジャクソン王に提案する。



「へーロス、先ほども言っただろう?クヴィディタス大国と我が大国は冷戦状態。おそらくもうじき…」



すると突如、大きな爆音が街に鳴り響く。


リヴィディン大国の兵がジャクソン王の元にやってくる。



「大変です!」


「どうした!何が起きた!」


「街中で2級テロスの群れが出現!ただちに民間の避難をしていますが、被害は拡大中!」


「兵は民間の避難を最優先しろ!テロスは俺が片付ける。」


「え、え!ちょ…ちょっと!何が起きてるんですか!」



突然の状況にハイドは動揺を隠せないでいる。

そこにジャクソン王がハイドに向かって言った。



「ハイドくん、彼らが君を守ってくれる。ここは危険だ、行きなさい。」



ジャクソン王が紹介した人物。

聖騎士団、第一部隊隊長のアローラ。

茶髪の髪に片目に大きな傷を負っているも、どこか気さくで接しやすい雰囲気を醸し出す男。



「やぁ、君がハイドくんだね。俺はアローラ。細かい話は後にしよう!まずはここを出るぞ。」


「ハイド!」



ハイドがアローラとともに王宮を出ようとしたところ、へーロスが声をかける。



「お前の護衛にいけなくて済まない。だが、アローラは信頼できる男だ。奴から”この世界”のことを多く学ぶんだ。いいな?」



ハイドはへーロスがここまで自分の身を案じていることを知った。



「は、はい!へーロスさん!ありがとうございます!」


「それとハイド。グラ大国の隣国にイラ大国っていう野蛮な大国がある。だが、そこに俺の仲間がいる。アドルフとリアムだ。何かあったらそいつらを探せ。」


「はい!」



ハイドの返答を聞いたへーロスは少し安堵した表情をして、アローラの方を向く。



「ハイドを頼んだ。アローラ。」


「あぁ任せな!さぁ、行くぞ!ハイドくん!部下が街の入り口で待っている。」



ハイドとアローラは急いでその場を離れる。

すると、後ろから大きな爆発音が響いた。



「急ぐぞ!あっちの方角からだ。」



アローラとハイドが向かうと、そこには2体の2級テロスが暴れていた。



「ちっ、ここにもいるのか。ハイドくんはここで待っていろ。すぐに終わらせる。」



そう言うと、アローラはテロス達の元へ走り出し、一瞬にして斬り裂き、消滅させる。

しかし、テロスが倒された際に民家の瓦礫がハイドの向かって降ってくる。



「ハイドくん!」


「う、うわ!!」



ハイドは瓦礫に直撃した。痛みもある。だが、ハイドが目を開けると………






「お前の……にいけ……て…まない。だが、アローラは………きる男だ。……ら”この世界”の……を多く………だ。いいな?」


「え?」


「おい、大丈夫か?ハイド。」



目を開けるとそこにはへーロスがいた。

まだ王宮にいる。


どうゆうことだ?


何が起きた?


自分は瓦礫にぶつかったはず…


ハイドは自分に起きたことが理解できないでいた。



「は、はい…ありがとうございます…へーロスさん。」


「それとハイド。グラ大国の隣国にイラ大国っていう野蛮な大国がある。だが、そこに俺の仲間がいる。」


「アドルフさんとリアムさんですよね?」


「!?なぜ…知っている…?」


「え?そ、それは…」



ハイドの返事に驚愕するへーロス。


アローラがハイドを呼びかける。



「ハイドくん!ここもそろそろ危険だ。早く出よう!」


「……。ハイドを頼んだ。アローラ。」


「あぁ任せな!さぁ、行くぞ!ハイドくん!部下が街の入り口で待っている。」



あれは夢なのか?


それとも…ハイドは先ほど理解しがたい現象に頭を悩ませながらもアローラと急いでその場を離れる。


すると、後ろから大きな爆発音が響いた。



「急ぐぞ!あっちの方角からだ。」


「これは…!」



先ほどと同じだ。2体の2級テロスが暴れていた。



「(ここで、アローラさんは闘って、俺は瓦礫に…)」


「ちっ、ここにもいるのか。ハイドくんはここで待っていろ。すぐに終わらせる。」



アローラは先ほど見た光景のように一瞬にしてテロス達を斬り裂き消滅させる。


だが…



「ハイドくん!」



やっぱりだ!これは先ほど見た光景…未来の光景だ!


ハイドは瓦礫から間一髪で避けた。



「すまない!俺の失態だ!でも、よくあの状況で避けれたね。」


「あ、あはは。なんかこの状況を前にも見た気がするんです。」


「ん?(前にも…見た…だと?)」



するとアローラと同じ甲冑を身に纏った仲間らしい人物が遠方からこちらに呼びかける。



「隊長ー!こっちです!はやくいきましょう!」



ハイドたちの前方には4人の兵士がいた。


アローラと同じ装備をしている。


あれが…



「聖騎士団か!」


「あぁ、俺の大切な仲間たちだ!さぁ、グラ大国に出発するぞ!」



ハイドはアローラ率いる第一部隊のメンバーとともにグラ大国へ向かう!


しかし、その姿を遠方で目撃する影があった。



「聖騎士団が護衛についてるとはな。やはり、あの青年で間違いなかったか。」



物語は動き出す…。

読んでいただきありがとうございました。


今回、新たに10の秘宝、そして聖騎士団という用語が登場しましたね。

10の秘宝の名称は、これから初登場時に本文でも説明がされるので、そこまで覚えなくて問題ないですが、聖騎士団の一部のメンバーは本編の主要キャラとなっていくので、ぜひキャラクターが出てきた際は覚えてあげてください!


それでは3話もお楽しみに…!

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