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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第2章 ~アポカリプス計画~

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6話「骨砕き」

骨を絶ち、身を捧げる…


命朽ち果てようとも。

「これは……アポカリプス計画……!?」



ハイドがケリーの部屋で見つけた資料に書かれた内容を読み上げる。


そこには企業である”アルハンブラコーポレート”とボーンクラッシャーズで交わされた契約内容、そして政府の最終目標である”アポカリプス計画”について記されていた。



アポカリプス計画……


政府側がとある遺伝子情報から作製した人工ウイルス、”アポカリプスウイルス”。

それをサイバーインプラント内部に潜伏させ、政府の指示によって一斉にサイバーインプラントを施された者の脳内に移行。


そして政府側の意思に従って行動を行ういわば人類の統一化をはかるという想像を絶する内容だった。


ハイドは直ちにモーリスとソフィア、外部でサポートを行うリアムとエヴァに伝えた。



リアムが現場にいるハイド達とDTPで話し合う。



「もしこれが本当の計画なら…」


「あぁ、俺やソフィアは間違いなくその計画の餌食になる。」



ストレンジャーに所属しているモーリスとソフィアはサイバーインプラントを施している。

つまり、このアポカリプス計画の対象なのだ。


だが、ソフィアは自分とモーリスが対象であるならば、自身に施されたインプラント内のどこかに”アポカリプスウイルス”となるものが潜伏していることになる。


それを解析して、無効化あるいは摘出ができるならば自分たちが助かるだけでなく、他のサイバーインプラントを施された者も未然にこの計画に巻き込まれずに済むのではないかと考える。


そうとなれば早速行動を開始するハイドたちであったが…



「それを知られちゃ帰すわけにはいかねぇな。」


「!!!」



ケリーがハイドとモーリスに向かって発砲する。


間一髪でモーリスがハイドを庇うことでケリーの攻撃を防ぐ。

モーリスの肉体は銃の弾丸程度では傷すらつかないため、お互い無事であった。


しかし……



「くそっ…!」


「モーリスさん!」



ハイドを庇ったモーリスの腕の動きが鈍くなりだす。

ケリーが発砲したのは通常の銃ではなかった。


ケリーはモーリスがボーンクラッシャーズのリーダーを務めている頃から常に右腕としてモーリスの傍にいた。

そのためモーリスの弱点やどの程度身体をサイバーインプラントで埋め尽くしているかなど容易に知っていた。


ケリーがモーリスに与えたのは電磁パルス弾。


機械すなわちサイバーインプラントの機能を一時的に動作不能にさせるものだった。


モーリスはハイドを抱え、部屋の窓ガラスを破壊し、拠点支部から脱出を図ろうとする。



「帰さねぇって言ったよなぁ!!」



モーリスが飛び降りた先にはケリーの部下が数名待ち構えており、モーリスに電磁パルス弾を放つ。


モーリスは咄嗟に自身の腕から発射されるアンカーロープを壁に指し、攻撃を避ける。



「ソフィア!向こう側に潜入がばれた!脱出の準備をしろ!」


「モーリスさん!」



攻撃を避けた先にもボーンクラッシャーズに待ち伏せさえれるモーリス。


モーリスはハイドを先に下ろし、自分が攻撃の的になりつつ敵を数名殴り倒していく。


その隙にハイドが敵の死角から攻撃を行う。


アドルフとの訓練の成果もあって難なく敵を倒したハイド。



「大丈夫ですか!モーリスさん!」


「問題ない。」



そのまま二人は敵の攻撃を搔い潜りながら、拠点支部の出口に向かう。

それを監視カメラで確認したケリーは部下にモーリスたちの追跡を命じる。



「くっ…!(もうか……!)」



しかし、部下をモーリスたちに向かわせたあと、ケリーは一人でに吐血する。


上着を脱いだ体のいたるところには身体がただれていた。


ケリーはそんな自分の姿を見ながらある日、企業の人間と取引した際の会話を思い出す。






「ほら、例の死体だ。」


「助かる。これが今回の報酬だ。……それよりヴィッカーズ、鼻血が出ているぞ。」


「……問題ねぇ。」


「サイバーバグがいたるところに発症しているな。その様子じゃお前の命もそう長くはないだろうな。」


「俺はいい……!それより本当に俺の仲間をあんたらの計画から外してくれんだろな。」


「もちろんだ。」






ケリーは自分の手に広がる血を見て企業の人間と話した際に言われた自分の余命がもう近いことを改めて感じた。



「ここで止まるわけにはいかねぇ…!」



ケリーは上着を着なおし、モーリスのもとへ向かう。



出口付近まで辿りついたハイド達はソフィアと連絡を取る。



「ソフィアさん!もう少しでそっちにつきます!」


「わかった!もう準備できてるよ!」



しかし、前方に大量のボーンクラッシャーズがハイド達の行く手に立ちはだかる。


それをモーリスは自身の身体から無数に放出される小型ミサイルで蹴散らしていく。

だが、次々と現れるボーンクラッシャーズに追い詰められていくハイドたち。


そこにケリーが到着する。



「もう限界だろ?モーリス。」


「ケリー…。」



ケリーは仲間にモーリスに手を出さないことを命じ、一歩前に出る。

モーリスもハイドに後ろにいろと指示し、ケリーの方へ歩きだす。



「ここから帰りたきゃ俺を殺していけ。」


「バカが、殺すつもりはねぇ。」


「かつての仲間に情でも湧いたか?」



二人はしばらく互いを見つめあう。

そしてほぼ同時に互いの拳が相手を殴る。そのまま二人は殴り合いを続ける。


拳が身体にぶつかる音のみが拠点内部に響き渡る。

しばらくしてソフィアがハイドにDTPを使って連絡する。



「ハイド!そっちの様子は?」


「モーリスさんと敵のボスが一騎打ちを…」


「はぁ~!?何してんの!!そんなおとこの勝負してる場合じゃないでしょ!」


「でも…」



でも、なんだろう。


ハイドは二人の殴り合いを見て、ただの一騎打ちをしているようには見えなかった。


その気なら二人ともサイバーインプラントの機能を用いてもっと有利に自分の闘いを行えるはず。


しかし二人は一切、サイバーインプラントを用いずに泥臭い闘いを繰り広げる。

そこには二人にしかわからない闘いがあるのだとハイドはなんとなく感じた。


モーリスとケリーの二人は拳を交えながら自身に秘めた想いを相手に拳としてぶつけていた。


モーリスはハイドやソフィア達を守るべく…


ケリーは自分たちを捨てたモーリスへの怒りを…




お前がヘーロスに恩を感じて「ストレンジャーそっちがわ」についたのは知っている。


でもどうして俺らを捨てたんだ…!


俺はあんたに憧れてこの組織に入った。そしてここが俺の居場所、皆が家族だった。


それをどうして裏切れるんだ…!!




俺は「ボーンクラッシャーズかぞく」を捨てたあんたを許さない。


俺はあんたを奪ったヘーロスを許さない。






ケリーの想いの強さが拳としてモーリスにぶつかる。




かつての俺は全てを自分が手に入れることができると思っていた。


だが、俺はあの日、俺が殺したいと願った男、ヘーロス……ストレンジャーに救われた。


あいつらは敵である俺を見捨てもせず、毛嫌いもせず、俺のために最善を尽くしてくれた。


一度発症すると元に戻ることはなく、政府に殺害対象となるO.Sオーバーショック


本来の俺はあそこで死ぬはずだった。だが、俺はあいつらのおかげで今も生きている。



だから決めたんだ。



俺の二度目の人生は恩人のために使うと。


今まで好き勝手にやってきた分、今度は人のために動くと。


そして、あいつらが俺を見捨てなかったように…




俺は家族おまえらを見捨てない。


俺はケリーおまえを見捨てない。






モーリスの想いの強さが拳としてケリーにぶつかる。






あれから何回殴っただろう。

床に血しぶきが飛び散った後がある。意識が朦朧とするなか、先に膝をついたのはケリーの方だった。



「うっ…………くっ……そ……!!」


「終わりだ…ケリー………その身体じゃもう無理だろ……」



モーリスは殴り合いの中で分かっていた。


ケリーがサイバーバグを発症し、すでに身体の大部分の組織がボロボロだということに。


自分の想いを砕かれたケリーは悔しい表情を浮かべる。だが、ケリーの悔しさはモーリスの敗北が理由だけではなかった。

モーリスの想いもまたケリーは理解し始めていたのだった。



「モーリス………!」


「喋るな。今は止血でもしておけ。止血インプラントくらい施してあるだろ。」



二人の殴り合いが終わり、ハイドがモーリスのもとに向かう。


その時だった。


拠点支部の出口が爆破する。

ボーンクラッシャーズのメンバーがその爆破に反応する。



「な、なんだ!?」



そこには特殊な装備を身に着けた部隊が姿を現す。

そのうちの1人の男が負傷したソフィアを引きずりながら、他の部隊の者よりも前に出てこう言い放つ。



「久しぶりだな、モーリス……!」


「ウィリアム……!」



「対O.Sオーバーショック特殊部隊」の隊長、ウィリアム・Gグリーン・ウィザースプーン。

H.U.N.ハンT.E.Rター」と同様に政府管轄の組織で、主な任務はO.Sオーバーショックを発症した者の処刑。


彼らが派遣されると速やかにその街の封鎖が行われ、その街での全権限を任される。

そして、ウィリアムはモーリスがかつてオーバーショックを発症した際に対峙していたことのある人物だった。


それ以降、ウィリアムは自分が派遣されて唯一排除できなかったモーリスに固執し、度々自身の権威を振るって探していたのだ。


普段なら個の戦闘においてはトップクラスのモーリス1人であしらえる人物だが、今回は話が別だ。

すでにケリーとの一騎打ちでダメージを負っている状態で、ウィリアム率いる「対O.Sオーバーショック特殊部隊」を相手にするのは死を意味する。


モーリスはウィリアムが引きずるソフィアを見る。



「ウィリアム、ソフィアを離せ。」


「いいだろう。その代わりお前の首と交換だがな。」


「……。」



モーリスはわかっていた。


このウィリアムが自分の首を差し出すだけで、他の者に危害を加えないわけがないと。


だが、自分の恩人の一人であるソフィアをこのまま見捨てるわけにはいかない。

モーリスは傍にいるハイドに耳打ちする。それを聞いたハイドはウィリアム達に気づかれない程度にうなずく。



「おい、どうすんだ?」


「断る。」



それを聞いたソフィアは驚いた様子でモーリス達に叫んだ。



「え~!!!モ、モーリスぅ~!!」


「じゃ残念だが…」



その時だった。ウィリアムがソフィアの方へ目を向けたその瞬間にモーリスは動き出す。


モーリスは神経系加速器を使用し、自分の反射神経を極限に高め、ウィリアムに近づく。

さらに近づきつつ、周囲にいるウィリアムの部下を拳銃で倒していく。



「なに…!?」



ウィリアムが気づいたころにはモーリスはすでに目の前におり、攻撃を行う途中だった。


ウィリアムは咄嗟にソフィアを離し、モーリスの攻撃を受け止める。

するとウィリアムの背後にハイドが現れソフィアを救出、それを確認したモーリスはウィリアムが受け止めた自身の腕から球体の物体を出す。



「(こ、これは…!!!)」



ウィリアムの目の前で大爆発が起こる。

それによりモーリスも自身の片腕を犠牲にするがウィリアムの腕と顔、胸にまで大きな損傷を与えた。


それを機に「対O.Sオーバーショック特殊部隊」とボーンクラッシャーズが一斉に動き出し、激しい銃撃戦が始まる。



「大丈夫ですか!ソフィアさん!」



ハイドがソフィアを抱え、外に出る。


しかし、外で待機していた「対O.Sオーバーショック特殊部隊」の隊員に銃口を向けられる。


間一髪のところでハイドの背後から放たれた銃弾が「対O.Sオーバーショック特殊部隊」の隊員に命中し事なきを得るハイド。


ハイドを助けたのはモーリスではなくケリーだった。



「はやく、ここから出ろ…!」


「あ、ありがとうございます…!」



ハイドはソフィアが外に止めていた車までモーリスと共に走る。

しかし、あともう少しで車に乗り込めそうな時に車が爆破する。その衝撃で三人は壁に打ち付けられる。



「うっ………そ、そんな……」


「まさか、自分の腕を犠牲にして爆弾を作動させるとは……狂ってんな…モーリス……!」



車を破壊したのは先ほど、モーリスの決死の攻撃で負傷したウィリアムだった。


ウィリアムも腕を失い、顔や胸付近に大きな火傷を負っているが、自身に施したサイバーインプラントの攻撃でハイド達の車を破壊したのだった。



「あの距離でまだ意識があったか…」



モーリスが負傷した自分の重い身体を無理やり起こし、ウィリアムと対峙しようと試みる。

するとウィリアムは自身が持つあるスイッチのボタンを押す。


すると、先ほどのボーンクラッシャーズの拠点支部や他にも街のいたるところで大きな爆発音が聞こえてくる。



「これは…!」



ソフィアが遠方で爆破した方向に目を向ける。


それはここに来る前にソフィアが企業関連の人物とボーンクラッシャーズが密会を行っていた者たちがいる三つの拠点支部の位置だった。

もちろん、ここの拠点支部の前に訪れた拠点支部の方向にも爆音が聞こえている。


ウィリアムはこの街に入った直後に街の全区域の全封鎖およびオーバーショックの発症の危険性があるとの理由で独断でボーンクラッシャーズの拠点支部を特定しあらかじめ破壊工作を施していた。



「ウィリアム…お前……」


「ここを逃げてもお前ら反政府のやつに居場所なんかありゃしねぇんだよ。」


「………だとよ、ケリー。」


「なに…!?」



ウィリアムは背後を見る、そこにはケリーがウィリアムに向けて銃口を向けていた。

発砲された電磁パルス弾が直撃したウィリアム。


そのタイミングでモーリスがウィリアムに肉弾戦を仕掛けていく。


ケリーに不意を突かれたウィリアムは為すすべもなくモーリスの攻撃を受け続ける。

だが、他の「対O.Sオーバーショック特殊部隊」の隊員がモーリスやケリーに攻撃を行い始め、徐々にモーリス達は不利になる。


そこにあるワゴン車が乱入し、「対O.Sオーバーショック特殊部隊」の隊員を蹴散らしていく。



「だ、誰だ!…こいつら…!」



ウィリアムがワゴン車に向かって小型ミサイルを発射しようとした隙を見て、逆にモーリスがウィリアムに向けて小型ミサイルを放つ。


それをもろに受けたウィリアムはそのまま吹き飛ばされる。


ワゴン車はハイド達の前で止まり、そこに現れた紫色の髪色をした美少女がハイドに向かって言う。



「早く乗って!」



するとハイド達ストレンジャーのメンバーにDTPを通じてリアムから連絡が入る。



「みんな!今すぐそのワゴンに乗って!」



ハイド達はリアムの指示に従い、ワゴン車に乗る。


ケリーは残ったボーンクラッシャーズのメンバーと共に別の車に乗り込み脱出を行った。


謎のワゴン車に乗ったハイドは自分たちを助けてくれた美少女に含め、その他の者も全員女性であることに気が付く。


モーリスはDTPでリアムに言う。



「おい、こいつらは誰だ。」


「彼女たちはガーディアンズだよ。」



ハイド達を助けてくれた者達の正体とは…

読んでいただきありがとうございました。

モーリスとケリーの覚悟、そして新たにハイド達に前に現れた人物の正体は…?

気になる展開の中、次回はアドルフたち側の場面になります!


次回7話をお楽しみに!

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