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ハイド  作者: じょじょ
ハイド 第2章 ~アポカリプス計画~

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2話「ストレンジャー」

政府に断罪されし因子は…


社会に異端とて生きる。

「きゅ…急に魔法みたいに現われたって…どういうことだよ……。」



ハイドはこの現実世界で目覚めるまで機械生命体が保持している仮想拡張装置REVERIEレヴァリィに繋がれていたはず。

その場合、もし仮に目覚めたとしてもその装置内で目が覚めるはずだったのだ。

だが、実際にはハイドはこの現実世界では急にこの”ストレンジャー”の隠れ家に姿を現わしたのだった。


まるでこの世の理を無視するかのように。


それを最初に目撃したリアムはソフィアに伝えるも本人に伝えることは避けるように言った。


しかし、”Code”の解析の結果に高揚したソフィアはその約束をつい忘れハイドのいる前で口走ってしまったのだった。



「で、でも…!…大丈夫だよハイド!…それもソフィアさんが原因を解明してる途中だから…」



リアムはソフィアが立てた仮説では「目覚めた際に用いた超越せし指輪アポクリプシの影響」、「”Code”を夢として見ることのできるハイドならではの特異な現象」の二つのうちどちらかではないかと考えているとハイドに説明した。


すでにここまでの情報で頭がいっぱいのハイドにはこの状況の真実はさほど重要ではなかった。



レヴァリィ世界の様子は?


アローラや聖騎士団の人達の安否は?


リヴィディン大国とクヴィディタス大国の戦争は?


へーロスはなぜ昏睡状態なのか?


ハイドには他にも気になることが山のようにあった。



「……それでレヴァリィ世界はあの後どうなったんですか?」


「まぁ…全ての状況を知っているわけじゃないけど…」



ソフィアはハイドが現実世界で目覚めるまでのレヴァリィ世界の状況を説明した。


まず、へーロスは敵の能力によって封印され現実世界の肉体とレヴァリィ世界の精神とで分離された状態にあるという。


このままでは死にはしないが元に戻ることはないため、定期的にアンドリューまたはエヴァと交代でレヴァリィ世界で情報収集を行い、レヴァリィ世界全体の様子が把握でき次第へーロスの封印解除に向けて行動する予定だそうだ。


また、クヴィディタス大国とリヴィディン大国の戦争はクヴィディタス帝国軍の撤退で沈静化したが、数ヶ月後にさらに大規模な二次侵攻を開始する動きが見られたそうだった。



「じゃ一刻も早く戻らないと…!カニスやアローラさん達もどうなってるかわからない!」


「それが…残念なことに今ここにある機材でレヴァリィ世界に戻るには1人が限界なんだ。先ほどギリギリまでアンドリューやリアムをREVERIEレヴァリィに繋いでいたからね。」


「そ、そんな……!」


「だから申し訳ないんだけど、ハイドくんにはしばらくここで待ってもらう必要があるの。」



ハイドは自分がすぐに仲間達のもとに向かうことができない状況に落胆する。


それもソフィアの見立てによると約2ヶ月の間は復帰に時間を費やすそうだ。

もちろん、その間のレヴァリィ世界での状況の共有は皆とするようだが、それでもハイドは自分の無力さに打ちひしがれた。


そこに先ほど別の部屋にいたアンドリューがハイド達の部屋に入ってくる。



「ソフィア!オルガさんたちがボーンクラッシャーズの密会場所を特定したぞ!」


「お、想定より早く見つかったね!そっちのデータをこっちに転送して!」



するとソフィアの目の前の画面に4人の男が映る。



「これは…?」



アンドリューやソフィアの組織ストレンジャーは反政府組織として国では認定されている。


そしてその他にもボーンクラッシャーズ、マッドネスジョーカー、ガーディアンズの3つの反政府組織がこの国に存在している。


そのなかで最も構成人数の多いボーンクラッシャーズの密会場所をソフィア達は密かに捜索していた。


どうやらソフィアの画面に映し出されているのは密会場所の防犯カメラのひとつからの映像だった。



映像に映る4人のうち2人はボーンクラッシャーズの構成員。

そのうちの1人はボーンクラッシャーズのリーダー、ケリー・ヴィッカーと呼ばれる人物で、ストレンジャーの皆も面識のある人物だった。


だが他のスーツを着た2人はソフィア達も知らない人物だった。


4人の男性に動きがある。



「ほらよ。」


「たしかに受け取った。」



スーツの男がもう一人のスーツの男に合図する。



「こちらが約束の品だ。」



そう言ってスーツの男はケリーの部下に厳重にロックがされているケースを渡そうとする。

その瞬間を防犯カメラ越しで確認したソフィアはマイクに向かってこう放つ。



「よし、今だモーリス!オルガさん!」



するとスーツの男とケリーの部下の間に2人の影が通りすぎ、ケースを奪う。



「なっ…!!」


「神経系加速器、解除。」


「お、お前は…!」



それを映像越しで見たハイドはありえない速度で接近した2人に驚愕する。



「あれは……」


「俺たちの仲間だ!」



2人の名は、モーリス・デュフルクとオルガ・オールブライト。


ストレンジャーの一員でソフィア達とは別でボーンクラッシャーズの密会場所を突き止めるために捜索をしていたのだった。

先ほどのアンドリューはオルガからその情報を得たところだったのだ。


2人の出現に現場にいる4人も驚きを隠せないでいた。



「チッ…!!!」



すぐに仲間を連れ、その場から逃走するケリー。


あらかじめ待機していたケリーの部下が運転する車にケリーは乗り逃走を図る。



「やっぱり…」


「逃げたか。オルガ、俺はやつを追う。そっちは任せたぞ。」


「え?ちょっと、モーリスくん!?………もう…。」



モーリスはケリーを追うべく後を急ぐ。

そこに取り残されたオルガはスーツの男を見つめてこう言う。



「あなたたちがどこの何者なのか教えてもらいますよ。」


「女ひとりにこっちが怖じけつくと思っているのか!」



スーツの男がオルガに向かって襲いかかる。


場面変わり、車を走らせるボーンクラッシャーズ。


その後ろから人間の動きとは思えないほどの速さで接近してくるモーリス。

大通りに出て上手く巻くように指示を出すケリー。



「チッ…(ここじゃ”あれ”は使えないか…)」


「そこの角を曲がれ!」



車から出てきたケリーは自身の腕を変形させた。



「…!!」



するとそこから鋼鉄製アンカーを道路脇に止めてある車に発射し、モーリスに向けてぶつける。

なんとか回避するモーリスだったが路地裏に入られケリーに巻かれてしまう。


しかし、そんなことで諦めるモーリスではなかった。


モーリスはすぐさまソフィアに連絡をする。



「ソフィア!やつを見失った。ここからの最短経路をアップロードしてくれ!」


「了解~!」



するとソフィアはすぐさま街の全防犯カメラからケリーの車を特定、そこからの道を無視した最短経路を導き出す。

それをリアムがモーリスにデータとして送信する。



「……なるほど。」



データを受け取ったモーリスは道から外れ建物内の人物スキャンを開始する。



「よし、ここから600メートル直線上に民間人はいない。」



するとモーリスは自身の脚の変形させていく。



「脚力強化器、発動。」



先ほどのように急加速してモーリスはビルや建物を突っ切っていく。

その頃、モーリスを巻いたケリーはある人物と連絡する。



「ストレンジャーに密会場所を知られた!俺たちの関係がバレるかも知れねぇ!」


「知られたとしてもこちらは問題ない。あの場に行かせた者には最低限の情報しか与えていない。

だが、君は気をつけたまえ。君が彼らに捕まった場合、こちらとの関係はこれまで同様に敵対関係とさせてもらう。」


「なんだと!?」


「ボス!!」



ケリーの部下が慌てた様子でケリーを呼ぶ。



「…!!…マジかよ…!」



そこには背後からモーリスが再び追いかけてきていた。

ケリーは部下に武器を抜くように命じ、背後から追跡しているモーリスに発砲する。

しかし、通常の銃弾ではモーリスの身体はほとんど傷つかなかった。



「リアム、B.H技術ブリーチホライゾンオペレーションを実行。

弾道抑制プロトコル、照準精度サポート開始。」


「(まずい…!)」



腕を変形させたモーリスは腕内部から小型の重火器をケリーの車に向けて発射する。

すると発射中に複数の超小型の銃弾に分裂し、ケリーの部下や車に正確に当てていく。

炎上する車はそのまま横転し、車内にいたケリーやその部下は投げ出される。


ケリー以外の部下はすでに意識を失った状態だ。

その場からなんとか逃げようとするケリーだったが、そんな彼の前にモーリスが立ち塞がる。



「久しぶりだな、ケリー。」


「モーリス…!!」


「悪いが来てもらうぞ。」



そう言ってケリーに向かって手を伸ばそうとしたモーリスだったが、突如モーリスに異変が起こる。



「……!!……クソッ…こんな…ときに!……」



その異変を察知したケリーは一発モーリスにお見舞いしてその場を去る。


モーリスはその場で膝をつき息を荒げる。

その様子をソフィア達は画面に映し出されているモーリスの身体状況を見て理解した。



「まずいね、モーリスのO.Sオーバーショックが再発したみたい。」


「何ですか?それ?」



ハイドがソフィアに質問する。


サイバーインプラントは人間に様々な機能を搭載できる便利な技術の反面、いくつかのリスクが存在する。


”サイバーバグ”、”O.Sオーバーショッ”、”サイバーサイコシス”がその中でも代表的な症状だ。


生身の部分である有機部位と機械との拒絶反応による症状”サイバーバグ”


全身の70%以上にサイバーインプラントを施すことで発症の危険性がある”O.Sオーバーショック


頭部のサイバーインプラントによって精神的異常が見られる”サイバーサイコシス”


そのうちモーリスはO.Sオーバーショックを患っていた。


オーバーショックを発症すると徐々に身体の制御を失い、最終的に意識の消失後、周囲を見境なく襲い始めてしまう。


モーリスはリアムが発明した技術で症状を緩和させていたが稀に突如、発症してしまうことがあったのだ。


モーリスのオーバーショックの再発を危惧してアンドリューがリアムに聞く。



「俺が行くか?」


「ううん、僕が遠隔で制御データを送信するから大丈夫だと思う。ボーンクラッシャーズには逃げられちゃうけど…」


「大丈夫だよ!リアム、早く助けてあげて。」



エヴァはリアムの大きな肩にそっと手を乗せる。

それを見たアンドリューはまたもや少し羨んでいるような表情を浮かべている。



リアムの制御データ送信によってなんとか症状を緩和させることに成功したモーリス。


現場ではモーリスとオルガが合流する。



「ケリーのやつ…無防備なときに攻撃しやがって…!」


「まぁまぁ…今回の目的は果たせたんだからケリーの件は今度にしなさいよ。

ソフィアちゃん?ボーンクラッシャーズの取引相手が分かったよ。」


「さっっすがオルガ!それで相手は?」



通信越しでオルガはソフィアたちにボーンクラッシャーズの取引相手がなんと企業の人間だということが判明する。



「やっぱり企業が一枚絡んでいたんだね…。」


「問題は企業の誰が何の目的で行動しているか…だね。」



企業が反政府組織と関係があったのは予想できていたソフィアだったが、肝心の目的と人物がいまだ不明だったのだ。



「(考えられそうなところから手当たり次第、調査していくしかないかなー)」


「ソフィア、”アルハンブラコーポレート”から調査をしてください。」


「お帰り!アドルフさん!」


「アドルフさん!!」



ソフィアに提案した人物はレヴァリィ世界で流浪人としてリアムやアンドリューとともにハイドに協力してくれたアドルフだった。


レヴァリィ世界で第一次リヴィディン大国侵攻が開始されたとき、アドルフはハイド達と分かれ、グラ大国でジュディ王女やグラ大国にいる国民の守護を担っていた。


そしてリアムたちと同じタイミングでレヴァリィ世界から出て、すぐにアドルフはストレンジャーとして別の任務を行っていたのだった。



「ハイドくん、目覚めたんですね。どうですか現実世界は?」


「え、えっと…まだ信じがたいことだらけです。」


「君はこの数日間、他の者が一生の間で経験できないようなことを経験したんです。今は休んでください。必ず…レヴァリィ世界にいる君の仲間は助けます。」



アドルフはレヴァリィ世界で出会ったリヴィディン大国の王、ジャクソン王やアローラ、そして自身の旧友でもあるへーロスを脳裏に浮かべながらハイドに誓ったのだった。


ハイドも今一度、アドルフの言葉でこのストレンジャーの人達を信頼しようと心に決めたのだった。



「あ、あの…俺に……何か俺にできることはないですか?みんなの力になりたいんです…!!」



ハイドの放った言葉にアドルフ以外の皆が驚く。



「いや、ハイドくん?いまアドルフさんが休んでって…」


「あははは…!君ってやっぱ面白いねー!」


「最高だな!ハイド…!」



困惑するエヴァ、ハイドの勇敢さに圧巻のソフィアとアンドリュー

だが、リアムだけは心配の表情を浮かべていた。



「で、でもまだハイドはこの世界での実戦とか経験無いから危ないし…」


「それならリアム、君の戦闘経験集積データとソフィアの開発した戦闘疑似訓練を使いましょう。戦闘の基礎も私が彼に教えます。」


「え!?」



一同が驚愕した。



「おいおい…マジかよ…!!」


「みんな何をそんなに驚いて…」



アドルフはこの世界でも元一流の暗殺者だったのだ。


そのため対人格闘技術、暗殺技術、隠密技術…等さまざまな戦闘における技術のエキスパートだった。

故にアドルフはへーロスを除いて世界で最も危険視されている人物のひとりでもある。


そんな男から直伝で戦闘訓練の指導を受けることになったハイドに周囲は驚き、心配、憧れといった様々な表情を浮かべる。



「これからの訓練は非常に過酷です。それでもやりますか?」


「はい!!もちろんです…!!」



しかし、ハイドは周りからもたれる気持ちを気にせず、自分の答えをアドルフにぶつけた。


その眼差しは怯えもせず、怖じ気もせず、ただ真っ直ぐな皆の力にいなりたいという一心でくるものだった。


その眼差しを見たアドルフは微笑む。


その表情は普段、冷静沈着な彼からは滅多に見られるものではなかった。



「君がそんな顔で笑うなんて初めて見たよ~!」



皆もソフィアの意見に大きくうなずく。

それを見たアドルフは片手を大きく広げ自身の眼鏡を僅かに持ち上げ顔を隠す。

そしてハイドに向かってこう言い放つ。



「これで今日から君もストレンジャーの一員です。」



深まる絆と信頼、その先に見出す希望…

読んでいただきありがとうございました。

今回も新たな組織や用語がいくつも登場しましたね!

正直、僕自身もかなりの用語を作ってしまったことで稀に混乱してしまうことも…


読者のみなさんはハイドと同じような理解度で読んでいただいて問題ないので、「そーゆーのがあるんだな」程度で大丈夫です!

まだまだ新たなものが登場していきますが、引き続き3話をお楽しみに!

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