11話「第一次リヴィディン大国侵攻(後半)」
戦争の影に潜む魔の手。
伸ばした先にあるのは…
勝利か、敗北か?
あるいは…
それすらも覆す悪魔の腸か…
~リヴィディン大国・西部市街地~
クスティーナ大佐の率いた軍を5人で相手どっていた聖騎士団、第二部隊のメンバーは突如、殲越十二戦士のアシムス、イェルクの加勢によってさらに戦いが激しさを増した。
「さすがは殲越十二戦士だな!」
「そんな攻撃じゃ俺には通じねぇぞ!」
イェルクと対峙したフォートは激しい猛攻を仕掛けるも手応えがまるで感じられなかった。
イェルクの能力は硬質化、それによりフォートの攻撃を全て無効化していたのだった。
「(硬い…!だが、ならば…!)」
フォートは剣を構え直すと全速力で駆け出した。
そして勢いよく横に振りかざし、至近距離から受けたイェルクは吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ……!!」
「!?」
フォートの部下であるテギィやロイフ達と戦闘を行っていたアシムスはイェルクが吹き飛ばされたのを見て驚愕する。
するとロイフがアシムスに接近し攻撃を仕掛ける。
「仲間が心配か?お前の相手は俺らだ!」
ロイフや他の第二部隊のメンバーの攻撃を避けながらアシムスが答える。
「生憎、俺らは同胞なだけだ。仲間とは思っちゃいない…。」
瓦礫の山から出てきたイェルクはフォートの一撃に驚きを隠せないでいた。
「(なんだ…!こいつの一撃は…!先ほどまでとは別人のような重さだ…!)」
「お前の硬さは大方理解した!次は本気でいくぞ…!」
「なんだと…?」
これまで戦いの中でほとんどの攻撃を防いできたイェルクは自分の能力に自信があった。
それを大方理解したで済まされたイェルクのプライドは傷つけられた。
「なら…突破してみろ!!!!」
イェルクは全身を硬質化した。
それは先ほどまでの硬質化と異なり結晶のような薄い膜で覆われるものではなく、全身を黒く染め上げるほどの分厚い硬質を身に纏ったイェルクの最大硬度。
その硬度は短時間しか維持できないが1級テロスの攻撃ですらものともしない防御力を誇る。
だが…
「なっ…!?」
この男はパラフィシカーの能力に頼らず、戦略や長きにわたる戦闘の経験から培ったものにすら頼らず…
ただ単純な……
「うぉらぁぁ!!!!!」
戦闘力のみで1級テロスを難なく単独で撃破できるほどの実力を備える…!!!
その攻撃力は”1級テロス程度”の攻撃を防げる者の防御力など無いにも等しい。
激しく建物を貫き、崩れる建造物に埋もれるイェルク。
さすがの激しさにフォート達の周囲を囲んでいたクヴィディタス抵抗軍の兵士やクリスティーナ大佐ですら戦慄した。
この男の危険性に…!!
「なんなの…。この力は…!」
「師匠!!周囲の建造物をそんなにめちゃくちゃにしたら復興作業にどれだけ時間が掛かると思っているんですか!!」
「隊長、ヤバ…。」
「いや!済まない!本気を出さないと勝てない相手だったからついな!」
クヴィディタス帝国軍の兵はフォートを前にして後ずさりし始める。
アシムスもイェルクがやられたのを目の当たりにし、フォートを危険視する。
「どうする?殲越十二戦士。」
アシムスに問うシャルケル。
「リヴィディン大国に警戒すべき人物が”2人”いたとは…。だが、今回は潮時だ…。」
そう言ってアシムスは自身の能力を発動させる。
広範囲に渡って周囲の瓦礫、建造物が宙に浮かぶ。
アシムスの能力は”重力操作”、それによって周囲の物質を空中に浮かび上がらせたのだ。
「これは…!!」
「まずいですよ!!」
「お前らの欠点は……退き時を知らないところだ。」
アシムスが腕を振り下ろすと同時に宙に上がった数多の瓦礫が街に降り注ぐ。
その規模はフォート達だけでなく、クヴィディタス帝国軍をも巻き込む。
街に大きな轟音が鳴り響く。
~リヴィディン大国・南西下町~
その震動は南西部側で侵攻を進めていたアルフォンス中佐率いる軍の耳にも届いた。
「な、なんだ?今の揺れは!?」
兵たちが地響きのあった方向を見ているとアルフォンス中佐は自身の部下に合図した。
アルフォンス中佐は直ちに今いる街の侵攻を中止し、クリスティーナ大佐のもとに向かうことを兵に指示する。
その道中に、逃げ遅れたリヴィディン大国の民がいた。
アルフォンス中佐「……。」
その者は子供を連れた女性だった。
それを見たクヴィディタス帝国軍の兵はすぐさま捕らえようとしようとするが、それをアルフォンス中佐は制止する。
アルフォンス中佐は彼らを逃がし先を急ぐ。
~クヴィディタス大国・古城跡付近~
ハイドたちはクヴィディタス大国内のとある古城跡でコンスタンティン少佐率いるクヴィディタス帝国軍の兵とテロスの群れとの三つ巴の戦いを繰り広げていた。
ハイドを守るためにリアム、ロクアが周囲のクヴィディタス帝国軍の兵の相手をし、テロスを罠まで引きつけるボロフとサムエル。
お互いに上手く連携をとってテロスとクヴィディタス帝国軍と戦っている中、ハイドの背後に1体の2級テロスが襲いかかる。
「ハイド!」
「喰らえ!」
ハイドは真理の神秘を使用し、岩石を槍に形状変化させ攻撃した。
倒れる2級テロス。
だが、そのテロスの背後に仮面をつけた人物が立っていた。
「(誰だ…あの人…。)」
「あれは…!」
「なんでこいつがここにいやがる!!」
リアムとアンドリューがその人物を見て反応する。
ハイドの目の前にいたのはアロガンティア特務機関のウリエルだ。
先ほどの2級テロスはハイドの攻撃を確かに受けたが、それによって倒されたわけではなかった。
ウリエルの攻撃によって倒されていたのだった。
アロガンティア特務機関がこの場にいる状況を異常と捉えたのは流浪人だけではなかった。
それは聖騎士団やクヴィディタス帝国軍も同じであった。
「なんで…。」
「(たしかに、異常な状況だな…)」
クヴィディタス大国の王、ジャック王と対談したアロガンティア特務機関は真理の神秘を所持しているハイドが大国内にいることを聞き、自ら出向いたのだ。
「お前か。秘宝の所有者は。」
「お、お前は…。」
リアムとロクアがハイドの前に立つ。
「ハイド!こいつは危険な奴だよ!」
「この状況でやべぇな…。」
2人はすでにクヴィディタス帝国軍とテロスの群れと戦いを繰り広げている中、厄介な人物が現われたことで不安な表情を浮かべる。
それに対しウリエルはリアム達に秘宝を渡せばすぐにここから立ち去ることを伝えるが、リアムとロクアはハイドを守るためにウリエルと戦うことを決める。
ウリエルは緑色に輝く結晶が装着された剣を抜いた。
それを見たハイドはすぐに理解した。
「あれは……!…神秘の欠片だ…!」
クヴィディタス大国の拷問室からラインハルト大佐に助けてもらった際にもらった神秘の欠片。
それは結晶内部に秘められた情報を僅かに放出できるというもの。
ラインハルト大佐が本来は武器の装備品に組み込んで使用する…と言っていたことを思い出したハイドはこのウリエルという人物が、以前自分が殲越十二戦士と戦った際に使用した時よりもかなり強力な武器として機能することを察した。
「なるほど…。秘宝の副産物については理解があるようだな。」
「(物質の情報が放出できるというならもしかしたら、俺の秘宝の副産物なのか…?)」
「ハイド!来るぞ!」
ハイドに接近するウリエル。
それを自身の能力を使って素早く対応するリアム。
だが、それを予測していたかのようにウリエルは剣を地面に突き刺すことで、地面から水柱が勢いよく飛び上がる。
それによりリアムの攻撃を防いだのだ。
そう、ウリエルの剣に装着した神秘の欠片の情報は水だ。
地面に突き刺したことで剣から放たれる水を上手く下から放ち、リアムの死角から攻撃を防いだのだった。
「ちっ…!」
リアムは流浪人の1人。
殲越十二戦士相手なら2人分の実力をほこるが、アロガンティア特務機関のウリエルの実力は未だ未知数。
仮にウリエルが1級テロスを撃破可能のレベルなのだとしたら最低でも殲越十二戦士と同格の実力者となる。
リアムはハイドを守るべく少なくとも自分と相打ちに持ち込めるようにウリエルに攻撃を仕掛けようとする。
しかし…
「!!……ハイド…!」
リアムの行動を直前で止めたのはハイドだった。
「悪いけど…もう守られるだけの存在になるのは嫌なんだ…!!」
ハイドの言葉を聞いたリアムとロクアのは改めて3人と共にウリエルと対峙することを決めたのだ。
古城跡入り口付近では数多のテロスの介入によりミニーシヤとコンスタンティン少佐の戦いが両者ともに苦戦を強いることになる。
「(くそっ…!テロス達が邪魔だ…!)」
「(どこからこんなに出てくるの…!ここの縄張りを支配しているテロスを倒さないとキリがない…!)」
すると、ミニーシヤの心情に呼応するかのように古城跡に地響きが響き渡る。
その音の方向に皆が振り向くとそこには……
~クヴィディタス大国・国境付近:クヴィディタス帝国軍の野営地~
リヴィディン大国とクヴィディタス大国の国境付近にある野営地で戦闘を繰り広げていた。
へーロスとヴァレンティーンの周囲にもまるで2人の激しい戦いに引き寄せられるかのようにテロスの群れが集まっていく。
だが、そんなことをものともせずに2人の戦いは続く。
そして戦いが開始されてからすでに20分が経過している中、2人は互いの異常な状況に気づき始める…。
「ぐっ…!」
「……。」
へーロスの攻撃を何度も食らい、とうとう吐血するヴァレンティーン。
だが、その表情は苦しんでいるよりも今、この戦いに高揚しているといった表情だった。
「痺れるなぁ!さすがは最強の流浪人…!」
「てめぇ……。どうなっていやがる…。」
両者の体力的にはほとんどダメージを負っていないへーロスが圧倒的に優勢。
だが、へーロスは今起きているこの事態に苛立ちを隠せないでいた。
それもそのはず、彼の攻撃を3発以上食らって生きている人物がこれまでにいなかったからだ。
それをこの男は数十分の間、食らっていても吐血程度で済んでいるこの状況がおかしいのだと。
両者は互いに相手の能力を考察する。
へーロスは自分が追いつけないほどの速度による攻撃、そして一撃食らった際の手の痺れからヴァレンティーンの能力は電撃であると推測した。
対するヴァレンティーンは自身の攻撃のほぼ全てがへーロスから逸れたことから、へーロスの能力は空間操作であると推測した。
両者の推測はどちらも正しかった。
だが、2人にはまだ引っかかることがあったのだ。
なぜ、ヴァレンティーンは自分の攻撃を受けても死なないのか?
なぜ、ヘーロスに自分の攻撃は一撃だけ通じたのか?
それは2人の能力の[[rb:技術 > スキル]]が高水準の域に達していたからである…!
己の能力を極めた2人は単純な能力使用に留まらず、さらなる能力の発展的な域に到達する。
へーロスは自身から半径50cmの空間の揺らぎを探知し、自動で周囲の空間を湾曲させていた。
それによりへーロスに向かうあらゆる攻撃はへーロスに当たる前に逸れるのだ。
さらにへーロスは自身の攻撃時には打撃と同時に空間を叩くことで防御不能な衝撃を与えることもできた。
故にこれまでへーロスに向かってきた敵はヴァレンティーンを除き、数発当てるだけで倒せていたのだ。
ヴァレンティーンは自身の電撃の能力を応用し、肉体を活性化させることで驚異的な速度と肉体強度を得て、さらに自身に電磁波の膜を纏うことでへーロスの空間打撃の衝撃を弱めていた。
それだけでなくヴァレンティーンは空気中に存在する電波を介すことで対象の筋肉に送られる電気信号を読み取り、攻撃のタイミングも予測できていた。
故にへーロスの絶大な攻撃も肉体強化と電磁波という二重の防御とタイミング予測で急所を避けていたのだ。
ヴァレンティーンがへーロスに一発攻撃を当てられた要因…
いかなる攻撃も防ぐへーロスの能力だが、ただ一つの欠点があった。
それは自身の攻撃時には自動による空間湾曲能力は使用できないことだ。
スピードでへーロスを上回るヴァレンティーンは先手を打ち、へーロスに攻撃を与えたのだ。
だが…
ここまでの内容は2人は未だ知り得ない情報…
2人は先に相手の能力を看破するために攻撃を繰り出す。
「おらぁ!」
またもや先手を打ったのはヴァレンティーン。
しかし、へーロスの能力で攻撃は逸れていく。
またか…!!
やはり空間ごと俺の攻撃を逸らしてるな…!!
だが、いつまでも歪めていらねぇだろ…!
先手は撃てた…
あとはもう一撃だけ加えれば…!!
攻撃を防いだへーロスはヴァレンティーンの急所めがけて猛攻を仕掛ける。
ヴァレンティーンも自身の能力を使い、急所を避けつつへーロスの攻撃をガードする。
続けざまにへーロスが蹴りでヴァレンティーンを吹き飛ばす。
吹き飛ばされつつも、地面に雷撃を走らせるヴァレンティーン。
それをへーロスは地面ごと殴り雷撃を遮断し防ぐ。
ここまで苦戦したのは初めてだ…。
そろそろ時間もない…。
”あれ”で決めるか…?…
いや、ここで放てばリヴィディン大国がどうなるか…
それに放ってもヴァレンティーンが生きている可能性の方が高い…
互いに相手の攻撃を上手くいなし、相手を決定打に持ち込む策を練る…!
「おい、なにをそんなに急いでるんだよ…まだ”メイン”はこれからだろ!」
「知るか。お前の都合など…。」
その2人の前に巨大な2級テロスの群れがへーロスたちに襲いかかる。
「失せろ。」
拳を2級テロスめがけて水平方向に伸ばすとへーロスの拳が空間を割り、その亀裂はテロスに向かって伸びていく。
そして他の2級テロスもまとめて粉砕される。
その衝撃はテロスを一掃するだけに留まらず、さらに直線上に進んでいき、遠方の山にぶつかる。
ぶつかった山は大きく崩壊する。
それを見たヴァレンティーンは笑みを浮かべた。
「いいもん隠してるじゃねぇか…!!」
やつは俺の動きについてはいけていなかった…!
そしてへーロスの様子からして何か焦りを見せている…
なら、ここは逃げに徹し、相手の消耗を待つのが得策…
だが…
それは臆病者の考えだ…!!!
「もっと殺気立てよ…!!…”殺し屋”…!!!」
ヘーロスは時間を気にしている…
それを察したヴァレンティーンは勝つために距離を置く戦略を放棄し、この残り時間でヘーロスを全力で倒す!!
そう決める…!
ヴァレンティーンはへーロスに全力で挑むことを宣言し、全身に電撃を走らせる。
それは少し離れた位置にいるへーロスですら聞こえるほどの電気が弾ける音、そして空間を知覚できるへーロスだからこそわかったのだ…
空気中に稲妻が走り始めたのを…!!
「お前、名は…?」
ヘーロスは懐からナイフを取り出す。
「ヴァレンティーンだ…!!」
「へーロス・ベルモンテ。」
へーロスもヴァレンティーンの闘争心に敬意を払い全力でぶつかる…!!
だが、その直後…!
「!!!」
全方位からまるでタイミングを待っていたかのように大量のテロスの群れがへーロスのみに襲いかかる…!!
「ちっ……鬱陶しい…!!」
へーロスはテロスの群れをまるで跡形もなく一瞬にして蹴散らす。
あたりにテロスの肉片や体液が飛び散る。
すると……
へーロスの目の前に緑髪の男がへーロスに攻撃を仕掛ける。
直前にテロスに攻撃を行っていたへーロスは自動による空間湾曲能力を使用できず、直接攻撃を防ぐ。
すぐさま、襲いかかった男の胸を殴る。
へーロスの能力により空間ごと打撃を与えたことで、胸から左肩にかけて身体が飛散する男。
「ゴフッ…!」
「てめぇは…!!……ヴォルフガング…!!!」
ヴァレンティーンが死にかけの男の名を呼ぶ。
しかし、ヴォルフガングと呼ばれた男は死にかけた状態でもなお、へーロスを見つめニヤリと笑う。
「今です…!!!…ジークフリートさん…!!」
ヴォルフガングの合図とともにへーロスの背後から片目に大きな傷を持ち、口を覆うほどの髭を蓄えた男が襲いかかる。
その男はへーロスに攻撃するでもなく、ただへーロスの背中を触れた。
「!?」
だが、へーロスはすぐさま自分に起きた異変に気が付く。
「”発”。」
ジークフリートと呼ばれた男がそう唱えるとへーロスの全身にどこからともなく杭のようなものが突き刺さる。
「なん……だ…!…これは…!!…(痛みはない…だが動けない…!!)」
「作戦は成功だ。」
テロスの亡骸の奥からへーロスに向かって歩く男が言う。
その男の容姿は金髪に眼鏡をかけ、緑色に美しく輝く三白眼を持った人物だった。
ヴァレンティーンはその人物を見ると声を上げる。
「ヴィルヘルム…!!お前の仕業か!」
「いや、総督と王の決断だ。俺はそれに従っただけ…。」
ヴィルヘルムはすでに虫の息となっているヴォルフガングを見てこう放った。
「ヴォルフガング将軍……任務ご苦労…これでまた良い経験値を得たな。」
そう言うと徐々にヴォルフガングの肉体が消失していく。
そんなことをよそにヴァレンティーンはヴィルヘルムにこのような事態となった詳細を求めた。
ヴィルヘルムはそれに対し、じきにわかるとだけ言いへーロスの方へ向かう。
「お前がへーロス・ベルモンテだな。少々ストックが減ったが無事、お前を無力化できてよかった。」
「さっきのテロスの群れ、あれもお前の仕業か…。」
「悪いがこっちはお前と話しているほど暇ではない……大佐、封印を。」
「……待てよ。……こっちは話が済んでないだろ…。」
そう言うとへーロスの背後にいたジークフリートの腕を覆うほどの空間に穴が空く。
「!!!」
ヴィルヘルムはすぐにへーロスと距離を取り、ジークフリートにも声をかける。
だが、ジークフリートが危険を感じ、離れるよりも速く空間の穴はジークフリートの腕を巻き込み閉じていく。
それによりジークフリートの腕が千切れる。
「ぐわぁぁぁ!!!!」
痛みに耐えきれず悲鳴を上げるジークフリート。
「ちっ…!!(動けなくても能力の使用は可能か…!)大佐!!封印を!!」
「うっ…!…ふ、封印!!」
へーロスの身体に突き刺さっていた杭から布状のものがへーロスを覆っていく。
ジークフリートの能力は”封印”、触れた対象の動きを封じ、封印が可能となる。
一見単純な能力だが、どんな強大な力を持つ者でも強さ、大きさに関係なく封印する。
「……。」
へーロスの目は諦めてはいなかった。
封印された場所には白い墓石のようなものが建つ。
ヴィルヘルムの合図で身を隠していたクヴィディタス帝国軍の兵が姿を表す。
ヴィルヘルムはすぐさまこの野営地に兵を集め、厳重に守護することを兵に伝えた。
しばらくしてヴィルヘルム達のもとにアロガンティア特務機関のアズラエル、カマエルが現われる。
「上手くいったようだな。」
「あぁ。」
「おい、そこの仮面野郎。説明しろ。」
ヴァレンティーンは2人の会話に無理矢理介入し事情を聞いた。
その内容とはこの「第一次リヴィディン大国侵攻計画」の真の目的だった。
第一次リヴィディン大国侵攻計画、それは10の秘宝のひとつ真理の神秘を所持している青年、ハイドを捕らえるためにクヴィディタス大国とリヴィディン大国の休戦協定を破棄し、大国の領地拡大のもと侵攻計画を実行する………
はずだった。
少なくとも本作戦を担う、ヴァレンティーンの軍にはそう聞かされていた。
だが、実態はまるで異なっていたのだった。
第一次リヴィディン大国侵攻計画の真の目的は”へーロス・ベルモンテの無力化”だったのだ。
予てより、クヴィディタス大国の最大の弊害である流浪人の筆頭、へーロス・ベルモンテ。
彼の実力は7大国でも有名であり、一度その実力を目にした者は例外なくこう言った…
”世界を滅ぼせる男”だと……
ある者は言った。
たとえ10の秘宝の力を用いてもへーロス・ベルモンテには敵わないと。
ある者は言った。
世界の均衡を崩しかねないほどの力をあの男は持っていると。
たった1人で7大国を滅ぼせる者がリヴィディン大国に居座り続けている。
これがクヴィディタス大国にとって邪魔だったのだ。
仮に圧倒的な兵力でリヴィディン大国をクヴィディタスの領地にしようとも、へーロス・ベルモンテ1人が生きている限り、世界は盤上ごとひっくり返る。
それが大国どうしでの抑止力にもなっていたため、クヴィディタス大国の王、ジャック王はリヴィディン大国と休戦協定を結んでいた。
だが、そこにアロガンティア特務機関から助言をもらったジャック王はへーロス・ベルモンテ1人のためにリヴィディン大国との休戦協定を破り、戦争という混沌にへーロスを誘ったのだ。
つまり、ヴァレンティーンとの戦闘も、各地で行われている侵攻計画も全てはこの時のための囮だったのだ。
それを聞いたヴァレンティーンはアズラエルに向かってこう放つ。
「俺の部下は使い捨ての駒か?…ヘーロス1人のためにこんな大規模な争いを招きやがって…!」
「やむ得ない犠牲も必要だ…。むしろあの男相手にこの程度の犠牲で済んだのだ。」
それを聞いたヴァレンティーンは稲妻を身体から放出させる。
「てめぇ…次に俺の部下のこと言ったら…消すぞ…!」
「今、君たちと戦うつもりはないが、君らがそのつもりなら…。」
「やめておけ、アロガンティア特務機関。こいつもへーロス・ベルモンテがいなきゃ国一つくらい落とせるような男だぞ。」
四人に殺気だった空気が流れる。
先に殺気を解いたのはアロガンティア特務機関の方だった。
「わかった。やめておこう。ここで犠牲者を増やしたくはない。」
「お前達には分からんだろうが、へーロス・ベルモンテを無力化したのにはまだ理由がある。」
「なに?」
ヴィルヘルムが聞き返す。
アズラエルが言ったのはリヴィディン大国の領地を手に入れるといった大国どうしの規模の話ではなかった。
アロガンティア特務機関が注目していたのは、へーロスが率いる”流浪人”だったのだ。
「どうゆうことだ…。」
「疑問に思ったことはないか?」
その後に言ったアズラエルの発言は流浪人という謎の存在の疑問の数々だった。
彼はなぜ、あれほどの力を持っているのに世界を自分の物にせず、リヴィディン大国に居座っている?
なぜ流浪人はどの大国にも属さず生まれも不明、なのにもかかわらず秘宝などの情報が我々よりもある?
なぜ流浪人はみなパラフィシカーなのか?
アズラエルに続いてカマエルは言う。
「どうする?もし、我々は知らないのだとしたら?」
「なにが言いてぇんだ…。」
アズラエルが言い放つ。
「おそらく、流浪人は”この世界の真相”を知っている者達にちがいない。」
「!!!」
それを聞いたヴァレンティーンとヴィルヘルムは驚愕する。
それは流浪人という存在の確信に迫るものだった。
流浪人の正体…
読んでいただきありがとうございました。
今回はいろんな場面で激しい戦闘シーンが見られましたね!
リヴィディンの暴竜VS殲越十二戦士、最強の流浪人VS雷帝…などなど
特に筆者はヘーロスとヴァレンティーンの戦闘がかなり好きです。
お互いに能力を応用させて戦闘のあらゆる面で惜しみなく利用している感じがして書いていてもワクワクします。
話の後半では流浪人の正体について、言及されていましたね…
1章のクライマックス、どのように戦いは収束するのか、次回12話をお楽しみに!




