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「お嬢様、おはようございます」

「うーん……?」

アリスはもぞもぞと目を開ける。カーテンの隙間から漏れる日差しが眩しい。

「お加減はいかがでしょうか」


(誰だっけこの人……、あ、ここ病院か)

昨日のことを思い出して、アリスは起き上がる。

「もう大丈夫です。少し頭は痛いけど……。大分良くなりました」

「それは良かったです。体調が宜しければローマン様が朝食を一緒にどうかと仰っていましたが、どうされますか?お部屋が宜しければこちらにご用意致しますが」

「いえいえ!パパ……じゃなくて、父の所に行きます!」

「かしこまりました。それではお着替えをお手伝いさせて頂きます」

「へっ?着替え?」

アリスが問いかけるより先に、扉から数名の看護婦さんが入ってくる。


「こちらへどうぞ」

言われるがままに鏡の前に座らされると、手際よくファンデーションやらチークやら口紅やらを塗られる。

(最近の病院はこんなこともやってくれるの?ていうか設備も変わってるし、特殊なところなのかなあ。それにしても化粧ちょっと濃い気が)


「次はこちらへ」

今度は何やら全身鏡の前に立たされる。

ぼけっと立っていると、手を上に上げるように言われる。訳が分からず万歳の姿勢をとると、ばっと服を脱がされる。

「えっ!ちょっと……!」

抵抗する間もなく今度は服を被せられる。

驚いて固まっていると、あっという間にドレス姿にさせられていた。

「待って待って、何でドレスなんですか?」

看護婦さん達に問いかけると、皆困惑した表情でお互いに顔を見合わせている。

「お嬢様は、いつもドレスをお召しになっていますよ」

昨日側にいてくれた看護婦さんが答えてくれたが、どういうことだかさっぱり分からない。


着替えが終了したアリスは頭にはてなマークを沢山浮かべたまま、看護婦さんに連れられて部屋を出た。

「すご……」

廊下に出ると、これまた豪華な装飾品の数々。長い廊下を看護婦さんと、なぜかスーツを着た男性達が行き来している。アリスとすれ違う度に、皆立ち止まって挨拶してくれた。


階段を二階分降りて、少し歩いたところで、看護婦さんは立ち止まった。

「お嬢様、こちらです」

そう言いながら扉の前にいた男性に合図をすると、男性がドアを開けてくれる。

「すみません、ありがとうございます」

お礼を言うと、男性に変な顔をされた。


部屋の中はこれまた凄くて、アリスはきょろきょろ見回してしまう。椅子に座るよう看護婦さんに言われたので、促されるまま大人しく席に着く。

それと同時に、パパとママが入ってきた。


「アリス!具合はどうだ?」

「大丈夫、昨日より大分良くなったみたい」

「良かったわ。顔色も良くなったみたいね」

パパとママが私を見てほっとした顔をする。


「なんか凄いねこの病院。高そうな物ばかり置いてあるし、ご飯食べるところも立派だし……。私もドレス着せてもらっちゃった」

「アリス、お前は記憶が無くなっているようだね。その病院?とやらはよく分からないが、ここはお前の家で、ここはいつも家族で食事をとっているところだ」

「えっ?パパ、どうしちゃったの。うちにこんなお金あるわけないじゃん」


「アリスは、昨日階段から足を滑らせて頭を打ってしまったのよ。大丈夫、すぐに思い出すわ。しばらく学校はお休みして、早く思い出せるようにリハビリしていきましょうね」

「ま、待ってよママ、私は確かに昨日家を出て、自転車に乗って……」

「その自転車というのは何?気を失って眠っている時に、夢でも見たのかしら」


「違う!パパもママも、おかしいよ!」

「アリス、残念だけど、いつもと違うのは貴方の方よ。まず、私達のことをパパママと呼んでいる時点でおかしいわ」

「パパとママ以外に何があるのよ?私のパパとママじゃない!」


「お父様とお母様でしょ。小さい頃からそう呼ぶよう教えているはずよ。言葉遣いも……。貴方は貴族なのだから」

「き、貴族……?」


「そうよ。忘れているのなら、思い出すまで教えてあげるわ。貴方は侯爵家の一人娘。由緒正しきカートレット家の血を受け継ぐ者よ」

「はっ、はぁぁぁぁぁあ!?」

その日屋敷中に私の声が響き渡った。




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