1話 超新星帝国の皇女
星が生まれ続けるこの時代を超宇宙時代と呼ぶ。
神の生きた神代。
ヒトと神とが奇跡を起こし続けた魔法の時代。
神が天上へ居を移し、ヒトが反映した秩序の時代。
そして、地上から遥かかなた、空を超えた宇宙にヒトは住処を変えていた。
それこそが第四の時代、超宇宙時代の幕開けだった。
地上の比ではない広さの宇宙という大海原に、地上でくすぶっていた覇者たちは次々と名を上げていき、超宇宙時代はまさに群雄割拠の時代となっていた。
そんな群雄割拠の時代は宇宙帝とも呼ばれた英雄、モグリアによって終わりを告げた。
しかし、平和になり、秩序がもたらされたとは言え、そこにいたのは宇宙を我が物顔で歩き、次々と領地と領民とそして宇宙の航海技術を高めていた覇者たちである。
宇宙帝と宇宙政府の中に入った覇者たちは、同じ思想を持つ覇者同士で組織を作り上げていった。
神の都バハルスタを中心とした壁神教団。
栄冠王アリジオンを中心とした栄冠連邦。
圧倒的な軍事力で宇宙中に植民地となる惑星を持つ蒼空総軍。
そして、他のどの組織よりも歴史が浅く、それでいて単独にして他の組織を転覆することが可能と呼ばれているのが超新星帝国――――またの名を、リエスティーデだった。
リエスティーデの誕生とともに、数多くの惑星国家が生まれていった。
リエスティーデが新参者でありながら、好敵手として認められている理由は、高い技術力にあった。
星とは人によって作ることはできない。
その常識を根底から覆すように、リエスティーデは人工的に惑星を生み出すことに成功している。
天然物はいつしか、資源があれば作れるものになっていた。
他にも、その名に冠している通り、超新星爆発を何度も披露してみたり、他の組織よりも大きな宇宙港の建設や国籍や所属を問わず受け入れる学園惑星の開校であったりと、類に見ない新事業を次々と誕生させ、成功させている。
そんなリエスティーデがノリにノっているのはひとえに、皇帝とその一族の影響だと言われている。
勤勉で、民思いな皇帝の人気は高く、つつましい生活と国民に奉仕するのがたびたび見かけられている皇室。
国民の憧れの対象となるのは当然のことだった。
そして、そんな皇室の人気は、皇帝の末娘――第一四皇女ローゼノエルにも影響を及ぼしていた。
「ローゼノエルさま、親民からのお便りが届いておりますよ。こちらに置いておきましょうか? それとも読んだほうがよろしいですか?」
「おとといの分がまだ読み終えていないというのに、どうしてそんなすぐに貯まるのよ」
「そうは言われましても、ローゼノエル様が第一四皇女であるから、としか言いようがありませんね。このように怠惰な方だと知れば、親民の皆さんは手紙なんて送ることもなくなるでしょうね」
「言い過ぎじゃないの! ジョーク!」
「これは失礼いたしました」
第一四皇女ローゼノエルは、今日も怠惰にベッドで横になりながら読書に励んでいた。
「怠惰な日常、たぎるわあ……」
皇女はまだ知らない。
己が私利私欲にまみれた策略の中にいるということを――――。