表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/18

02<新たなる婚約者となりました>

「紹介しよう。エリーザ、出ておいで……」


 私はおずおずと前に出ます。

 このような場所に、無理矢理引っ張り出されて縮こまってしまいます。


「ラファネ・エリーザだ。昨日婚約を申し込んだ。これで納得してくれたかな?」

「何ですって? 私という婚約者がありながら、何と非常識な。納得などできませんわっ!」

「うむ、確かに順序が違ったな。それは悪かった。では結婚は今宵申し込むとしよう。昨日のことはなかったことにしてるくれるかな? 愛するエリーザよ」


 私は返答を促され、何とも答えようがないとばかりに困った表情をいたします。


「はははっ、なんとも奥ゆかしい女性であろう。そなたとは大違いだ。わははは――」

「何という理不尽な」

「状況がいささか変わったのだ。そうだったな、デマルティーニ?」

「はい、殿下」


 成り行きを見守っていた、皇政府宰相のデマルティーニ様が懐から書面を取り出しました。

 広げてセラフィーノ様に差し出します。


「なんと驚いた! 周辺諸国がわが大ブルクハウセン帝国に同盟を申し込んでおるぞ。そのたとの婚約に慌てたようであるな。さてさてどうしたものか?」


 デマルティーニ様は満足げに頷いて、セラフィーノ様に耳打いたします。


「つまりはそういうことだ。お前はもう用済みなんだよ。わかってはくれぬか?」

「よーく、わかりました。国に帰ってお父様にそのように伝えますが、よろしいのですか?」

「わが国の水は体に合わなかった、と伝えてくれ」

「そのようにさせていただきます。それではごきげんよう。ふん……」


 アテマンツィ・マリアンジェラ様は言いたいことを全て言い終わったとばかりに、アテマ王国の臣下たちを引き連れて広間から出て行きました。

 しばしの沈黙が続きます。デマルティーニ宰相はことさら大げさに、満足したとばかりに大きく頷きます。


「ふう〜……」


 セラフィーノ様は大きなため息をつかれました。

 半ば浮きかかっていた腰を玉座に深く沈めます。

 デマルティーニ宰相はその様子を見て手を叩き始めました。

 それにつられたのか、お客様たちもあいだにパラパラと拍手がおきます。

 セラフィーノ様はその様子を眺め、誰が拍手をしているか、誰がしていないかを何気なく見極めておられるようです。

 騎士団長オラツィオ様は、いつもと同じで難しい顔をされております。

 だけど少しだけ口の端を釣り上げて笑いました。

 近衛兵団長のアマデオ様は苦笑いを隠そうとしません。

 二人とも戦乱が大好きな方だから、政局とはまた別の楽しみを見たのでしょう。

 セラフィーノ様は、無理に表情を引き締めております。

 他の高級政務官の表情は様々です。

 同伴のご婦人たちは、どう反応していいかわからないようです。


「私は中座する。皆はゆっくりとお楽しみください。では……」


 殿下は立ち上がり挨拶を述べました。


「エリーザ、来てくれ」

「わかりました」


 私も招待客様たちに向き直って、ドレスのすそをつかみ小さく頭を下げました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ