10<風雲を告げる>
数日は平穏無事な日々が続いていました。
今この国は揺れ動いているのに気味が悪いほど静かな、まるで何かの前触れのようです。
私は忙しく動きました。
帝都ヴィンケルの郊外にあるメイドギルドの研修施設に通い、そちらで情報の整理に当たります。
全国のメイドたちから、国の現状を伝える手紙が集まって参ります。
この戦いには、メイドの将来もかかっております。
ラファネ家と縁のある者たちとの会合も続けました。
こちらの知りうる情報を話せる範囲で話し、そして情報を頂きます。
これからこの国は、どの道を進むべきかと話し合います。
そして殿下への協力を要請しました。
ほとんどすべての者が同意しつつ、大きく頷きました。
私はほっといたします。
「そちらの様子はどうかな?」
「順調です。殿下の方はいかがですか?」
「こちらもだ。オラツィオもアマデオも理解してくれたと思う」
問題の金貨も鑑定いたしました。
殿下と騎士団長様は、魔獣被害の視察と称して森の奥へと入りました。
そしてかつて、始祖帝が金を掘り出していた場所等を見聞いたします。
将来の、その時に備えてです。
◆
皇城外壁の広場に民衆が集まりはじめました。
多数のメイドたちの姿も見えます。
皆、口々に何かを訴えています。
物資の不足を訴え、体制の変化を求めます。
城壁の門は硬く閉じられ、内側を騎士団が警戒します。
物見塔には近衛の兵が立ちます。
ついに大いなるうねりが始まりました。
本日の帝国審議会は紛糾しました。
相変わらず現皇帝は欠席ですが、次の皆様が集まりました。
帝国皇帝/ブルクハウセン陛下/軍と騎士団の指揮権を持つ。欠席。
帝国皇太子/ブルクハウセン・セラフィーノ殿下。
×帝国宰相/座長、デマルティーニ宰相(首相)/行政府の長。皇帝の代行職。
秘書従者(事務メイド)/わたくしラファネ・エリーザ。
帝国副宰相/高齢のため欠席。
×帝国外務大臣/他国との交渉、同盟などを取り仕切る。
○帝国内務大臣/地方に対する監督権、国全体の治安維持権を掌握する。冒険者ギルドを傘下におさめる。
×帝国司法庁長官/司法行政全般を預かる。裁判所、収容所を管轄。
○帝国軍需大臣/軍、民間全ての物資を統括管理する。
×帝国財務大臣/行政会計の管理事務、政府金融全般に関する制度立案、実行。
×枢密院議長/貴族で構成される帝国皇の諮問機関代表。
この中で誰が殿下の前に立ちはだかるか、誰が味方となってくれるのか? 見極めねばなりません。
誰がどのような存在となるのか、私なりに予測いたします。