巻き込まれ横領事件は俺得です。
「<メイサ>おかえりー」笑顔で抱きんこです。
「戻りましたー」その遣り切り顔はなに?
「何か面白そうな物は合った?」
こんな漁村が主体の村に面白いものを訪ねるのはどうかと思うが、ものは試しとも言うよねー。にっこりしてるし。
「ふふん、面白くするのは主さま次第でしょうね。漁村の誰かが珍しく手に入れた海の原石を、横流しした者がいるみたいです。採取者は代官に献上したみたいですが、一部の代償を受けただけでそれっきりとか。追加報酬は原石の引き換えだと言われたとか。一つくらいでは見映えが悪いとは思いますが、詐欺の手口じゃないですか?当事者は代官の手の者らしいので直ぐに会えますよ。」
「いや、使用人が多いと無理じゃないかな?」
「名前は解っています。ヒラオ?何とか言ってました。」
「やっぱ何とかじゃん。綱渡りしろってか?太い足場で合って欲しいわ。」
いや渡れよって押されたので、まずは代官の居所へ行きますか。官邸?・・そんなの無いです。住居兼務か増築された事務所みたいな奴だな。騙され代官か・・うだつの上がらない人かも?
<メイサ>を伴って・・ない。俺の中で休憩だとか。瞬間移動しとく。
◆◆
そんなに見映えは悪くない邸宅に、代官として受けているコモレクナカという人物と挨拶を交わす。そんな彼は寄生貴族では無いので、姓も持ってはいない民間人だった。代官なので平民の上位には成るのか?
昨日より先触れとして入っている文官が、この地で肥料を産出する説明は終わっているらしい。
後の事は俺が具体的な叩き台を示す事に成る。だがそんな難しい話は特に無く、漁港の脇のゴミ置き場を整理しこの近くの廃墟を倉庫変わりに使って粉砕事業をすれば良い。
この2ヶ所を整理して終われば、体制を揃えたメンドセイ侯爵家の者達が来るのを待つだけだ。農耕の試運転と肥料事業も試みるわけだが、最初は細々な零細でいいだろう。人手も同時斡旋だからな。子供でもいいから、生めや増やせや貝を砕け。
「ところで、こちらにヒラノ?さんて方がお勤めですか?」
「ん?ヒラノ?・・ヒラオッションと言う者ならおりますな。」
かなり違うじゃねえか。しかもヒラノがオションしとる。ショタレ顔かな?臭そう。不可解に戸惑っていたらら、呼びに行ってくれました。因みにヒラから始まる名前は多いらしい。オコゼくらいしか知らん。えっ?ヒラメ?赤とか青とか色々じゃない?カレイだったか。
「お呼びで御座いましょうか?私がヒラオッションであります。」
「ああお呼び立てしてすいません。さき程漁港の方へ伺いましたら、貴方を名指しで海の原石を奪われたと申す者がおりましたのです。その者が原石を見せびらかすのを見た者もいましたので、それの確認にしようかと」
「っ!」
「それとコモレクナカ代官殿に献上する品物だったとか。代金も一部しか貰えていないと」
「ヒラオッション!それはどうなっている?海の原石など随分聞かない品物じゃないか?事の次第では只では済まないぞ!」
はい、解決!ネパールだがオンパルだが知らないが、磁気の方が効果が高いんだぞ。パルパルしなさい。レッドパールなら欲しいです。レッドにパールだぜ、濁り色じゃねえか。
ブフォ!妄想で吐血したよ!いやいやいや真珠って奴じゃね?そんなの砂浜で採取なんか出来ない・・最低でもそこそこの水深・・50メートルとか浅瀬とは言わんか。掘ったな。それもめちゃくちゃ。
いるいる!貝も仰山いるじゃんとか喜んで、桶2つが満杯になったあれだよ。冷凍保存して[アイテム②]に突っ込んである。昔テレビで見た養殖の貝の形に似たやつが・・取り敢えず忘却。
「・・ええ、解りました」
解るか!他の事に頭が一杯で聞いて無かったよ。適当に返事しといたけど。<メイサ>ならしっかり・・何処見てるの?注意散漫はいけませんよ。調度品の観察は止めなさい。
その間に連れ去られたオショウ?何処に行ったのかと思ったら、領都に連行する準備だそうだ。
あれだよ、このヒラオッションの所業が何の罪に成るかの確認も必要らしい。彼が関わっていた職務上の書類も調べながら、海の原石の転買ルートを探求して抑えるんだとか。
転売・・「わ、私は唆されたんですー」かっこ閉じ。2度閉じちゃった。とにかく唆しが合ったなら、ただの横領じゃ無くなるからな。もち上位の計画的窃盗行為になるじゃん。罪に格差があるかは解らんが。
もういいね、俺は手離します。取り留めなく広がる事件に付いていけません。
バタバタと書類を精査する者達や、何をどうするのかと話合いも伯仲しはじめたし。その中に取引先らしい商会の名も出ている。商会ヤマリーナ・・ヤマナリかと思ったわ。海だしな。
そっちも回りを固めて査察しちゃう感じ?御用改めとか何とか。直ぐじゃないな。さいなら。
◆◆
YOUは何しに的に近くに合った冒険者ギルドの港支部に来ました。すいませーん!有った、有りましたのギルト証を出し用件を告げる。「本日はどの様な用件・・」「ギルド証とかお持ちで」「では詳しい説明を」ギルド長がするそうだ。
なんでだ?うん、所員不足なんだって。そこそこ詳しい説明が必要なものは、別室にてサブマスターが対応しているらしい。この人ケンケンです。大抵なものを兼務しとる。受付が滞らないように。そこでお茶貰いました。
「さて、海の原石の事でしたな。あれはですね沈没船の引き上げ」
「えっ?沈没船ですか?」
「ん?ああ、沈没船とはですね・・」
この人・・聞き返しちゃダメな人やった。
「もう10年は経っていますかな。ある商会?・・名前が変わって商会ヤマリーナに成ってますな。その旧商会が貿易の為に出航すると直ぐに族に襲われましてな。そこでのドンパチが運悪く沈没してしまったのです。それに不運を重ね重ね何度か引き揚げを試みたのですが、中々・・海底の砂地に居る貝から海の原石が発見されたのです。」
「来ましたね」
「ええ、これは大層な発見だと大騒ぎに成りました。ですがそれも、直ぐに藻屑に代わりまして。その採取に砂地に降りますと、そのまま砂に飲み込まれ流されてしまうのです。潮目が洗いのかも知れません。沈んだ船も少しずつ移動してまし、船の中に入ろうとすると砂に埋もれるとの報告もあるのです。たまに何かの拍子で死んだ貝が流れて来まして、そんな折に海の原石が見つかる事もあります。海の原石の依頼は、危険度が高いので受付を断ってます。」
「丁寧な説明、有難う御座いました。話しの中の沈没船の引き上げも、今は行われる事は無いのですか?」
「ええ、ええ。噂ですよ、噂ですが引き揚げに掛った金額が多過ぎでその商会が可笑しく成ったとか。この冒険者ギルドに依頼として出された事もあります。ビクともしないあんな物に幾らの依頼料で引き受けられるのか?当時の担当者が哀れでなりません。船の建造費に金貨300枚前後を費やしたと・・元が取れないと思いますな。」
「ですよねー」
よし!もういいかな。たいしたたまげた!の話しも無かったもの。ここの依頼の多くは、物資輸送の護衛か漁師の手伝いだ。その中に海の魔物からの護衛も幾つか有った。それはそこそこ大きい船に乗り、沖合に出て漁もする様だ。ヤバそうな奴だ。
俺の欲しい情報は、聞けば聞く程深みに嵌りそうだからもう止めよう。だけども・・ぴょんと帰ったらあっという間に着いちゃうからな。領都の手前にカンドセイ男爵領があるから、そっちにちょっといこうかな?暇潰しに。
◆◆
暇潰しとは何ぞや?意気揚々に飛び込もうと思ったら、手に入れた食材の処理をしなさいと<メイサ>に促された。で、そこそこ大き目の鍋を買ったのですよ。流石漁師街だね。でかいのがあったわ。ただの鉄を叩いて凹ませた感じの。カニ鍋かしら?海の素材はでかいから。
しかもこの店は何でも屋?何でも揃ってる。他の店も見つからない何でもだな。自慢は食材まで!スーパーなの?スーパーマーケットなの?老い耄れそうで元気なおばちゃん。貴方はいつか飛ぶーそう。
それから人の居ない砂浜と入り江の境目くらいに戻って、貝と魚入り桶の処理をしました。だが調理ではない!貝がね・・蓋を開けるのが大変なんです。
冷凍しても蓋が開いたりとか無いからな。取り敢えず茹でる!鍋の下はぼうぼうです。そのまま煮込みにしないのが俺クオリティー!開き始めたら剥き身に選り分けちゃいます。すっごい貝柱な奴・・それだけ。
例の物を抱えてる奴は、身がそんなに大きくない。栄養が取られてるの?ゴミを包んで何とかしてるって聞いたような。解らん。形も何となくの丸だし。美的センスも無いから、その評価もしにくいな。
だが言える事はだ、身を剥いたら3割か2割の食いでに成ったよ。ほとんど食べる所は無いや。見てるとつらいから、収納にしまっとこ。魚は種類に分けわけしてしっかり冷凍する。最初に絞めて血抜きも済んでるからな。
一通りを遣り終えておっさんぽい溜め息フゥフゥー。今度こそカンド何とか領に行って、土産くらい買って帰ろうと考えたんだけど・・地元の田舎土産に誰が喜ぶのだろうか?
何か有名所の細工や加工品・・前の俺にある記憶に引っ掛からないんだが。そこはほれ、海の原石もヒットしてないし!何かあるかもじゃん。
そんな訳で・・確実に有ると知ってる海の原石を採取しに行きました。もう<メイサ>的に最後の手段は宝石で誤魔化せと。しかもノンタイム!移動に海突入にめちゃくちゃ採取!全てを[空間転移]の中で済ませた事実があるからな。
マタマタの溜め息フゥフウー。10分も掛っとらんがな。貝煮込みから剥き身もろもろは面倒だからパス!ん?んん?[アイテム②]の中の貝が素材選別出来るように成った。
あれか、菌問題だなきっと。極小の菌や樹木草は死別判定が曖昧なんだ。納豆とか醤油諸々の腐敗菌の分別なしに収納されるからな。
貝も冷凍したらそっち扱いかもね。ふふふ、だが納豆も醤油も作られてません。何で例にしたかって?思い浮かんだのがそいつ等だから。魚醬はあったりするんだよ。腐ってるゴミも収納出来ちゃうけど一緒に合わせないぞ。
うだうだしてても時間は進まない!最悪なやつな。ここから延々と遠回りしてもだ、何も無ければ10分も消費されないからな。あ、領都でぶら歩きして屋敷帰ろう。衛兵に捕まらなければ問題ない。奴等は屋敷に連れ戻そうとするからな。間違いない、何かを引き起こす可能性は排除したいだろうし。
そうだ、領都の装飾品屋で海の原石の相場を調べるのはどうだろうか?現物が見れるとは思わないが、それは俺がもってるしなはははは。虚しい。
(主さまーが寄った冒険者ギルドの人があれな感じでしたから)
(そうそうあの人な。そんな歳に見えなかったけど何か要領の得ない話だったし。知りたい事を聞くのを躊躇いたくなる人だった。だから意外とそれの接客態度なのかもな。嫌味を感じさせない追い返し接客)
(そんな嫌な接客業なのですか?あの支部に向いていたのかも知れませんね。領都の様子も見れますから1時間程度は歩ける感じでお願いします。)
(勿論逃げ回りますとも。何か言われれば「大丈夫」を連発して逃げるから。それに何でも屋?からフード付きのマントも仕入れたからそれを着るからね。)
(それは・・颯爽と現れた新進気鋭の伯爵様が、中古のマントに問題ないのですか?)
(・・お忍びだ。余計に目立ちそうだけど、頭の悪いお忍びの人・・ダメ過ぎるけど何とか成るよ。めっちゃ綺麗な派手なマント・・最初から忍んでない)
(出入りの門所に寄らなけれはいいじゃないですか?)
(いや出入りしてる所の確認をさせないと不審を問われるから)
(・・出るのにノータッチで飛び出したのに今更です。出ていないのに帰るのは更に良く無いかと)
(・・・)
念話しながらの移動です。
◆◆
新情報獲得!海の原石は一粒で金貨20枚はいくだろうと。ひえぇぇぇとかうひゃゃゃゃとか驚愕と喚起に塗れてたら衛兵に捕まった。汚らしい格好の勇者様が、貴金属店に入ったと目撃情報が拡散したのだ。
そんな馬鹿な話が在るのか?何かを仕出かす勇者が今この領都にいるので、見かけたら云々・・箝口令っぽいやつかな?悪い意味の。通報者はお小遣いをせしめたらしい。俺売りで!
◎帰還した俺がお土産代わりに海の原石を差し出したら受けが悪かった件
でも希少価値なんだよ。ちょっと綺麗なうずらの卵色だから、見映えもねえ・・そっち趣味の商人や商会なら大喜びするとか。結局最低保証で預かってくれる商会から、王都の入札会へ送る事に。
ここは希少を考え預けるのは20個にしとく。ネックレスが作れる数にしとった。その他は全てが俺のモチモチに。
一攫千金の夢は遠い!お任せで遣っといて。
俺は漏れる涙を味付けに回し、涙目をふきふき貝飯作りに励んだ。あの牡蠣飯をもう一度。前の俺は牡蠣養殖の元締めだったからな。堪能出来ていたのよ。こっちに流通出来ていないと・・通好みの干し牡蠣はやっぱ難しいか。ぐにゃ感がちょっととか言うな。カキフライは旨いじゃん。
前の我が家でも不評が・・その牡蠣はありません。だが創意工夫をガンガンしまくったら原点に・・素材よしと。ちっさい小魚もいっきに干乾びさせ、それを焼きーの細かくして煮込み出汁も使った。乾物とか無いし。
美味しさランキング!トップはかき揚げ!何処から出て来たって?肉食獣ばかりの奴等だから、貝飯1品には生暖かい目のそれだ。
俺の涙を返せ!油で腹持ちを誤魔化す事にして、貝や野菜類色々のかき揚げを数種類にしました。シーフードピザっぽい物も。パンの代わりだから品数は増えないけどな。
時々の食事はお腹を満たせればいいのよ。
「主さまーは、料理を作る事でストレスを発散してますね?」
「この、出来に構わず遣り切り感があるからね。」
「それなら宜しかったです。明日の予備日に立て込んでいる諸々を終わらせたら、シズセイヤ伯爵領に移動に成りますね」
「ああ、そんな感じかな。立て込んでるものって合ったかな?」
「はい、貝が手に入りましたから苗のお試し肥料も数種を作りませんと。結果は後に成りますが、配合次第で大きな事業に成りもの。」
ああっと出たか解らない返事に成った。貝の肥料は有限だから、出来る限り薄めに作りたい。豊富に屑野菜や屑果実等々を混ぜて売るのか、現場で混ぜさせる仕様にするのか。この実験の叩き台は作っておかねば。
此方のメンドセイ侯爵領が、発信元に成る事業だからな。俺に責任が飛んでこない様に、その点はしっかり教えていこう。あとは頑張れと言って。





