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なんでも屋は暇じゃない  作者: ゆきつき
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五話 ギルドの悪評

「はぁ、はぁ」

「なかなかにギリギリでしたね。いやぁ、こんな体験は久しぶりですよ」

「こんなのを何回も繰り返してるてめえが信じれねえよ」


 階段を登ってる途中、急に階段が透明になっていった。完全に透明になるまで、結構時間はあったけど、だんだん透明になる足場は、神経をすり減らす思いだった。

 そして登り終えた時には、階段が完全に消えた。どういう原理かさっぱりだが、何故かさっきまで階段があった場所は、そんな面影も残さず、綺麗に地面が浮き上がってきた。


「まあ、落ちなかっただけマシですよ。あれはモンスターに殺されるよりも酷いですからね。これがダンジョンの罠と言えばその通りですけど、何が悲しくて階段から落下して死亡なんて事にならないといけないんですか」

「その通りだけどよ」


 前には、適当に冒険者が死んだって事を言ってたのに、なんで今回はこんなに悔いてる感じなんだ?そこに違いなんてねえだろ。


「それではさっさと帰りますよ。別にここで経験値稼ぎをしてもいいですけど、一階なんて不味いだけですし」

「いや、別にいい。言ってもそこまでレベルは低くないし」

「その通りですね。いやまあ、僕達は経験値が入ろうが、ステータスの更新なんてできませんけど」

「なら経験値稼ぎとか無意味じゃねえか」


 てか、更新できないのは、かなりキツイだろ。だって、これ以上下の階層に行けないじゃねえか。


「ああ、具体性に欠けた発言でしたね。ステータスの更新は常に行われていますが、それを確認する術が無いのですよ、僕達は。これもそれもギルドが管理してるのでね」

「あ?別にステータスカードは自分で持ってるだろ」

「君がどこまで知っているのか僕には推測できないですが、あれは一定期間でギルドに預けます。それはわかりますよね?」

「何言ってんだ?別にそんな事しねえだろ」

「なるほど、そこから説明しないといけないのですか」


 そうは言っても、実際あのカードを渡す時って無いだろ。あっても見せるぐらだ。


「ギルドでモンスタードロップの換金ですとか、仕事の依頼を受けたりですとか、とにかくギルドを介して何かやる時に、ステータスカードも一緒に提出するでしょう?」

「そりゃ、見せないと証明ができないからな」

「なんですか。わかってるじゃないですか。そのタイミングで、一緒にカードも持っていかれ、その時にステータスカードが更新されるのですよ」

「あっても一瞬だろ、そんなの」


 そりゃ、手放す瞬間ってのはあるけど。そんなの、ほんの一瞬だ。ステータス更新できるような時間はないだろ。


「本当に、こればっかりはギルドを称賛するしかありませんよ。僕でも知らないような技術を、ギルドが独占してるのです。その何らかの技術のおかげで、一瞬でカードが更新されるのです」


 なんだそりゃ。ただステータスのカードを更新するだけだろ?そして実際のステータスは、常に更新されてるって、こいつが言った。信じれるような内容じゃないけど、別におかしな点もないし、その通りなんだろう。

 ってなると、なんでそんなヘンテコな技術を独占する必要があるんだ?だって、ステータスを目に見える形にしないと、下の階層まで行けないじゃねえか。


「その技術って、なんでわざわざ独占してんだ?」

「こういう事を自分で調べろ、と言いたいですがね。こればっかりは正確な情報を一切掴めないので、僕の考察でよければ聞かせますが?」

「頼む」

「別に冒険者は、ステータスカードを逐一確認する事なんてありません。たまたま見るとか、そろそろレベルが上がってるかもとか思ってようやく、それを見ます。だからそういうのを冒険者は必要としないのです。そしてギルドとしては、冒険者以外にはステータスを見せたくないのでしょう。暴動でも起こされれば一大事ですからね。だから一般市民に簡単にステータスを理解されると困るのです。それに、僕達のような弾き出された者も、強くなる事を望まれていない。ダンジョンに潜っている時点で強くはなりますが、それを確認できない限り、強くなってると言う実感が得られない。そうすると、深い階層に行こうと思う事も無くなりますからね」

「……つまり、なんだ?」

「簡単に言えばですよ。強くなるのは冒険者だけで良いのです。それ以外の人が強くなる、もしくは強いとわかってしまうのを回避するために、ギルドは技術を公開する事は無いのでしょう」


 それって、かなりおかしな話じゃねえか。

 そりゃ、冒険者は強い必要がある。簡単に死ぬような人員ばっかりだと、それこそ毎日がお通夜だ。そんな事になれば冒険者のやる気が無くなって、さらには町や国の活気まで落ち始める。そりゃ冒険者は強いに越したことはない。

 けど強い人を見つけれないと、冒険者なんて数が減っていく一方だろ。ただでさえ、最近は冒険者が少なくなってきてるって話なのに。新しい人材を確保できないと、どんどん減っていくだけだ。


「所詮ギルドなんてそんなものなんですよ。冒険者には愛想を振りまいて、冒険者以外には無関心、もしくは大袈裟なレベルの拒絶を。本当に都合の良い事しかしない、無能の集まりですよ。いや、中間ぐらいには優秀な人もいましたね、確か」


 前から思ってたけど、こいつギルドの事嫌いすぎてないか?いくら冒険者資格を剥奪されたとしても、正直しょうがない感じでもある。冒険者にふさわしくないってギルドが判断したんだ。自覚が無いとしても、てかそういうのは自覚が無いからこそ、ギルドが判断するわけだ。


「まあ、君もじきにわかりますよ。あれはどれだけ楽をして稼ぐかしか考えれない人種ですから」

「一応、わかったが」


 とは言っても、ギルドってそんな悪いって印象は無いんだよな。まあ興味ないってのもあるけど。


「にしても、出た場所が最悪ですね。この分ですと、十時間歩きっぱなしの可能性もあるじゃないですか」

「は!?そんなに歩くのか!?」

「先程も言ったでしょう。今回の階段の位置は、丁度入り口と反対だと。そしてこのダンジョンは異常なまでに広いですからね。モンスターも他と比べれば強いですが、そちらは大した脅威になりませんよ。この無駄に広いダンジョンを歩く事こそ、脅威になりますよ」

「マジかよ」


 このダンジョンは広いってのは知ってたけど、そんななのか?ただ壁が無いから広く見えてるだけで、実際は他も同じぐらいあるのか?それともこのダンジョンは異常なまでに広いって話なのか?


『囲まれてるニャー!』

『てめえは時間を稼いでおけ。その間に俺達は逃げるから』

『じゃ、任せたぞ~』


 なんか、叫び声に近い、話してる声が聞こえて来た。聞こえたのは絶叫の声だけだったけど。


「おや、冒険者同士のトラブルですか?いつから無能の集まりになったのですか、冒険者と言うのは。こういう時こそ、分担作業でしょうに」

「いやあの数だと、分担してもきちぃだろ」

「まあ、いくらずっと一緒だった仲間としても、こういう本当の危機に陥ると本性が出ますからね。好きでもない相手と心中なんて嫌なんでしょう」


 そりゃまあ、誰といたとしても、死にたくはないだろ。

 てか、好きな相手とだったとしても、死にたいなんて思うものなのか?


「あ?なんか、一人を残して逃げてねえか?」

「……ん?ああ、すみません。ちょっと見てませんでした」

「さっきまでこっちの会話してたよな!?」

「他にモンスターがいないかの確認ですよ。ここはダンジョンですからね、常に死が隣に居ます。その死を遠ざける一番の方法は、モンスターが近くにいないかの確認です。こんなだだっ広い平原ですから、後ろにいきなり現れるって事は少ないでしょうが。ですけど、こんな無防備に観戦なんて余裕はないのですよ。それで、なにかあったのですか?」

「いやだから、あの一人を残して、他の三、いや四……」

「五人ですね」

「そんなハッキリ見えてんのかよ、すげえな」


 さっきのはほとんど叫び声みたいなのが聞こえたから反応できたけど、それが何を言ってるのかなんて聞き取れてない。平原だから、無駄に見通しも良いから、冒険者とかも見つけれる。

 けど、会話なんて聞き取れる距離じゃない。少なく見ても、100メートルは離れてる。平原だから距離感は掴めないけど、多分もうちょいあると思うけど。


 その中で、ゴマ粒ほど小さくはないけど、言ってもかなり小さい人影だ。正確に数を読めるはずもない。


「あれは、逃げてますね、間違いなく」

「あ?仲間を置いてか?」

「そうでしょうね。それか短期のサポーターかかもしれませんね」

「それでも置いて行ってる事実は変わってねえだろ!」

「一応警告しますが、助けに行くのなら、ちゃんと相手を見極めるべきですよ?そのあとのどんな厄介が降ってきても、しっかりと責任を持てるなら、僕は止めませんが」

「うっせえ!目の前で危険になってる相手を見捨てるなんて、俺にはできねえ!」

「そうですか。ではもう一つ」

「なんだよ!」

「自滅覚悟の救出劇なんて、誰も望んでないので」

 お互い、面倒な過去を抱えてるんでしょうね。はい。


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