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なんでも屋は暇じゃない  作者: ゆきつき
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二十六話 独自の調べ

 当たり前だが、情報には価値がある。その価値は、情報屋が決めるが、その基準と言うのもある。

 基本的に、どのぐらい危険な事をして得た情報なのか。つまり情報屋によって、同じ情報でも価値が変わってくる。


 この場合、何が危険な事になるのか。やはりモンスターの弱点など、そもそも見つける事すら難しいのに、更にモンスターを相手にしなければならないと言う状況の、自分の身を危険に曝している事か。まあ間違いではないのだが、今回の危険、と言う事では適切ではない。

 やはり、ヒトを相手にする情報だろう。浮気調査や犯人特定などは危険ではない。そもそもこれは探偵の仕事だが。

 ギルドや国家の情報。簡単に言えば、それが流出するだけで、一つの国が滅ぶような情報。滅ぶと言うのも色々あるが、信頼を失い国民が離れていけば、それは国として機能せず、滅んだと捉えてもても良いだろう。そういった、流出するなど起きてはならないような情報。それがたとえデマだったとしてもだ。

 つまり、危険を冒して情報を得ると言うよりは、どれだけ取り扱い方が難しい情報か、と言うのが近いだろう。ただまあ、国などが厳重に保管している情報を、ただの一般市民が得ると言う事は、それだけ危険を冒さないといけないが。


 結局、何が言いたいか。普通、こういった情報は、商売として取り扱う商品ではない。なにせ一個人が国家を相手取るのと等しいのだから。

 ただまあイルは前々から調べていた事ではあるので、そこまでリスクが無い。無い訳ではないが、イル本人がギルドや国家に恨みがある現状、報酬さえ弾めば、誰であろうと話すだろう。それなりの覚悟が必要になるが。

 そのため、本気で知りたいと思う客が来たら、それに応える。それに応えられるだけの実力と経験がイルにはある。


「それにしても、どうしてここまでザル警備なのでしょう?」


 イルには、冒険者の特権の魔法がある。しかも攻撃特化の魔法ではなく、支援よりの魔法。その一つに気配遮断があるのだが。

 何故、その魔法に対する対策を立てないのか。立てれないだけかもしれないが、それならば危険な情報だけは、もう少し厳重に保管するなどできるはずだ。

 にも拘らず、そういった対策を一切されていない。罠だと疑いたくなるぐらいには、ただ冒険者の情報やモンスターの情報などが保管されている場所に、危険なものが置かれている。まるで、誰かに見ろと言われているぐらいには。


「まあ、ここにある情報はデマの可能性もありますし、やはり現場を見つけるのが一番ですか」


 ここまであからさまに置かれていると、やはり罠だと疑いたくなる。というより、情報屋を名乗っておいて、疑う事を知らないのは三流以下だ。なにせ、自分で見た事ですら信じる事ができないのが情報屋だ。……これはイル特有の癖のようなものだが。

 それより、やはりこの目で見た事だ。羊皮紙などに書かれた事も、この目で見た事になるが、そうじゃない。簡単な話、殺人をした瞬間を見なければ、推理で犯人を特定できたとしても、それを信じないと言う事だ。犯人が認めたのなら、それ以上疑うような事はしないだろうが。


「この国のギルドですと、やはりまだ安全な部類ではありますが……。本部に行かないと、これと言った情報はなさそうですよね」


 会社の不祥事は、末端で起きてる事よりも、より上の立場が犯したミスの事になる。何より、末端は何も知らない可能性すらあるのだから。

 とは言っても、この国はかなり大きなダンジョンの上にある為、そこそこ大きな支部と言う事なのだが。


「まあ、一週間で出来る事も限られてますし。そもそも報酬と釣り合った情報は既に提供しましたし、これは僕が知りたいだけですが」


 そもそも、いくら大金を渡されたとは言え、ほぼ国家と同じ戦力を保持しているギルドの悪評を売ると言うのはおかしな話なのだ。別にそれは良いが、250000コルでは、せいぜい一つの情報を聞くぐらい。それだけでギルドを堕とせると考えれば安いものだが。

 ちなみにギルドの戦力は、ギルドに媚びを売ってる冒険者だけで考えている。イルなどの、特にギルドへこれっぽっちも感情を抱いていない冒険者は除いている。


「さて、あの部屋だけは二度と入りたくないですし。そうなると、やはり支部長の部屋を調べるのが手っ取り早い気がしますね」


 そのため、今行っているこの情報収集は、半分以上はイルの趣味。趣味にしてはかなり酷い事をしているが。まあ薬物どっぷりや、強姦などの性犯罪、その他諸々の他人に迷惑をかけるような趣味じゃないだけマシ、と捉えるべきか。


 とても単純な話だが、ギルドは情報の宝物庫だ。モンスターの情報から冒険者の情報。更にギルドの事まである。自分達が管理してるなら、やはりそれなりの情報を握っていなければいけない。でなければ、管理してるなど言えるはずもない。

 そしてそこには、勿論だがただの民間人に知りえない事も多々ある。その一つとして、ギルドのブラックリスト。そこに表記され、更に面倒な強さを得てしまえば、ギルドの手先を動かす事になる。

 まだこれは優しい部類だ。何て言っても、半分以上の冒険者は無関係なのだから。普通に、一割も該当しないはずだ。イルはその、該当してしまった一人だが。

 その他にも、ギルド特有の情報と言うのがある。そういった、民間には関係ないような情報を集めたくてしょうがないのが情報屋だ。独占するつもりは無いだろうが、やはり一度興味をそそられれば、行動せずにはいられない。

 だから、ギルドに潜入してバレた情報屋は沢山いる。自分の好奇心を抑えられなかった馬鹿達。いやここは、飽くなき探求心に身を任せた結果、ギルドに捕まった。……結局、そんなくだらない理由でギルドに忍び込む時点で馬鹿なのは変わらないが。

 そして行動に移しているイルも、ドが付くほどの馬鹿だ。まだ依頼を受けてと言う言い訳を得てから行動している分、自制はできている方なのかもしれないが。


「なにか、自分で検証できるようなものがあれば良いのですが」




__________________





「なあ、なんだがあいつ、変な感じじゃなかったか?」

「うニャ?イル君の事?」

「そうだ。そもそも表情を出すような奴じゃないけどよ。なんかそれにしては、かなり迫力があった気がすんだけど」


 なんていうんだ?反論を許さないような、そんな迫力があった気がした。なんとなくだけど。


「ミャー。イル君はいつも変だから、よくわかんにゃい」

「言ってもお前の方があいつとの付き合いは長いだろうに、なんでそんな適当なんだ?」


 あいつの店で暮らしてるんだろ、このケモ耳。俺なんかより断然一緒にいる時間が長くなるだろ。まあ同性って訳でもねえし、そんな会話が弾む事もなさそうだけど。


「だって、イル君はずっとあんな感じニャんだもん」

「あー、お前に聞いた俺が馬鹿だったか」


 どうせ獣って言われてるなら、もっとこう、直感が鋭いとかあれよ。なんでこう、中途半端なんだ?別にめちゃ強いって訳でもないのに。これはレベルの差があるだろうけどさ。

 こう、どっちかと言えば、ただの駄猫だよ。家で可愛がられるだけで、無駄に金が消し飛ぶペットみたいな感じになってるよ。ずっとおこたおこた言うぐらいには、家が恋しい猫のそれだろ。


「そんな事より、早く買い出しを済ませるニャ!」

「どうせしばらくはあいつも一人で動くんだろ?そんな急ぐ必要ねえだろ」

「ニャ!?」

「いやなんで忘れてんの?」


 あれだな。こいつはもう病気だろ。三歩歩くだけで忘れるんじゃねえの?あれだよ?猫か獣か知らねえけど、頭は鳥と同じレベルなんだな。可哀想に。


「それじゃ、また適当に頑張れよ」

「ミャ!マッド君もちゃんと買い出し手伝うニャ!」

「俺はこれに書かれてる分はちゃんと買うから、そっちは任せた」


 正直、剥奪者ってだけで割高料金にされるんだから、あいつが買いに行った方が良いだろ。

 今回進展してなくない?


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