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なんでも屋は暇じゃない  作者: ゆきつき
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二十四話 諦め

「はぁ」

「さっきからどうしたニャ?もうずっとそれニャよね?」

「もう、モンスタードロップに期待すんのはやめる」

「??」


 あの魔力回復薬は、そこそこ良い値で売れた。売れたけどあれは別にレアドロップとかでもなかったようで、馬鹿みたいな高値で売れる訳じゃなかった。

 レアじゃないって言っても、そんなポンポン落ちるようなアイテムでもないのに。しかもそれを落とすモンスターも、それなりに強かったはずなんだけど。想像以上に値段が伸びてくれなかった。格安で買い取られたであろうモンスターの核約10個分ぐらい。

 けど、どっちかと言えばこれは当たりの部類だ。


 謎の鉱石ってのは、基本的には持ち主の望む武器に加工する。正直な話、そんなよくわからん鉱石が置いてあっても、他のヒトが望んでそれを使った武器を使いたいと思わないから、それを持ってきたヒトが望む形にして渡す。そんな感じの事を鍛冶師から聞かされた。だからなんだよって感じだったけど、とにかく何に加工するか聞かれた。

 そして最近俺は両手剣を使い始めた。あれが想像以上にしっくり来てるから、ずっとそれで行こうかとも考えてたんだけど。だからその鉱石を使って何にしたいのか聞かれて、とりあえず両手剣って答えた。でも鉱石がそんな大きい訳でも無いから、他の鉱石と混ぜて使うって事になってた。別に俺としては、その辺りは詳しくないし、ただ使えればそれで良いと考えてるから、そんな大した問題じゃなかった。

 けど鍛冶師にとっては大きな問題に直面したようで。どうやらあの鉱石、他の金属と混ぜ合わせて合金にする事ができなかったらしい。普通ならちゃんと混ざるはずなんだけど、どうやらダンジョン産の鉱石とこの店にあった鉱石が、どうやっても混ざらなかったと。下にダンジョン産、上に普通の、って感じで、素人が見てわかるレベルで混ざってなかった。

 そしてダンジョン産のだけだと両手剣どころか、片手剣も中途半端になるかもしれないって、一週間ぐらい経ってから言われ。ナイフとかの投げて使う得物になら加工できると言われたけど、俺って武器をちゃんと触った事があるのが片手剣だけだし。両手剣も最近練習を始めたレベルだし。

 投げて使う武器とか初めてだから、遠慮したかったんだけど。もうインゴットまでやってしまったから、どうかって感じで造られてしまった。まあ格安で売ってくれたけど、正直俺には使い道を見いだせないから、タダで貰ったとしても困るんだよ。しかも投げて使う用だから、料理とかで使うってのもやりにくいし。できなくは無いだろうけど、そもそも俺は料理しねえし。


 そして装飾品な。モンスターのどこにこんなのがあるのか一切わからないようなアイテムではあるけど、モンスターからドロップしたんだからモンスタードロップの品だ。

 そしてこれもまた訳ありらしく。ちゃんと効果さえわかってたら、便利だから身に着けるもんだと思ってたけど。あれなんだな?モンスタードロップを身につけたくないと思う奴等がいるらしい。俺とかの近接戦主体の戦い方をすれば、装飾品は邪魔になる事が多いから身に着けないって奴が多いのは知ってるけど。そんなくだらない理由で着けない層も一定数いるらしい。

 だから、モンスタードロップの買い取りはしてないだとか。せめて効果がわかっていて且つ、便利な効果ならば買い取りもしてるらしいけど。効果が分かってない、ただの装飾品は買い取ってくれないらしい。まあ効果の無い装飾品なら、装飾鍛冶師が造り出せるから、わざわざモンスタードロップを買い取るなんて事しないよな。


 つまりまあ、あの魔力回復薬は売れたけど、その売り上げの半分ぐらいはナイフの製造で消え、しかも一番価値が付きそうなブレスレットみたいな装飾品はまさかの価値をつけてくれない。普通に悲しい結末だった。


「おや?もう来ていたのですか?」

「てめえが知らせた日の、その時間通りだろうよ」

「おや、そうだったのですか。最近は僕一人でダンジョンの調査に行く事が多かったですから、時間の感覚も少しずれてるようですね」


 こいつ、前はダンジョンでも感覚をなくさないように、休める時には休んどけって言ってなかったか?あれ?感覚がずらされるから、休んどけ、だっけ?


「それにしても、どうして君がそのような品を身に着けているのですか?邪魔になるでしょうに」

「そうは言っても、売れなかったんだからしょうがねえだろ。どんな効果か知るまでは着けてた方が良いだろ。効果を知る前に壊れたら、まああれだ」


 結局、ナイフは今は持ってないけど、あの装飾品は身に着けてる。ちゃんとした効果を知る事は出来なくても、身に着けてたら多少はわかるだろうし。そしてわかってきて、俺には必要なさそうだったら、改めて売ろうとしたり捨てたり考える。


「……。ちょっと見せてもらえます?」

「あ?別に良いが」


 こいつ、こういう物の価値をわかるのか?


「……」

「どうしたニャ?そんな渋いニャ顔して」

「いえ、少々聞いたことのない効果が付与されてるようでしたので」

「あ?お前、これの効果がわかるのかよ」

「言ってませんでしたか?僕は多少の物ならば『鑑定』できますから」


 俺、こいつの魔法とか知らねえけどよ。なんかつくづく冒険者とは遠い魔法とかを覚えてるよな。気配を消す奴だったり、この鑑定だったり。


「それで、どんな効果が付いてるニャ?」

「『ラッキードロップ』ですかね。少々解読が難しいところもありますが」

「ん?鑑定してるのに、なんでそこで解読が出てくるんだ?」

「我々には使っている文字があるでしょう?基本的には共通文字ですが、ドワーフやエルフにはそれぞれに伝わる別の文字があったりするのですよ。君にも多少は覚えがあるのでは?」

「確かに、ニャンかあった気がするニャ」


 そんなのあんだ。興味なさ過ぎて知らなかったな。てかその文字を知ったところで、俺に活用する術を見つけれないけど。

 ……てか、今その事がどう関係してるんだ?


「そしてモンスターにはモンスターにだけ通じる言葉のような物があるのですよ。モンスターが使っているところを見た事は無いですがね。そのおかげで、モンスタードロップを鑑定したところで、どういう訳かモンスターが使う文字で鑑定結果が出てくるのですよ。どうせならそこまで鑑定して欲しいところですがね」


 モンスターが文字って、は?あいつら、喋る事すらしねえだろ。せいぜい、耳障りな叫び声みたいなあれを出すだけじゃねえか。


「とにかく、モンスタードロップを完全に理解するのは難しいと言う事ですよ。それに初めて見るような、例外が出てくれば更に理解しがたい。だから僕が言った事も正しいとは限りません」

「そもそも、『ラッキードロップ』ニャンて、意味わからないニャ」

「いや、これはそのまんまじゃねえの?モンスタードロップがよくなる、みたいな」


 正直、この辺りの言葉は難しい。モンスタードロップなんかは皆が使ってるからそのまま流用して使ってるけどさ。意味を完全に理解できてる訳じゃない。いやまあ、モンスタードロップぐらいはわかるよ?いくら教養のない俺でも、その程度は理解してるよ?


「まあ、それらしい効果を期待しても良いでしょう。邪魔にならないなら、身に着けておいても良いでしょうね。他に悪い効果もなさそうですし」

「あ?悪い効果が付いてるのもあんのか?」

「ヒューマンやドワーフが造れば失敗でもしない限り悪い効果が付いてくる事は無いですが。モンスタードロップですと、そういう訳でもないようですよ。確率的には半々と言った具合のはずです」


 そもそもモンスタードロップの装飾品だって、これで初めて見たレベルだからな。しかも大抵は効果が分かってないのが多いし。そんな事初めて知った。


「とにかく、使って確認していくしかないでしょうね」

「そうするしかねえかなぁ」

「もうすぐすれば、またダンジョンに潜る事になりますし、何ならついて来ますか?まあ情報収集が主な目的ですが、今回は前回のような面倒な事はしないはずですし」

「まあ、そういう事なら」


 もうちょっと両手剣に慣れたいし。できればナイフの使い方も知りたいし。両手が塞がってんのに、どうやってナイフを投げるのかは知らねえけど。試してみないとわからない事しかねえから。

 ちなみにモンスターの核は、階層によって値段が変わったりします。まあそうしないと、誰もが低階層でモンスターを狩りますからね。


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