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なんでも屋は暇じゃない  作者: ゆきつき
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十六話 調査開始

 更に一週間。ついに変化が訪れた。

 前回に見たのが、ダンジョンの中。それも丁度消えかかっている時だったため、正確な位置までは把握できていなかった。

 だが、待機していた場所は、間違いではなかった。そもそもどこに出てくるかわからないので、何処に待機するべきなどの正解がないのだが、それでも間違いではなかった。


「まさか、本当に階段が作られてるとは」


 先ほどまで何もなかった平原に、確かに穴ができた。そしてそれはただの穴ではなく、階段ができている。何もなかった平原に、ダンジョンにある階段が、出来てしまった。


「もう少しこの辺りを調査したいですが、…ええ、こればかりは突撃するしか無いですよね。可能性としては、あのダンジョンとは全く違う場所ででる可能性もありますし」


 だから、調査するしかないだろう。未知を調べ、しっかりと情報に変える必要があるのだから。

 だが忘れることなかれ。未知に挑むと言う事は、どれだけ危険なのかすらわからないと言う事。一切危険要素が無い可能性もあれば、どんなベテラン冒険者だろうと死ぬような危機が待ち構えている可能性もある。


「あの二人は、まあ放っておいても問題ないでしょうし、報告は良いですかね。それより今は、これを逃すべきではないですね」


 そしてこれがダンジョンと同じならば、階段は消えるだろう。実際、消えるところは確認済みな訳だが。


「準備は大体ありますし、重要な物は基本的に置いてきていますし、まあ大丈夫ですかね。さて、降りている間に階段が消えなければ良いですが」


 一層と同じなら、時間が経てば階段は消える。それは大体30分から1時間と幅があるが、その程度で階段の位置が変わる。だから階段が出てきてすぐなら、基本は消える心配はない。

 だがこれは、そんな常識は通用しないだろう。初めて見た現象なのに、どうして前の常識が通用するのか。結果的に前の常識と同じになるかもしれないが、それは結果であって、検証の段階で安心できる事ではない。

 だから、そういった油断はしない。そもそもダンジョンに繋がるであろう階段で油断もクソもないだろうが、最大限の警戒をしながらこの先に進む。




__________________



 さて。情報屋と言うのは、未知を既知に変える職業とも言えるだろう。より詳しく言えば、完全に既知に変えるのは冒険者の仕事であり、情報屋はあくまでもその補助となる情報を仕入れる訳なのだが。もしくは、冒険者が一定の安全性を保障してから、情報屋が完全に情報としてまとめるかの二択になるだろう。

 つまり、冒険者と同じく勇敢な者、と言えるだろう。もしくはよほどの死に急ぎ野郎のどちらか。


 ただここからは冒険者と異なり、こうも言われている。『誰よりも臆病者であり、情報が無ければ何も取り柄が無い』と、されている。そう言うのは一部の無能だけなのだが、やはり冒険者がそう発信してしまうと、一般市民も信じ込んでしまうというもの。まあ情報屋は特段気にしていないのだが。


 では、イルはどちらなのか。別に勇敢でも死に急ぎ野郎でも、更には臆病者ですらない。彼は、そうだ。感情が欠如している。感情がわからないでも理解できないでもない。ただ単に、感情の起伏が少ないのだ。

 怖いと思う事も楽しいと思う事もほとんどない。正確に言えば、別に何も感じない訳ではない。ただそれが、人並み以下にしか感じ取る事ができないのだ。言うなら、誰もが嫌うような大きな虫が肌についているにも関わらず、これと言った反応を見せない。何事もなかったかのような反応しか取れない。せいぜい、虫が付いてる、なら払おう。ぐらいの反応しか見せない。


 だから、イルは特に怖いなどと言う感情に駆られる事もなく、ある意味ずっと冷静でいてられる。ダンジョン内であっても、それは変わらない。

 それはとても素晴らしい能力になるが、ダンジョンでは感情に縛られる方が良いだろう。なにせ、危険かどうかの直感も働いてくれない。怖いを感じる事ができなければ、ここが危険な戦場になると、そう思える事さえできなくなる。

 ただ、イルは一切感情がわからない訳ではないので多少ならば直感は働いてくれる。ただそれが一般人以下と言うだけ。


 おかげで、イルは情報を集めるしかない。自分の直感が信じれないのなら、自分が集めた情報を信じるしかないだろう。

 なので、どちらかと言えば、イルは臆病者と言う事になる。一歩一歩進むにしても、情報を集めないと進まない。石橋を叩いて叩いて結果的に飛び越えようとする、みたいな感じだ。


 まあ、必要とあらば、突撃あるのみ。変に直感などが働かないおかげで、突き進む事ができるのだ。それが良い事なのかは置いておいて。


「ここはダンジョン一階のはずですが」


 ここは、あのダンジョンの壁があり、あの平原が広がっている。


「さてどの程度信じれるものか」


 だがやはり、イルはどこまで行っても慎重になる。というより、自分を一切信用してない。自分が集めた情報は信じるが、自分の勘などは一切信用しない。


「それにしても、今がモンスターパレードですか。だからこそ階段がここに出来上がったのですかね?」


 ダンジョンなら、勿論モンスターだっている。モンスターのいないダンジョンなんて無いのだ。逆に言えば、モンスターがいるところがダンジョンと言えなくもない。まあ違うのだが。


「これは、モンスターが外を目指して、この階段に集まったと言う事でしょうか。そうでないと、こんな壁際にモンスターが集まる事にはならないですよね」


 モンスターパレードは、数年に一度、モンスター達が本気で地上を目指し侵攻してくる事を指す。どういう訳なのか、今までいがみ合っていたようなモンスター同士ですら協力して地上を目指す。

 しかも、普段階層を移動する事が無いのがモンスターなのだが、それすら無視する。まあ地上を目指す限り、ダンジョン内の階層の移動なんて、誤差だろう。


「さて、これはいつ頃終わる事やら」

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