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なんでも屋は暇じゃない  作者: ゆきつき
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十五話 待つ

 なんだかんだで、一週間経った。

 あいつは戻ったり戻ってこなかったりで、飯の用意する量が変わって面倒だった。用意しなかったら戻ってきて、用意したら戻ってこない。舐めてるだろ。

 まあ余った分は全部ケモ耳の腹に収まった。あいつ、一歩も動こうとしないのに、なんであんな食えるんだよ。おかしいだろ。


「それにしても、よく続けてられるニャね」

「俺は死にたくねえからな。どんだけ嫌いな野郎のアドバイスだろうが生き残る手段が得られるならその通りにする」

「そんな真面目ニャから、生き疲れるニャんよ」

「お前はもうちょっと真面目に生きろ」


 この一週間の間に、結構両手剣にも慣れて来た。動物を狩るには全くもって向いてないけど、あいつの言ってた通り時間だけは有り余ってるから、練習時間が馬鹿みたいに多かった。こんな時間が有り余ってるなんて事は初めてだった。


「ミャーはそもそも、冒険者を真面目にやるつもりなんてニャいニャ」

「うんまあ人それぞれだから文句はないけど、それは絶対に言うなよ?冒険者全員敵に回す事になるぞ」

「別にどうでも良いニャ。どうせミャーを受け入れてくれるパーティーなんてニャいし」


 そりゃまあ、誰が好き好んで『獣』って呼ばれてる、嫌われ者を仲間にするんだって感じではあるけどな。


「それじゃあなんでまた、冒険者なんて物騒な仕事を選んだんだよ」

「ミャーは知らない事が多すぎるニャ。だから、それを知りたいの」

「あ?」

「けど、ヒューマンに知ってるような話でも無かったのニャ」

「何だって?」

「とにかく、調べたい事があるニャ」


 まあ、冒険者なんて十人十色で千差万別だからな。それぞれの目的があるってのは理解できるけど。にしても冒険者にならなくてもできそうな目的だな。


「どっちにしろ、冒険者をやってる限り強さが必要になるだろ」

「うニャニャ」

「ま、俺は知らねえけどな」


 俺の事じゃないし、そんな知らんけど。けどやっぱ、冒険者をやっていくなら強さが必要になる。死んだら元も子もないし。


「んじゃま、俺は行くから、留守はよろしく」

「んニャ」


 はよ両手剣に慣れたい。





_______________





「回り回って、結局地道な調査に戻ってきましたか。ですがまあ、あれを見て十日ですかね。いえ、もう少し経ってましたかね?なら、もうすぐ一周回ったぐらいのはずですし、もう一度階段が出てもおかしくはないはずですが。いえ、二階とを繋ぐ階段を基準に考えるべきではないですかね」


 結局、イルはまたあの場所に戻ってきていた。

 木がある訳でも丘がある訳でも湖がある訳でもない。そこはただの平原。目印になるような物は何一つなく、何か珍しい物がある訳でもない。

 そんな場所に戻ってきていた。勿論理由が無い訳ではない。


「さて、ここからは持久戦ですか。今の状態では、ダンジョンから出て来たモンスターかどうかの判断もできませんし、やはりここで待つのが一番ですか」


 今回のこの調査は、別にモンスターの討伐ではない。それをできれば良いが、それはあくまでもおまけ程度の目的。

 本当の目的はやはり、地上にモンスターが出てきているのかどうかの判断をする事なのだ。モンスターが生きていようが死んでいようが関係ない。地上に出てこれるという事実があるのか無いのかが重要なのだ。


「普通なら十日ぐらい張り込めば成果が得られますが。地上とダンジョンを繋ぐ階段が、そう何度も開通されると困りますのでね。張り込み時間が延びるのも困りものですけど、一か月ぐらいの機会が丁度良いのですが。いえ、一度も開かれないのが一番ですか」


 こういう調査では、耐え忍ぶ事で成果を得られる。長くて一か月以上かけて情報を得るヒトもいるぐらいだ。時間をかければ必ず成果を得る訳ではないが、待たずに情報を得る事はほぼ無いだろう。そういう世界なのだ。


 だが必ずしも、成果を得る事が良い事ではない。今回のこれもそうだろう。ダンジョンと地上を繋ぐ階段は無い方が良い。だから成果を得ないのが一番だ。

 勿論なんの成果もなければ、報酬が出てくる事もないから、この時間が無駄になる。しかもずっと監視していた訳でも無いので、確実に無いとも断言できない。中途半端な結果にしかならないだろう。

 だがひとまずは、無いと判断できるだろう。一週間ぐらいだと短いだろうが、少なくとも一か月。更に言えば半年から一年の監視の上、成果が無ければ、無いと判断できるだろう。


「まあ、とりあえずは一週間待機ですかね。どうせ何の反応もないでしょうし、先に食糧を集めておいた方が良いですね」










 そして、一週間と数日。イルの想像通り、一切成果はない。まああの想定は食糧を集める間、という意味合いではあったのだが。


「どうしたものですかね。流石に『鑑定』などは、この範囲で使えないですし」


 そして勿論、この調査は広大な平原を調べないといけない事になる。階段が出てきた場所にずっといても問題ないだろうが、平原全体に階段ができる可能性があるのだ。

 まあ、無駄に全体を調査しようとすれば、その見れていない間に階段ができる可能性があり、結果的にはあまり時間は変わらないだろうが。


「どうしたものですかね。効率を考えるつもりは無かったですが、意外と調べないといけない事が多いのも事実ですし、早く終わらせれるに越したことはないのですが」


 情報を集めるのに、効率もなにもない。どちらかと言えば、どれだけ無駄をするかが重要になるまであるのだ。


「まあ、ここまで来て見逃したなんてのは嫌ですし、協力を頼むのは無しですね」


 別にちょっと目を離しただけかもしれないが、案外そのタイミングで事が起きる事はあるのだ。この一瞬を見るために十日や二十日、果てには半年ぐらいの日にちをかけて来たのに。たった一瞬の油断で、その見たかったものを見逃す事になる。そんな勿体ない事をしないためにも、ちょっとでも油断はしない。


「そこまで短い間の出来事ではないでしょうが、油断するよりかはマシと言うものですか」


 そのため、その一瞬を作らないようにする。


「ところで、それで気配を消しているつもりなのでしたら、少々雑ですが」

「!?」

「一人で来たのは良いですが、それならもっとやりようがありますよ。足音を消すなり、風を誤魔化すなり」


 だから、特にこういう蛮族達に気を使う。無防備な輩は、盗賊だとか快楽殺人鬼などにとっては絶好の獲物だ。実際にそういう事件に出くわした情報屋なんかもいる。


「まあ、敵意を向けてないようですので、こちらもそれなりの対応にさせてもらいますよ」

「は?」

「ところで、最近この辺りでモンスターが出たなどの話は聞きましたか?」

「? いや、そんな事はねえけど。そもそも地上のモンスターなんてレア中のレアだろ」

「やはり、そうですか。まあ僕の勘違いであるのが一番ですし、残念な事では無いですが」


 ただまあ、基本的に情報屋は頭のねじが一本以上飛んでるヒトだとか、化け物みたいな強さを持つヒトが多い訳だが。


「とにかく、あと一週間はここで待機でしょうね。まあこの程度はまだ楽な方ですかね。モンスターが襲ってくる事が無いですし」

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