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なんでも屋は暇じゃない  作者: ゆきつき
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十三話 非効率

 特に目的地を教えてくれる訳でも無く、俺とあの獣はただただ歩かされてるだけだ。

 こういう平原だと、ただでさえどれだけ歩いたか判断できないから達成感とか、満足感とかが足りない。にも拘わらず、目的地がわからないから、あとどれだけ歩けば良いのかもわからないんだ。ただの苦行だ。


 しかも、道中に動物とかが出てくるでもないんだ。暇つぶしに動物を狩るって変態みたいな思考を持ち合わせてる訳じゃないが、食料確保の意味合いでも出てきてもらった方が嬉しいのだが。

 けど全く出てこない。そりゃまあこんな見通しのいい場所で、わざわざヒトの前に出てくる動物はいないかもしれないけど。肉食動物でも、まあ直感であそこには近づくなって訴えてるのだろうさ。

 ただただ平坦なだけの平原を歩くだけ。これと言ったトラブルがないのは良いが、本当に何もない。何もなさ過ぎて、あいつが一切喋らなくなったぐらいには何もない。


「さて、この辺りですかね」

「ニャニャ?ここが目的地?何もニャいけど」

「当たり前でしょう。ダンジョンの壁があるところでも、地上に壁があるわけではないですし」

「あ?ダンジョンの地図なんか取り出してどうすんだよ」


 ここは地上だろ。ダンジョンと地上だと全く違う場所だ。そりゃこの国のダンジョンの一層は平原だったけど、地上で見たところで意味ない。ちょっと違うだろうけど、国内の地図を国外で見て道を確認する感じだ。


「いえ、地上と地下との間隔のズレを正そうと思いましてね。まあ歩幅なんかでズレが無いのは確実でしたが、確認のためにですね。万が一ズレがあれば、厄介極まりないので」

「お、おう、そうか」


 最初の予定だと一日で着く感じの言い方だったけど、結局二日かけてここまで来た。目印とかが無いから何処にいるのかわからんけど。

 まあとりあえず、二日かけてここまで来たんだ。その間ずっとこいつ、歩幅を変えてなかったって事か?多分だけど10時間ぐらいずっと同じ歩幅で、一歩も数え間違える事が無かったって事かよ、気持ち悪いよ。

 しかも確認するって言って、『万が一』って、どんだけ自信あんだよ。


「ですが流石にここに居座るのは厳しそうですね。もう少し良い場所を探しますか」

「まだ歩くニャ?もう疲れたニャよ」

「ここに居れば焚火の枝探しをするのも大変でしょうが、飲み水を探すのも大変でしょうね。もし近くに川や湖があったとしても、それをここまで運ぶ必要もありますしね。まあそれでも良いのなら、ここでも良いですが」

「ニャ、何処に向かえばいいニャ?」


 そうか。昨日は移動の途中とかだったから大して気にしてなかったけど、しばらく一か所に留まらないといけないからな。水とかだって限りがある。そうなると川とかに近い方が便利だな。


「まあ、そうですね。さっきまでと同じ方角を目指せば良いでしょう。この辺りですと、そっちの方向に湖があったはずですし」

「ニャら、さっそく出発ニャー!」


 にしても、こいつの頭はどうなってんだ?地形諸々も詰まってんのか?普通ダンジョンと地上とを比べるなんて異次元な事できないだろ。










 湖は確かにあった。あったけど、既に先客がいた。まあ客ってよりかは盗賊と言うべきだろうな。ただ水を汲んでるだけならそんな事断言出来なかったんだけどな。チンピラが如く、ただ出会っただけなのに威嚇されるわ襲われるわ。


「まさか盗人の住処になっているとは思いもしませんでしたよ。まあ情報を集める手間は減りましたし、そこまで酷い事態ではありませんか」

「ほとんど俺に任せておいてよく言うよ、マジ」

「何、こういうのは経験するのが一番ですからね。モンスターにも人型はいるのですし、丁度いい練習相手ですよ」


 まあ四人組の盗賊だったから、そんな手間って訳じゃなかったけど。しかも盗賊って戦闘が専門じゃないから、殺さずってのも簡単にいけた。


「にしても、君の戦い方は無駄が多すぎますよ」

「あ?自分でやってたら、大体そんなもんだろ」

「そうニャ!師匠でも居ニャいと、無駄なんて残るニャ」

「お前は無駄がどうこうの前にちゃんと戦えよ」

「へへん」

「……」


 どこをどう受け取れば、今のが褒めたってなるんだ?


「いえまあそうですが、君のはそういうありふれたあれとは違います」

「あ?どういう事だよ」

「武器がただの飾りになっているのですよ。ステータスに頼り切っている戦い方になっているのです。別に今まではそれでも事足りていたかもしれませんが、それだと先がありませんよ」

「あ?」

「別に他人にどうこう言われて自分のスタイルを変える必要はないですが、それだとあまりにも勿体ない」


 さっきから何が言いたいんだよ。


「結局どうしろってんだよ」

「少なくともその片手剣を使うのはあ無理があると思いますが」

「んな事言っても、これが丁度良いんだよ。荷物にもならねえし」

「身軽にするのは良いと思いますがね。そんな事を考えているから中途半端な強さになるんですよ」


 そんな事言われてもな。微妙なのは自覚してるけど、んな事言われてもって感じだ。冒険者をやってて、武器の達人とか、そういうヒトってほぼいねえし、そこまで問題とも思ってなかったけど。


「まあ僕も人の事を言える立場ではないですがね。とにかく片手剣が向いてないとだけ言っておきましょう」

「じゃあ何が良いってんだよ」

「そんなの自分で判断するしかないでしょう。なんなら、試してみたい武器を言ってください。用意しますので」

「あ?」

「じゃあ、両手剣でも試してみますか。これが一番力の差が出てきますので、君には向いてるでしょう」


 てかなんでこんな事になってんだ?今おすすめの武器とか言われたところで関係ないだろ。こいつ曰く、少なくとも一か月後になる訳だろ。


「えっと、どこにありましたかね。これは便利ですけど、入ってる数が多すぎて目的の品を見つけるのが大変ですよ」

「??」

「そもそもこれってなにニャ?鞄?ありえニャい程腕が入ってるニャけども」

「知りませんか?何処で落ちたか忘れましたが、モンスタードロップですよ。まあレアアイテムですし、仲間からの貰い物になりますが」

「それで結局、それはなんなのニャ?」

「無限ではないですが、ほぼ無限に収納できる鞄ですね。僕もそれは持ってたのですが、こちらの方が便利すぎて、ほとんど使う事が無くなったんですが。よければ渡しますよ」

「やったニャー!」


 さらっと言いやがったけど、これってあれだろ?一生遊んで暮らせるぐらいの値段で取引されるってあれだろ?それが粗悪品でそうだって話を聞いたけど。言っても粗悪品ですら見た目の倍以上を収納できるって話だから。噂程度でしか聞いたことがないぐらいには貴重な品なんだが。


「ああ、ありましたありました。僕のですが、まあ仮使用には丁度良いでしょう」

「は……」


 どこからどう見ても、鞄に収まるサイズをしてない両手剣が出て来た。柄も合わせてだけど、俺の身長よりもでかい。

 こんなのを収納するって時点で意味が分からんのだが、これ以外にもまだまだ入ってるんだろ。いくらモンスタードロップだったとしても、理解できないやつだ、これ。


「まあ見ての通りの粗悪品ですが、力で斬る分には申し分ないはずですよ。それであの袋ですね。何処に仕舞いましたかね。一応あれも使える奴ですので、わかりやすい場所に、ああ、ありました。ではこれは君に」

「ニャ?小さくないかニャ?」

「だから言ったでしょう。今使ってるのが便利で使わなくなった物だと。見た目はそんなのですが、性能についてだけは保障しますよ」

「ニャ、ニャんと!普通にテントも入るニャ!」


 もう意味がわからん。

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