プロローグ
「それでは……始めっ!!」
あぁ、また始まってしまった。
「また俺がアレクとやるのか?
もういいだろ、やる前から勝負は見えてるのにさ?」
学園指定の体操服には似合わない、
大振りの大剣を片手でもつ男が周りのクラスメイトに
問いかけるように話す。
「よせってグラン、なんてったってアレクは
霊を操るんだぜ?」
誰かは分からないが、
俺の前に立つ男、グラン・アックスフォールの
問いかけに反応する。
「ま、使いもんにならねぇ能力なんて何の価値もないけどな!」
その一言で笑いの波が訪れる。
またこの空気だ……
実力という圧力には、抗いようもなく
黙って耐えるしかこの場を乗切る方法は無い。
「こらっ、早く始めなさい」
「今やりますって!」
試験監督が注意をするも、
グランは手馴れた手つきで軽くあしらう。
「んじゃ、終わらそうか。ゴーストテイマーさん」
背丈ほどの大剣を俺へ突きつけて、
グランは俺の方へ近付いてきた。
……痛いのだけは、よして貰えませんか?
*
地獄のようなひとときだった
実践式訓練も終わり、放課後。
俺は普段から放課後は自己訓練に務めている。
その成果は正直芳しくなく、
今回も前回もそのまた前回も努力虚しく実践では
負け越しているのだが……
訓練といえど、筋力増加のためのトレーニングだとか
剣をひたすら振り続けるなどのものではなく、
自分の職業、ゴーストテイマーとして
霊をテイムし続けるというものだ。
俺の視界に見える数個のふわふわとした光る球体が
この世界に普段から存在している霊であるのだが、
そもそも、認識・具現化させるのは
そう簡単なものではなく、
結構体力を使う。
連続でテイムするには訓練の他にない。
いつか来るであろう自分の活躍するその時に
備えて、修行しているのだ。
今同時にテイム出来るのは三体が限界で、
連続でテイム出来るのはせいぜい40体程度だ。
ゴーストテイマーというのは珍しい職業で
他に比較対象が無いのでなんとも言えないのだが……
今も限界までの挑戦をしようと最初の3体を
テイムしたところで……
あれ、2体しかいないぞ?
ゴーストは基本的に自我を持たないので
テイムに失敗ということはまず無い。
しかし、明らかに1体テイム出来ずに
いるのは確かだ。
「我をテイムしようなど、100年早いわ!!」
ふわふわと浮かぶ球体から
声が聞こえる……気がする。
「あれ?まだ気付いてない?おーい!」
目の前で光る球体が右や左や飛び回っている。
なんだあれ。
「え、これ見えてない?
うそ、さっきテイムしてたよね?」
目の前で光る球体が消えたり光ったりしている。
「なんだ、人違いだったか。残念だなぁ」
目の前で光る球体が遠くへ遠ざかっていく。
……今だ!!
「テーーイムッ!!」
「うぉぇ!?」
目の前で眩いほどに光輝く丸い球体。
この光は、その霊が持つ魔力量に応じて
増えるのだが、
どうも今までテイムしてきた霊たちの
それではない。
「俺......凄いの捕まえちゃった?」
新作始めました!
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