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音の鳴る正体

作者: trt

夏のホラー2019の応募作品です


 ――――ヒタヒタヒタヒタ。

 今日もそんな足音が廊下を鳴り響かせていた。

 時間にして深夜0時過ぎているだろう。

 周囲は寝静まり、起きているとしたら看護師達にあとは医者ぐらいか?

 俺みたいに起きてる奴もいるかもしれんが。

 こんな音が気になり始めたのは、ある看護師が巡回し始めてからだろう。最初はトイレを済ましベッドに戻った際に看護師の巡回する足音が聞こえる。

 コッコッコッコッ――――。

 各部屋に異常がないかなど扉の開ける音やたまに徘徊する人に声をかけたりなど。

 昼間なら人も多いから五月蠅うるさいほどだけど、流石に深夜は静かなのでよく響く。

 しかしふと、足音に混じり(・・・)が聞こえ始めた。


 コッコッコッコッコッコッヒタヒタヒタヒタ。


 靴から裸足に変えたのか。誰もいないし見ていないとはいえ気分転換はしたいのだろうな。

 そんな事を考えているうちに、足音は俺の病室前に来た。

 扉が開き始めて看護師が中を確認していく。

 巡回は当番制らしいが基本的に同じ人がする事が多い。

 今日の巡回する看護師は藤山さんか。

 藤山さんは新人らしく、この病院を務めるに日は浅いと聞いたことがあるな。まあ今の世の中新人の常識が欠如していると聞くし、こんな事して見つかると先輩に怒られるだろう……あれ?

 俺は病室を出ていく際の藤山さんの足元を視認したら、きちんとタイツと靴は履いていた。

 ヒタヒタヒタヒタ。

 そんな音が再び響き始めた。

 俺は確認するように扉を開け藤山さんの方を見ると、靴を履いている。

 足音はコッコッコッコッと廊下を歩く、ごくごく普通の音。

 藤山さん以外に人はいないが、やはり気になる。

 ベッドに戻り、ふと扉の下に視線を動かした。

 外の光が漏れているのか、もしかしたらあそこから廊下が見えるのではないかと思い、覗き込むように見た。

 案の定、一センチぐらいの隙間は空いているのか廊下は一応見えた。

 後日確認してみた所、過去に扉の前で患者が倒れてしまい、中の確認のためにとのことだそうだ。

 おかげで足元というか誰かが通るぐらいなら確認はできるだろう。

 そして作戦を決行する。


 ベッドの布団の中に衣服を入れ膨らまし人がひとり入って寝ている風を装う。

 俺は扉の下を確認できる場所に位置取り待つ。

 しばらくすると、コッコッコッコッと足音が聞こえ始めた。

 耳を澄ますとあとにもヒタヒタヒタヒタと鳴る音も。

 扉の前に近づく足音。そして扉の下の隙間には藤山さんの靴ともう一つ、()()()()()()()()()()が目に映った。

 思わず声を上げそうになるがなんとか抑えた。

 藤山さんは扉を開け、いつものように異常がないかを確認していた。

 異常もなく俺にも気づかない藤山さんは出て行った。

 コッコッコッコッと音が過ぎ去って行こうとする。

 ふうっとため息を付き落ち着かせるように視線を天井へと向けた。

 ふと俺は視線が突き刺さるのを感じると視線のほうへと自然と目が向かう。

 この時、廊下に鳴り響く音が()()しかなかったのかと考えておけば、突き刺さる感覚を気にせず無視しとけば良かったと後悔した。

 視線の先にあったのは―――――


 目。

 目だ。

 隙間から覗き込むように見ている目。

 俺をはっきりと視認している目だ。

 影に張っているがこちらを見ている事、輪郭から子供であろうことは間違いない。

 目線が合うと子供は口をゆがませケタケタと笑みを浮かばす。


「――――――――――――――――!!!!」


 俺は思わず叫んだと思う。

 何故思うのかという疑問は、あまりにも体験したことのない恐怖と驚きで記憶自体も曖昧になったと答えるしかない。

 俺の声につられ引き戻ってきた藤山さんは扉を勢いよく開け入って来る。


「どうしましたか!? 大丈夫ですか!」


 心配そうに俺を覗き込む藤山さん。


「今すぐ先生を」


 そういって呼びに行こうとする藤山さんの腕を掴み俺は止めた。

 視線は一点に集中するが顔は横を強く振り拒否を示した。

 藤山さんは俺が向けている視線の先を見るが何事もないのか戻した。


「夢を、とても怖い夢を見てしまって思わず」


 とっさの言い訳。

 疑問には思うかもしれないが現状の打開案はこれしか思い浮かばない。


「夢? ですか」

「はい」


 扉の下の隙間には子供の足はない。

 藤山さんが扉を開け病室に入ってくる瞬間子供は消えるように居なくなったのは確認できていた。


「あの、たずねたいんですが、さっきまで廊下に子供っていませんでした?」

「子供ですか? いえ、いませんでした」

「……そうですか……」

「……? もしかしたら入院生活に慣れずストレス溜まってしまってそう幻覚のようなものを見たのかもしれませんね」

「そう、ですね」

「もしまた何かあれば呼んで下さい」


 そう言って藤山さんは扉を閉め出ていく。

 コッコッコッコッという音とともにヒタヒタヒタヒタと同時に音を出して去っていく。

 確かに二つの音が聞こえていた。多分あの音は先ほどの子供が歩いていた音かもしれないが確かめようもないし確かめる気力もない。

 しばくして俺は退院した。あの件もあり多少は長引いたが、今思い返してもあの時何故あの子供がいたのか、何故あの看護師と一緒にいるのかはよくわからない。

 知る必要もないのだろうがこれだけは言える。

 あれはいたのだと。


本当に主人公だけ見えていたのか?

あの子供は存在していたのか?

看護師は?

等々オチはつけず色々考察してもらう感じするためこうなりました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 後書きの件ですが、ホラーですので、この終わりで良いと思いますよ。 これの正体は、病院で亡くなった霊なのか、看護師の水子なのか、その辺は、我々が知り得るはずもない世界の住人のことですからね。 …
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