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Carry around Warriors  作者: あるす
4/4

せつめいしよう!

5G通信回線でAR技術を使ってリアルカードゲーム大戦とか誰か作ってくれないだろうか

ドロー!俺の先行!とかやりたい


 コンビニで買ってきたカップラーメンにお湯を入れてしばし待つ。

 その待ち時間の間にコンロにエスプレッソメーカーをセットして火をつけた。

 コポコポという音とともにコーヒーのいい匂いが立ち上る。


 直火式のエスプレッソメーカー


 食べるものに拘りのない俺の唯一の趣味と言っていいだろう。

 2カップタイプの中身を小さなカップへと注ぐ。

 芳醇な香りは正に至高。

 

 手早くカップラーメンを食べ、食後の一服をする。

 二杯目のエスプレッソをカップに注ぎながら俺はアプリを起動した。


    ■    ■    ■



 起動した画面にログアウトした家のリビングが写し出される。

 そういえばログアウトしたのはリビングの机の上であった。

 以前と変わらない内装を見ているとピコピコとした表示が画面の端で主張する。

 画面の端に表示されるビックリマークをとりあえず放置してしもべリストを開く。

 そこにはコマンドごとに分かれてしもべが表示されていた。


 探索をする

 パーティ1

 【 奇蹟的な隠遁した未完の小地主 ニルナ 】

 ダンジョン攻略中 4/5 あと5分43秒

 パーティ2

 【 最終決戦継戦用のゴブリン アイン 】 

 周辺探索中 あと15分2秒


 建造する

 なし


 農作業をする

 【 忠実なる歴戦のピンクピグピグ ラヴ 】

 農作業中 


 待機中

 【 別次元に祝福されたミニマムな焔魔女 ガルメム 】



 なるほど。

 すごくわかりやすくソートされている。

 つまりはまだしばらく派遣したしもべは帰ってこないというわけだ。

 というわけで、画面に主張するビックリマークをタップする。

 日本地図のマークのそれをはどうやらマップであるらしい。

 デフォルメされた日本の形を押すと現在の所在地へとズームされる。

 そこは広島と岡山と鳥取の県境のような場所であった。

 恐らく自分のいるであろう場所にアイコンがあり、その周りが可愛くデフォルメされて表示されている。

 そこには周辺地図と発見されたダンジョン、そして街道と思われるものがあった。

 …主要道路的な?

 ダンジョンについては2つ。


 《 石巨人の放牧場 推奨レベル30 後20時間 》

 《 顔瘤樹の密林 推奨レベル33 後18時間 》


 推奨レベルが高い、気がする。

 普通、こういう始めたばかりの時はレベル1とかのダンジョンが普通じゃないのか?

 なんとなく引っかかるがそれは置いておこう。


 次に畑のマークをタップする。

 するとホップアップが出てくる。


 《 収穫しました 》

・プリュムの実×5

・イタゴの実×6 


 とりあえず、はいとボタンを押す。


 《 食糧庫に保存しました 》


Tips:食料を所持していると、しもべが自動的に消費します。待機中のしもべの体力が回復したり、好感度が上昇したりします。逆に食べさせないと、体力が徐々に減っていき、好感度が下がるでしょう。



 …なるほどね。

 目の前にいちいちお肉を召喚しなくてもいいというわけか。

 あまり放置しすぎると餓死してしまうという恐ろしいシステムであるわけだが。


 というわけで開いた畑アイコンである。


 《 畑を設置する場所を選んでください 》


 どうやら二つ畑を増やせれるようであるので家の前のなだらかな丘を指定する。

 これで耕作面積が単純に二倍となった。

 恐らくではあるが、ニルナが小地主へとランクアップしたのが原因であるような気がするが詳細は分からない。

 まあ、こういうのはそのうちチェキペディアにまとめがのるでしょう。


 そんなことを考えていたら目の前の窓がひとりでに開き、小さな少女が飛んでくる。

 

「ガルメム様さんじょうだわ!」


 器用にくるくるとアバターであるクリスタルを周遊すると目の前の机に降り立った。

 その手にはいつか見た畑に生えるプリュムの実らしきものが握られている。

 机の上に足を投げ出して座りながらそれを齧りだす。


「んー、まだちょっと甘味が足りないけど歯ごたえがあっていい感じ!しあわせだわぁ~ 」


 しゃくしゃくと齧る姿は愛らしくくるんとカールした髪が飛び跳ねる。

 頭と同じ大きさの果実が見る見るうちに齧られていき、種だけが残った。

 幸せそうな、満足そうなため息を吐き出す姿に思わずほっこりする。

 アポカリプスモードの惨劇を忘れてしまいそうになるレベルである。


「あっ!種はラヴが欲しいって言ってたんだった!渡してくるわ!」


 がばっと起き上がるとまた窓から出ていった。

 あれはもうなんというか愛玩用のような枠だな。うん。

 

 飛んでいったガルメムを追って窓の外に視点を移動させる。

 そこは以前とは少し変わった状態となっていた。


 大きな樹が3本は変わっていないのだが、畑には背の低い樹が何本も生えている。

 パッと見、ブルーベリーの樹が近いだろうか。

 その周りにはイチゴのような実を着ける植物が点在している。

 それはまだいいのだが、問題はそこではない。


 何故かブタが増えている。


 いや、ぶたではなくピグピグだったか。

 チュートリアルで最初に出てきた3匹のピグピグが畑に我が物顔で寝そべっている。

 もはや突っ込む気力もわかない。


 そんな中に居る、更にハートマークの付いたピンク色の豚へとガルメムが飛んでいくとその背中に飛び乗った。

 何やら話した後、そのまま背中に張り付いて動かなくなった。

 やはり、ペット枠だな。


 そんなことを考えていると突然入り口のドアが勢いよく開く。


「ただいまー!神様今帰りました!」


 とたとたと机に近づくとそのまま椅子に座る。

 そのままこちらを見ると喋り始めた。


「それじゃあ、戦果報告をしますね神様 」

〈 うむ 〉

「ダンジョンの一番奥まで無事たどり着きました!ダンジョンも消滅させてきたんですよ~」


 その言葉が終わるとホップアップが出てくる。


《 ダンジョンを踏破しました 》

 ダンジョン名 子鬼の晩餐

 獲得RP 

 子鬼×1

 レベル×25

 階層×5

 晩餐×2

 初回ボーナス×2

 単独踏破×2

 合計 1000P


TIPs:RPとは、ランキングポイント。毎週月曜日午前0時にリセットされる。リセット時点でランキング上位者には特殊なマテリアルや無料ガチャ券など豪華な景品付き。あなたも頑張って上位を目指そう!


 …ランキングシステム、だと…!?

 ここで競わせてくるとは流石企業、課金させに来ている。

 と言っても実はこのゲーム、今週初めの月曜日にリリースされている。

 今は土曜日。

 ということは、今週のランキングは絶望的ということである。

 

 落ち着いたところでホップアップのはいを押して消してやる。

 そうするとまたホップアップが出てくる。


《 獲得一覧 》

 ゴブリンのマテリアル×478

 剣ゴブリンのマテリアル×15

 盾ゴブリンのマテリアル×10

 弓ゴブリンのマテリアル×5

 参謀ゴブリンのマテリアル×1

 ゴブリンヒーローのマテリアル×1


 ちょっと引くレベルの量のゴブリンが惨殺されていた。

 もはやゴブリンスレイヤーと言っても過言ではない。

 とりあえず一番下のはいを押して閉じる。

 

TIPs:同じ種類のマテリアルは特定個数集めると同じモンスターのガチャ券と交換できます。どうしても欲しいしもべがいたら使ってみてください。


 ほぉ。

 つまり、課金しなくてもものすごく頑張ればしもべを増やせるという救済措置。

 とりあえず水晶のアイコンをタップしてマテリアルを開く。

 所持しているマテリアルの種類が表示されるがとりあえずゴブリンだな。

 さっきニルナが大量に虐殺してきたから沢山あるし。

 ぽちっと押す。

 そうするとマテリアルと交換できるリストが表示される。

 以前からあった棍棒とゴブリン布以外にも強壮薬なるものがあるがそれではない。

 

 ゴブリンガチャチケット


 一番下に表示されるそれは必要マテリアル500だった。

 多くはなく、少なくもない。

 頑張ればためれそうな数。

 ゴブリンガチャチケットの説明を読むと、どうやらゴブリンのみを召喚できるチケットのようだ。

 そこで気が付いたのだが、このシステム。

 欲しいしもべがいた場合、とにかく乱獲する必要がある。

 ゴブリンだったら何の沈痛も感じないかもしれないがこれがピクシー等の愛らしい外見をしていた場合はどうだろう。

 つまりはそういうことである。

 なんとSUN値を試される行為。

 恐ろしい。

 とりあえずガチャチケットは保留にしよう。

 ゴブリンはアインがいるからこれ以上いても召喚枠を圧迫してしまう。


 そこで改めて目の前に視線を移した。

 椅子に座って足をぶらぶらさせている活発そうな少女。

 くりくりした碧の瞳でこちらを見ている。

 今更ではあるが気が付いた。

 これはほめてほめて!というやつである。


〈 ニルナよ、大儀であった 〉

「うん、流石に疲れたよ~。でも、レベルも上がって強くなった気がする~」


 俺はそっとニルナのステータスを見ると、案の定レベルが40に上がっていた。

 虐殺されたゴブリンに冥福を祈ろう。

 では早速ということでランクアップさせていく。

 そこには選択肢が2つ。


 小領主と大地主

  

 これは大分違うと思われる選択肢じゃないだろうか。

 恐らくだが、大地主はそこで終わりのような気がする。

 小領主はまだまだいけそうな感じである。 

 まあ、小領主でいいだろう。

 ぽちっとな。


《 この辺りを治める領主と敵対関係になりますがよろしいですか? 》


 んんん?

 そうか、よく考えたら今まで小地主とはいえ一農民だったのに領主を名乗ったらそこを治めてる領主からいろんな権利を奪うから、要するに反乱みたいなものか。


 とりあえずはいを押しておく。

 まあなるようになるだろう。


《 現在の住民数に合わせて領地を設定しました 》

《 現在の住民数は3です 》


 開かれたマップに現在地周辺が写し出される。

 丁度今いるところと周りの畑が領地として設定されている。

 といっても、どうしようもない。

 何しろ住民数は3である。

 そしておそらくそれは果樹の周辺で日向ぼっこをしているピグピグなのである。

 全く戦力になる未来が見えない。

 

「神様ありがと~。また強くなった気がするよ~」

〈 これからもよろしく頼む 〉

「任せてよ~。でもこれからは領主様らしくしないといけないかなぁ」

〈 ん? 〉

「あ、そうだ!ここにおっきなお城を建てよ?神様良いかな?」


 さも名案だ、といった感じで提案してくるニルナの言葉を聞いていままで放置していたアイコンを見てみる。

 建物の形をしたアイコン。

 恐らく建築に関するものなのだろう。


〈 少し待つが良い 〉

「うん、じゃあご飯作ってる~」


 そういうと立ち上がり食糧庫へと走っていった。


 というわけでアイコンをぽちっと押す。

 なんというか、普通に家とか家具とか改築だとか増築だとかの項目がズラッと並ぶ。

 お城っぽい選択肢は見当たらない。

 つまりはレベルや施設が足りないんだろうか。

 鍛冶屋とか、石切り場とか。

 とりあえず建築アイコンを閉じる。

 こういうのは余裕ができてからするものと相場が決まっているのである。


 画面を閉じると次に大きくQというアイコンがあったのでそれを押してみる。

 開いた画面を見るに、どうやらミッション進行状況を知らせてくれるものであるらしい。

 そこをじっくりとみてみる。


《 領主としての仕事1 》

 領民を増やそう 3/10

 

《 ピグピグの守護者2 》

 ピグピグを守護する あと18時間


《 一番槍のゴブリン3 》

 単独で自分よりランクが高い敵を撃破 46/50


《 お転婆焔魔女は気まぐれ3 》

 好感度が一定値を突破


 いわゆる、ネームドごとの個別ミッションのようなものだろうか。

 恐らくではあるが、領主としての仕事を進めていくとお城を作るミッションが発生すると思われる。

 多分。

 というか、領民なんてどうやって増やすんだよまじで。

 とりあえずミッションリストを閉じる。


TIPs:ランク。しもべにはランクがあり、初期の強さに大きく差が生じる。ゴブリンやピグピグはランク1であり、剣ゴブリンになるとランクが上がり2となる。アバターのレベルによって召喚できるランクが決まっており5の倍数ずつ解放され、45レベルでランク10まで召喚できるようになる。一般的にランクが低ければ低いほどレベルが上がりやすく、高ければ高いほどレベルが上がりにくい。


 んんー。

 これは結構重要なヒントなのではないだろうか。

 つまり、今課金しまくっても出るのはランク1のしもべのみ。

 いや、アバターのレベルを見たら9に上がっていたので2まで出るかも。

 暫くガチャチケットは温存したほうがいい気がしてきたのである。

 

 そこで俺は閃いた。

 ゴブリンガチャチケット!

 これでガチャをしたい欲を満たせということだな。

 

 おっと危ない、ついゴブリンを召喚するところだった。

 おちつけおちつけ。


 そんなことを考えていたら入り口の扉が開く。

 

「うーっす、探索終わりやしたぁ。」

「あ、おかえり~」


 料理が終わったのか、ニルナが椅子に座って食事をとり始める。


「おーいい匂いがする。って、肉じゃねぇのか。ボス、まずは報告するぜぇ 」

〈 うむ 〉

「旨そうなやつを優先して狩ってきたんで肉奮発してくだせぇ、げへへ 」


《 獲得一覧 》

 ゴブリンのマテリアル×21

 レッサーウルフのマテリアル×25

 オークのマテリアル×5

 森林スパイダーのマテリアル×4

 ジャイアントフロッグのマテリアル×12

 森ウルフのマテリアル×21

 森エルフのマテリアル×3

 ロックゴーレムのマテリアル×1

 

 探索結果としてマップも新たに埋まっていっていた。

 ある程度の周辺地理が判明してきたようである。

 どうやら周囲は山に囲まれており現実的な侵入経路は北東と北西方面のみであるようだった。

 現実の地図とほぼ同一とみてもよさそうである。

 可能であればこの地域を制圧してしまっても良い気がしてきたという。


 そんなことを考えていると目の前からの視線に気づいた。 


 揉み手をしながらげへげへ言ってるアイン。

 これは完全に肉を要求しているとみて間違いない。

 なので目の前にお肉を物質化させる。

 今回はオークと森ウルフのお肉である。


「ひょー!ありがてぇ。ボスは気前が良くて最高だぁ!」


 ゴブリンはみんなこんな感じだと楽なんだろうな。


「アイン、それ焼いてあげよっか?」

「あぁ?肉は生だろ。焼くなんて勿体ねぇよ 」

「えぇー!…ほんとに焼かないの?焼いたほうが絶対美味しいよ?」

「いいだろ別に。うちの部族はみんなそうなんだよぉ」


 そういって肉に齧り付く。

 流血表現緩和のためか、まるでまんが肉のように食べられていくお肉。

 あっという間に食べつくされてしまった。


「あー、運動して飯食ったらもう寝るしかねぇ。おやすみボス 」

「また床で寝てる。ま、いっか 」


 床に転がったアインから視線をこちらに映すニルナ。

 そのままにこにことこちらを見ている。

 いわゆる待機状態だろうか。

 効率的には待機させるのは時間の無駄となるのですぐに出撃させるべきなのだろうが、食事後なのでいったん休憩を取らせることにしよう。

 というわけで、区切りもいいしログアウト。


    ■    ■    ■

 

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