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きみのねむるまち(プロット)  作者: 大枝 岳
終章〜きみのねむるまち〜
130/183

純のメモ帳

第130話「純のメモ帳」


それぞれの日常を生きる彼ら。そんな何気ない日常を作品とシンクロさせながらも一人称で綴るスピンオフ。

 最近、色々思い出して苦しむ事が多い。最近ではないな、訂正。ここ何年かずっと。

 多分、いや、確実に俺が悪いのは分かってるんだけどさ。何もしとらんし。

 頭の中を嫌なこととか、嫌な想いだけがずっとずっとずっとずっとぐるぐるぐるぐる回ってる。

 あまりにも苦しいから、この現実から逃れたいと常々思ってる。

 口うるさい父親。階下で喚くジジイ。介護と仕事に疲れた母親。家を出てから兄貴は中々帰ってこない。

 この前ヨッシーに

「1日だけなれるなら何になりたい?」って聞かれたから

「知的障害者」

 って答えたら「病気だ」って笑われたよ。


 机の中整理してたら手紙が出て来た、何だこれ?女の字で高校卒業おめでとうございます、だって。

 あ、女の子からもらった手紙か。名前も知らないコだったな。俺が覚えてないだけかもしれんけど。

 あれ、もう何ヶ月前だ?

 あぁ、半年も前なんだ。へぇ。

 卒業してから最初のうちはバイトでも始めよっかなぁとか思ってたんだけどね。周りから「就職しろ就職しろ」ってめちゃくちゃ言われるようになってからは気軽にバイトなんかせんで正社員の募集見るようにした。何もピンと来るもんなんか無かったけどね。街の不良に力づくで説教する自警団なんかあったら面白そうなんだけどな。

「凶気の桜」面白かったなぁ

 国家のアイデンティティとは?この国にはないな。アメリカ国日本州。万歳!名誉白人ってさ、軽蔑なんじゃねーの?ってがっちゃんが笑いながら言ってたけど同感。面白い皮肉だよ。

 近場でいいかと思って応募してみて面接には行ったんだけどさ、ダメだったなぁ。

 小高い山の中にある工業団地内にあるコンピュータとかの基盤を作る会社だった。武蔵?嵐山だったかな。

 面接に行って、とにかく角度が凄いフレームの眼鏡掛けた男の面接官が登場した時に俺はもう、就業意欲を失くしてしまった。

 こんなセンスの奴がいる会社で働くのは無理だって思ったんさ。

 その上、休憩時間の外出は禁止だって。クソだ。

 それでさ、その角度眼鏡に言われたんさ。


「君は……高校を卒業してから何かしてましたか?」

「いや……特に……何も」


 就業意欲のない俺がそう素直に答えたら、角度眼鏡はゆっくりと鼻息で溜息をついていた。バレバレ。バレバレなのに何でわざわざ溜息つくかな?バカなのかな。溜息つくならせめて口でついてくれんかなぁ。なんか人以下みたいな扱いされてる気がするじゃない。まぁ、人以下なんだけど。


「君は……夢を持って時間を過ごしているのかな?」

「夢……いや、特に」

「そうですか。若いのにね……」


 出た。必殺キーワード「夢」!!ウケるー

 そんなもの持ってる若者なんてさ、無駄にエネルギーが有り余ってて超必ゲージがガンガン溜まってる奴くらいだよ。

 オッサン達は皆、今の若者に自分達の見れなかった若い頃の自分の姿=夢を背負わせていると思う。

 逆に聞きたいよ。「夢」はあったんですか?って。したらさ、きっと答えると思うんだよ。


「私にはあった。だからこそこの分野で」


 とか絶対言うんだよ。それって結果であってさ、きっとあんたが今の若者に期待してる「夢」なんかじゃないんじゃないかな。

「夢」なんて言うほどのもんなら、もっとドデカイんじゃないんかい?

 若者が真面目腐って「わたしは、この分野の将来性について日々勉強を~」とか言ったらそりゃオッサン達がいかにも驚いた顔で感心するねぇ!とか抜かすかもしれないけど、内心「こいつ、つまんねーガキだなぁ」とか思ってさ、挙句の果てには「一緒に働いたら俺の席が危ないから遠くに置いておくか。あいつ面倒くさそうだし」とか思うんじゃないんかな。

 こんな一回入ったら終わるまで外にも出れない日帰り刑務所みたいな山奥の工場に毎日せこせこ通ってちまちま作ってるもんが「夢」だったなんて、そんな人間生まれてからとっくに死んでるのと同じじゃないんかい?

 あー、面倒くさ。


 もちろん、俺の意思がしっかり伝わったのが不合格になった。

 それからは就職活動も全部辞めて、一日中部屋にこもってゲームをして過ごすようになった。

 他にやれる事なんてなかったし、興味を持てるものもなかった。

 文字数の多いラップを聴いていれば自然と頭の中が埋められて嫌な事を感じる暇が無くなる。だからヒップホップを聴き始めたんだけど、今ではファッションもB系でかためてる。けど、それはこんな俺なりの表現や生き方なんだなぁ。

 そういうのを見た大人達は必ず言ってくる。


「ラッパーとして食って行きたい訳?音楽は甘くないよ?」


 違うね。全く違う。そういう事じゃないんさ。何でわからんかなぁ。大人になると皆コジキみたいに何かにつけてそれらしい理由を探して、無理にでもつけたがる。それが自分の都合と合わないと「分からない」と言う。聞く耳も持たなくなる。それってファミコンでプレステのゲームやるようなもん?

 スペックが下がりすぎてて処理できないのか。

 俺はそんな大人にはなりたくない。


 あぁ、身近にも音楽をやってる奴はいるけど、最近めっきり連絡が無くなった。

 少し前にライブ行ったらかなりガチンコでやってて、ライブハウスの客も他の出演者もマジもんだった。

 高校の時みたいな内輪の世界じゃなくて、本気も本気の世界だった。

 そん中でステージでに上がるがっちゃんは何か別人のようにも見えた。あの時は確か、ギターの位置下げまくってて、サビでマイク蹴り倒してた。

 結局ライブが終わってから話し掛けられないで、俺はそのままライブハウスを後にしたよ。

 あの姿に何故かさ、プレッシャーを感じたんさ。話さなくて正解だったと思ってる。


 鉢形のヨッシーの家に遊びに行く時はドキュメントビデオ観て、漫画読んでダラダラ過ごして帰る。

 AVは物珍しい(大変ショッキング)のがあり過ぎて正直興奮どころじゃない。引いてしまう。だけど、あの小説のやつは面白かった。まぁ、結局借りたんだけど。

 映像のない世界っていいよ。自分の想像で色々興奮出来る方がきっと俺には向いてる。

 いわゆる「普通の」AVっていうのを見た事がないから、何とも言えんけど。


 ヨッシーはいつもひょーひょー(ひょうひょう?)としてる感じするけど、怖いって思う事とかあるんかな?

 あ、佑太が苦手か。あれからもうずっと会ってないもんな。

 実はさ、皆とまた集まって遊びたいなぁって思ったりするんさ。自転車であちこち走り回ってた夕方とか、放課後の教室とか、いまだに夢に出る。


 中三の夏にヨッシーが突然転校して、それからもう皆で集まれないのかなって思ってたら高校二年の時に帰って来て再集結。定時通う前にホストに勤め始めて、佑太ともめて、あれやこれやでまた解散。

 友達運ないのかな。


 佑太も最近女の子とばっか遊んでるけどよく飽きないよな。しかし、揃いも揃って一体どっから引っ掛けてくるんかね?あんなブスばっかさ。そういう性癖なんかな?

 テンション高い時の佑太は勝手にしゃべって勝手に盛り上がってるから楽なんだけど、一度機嫌悪くすると腐った女みたいにずっとシカトしたままになるの、本当あれは止めて欲しいわ


 俺「健忘症」って医師に言われるくらい忘れっぽいんだけどさ、色々楽しかった事は覚えてる。

 皆で高台で遊んでる時に崖の上から電車に向かってロケット花火撃った時はゲラゲラ笑ったなぁ。

 確か、がっちゃんが言いだしっぺだったんかな?


「暑くて電車の窓開いてんだからさ、タイミングよくロケット花火撃てば入るんじゃん?」


 とか完全に他人事みたいに言ってたよな(実際そうだろな)。

 やってみたら見事に入ってったもんな。きっと車内はパニックだったんだろうなぁ。

 あと、煙玉の時。あれはさすがにマズかったか。汽笛鳴らされまくって逃げたね。

 がっちゃんはいつも人に面白い提案するけど、自分の手はめったに汚さない。

 かなりズッケー性格してる。それを昔がっちゃんに言ったら

「じゃあ俺みたいになればいいよ」

 って言ってゲラゲラ笑ってた。イヤな奴だなぁって思うけど、まぁ面白いからいいんだけどさ。

 何も考えずに笑えてたのって中学が最後だったかな。

 高校は最悪だった。三年の時は特に。あんま思い出しくないから、これは書かんでおこ。

 そういや最近米田君と行くB系の専門店、値段めっちゃ跳ね上がってる気がするんだけど?ボラれてんじゃねーのかな。分からんけど。相手が黒人だから下手に言えないし。


 森下は元気してるんかな?

 最後に会ったのって高校二年の時かな。

 髪を茶色に染めてて、ちょっとビックリした。なんか、元から髪は茶色っぽかったしそのままでも良いような気もしたけどさ、ちょっと色っぽくなったなぁって思ったんさ。大人っぽいって言うのかな。


 掃除の時間、教室で過呼吸起こしてさ、ぶっ倒れそうになった事があった。バレんように隅っこに座ってた。

 そしたら森下に背中さすってもらった。

 なつかしいな。


 佑太に見られたらどうしようって思ってビビってたけど、森下は皆に見えないように上手い事俺が隠れるようにしてくれたっけ。めっちゃ心配してくれてた。

 背中なでられてるうちに、こういうのなんだかいいなって思った。

 顔がとにかく近くて、手が暖かくて、良い匂いがした。やわらかい匂いだった。たったひとつの安心。


 俺さ、あの時、教室の中で皆を見てたら自分が情けなくなって泣きそうになってたんさ。

 群馬にいた時はバスケ部でそれなりに人気もあって、誰とでも仲良くなれてたし、よくしゃべるタイプの人間だった。

 知らない土地の知らない学校に転校してきてさ、それで常に緊張しっぱなしだったんさ。

 群馬ではあんなに皆と上手くやれてたのに、緊張してたからかな、話しかけてくれる人以外と全然仲良くなれなかった。

 どうして前みたいに上手くやれないんだろって毎日プレッシャーに感じてた。前の俺なんか知ってる奴なんか誰もおらんのにさ。

 皆楽しそうにグループ作ってんのに俺だけ一人でさ、情けねぇとかそんなこと考えてたら息の仕方が変になったんさ。

 その場に座り込んで、手がしびれて来て、めまいがした。そんな俺にすぐに気付いた森下に俺は救われた。

 気付かれたって事で「ここに居てもいいんだな」って思えたんさ。


 部活もロクに出ないで遊んでばっかだったなぁ。とにかく練習が面倒で面倒で。

 それでも森下は怒りながらも俺のことを教室まで迎えに来てくれてた。たまに先回りして逃げたりしてたけどさ。

 おかげで一人にならなくて済んでたんだよな。いなかったらどうなるかって、高三の時に痛感しまくったから本当にありがたい。

 いつかありがとうとか森下に直接言えんのかな?

 でも、今は会えないな。

 仕事もしてない俺なんて、会っちゃダメだよなって思ってる。

 森下はいつも明るい場所にいてさ、皆と楽しげにやってて欲しいな。

 願い事じゃないけど、そう思うのって変なんかな?

 でも

 いいや、書こうとした事に迷うくらい、ダメだ。これはやめておこう。

 昔いっぱい電話でも話したっけな。


 会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい


 ゲシュタルト崩壊だっけ?がっちゃんがよく壊れるって言ってるやつ。あれになりそう。俺何書いてんだろ。

 どーしたらいいんさ、どーしたらいいんかな?

 どっから始めて、これからどうしたらいいんさ

 俺は、どうしたら皆笑ってくれるんかさ。


 一旦、書くのやめてゲームをやった。グラディウスは何周もし過ぎてラスボスの絵も書けそう。けど、俺は絵が下手くそだからやめとこ。

 誰かに見られたら恥ずかしー!けど、もうゲームの電源を無意識に入れてしまう自分もなんだか気持ち悪くて吐き気がしそうだ。おえー 


 夢なんてないかい?どうだい?俺よ。


 もし、もしも叶うなら、皆とまた集まりたい

 放課後集まってたメンバーとさ

 また朝方に遊んだり、夜中まで遊んだり

 その中に森下や矢所さんや千代さんもいたりしたらもっと面白いかもな


 ヨッシーが変な事やってさ、佑太がそれを見てゲラゲラ笑って、猿渡も真似したりさ

 でも、実は裏で全部がっちゃんがそそのかしてやらせてんの


 森下と千代さんがやめてよー!とか絶叫したりしてさ


 なーんてさ、あー、くだらないか

 夢でもなんでもねーか、妄想だ

 くっだらねぇ妄想

 ははは、oops!

 考えてみたら19歳じゃ、皆もうほとんど大人だもんな


 俺はいつ大人になれるんかな?いや、そもそもなるんかな?なったらなったで、それはそれで悲しいな

 そん時はがっちゃんにでも殴ってもらおっかな

 がっちゃん、「俺は一生ネクタイしめない」って言ってるもんな


 改めて、夢。

 夢ねぇ、身近で実現可能な範囲なら、森下とまた話したいかなぁ

 触れられなくてもかまわない なんて、何言ってんだ俺

 夢、というか目標ってやつなんかなぁ?でもわりと本気で夢見てるんだけどさ


 これが俺の夢だって、本気で言えば、そうすれば、いつか誰か笑ってくれるんかさ?


 今日、この後久しぶりにがっちゃんが来ることになった

 ま、俺が呼んだんだけどさ

 何か変わるかな

 俺からはきっと、また何も言えないかな


 まぁどうでもいっか

 早く明日にな~れ(予定ないけど)

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