ゴブリン編第2話 成長
今日は18時にもう一回投稿します。
あれから一ヶ月たった。既に俺は大人になっている。そんな大人になった俺に待ち受けていたのは、熟年ゴブリンから労働訓練だった。俺はオスだったため、外へ行って獲物を狩る班に配属される。
「ギャギ(とろいぞ)」
「ギギ(すいません)」
仲間の一人であるゴブリンが熟年ゴブリンに叩かれる。失敗すれば鉄拳制裁は当たり前、現代日本の価値観からは想像もつかない出来事に俺はひいひい言いながらもいうとおりにした。
ゴブリンとして生活していく中で俺は彼らの言葉が分かるようになった。あまり嬉しくはないが。
「ギギャ(今日も辛かったな)」
「ギギャギャ(これも群れのためだ)」
俺は仲間のゴブリン達と会話する。どうやら同時期に産まれた子どもの中で俺は優秀な部類に入るらしい。今日も俺は一匹、兎のような動物を仕留めた。仲間の中で仕留められたのは俺以外には三体しかいなかった。なお、その三体は狩りを始めて数ヶ月経っているので、俺は新参者の中では唯一となる。
「ギャギャ(帰ってきたわよ)」
「ギゲ(私が一番先よ)」
「グギギ(何よ。このブス)」
俺が仲間と共に村へと帰ると、そこに待っていたのは数体のメスのゴブリンだ。メスのゴブリン達は俺を見つけるとすぐに駆け寄ってくる。俺は分かる。こいつらは俺に惚れている。しかし、俺にその気はない。例え、メスでもゴブリンはゴブリンなのだからな。
ゴブリンのハーレムなんていらない。ゴブリンにも人権があり、人権保護団体のゴブリンが聞けば、うるさくいうだろうが。そんなものは知らない。俺は言いたいことははっきり言うのだ。
「ギャギャ(待っていたのか、ありがとう)」
「グギャギャ(キャー)」
「ギャギャギ(なんてかっこいいのかしら)」
俺は優しくメスのゴブリン達に声をかける。それだけでメスのゴブリン達はキャーキャーと騒ぎだす。ちょろいもんだ。これが人間もしくは人に近い種族だったならばどんなによかったことか。
そんなこんなで今日も一日を終える。この村は他のゴブリン達の村や、種族とは交流がほとんどないといえる。一度だけ他の村のゴブリンが居るのを見たことがあるが、他の種族には全く会ったことがない。まだ一ヶ月ちょっとしか経っていないので見逃しているだけかもしれない。
この村から出たいと思うが、所詮ゴブリンだ。身の丈を越えるようなことはしたくない。ひっそりと一生を暮らすのも悪かないかと思ったのが良くなかったのだろうか。数日後、村に若いゴブリンが走ってきた。その顔は良くない。ゴブリンは大声で叫ぶ。
「ギャギャ(大変だ。オークが、オークが攻めてくるぞ~)」
種族説明①
ゴブリン
成人しても体長一メートルぐらい緑色の肌と醜悪な顔が特徴の種族。成長が早く一ヶ月ほどで成人となる。魔族の中ではスライムに次いで弱い存在。知能を持っている存在に限れば、最弱である。
魔族と人族の戦争によってゴブリンキングを失って五百年。未だにゴブリンキングが出ていないこともあり、ゴブリンは森の中でひっそりと暮らしている。他の魔族に憂さ晴らしとばかりに殺されることも多く、繁殖能力が高くなったのもここ五百年のことだ。
彼らは自給した生活を送っているが、人族に比べると知能、技術、戦闘能力、全ての面で劣っている。魔法を使える個体は十万体に一体の確率で存在している。