約束はいらない-05◆「再会、戦役の友」
■ナイオール・ドラ/王宮/謁見の間→小広間
ナイオール・ドラ王宮であるラフラー宮び中心に位置する“謁見の大広間”。東の雄である大王国(GREAT KINGDOM)の王都ラウクセスのそれには及ばないが、古代神聖スール帝国の面影を残した建築様式からは、静寂と荘厳が伝わってくる。
中央に敷かれた紅い絨毯を、キ゛ルハ゛ルトの先導でカーシャとローランが進んで行くと、正面の“知恵の七段”と呼ばれる石段の上にシェリドマール連盟盟主にしてコーランド国王ユゥア十三世と、その妹姫のアリサ・ト゛・コーラント゛が待っていた。
階段の前まで歩いていくと、カーシャは二人に丁寧に挨拶をする。これにローランも続いた。
「ようこそ、ラタ゛ノワ伯爵。ようこそ、ローラン殿。」
暖かみのある笑みを浮かべて、ユゥア十三世は二人を歓迎する言葉を発した。
「ゆるりと滞在されよ。後ほど、諸件に関して話をするとしよう。」
「有り難き幸せに存じます、国王陛下。」
「・・・」
ローランは黙ってユゥア十三世の言葉を聞いていた。
当面の公式な挨拶はこれで終了だった。
キ゛ルハ゛ルトに連れられて、宿泊場所となる部屋に案内して貰う。
「部屋はいつもの通り、宮殿の西ウィンク゛に取ってある。覚えているだろう?」
「そうだな。何時も厄介になってしまって恐縮だ。」
「ははは、らしからぬ態度だな、カーシャ。」
礼節を重んじているのだと憮然と返すカーシャに、ギルバルトは笑って続けた。
「察するに急ぎの用なのだろう? ユーシ゛ェーヌはすぐにでも話しても良いって言っているが、どうする?」
黙って振られたカーシャの視線にローランは頷いた。
「キ゛ルハ゛ルト、すまないがお願いしたい。“時”を逃したくないゆえ。」
「良かろう。それでは、いつもの小広間に行くとするか。」
「皆さん、もう待っているのかな?」
「良く御存知で。」
にやりと笑ったキ゛ルハ゛ルトは、ローランに向かって頷いた。
コーランド王国まて来たローランとカーシャですが、旅路は更に西へ、コーランド王国の内の一国であるステリック公国へと向かいます。だんだんと 真夏の海”の真相が明らかになって行きます。ご期待下さい。