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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う  作者: 水源
明暦4年・万治元年(1658年)

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現代でも江戸時代でも風俗で働く男は働くそれなりの理由がある

 さて、遊郭は女ばかりではなく男もそれなりの数が働いている。

見世では楼主の次の地位にある、金勘定と若い衆への指示を主にする番頭。

番頭の書物の補助をする物書き。

遊女と直接関わる若い衆としては太夫の道中をともにする見世番と部屋で客や遊女の話を聞いたりする二階番。

こいつらは太夫から、客への手紙を届けることを頼まれることもあった。

さらに基本手紙は太夫が書くが、時々太夫などに依頼されて代筆することもある。

男のほうが客の心がわかるだろうってことで客に来てもらえるような文章を書く能力も必要なわけだな。

その他客の愚痴や太夫の愚痴を聞いてなだめるのもこいつらの役目だ。

まあ、そのせいで出来ちまって面倒なことになることも多いんだが。


 その下は遊女と話したりすることは基本禁じられている。

夜中の見張り役で火の用心や時刻を知らせる拍子木を打ったり、揉め事の仲裁なども勤める寝ず番。

各部屋の行灯の油を継ぎ足す二階廻。

そして一番下が見習い雑用係の中郎。

中郎の仕事はおもに掃除や水くみなどの力仕事の雑用一般。


 これは現代の風俗でもだいたい同じで、オーナー、店長、マネージャー、平店員という感じだ。

グループで本部がある場合は社長とかの取締役もいる場合もある。

平店員が店で働いてる女の子と会話を交わしてもよいか駄目かは店によって違うがソープなどでは基本店長やマネージャークラス以外は話せない。

ヘルスなんかだとそれこそ店次第だがやはり平店員が女の子と話すことは許されない場合が多いな。


 21世紀現代では風俗で働く男は基本的には学歴も年齢も関係ない。

まあ、流石に年齢があんまり高いと採用されにくくはなるけどな。

30代ならともかく50代とかだとやっぱ働くのは難しい。

終電から始発の間の時間は女の子は自力では自宅などに帰れないので店の車で女の子を自宅まで送ったり、吉原のソープでは客が店の前に乗り付けた車を店の専用駐車場に持っていったり、客を駅まで迎えに行ったりすることもあるのでマニュアルの自動車免許を持ってる方が有利とはされるけど無いから働けないということはない、大手のグループだと面接と筆記試験が有ったりもするが小さな店だと面接だけだったりするな。


 ただ江戸時代の遊郭はフリーの客をどの遊女につけるか判断する付け回しや遊女への指示は遣り手がやって、客との予約の日にちの折衝などは番頭新造がやったりするのだが、21世紀現代ではそういったことも全部男がやるのが違うがな。


 勿論21世紀現代では中学までは義務教育であり18歳未満や現役の高校生は風俗で働かせられないし、ソープなどは20歳未満は働けない、基本的に接客の仕方を教える講習は最初の1回のみで場合によってはDVDを見せるだけの場合もある、ソープランドでは講習をする専門の女性がいる場合もあるし、ヘルスの場合は店長が講習をする場合が多い。

男も中学までは卒業してるから基本読み書きができないことはないし現代ではパソコン作業が必須だがそれも出来ないということはあんまりない。

たまにいるけどそういう場合は一通りやり方は教える。

風俗サイトの更新くらいはともかくフォトショップで指名写真の修正を行うとかは結構教えるのが大変だったりするけどな。


 江戸時代は不定時法で夏と冬では”今が何時”と言うのは違う。

日の出と日の入を明け六つ、暮れ六つとしてその間を6等分して数えるので夏は朝早くなるし、冬は朝遅くなる。

日の出や日の入りと関係なく決まって時間が決まっている現代と違い、基本的に仕事ができるのは日が出ている間だけという考え方なわけだ。


 なので昼間働く人間は夏のほうが長く働かないといけないし、遊女のようによる働く人間は夏のほうが時間が短く、寝られる時間も夏のほうが長い。


 そして江戸時代の若い衆は町奴の親分もやっているような口入れ屋経由でやって来る。

吉原の場合は岡っ引きでもある大塚屋という口入れ屋が若い男や番頭新造、飯炊きや風呂焚き、針子などの女を斡旋しているな。

農家の三男以下などで田を持てない男など地方各地から江戸にやってきて無宿人となったり、年期明けで職探しをしたが見つからなかった女、そういった身元の不確かな者の保証を大塚屋が行い吉原で職場を斡旋するわけだ。


 そして若い衆の朝は早い、泊まり客が帰りはじめ遊女が見送りを始める明け六つの卯の刻(6時ごろ)ごろには二階廻は遊女が客を見送りできるように廊下の明かりに火をつけて周り、二階番はきれいな水を入れたうがい茶碗を用意し部屋の中に声をかけて回る。

番頭は金勘定をして物書きが帳簿をつける。

二階番や二階廻、寝ず番は明るくなったら見世の若い衆の部屋で雑魚寝。

番頭や物書きはそれぞれ与えられている個室で眠れる。

逆に雑魚寝していた中郎などは起きて顔を洗ったり歯磨きをしたら朝一番の掃除、飯炊きはかまどに火をつけたりして炊事の用意だ。

中郎は遊女が座る格子の中、店の目の前の道、見世の広間や廊下、厠や内湯などを全部掃除したり、井戸から台所用の水を水瓶にくんできたりする。

俺はそれを見て回ったりもする。


「ふむ、今日の厠掃除をしたのは誰だ?」


 おどおどと出てきたのは一番若い太一。


「うむ、隅々まできれいになっていた、なかなかいいぞ」


「はい、ありがとうございます」


 たかが掃除と思うだろうが、掃除はちゃんと隅々までゴミや汚れが残っていないかということに目が回るか、やるのが嫌な場所でもちゃんとやるかなどを見れるのだ。

21世紀現代でも基本的に風俗は最初掃除から始まるがそういった適性を見るためでもあるわけだ。

たかが掃除と思うかもしれないが掃除もまともにできないようなやつは仕事も出来ないことが多いからな。

板張りの廊下を濡れぬので拭いていくのは冬は大変だったりするがそういったことは町道場の見習い剣士や商家の丁稚、屋敷の奥女中など見習いの立場の者は皆やることだ。

また、2階の掃除は基本太夫付きの禿や見習いの新造が行うので2階に上がるようなことはない。

吉原の大門が空いたら非人が道の掃除を始め落ちている紙などを拾い集め、同じ頃、農家の肥取りが肥を買うために大門から入ってくる。


「よう、どうだうちの厠のおが屑堆肥は」


「やあ、ほんといいです。

 根腐れすることもないし臭くもないのですごくありがたいですよ」


「おう、これからもよろしく頼むな」


「こちらこそよろしくお願いします」


 こんな感じでバイオトイレのおが屑堆肥は農家に大好評だ。


 朝五ツの辰の刻(8時頃)くらいまでには掃除を終わらせ、内湯への水くみを始め遊女が起きるまでには湯を沸かさなければならない。

料理番の男女は八百屋や魚屋などの行商人がやってきてそれらを買い付け、調理や飯炊きに忙しい時間だ。

ここから風呂番と料理番の男女はとても忙しいし、勿論中郎も雑用を手伝わければならない。


 朝一番に昼見世の遊女や付き従う禿が食事が終わったら、昼飯だ。

勿論うちでは遊女たちと同じものを食わせてるが、一般的には一汁一菜は当たり前なので丁稚は腹をすかしてることが多く、病死したり逃げ出したり、解雇される場合もある。

簡単に食事をすましたら風呂の水の汲み変えや水の継ぎ足しなどの雑用が待っている。

そういった雑用の合間に起きてきてまだ暇な番頭や物書きに読み書き算術を習う。

余裕があれば俺が直接見るときもある。

基本的には手習いの機会のなかったやつが多いからな。


「どうだ、太一いろははすべて覚えられたか?」


「はい、なんとか覚えられたと思います」


「そうか、これからも頑張れよ」


「はい、頑張ります」


 まあ俺みたいなのはよほどの例外で基本は自助努力とすることのほうが多いみたいだけどな。

ちなみに手習い以外の仕事は目で見て覚えるしか無い。

ある程度の年月つとめていて、やる気のあるやつは夜の仕事をてつだったりする。


 そして夜飯を食ったら夜見世が始まるので格子の間の油皿をともし歩く。

外では、腰にドスを差した寝ず番が「火あやうし」と言いながら拍子木を打ったりしつつ店の周りの不審者などを見て回る。

そして中郎は日が完全に暮れたら若い衆の寝泊まり部屋で雑魚寝となる。

まあ、明日も頑張ってくれ。


「嫌になって逃げ出すやつも多いからな」


 江戸時代は土木建築の現場の人足や棒手振の行商人のようなその日稼ぎの仕事も多くあるので、商家の丁稚や遊郭の若い衆のような休みが少ない所で働くのは大変でも有った。

なので逃げ出すやつも少なくはない。

江戸時代の商人は金持ちというイメージが有るだろうが、その分ほかよりも休み無く働き、商売の相手がどんな性格であってもニコニコ出来るような我慢強さと健康さが必要なんだ。

だから商人は楽で大金稼げていいな、なんてことはないんだぜ。

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