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吉原も七夕はちゃんと祝った、そしてゴーヤがなりはじめたのでみんなに食わすことにするぜ

 さて、切見世女郎の新築長屋が出来たり田植えの田んぼに合鴨や鯉をはなしたりして新しい農法を試しているうちに7月になった。


 月が変わったところで幕府は江戸の町々の出入り口の木戸はいままで夜九つ時(午後12時ごろ)までは開けられていたのだが夜四つ時(午後10時ごろ)以降の往来を基本禁止とした。


 また木戸が設置されていない町は必ず木戸を設け、抜け道になっている場所は塀を作ることを指示した。


 また木戸番は木戸を閉め切る前に、空き地やゴミ置き場、共同厠のなかなどに怪しい者が潜んでいないか確認してから木戸は閉めよと、徹底した治安維持強化を指示した。


「幕府がそういう指示をするっていうのはなにかあったのかね?」


 江戸の町も明暦の大火からだいぶ町も復興してきたが、完全に復旧しているわけではない。


 また明暦の大火の前は人口が過密になり相当治安も悪化していた、だが、大火の影響で人が減り一時治安はそれなりに良くなってきていたのだが、復興が中途半端なせいで治安も微妙に悪くなってるのか、それとも悪くなる前に徹底しようということなのかね。


 そして7月7日といえば七夕だな。


 21世紀現代と違いこの頃の七夕はちょうど梅雨も開けて暑い盛りで雨で星が見えないということも殆どなかった。


 ちょっと今年は雨がふらなすぎな気がするのが心配だが。


 そして笹の葉に短冊をくくりつけ願い事を書くというのは今の時代のここ吉原でも見られた。


 ”どうか立派な太夫になれますように”


 桃香は短冊にそう書いて一生懸命お願いをしている。


 ”どうかいつまでも一緒にいられますように”


 そう書いてるのは鈴蘭と茉莉花だな。

 相変わらず仲のいい姉妹だ。


 ”どうか毎日ウズメはんがそれなりに広まりますように”


 これは楓だな、広まりすぎても困るし、広まらなくても困るという心情がよく分かるぜ。


 ”どうか楼主さんがゆっくり出来るようになりますように”


 妙はそうかいてくれているが、妙もかなり忙しくしてるしな。


 悪いとは思うんだが正直随分助かってる。


 その他の若い禿や遊女の描いた短冊がいっぱい垂れ下がっているな。


 そしてそれなりの年の遊女は特に想いをよせる客の名前を短冊に書いて、身請けをしてくれることを願うことが多い。


 桜なんかはそろそろ身請け話が来てもいいはずなんだがな。


「よう桜、敵方あいかたは誰で書いたんだ?」


 しかし、桜が描いていたのは客の名前ではなかった。


 ちなみに漫才などのコンビの相手を相方と書くのは、もとは吉原の遊女が敵方と描いてあいかたと呼ぶのが語源だったりするらしいぜ。


「どうか無事に岩が消えますように」


 桜は苦笑いをしながらいった。


「わっちはまず、長生きできることを祈るのが先でありんすよ」


 確かにそりゃそうだな。


「ああ、まあそりゃそうだな。

 実際どうなんだ?岩の状態は」


 やはり桜は苦笑いで答えた。


「そんなにすぐは消えんもんでありんしょう。

 大きくはなってないと思いんすが」


「ふむ、そうか……」


 こいつは少し考えんといかんか。


「よし、ちょっと待っていろ」


 俺は自家菜園の前に種をまいてそろそろ育ったゴーヤのうえてあるところにいった。


「お、いい感じに育ってるな」


 独特の凸凹した実がなっているので其れを一つもぐ。


 ゴーヤはとても体によく、体をアルカリ性にしてくれ、癌細胞への栄養を遮断してくれる成分が含まれており、インスリン作用を持っているので糖尿病の予防にもなる。


 体を冷やすので妊婦や子供には良くないらしいけどな。


「トマトも育ってくれて何よりだ」


 トマトが無事になればトマトソースやトマトケチャップが出来るからな。


 それにトマトは非常に健康にもいい。


 まずはゴーヤのチャンプルーっぽいものを作ろう。


 ゴーヤを半分に切り、綿と種を除いて、ザクザク半輪切りにしていく。


 ゴーヤは体を冷やすのであんまり食べすぎるのも良くない。


 イノシシの肉を薄切りにして、豆腐もさいの目に切る。


 鉄鍋にごま油を入れて熱し、豆腐を入れて軽く焦げ目がつくくらいまで炒め、イノシシ肉を入れて炒め、火が通ったらゴーヤを入れ、強火で軽く炒める。


 更に煎酒と、たまり醤油、牡蠣ソースを入れて味をつけ、溶き卵を回しかけ、さっと炒めて、卵が固まったら火を止め皿にもれば出来上がりだ。


 まず俺が一口食ってみる。


「うん、ちょっと違う気もするがゴーヤチャンプルーだな」


 そして桜のもとに其れを持っていく。


「おーい桜。

 これを食ってみてくれ」


 桜は怪訝な顔でゴーヤチャンプルーもどきを見た。


「なんですの、これ?」


「岩を消す琉球の苦瓜の炒め物だ。

 まあ、食ってみろ」


 桜はまずゴーヤをたべてみた。


「う、なんか苦いでありんすなこれ。

 でも悪くない味でやんすよ」


 俺はそれに答えた。


「ああ、苦いけどそれが体にいいんだよ。

 よし暑いうちはなるべくみんなに食わせるとしよう。

 禿には食わせんけどな」


 桜は頷く。


「まあ、そのほうがええんとちゃいます」


 そうして夏の間はゴーヤが毎日食卓に上がることが決まったわけだ。


 また薄目に切って干したゴーヤやわたや種はゴーヤ茶に出来るからそれも飲ませるぜ。


 ゴーヤ茶はアルカリ性なので、虫歯や歯周病のもとの虫歯菌や、口内に含まれている伝染病の細菌やウイルスを殺してくれるのも良いな。


 これは切見世の定食にも出すし、万国食堂のメニューにも加えることにする。


 ゴーヤは体に良いが暑い間でないと体を冷やすのでかえってからだに悪いからな。

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