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生理と安全日と危険日と

 さて、この時代の避妊は動物の皮や魚の浮袋で作られた茎袋を付けるくらいしか実効性が高い方法がない。

しかし、当然やってる最中にずれたり外れたりする可能性もあるわけだ。


「双方の同意の上で子供ができたなら相手に身請けしてもらうのが一番なんだがな」


 要するにお客さんに妻なりお妾さんなりとして、引き取ってもらって手元においてもらうわけだ。


「しかし、身請けをできるほど金があるやつは限られてるし。

 こっちが大損するように身請け金の値段を下げることもできんしなぁ」


 身請けをする場合、遊女の抱えてる借金や年季までに稼げるであろう金額をあわせて払ってもらうのが前提なので、太夫であれば1000両(おおよそ1億円)格子太夫で500両(おおよそ5000万円)格子なら100両(おおよそ1000万円)程度は平均的にかかる。

しかも、若いうちに身請けをしようとすればもっと金額が跳ね上がる場合もある。

見世と遊女、正確には遊女の親なり旦那なりと交わしてる約束は働けるようになって10年間で借金を返済と言う約束になっていて、実際に幼いときから衣食住やらの面倒も全部みた上で色々金をかけて教養や芸事を教えこんだ、稼ぎ頭の遊女を安価で身請けされても見世は大損しちまうからな。

だから客と一緒になっての脱走や心中は見世からは許されんわけさ。


「そうすると妊娠の危険が高い生理日からの2週間後とかは仕事をなるべくさせないほうがいいんだがな……」


 とは言え生理日と危険日扱いの日を全て休ませてしまうと流石に仕事にならない。

そうなると働けるのは月の半分以下になっちまうからな。

生理は始まってから3日くらいは当人も客もきついだろうし、排卵日予定で高確率で妊娠するのは生理初めから2週間後の前後2日の5日間くらい。

あわせて月の8日くらい休みは取らせるかね。


 まあ、今の江戸時代は、生理日でも出血量そのものはそこまで多くないし、生理痛もそれほどひどくない。

これは化学繊維でできた生理用品が陰部に触れていることや、食品に含まれる保存料や化学調味料、様々な原因で汚染された大気や水といった毒物だらけの21世紀現代と違ってそういった科学的な毒を体から出す機会であるため生理時の出血量が増えたりはしないかららしいぞ。


 まあ21世紀現代だと風俗嬢はストレスで月経周期が狂ったりすることも在るようで、生理が来ないと思ったら、生理が終わってすぐにまた来たりするけどな。

まあ、店を休むために生理を言い訳にしてるだけの可能性もあるんだが。


 というわけで、俺は店の遊女たちを広間に集めた。


「お前さん達、みんな月のものの予定日はわかってるだろう?」


 その言葉にみんな頷く、遊女たちにとっては生理日は貴重休みでもあり仕事が入れられない日でも在るので大体覚えているのだな。


「でな、月のものが来た、その12日後から17日後の5日間は子を孕む可能性が高いから、基本休みとする。

 床をともにしないでもいいなら、客を呼んでも構わんしその場合の揚代は半額でもいい。

 後々はこっちの休みの日には三味線や琴なんかの芸事や漢詩、和歌などの教養ごとを町の裕福な商人なんか相手の教える教室を開く予定だが、今のところは禿や新造への教育に時間を使ってくれ」


 遊女たちが顔を見合わせてるな。


「もし妊娠したら堕ろすにせよ産むにせよお前さんたちの体があぶねえからな。

 それでもややこが出来ちまったら産むか堕ろすかは任せる。

 生むんだったら乳母を雇っても構わねえ。

 ただ、将来はここで働くのは決定だがな」


 遊女を代表して藤乃が俺に頭を下げた。


「あい、わかりんした。

 ありがたくやすませていただきますえ」


「おう、そうしてくれ、頼むぜ」


 この時代は妊娠してしまうとそれが原因で母子ともに死んでしまう可能性も少なくない。

初産だと特にな、だから妊娠の危険を少なくするに越したことはないのだ。

しかも、生まれで職がほぼ決まってしまう。

だからできれば遊女のうちは子供を産まないに越したことはないだろう。

身請けが無理でも年季が明ければどこかいい所に嫁ぐこともできるだろう。

子供を生むのはそれからでもまあ遅くないんじゃないか。

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