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夜は吉原旅籠の酒宴で盛り上げて夜は夜のお楽しみだ

 さて、音楽堂での舞台歌劇も終わり日も落ちて夜になった。


「ふむ、もう夜かね、楽しい時間はあっというまに過ぎるものだな」


 カピタンは上機嫌に言った。


「そう言っていただければこちらもいろいろ準備をした甲斐がございました。

 では本日泊まる宿にご案内いたしましょう」


「ふむ、もう宿にいくのかね」


「はい、そちらで宴会を行います」


「ほう、そうかね」


 というわけでカピタンを吉原旅籠に案内する。


 万が一にも事があると困るので今日はカピタン一行の貸し切りになる。


 広い宴会場に彼らを案内し、今度は和食や日本酒でもてなすことにする。


 まずは日本酒の清酒から振る舞い始め、膳で次々と料理が運ばれてくる。


「ほう、昼に食べた我が母国の料理ではなくこの国の料理かね」


「ええ、せっかくですので我が国の料理も召し上がっていただこうかと」


「うむ、箸で食べるのだったな」


「ええ、箸でも大丈夫でしょうか?」


「うむ、大丈夫だ、島でもたまに食べるのでな」


「それは助かります」


 カピタンが箸を使えなかったら遊女に”あーん”させるかとも考えたが心配はいらなかったようだ。


「まずはお酒を一献どうぞ」


 小見世の遊女がカピタンに寄り添って盃に酒を注ぐ。


「うむ、ではいただこう」


 古今東西を問わず女に酒を酌してもらうのは男にとって気分の良くなる行為であることに変わりはないのだな。


 先付は烏賊の塩辛だ。


「ふむ、これはこれでなかなか味わい深いものだ、それに酒によく合う」


「それなりに長い歴史がありますからね」


 前菜はゴボウのきんぴら。


 前菜は西洋料理でいうオードブルみたいなものだが、日本料理は西洋料理ほど順番にはこだわらない。


「シャキシャキとしていて味わい深いな」


「ええ、悪くないでしょう?」


 椀物は麸の入ったすまし汁だ。


「ほう美しいな、それに味わい深い」


「ええ、ダシにはこだわりがあるんですよ」


 日本料理は香辛料などが殆ど無いので意外とダシにこだわってるからな。


 その後は向付ではまちの刺し身、煮物はきんきの煮付け、焼き物は真鯛の尾頭付きの塩焼き、揚げ物にはエビとイカの天麩羅、あんこう鍋にご飯・香の物・止め椀として味噌汁が出て・最後は水菓子として蜜柑が出る。


「ふむ、堪能させてもらったよ」


 すっかりお腹いっぱいになったあとは宴会芸の時間だ。


 三味線を抱え歌を歌う地方の女性や太鼓を持った幇間の男性やらが囃し立てて、舞台では立方は日本舞踊を披露している。


「うむ、よいぞよいぞ」


 カピタンには小見世の遊女がつききりで酌をしている。


 三味線と唄が響く舞台にさっそうと現れたのは、立方2人。


 指先まで神経を張り詰めて美しく魅せる、艶やかな歌声に応じた艶やかな舞い。


 日本舞踊は表情ではなくあくまで踊りと音楽で表すという点で西洋の踊りとは違う。


 そして宴席も終わり。


「では今夜はこちらの部屋でお過ごしください」


「うむうむ、期待しておるぞ」


「ええ、今夜一晩ゆっくりお楽しみください」


 夜になれば小見世の遊女と彼は同衾することになる。


 そして多分久方ぶりに女を抱くことが出来てそれも満足してもらえるだろう。


 黒湯温泉でちゃんと隅々まで体を洗わせたから大丈夫だとは思うが、梅毒には気をつけないといけないな。

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