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オランダ人の接待の次は黒湯の温泉で小見世の遊女のサービスだ

 さて、カピタンたちを花鳥茶屋でゆったり接待した後、吉原黒湯温泉へ案内する。


「さて、次は何かな?」


「黒湯の温泉にご案内いたします。

 ああ、温泉水は飲まないでください」


「ふむ?」


 ヨーロッパにおいてはお湯を沸かして入浴するという行為はあまり行われない。


 その理由はいろいろあるが基本的に西洋では水や燃料が貴重であるからだ。


 特に大航海時代以降は木材は船舶を作るために必要なものであったからその値段は高騰したし、ワインのほうが水よりも安いという状況では水をためてそれを沸かして入浴する余裕そのものがあまりなかった。


 しかし、ヨーロッパの温泉の多くは、古代ローマに起源をもつ。温泉好きだった古代ローマ人は、

 温泉が豊富な火山地帯であるイタリア半島を中心に住んでいたこともあって、各植民都市に公共浴場がたくさん作られるほど入浴に熱心で、カラカラ浴場のような千人単位が収容できる壮大な施設をいくつも作った。


 浴場には温度の違う複数の大きな浴槽やサウナ室、マッサージの部屋があり、運動場や散策のための庭、談話室、垢取り部屋や床屋なども備えていて、運動場や庭を歩いて汗を流したあと、入浴した後で垢取りを受けたマッサージを受け疲れをとった。


 そしてローマの公共浴場は民衆も手軽に入れる様になって、21世紀のスパリゾートの様な社交場・娯楽施設として発展したが、それに伴って売春の温床にもなった。


 このあたりは日本の湯屋も同じような感じではある。


 しかし、初期キリスト教では荒野で過ごし、みすぼらしい格好で過ごす不潔さこそが聖人の要件であり、自己犠牲、敬虔な振る舞いであると信じられたことで入浴が否定され、入浴するにしても服を脱ぐ事は論外であり、異教徒と同じ浴槽に入ることも考えられないこととされた。


 それによって、湯を入れ変えることも行われなくなると湯の中に雑菌が大量に繁殖して、共同浴場は、コレラやペスト、梅毒などの伝染病の温床となり、1350年の腺ペストの流行により多くの公共浴場が閉鎖され、それ以後の共同浴場は実質的に売春宿だけとなり、16世紀には全面的に禁止されるに至った。


 そして西欧特にフランスでは「水や湯を浴びると病気になる」と信じられたことで入浴そのものが行われなくなった。


 ヨーロッパの多くの地域で入浴の習慣が復活するのは18世紀になる。


 ただし、北欧ではサウナの習慣は生きていたし、オーストリア、ドイツ、イタリア、アイスランドなどでは天然の温泉が療養施設としてつかわれていた。


 とはいえ基本的には医師の指示に従って一定量の鉱泉水を飲んだり、決められた短時間だけ湯につかり、その後マッサージを受けたりする「湯治場」であったので普段の生活習慣としての入浴はなかったが。


「私は特にどこも悪くないが?」


「悪くならないために湯に入るのは大事なのですよ」


「そういうものかね?」


「ええ、そういうものです」


 吉原黒湯温泉にカピタンを連れて見世の遊女を彼らに侍らせる。


「この娘たちは?」


「あなた達の世話係ですよ、浴場においてのですけどね」


「なるほどそういう接待かね」


 カピタンはにやっと笑いいう。


「ええ、そうとってもらって構いません」


 性的な接待もあちらも望んでるだろうしな。


 今日は特別に貸し切りだ。


 後は小見世の遊女に任せよう。

 ・・・

「ほう、黒湯温泉というがたしかに真っ黒だな大丈夫なのかね?」


「あい、ここの黒いお湯のお陰でわっちらは肌がすべすべになりんしたよ」


「ふむ、そういう温泉もあるということか」


「ではまずここに座ってくんなまし」


 遊女はカピタンを椅子に座らせると石鹸の泡をつけた手で全身を洗い始める。


「ほう、なんとも気持の良いものだ。

 風呂というのも悪くは無い」


 遊女が湯船から木桶でお湯をすくい、体についていた泡を流すと浴槽に入る。


「うむ確かに気持ちの良いものだな」


 二人は浴槽の中で十分楽しんだあと、湯船から上がってカピタンを遊女がマッサージして疲れを癒やす。


「どうでやすか?」


「うむ、素晴らしいひとときであったよ」


 ・・・


 やがてカピタンと遊女が吉原温泉からでてきたが、十分満足してもらえたようだ。


 まあ、ただでさえ出島は遊女以外の女が立入禁止でいないしな。

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