7話
7
釣鐘さんは数分前に部屋を出て行った、今頃は柘榴さんに事情聴取をしているだろう。苧環さんは煙草を吸う事すらなく、呆然としたまま言葉を失っていた。無理もない。僕だって、俄かには信じられない程に驚いている。
貴島薊――本名、髙城麻美さん。八年前、人生を滅茶苦茶にされた彼女が、その一因となった出版社のバイトになっていた。そして同じように原因となった親子に接触を図り、関係者全員をこの旅館に集めた。
現在の容姿は整形で手に入れたものだと貴島さんは言った。それはきっと、異性を騙すための綺麗さを追求しただけでなく、苧環さんたち三名に顔がバレないようにするためでもあったはずだ。ずっとバイトで在り続けたのも、おそらくは偽名であることが見抜かれるのを恐れたからだ。バイトなら、会社に提出するのは面接時の履歴書程度で済む。実際僕も、採用された後に身分証の提示を求められたりはしなかった。
どうやらこの旅行は、四葩さんを殺すためという僕の推理よりも事は大きい。貴島さんは四葩さんだけでなく、息子の柘榴さんや同僚の苧環さんも殺すつもりだったのかもしれない。思い当たる節は何一つとして無いが、下手をすれば僕まで殺害対象に入っていた可能性もある。あるいは、何らかの方法で僕に全ての罪を転嫁させる予定だったかだ。
となれば、あの可能性が現実味を帯びてくる。だが先ほど、仲居さんの中に犯人が居るというは浅はかな推理で痛い目をみたばかりだ。安易に考えてしまえば、同じ轍を踏んでしまう。そうならないために、冷静に、そしてもっと深く思慮をしなければ。
僕は苧環さんの様子を窺った。貴島さんが、過去に自分が貶めるような記事を書いた女性であったことに、本当に混乱しているように見える。だが、果たしてそれを真に受けて良いのだろうか。そこまで器用な人とは思えないが、それが演技という可能性もある。
「昔に顔を見ているはずなのに、意外とわからないものなんですね」
非難されるのを覚悟で、僕は苧環さんに探りを入れた。虚ろだった瞳は、敵意を示すようなそれに変わった。
「何が言いたいんだ。お前も、俺が犯人だと抜かすつもりかよ」
「そういう訳じゃありません。ただ、貴島さんには整形してるって噂があったから、それが本当だったんだなっていうのと、そんなに顔が変わってるのかなって、そう思っただけです」
「ああ、そういえばそんな噂もあったな。所詮は嫉妬から生まれた戯言だと信じてなかったが、もうちょっと信用しておくんだった。整形が分かった今だからかもしれないが、確かに似てる部分もあるように思う。でも、普通はわかるわけない。そもそも、恨んでいるはずの出版社に働きに来るなんて、誰も思わないだろう」
恨めしそうに言った苧環さんはけれど次の瞬間、何かを思いついたようで、僕を無視して独り事を言い始めた。
「これは復讐だった。となれば、弁護士先生を殺したのは貴島って事になるのか? もしそうなら、後は……」
放心状態から一転、水を得た魚のように推理を始めた。貴島さんの事はもう気にも留めていないのか、それとも動揺していたように見えたのはやはり警察に疑われないための芝居だったのか、苧環さんは事件についての考察を進めていた。それら一連の行動が真実なのか虚偽なのかを見抜く目を、僕は持ち合わせてはいなかった。
とはいえ、昨日のようにあっさりと推理を放棄するつもりはもう無い。警察が何時かは真相を究明してくれるだろうが、出来るなら、僕が自分の手で貴島さんを殺した犯人を捕まえたい。それが、彼女に出来る唯一の事だと思ったからだ。
すっかりと自分の世界に入ってしまった苧環さんんを無視して、僕は柘榴さんに会いに行った。不審点さえなければ事情聴取も既に終わっているはずので、警察の邪魔にはならないはずだ。
部屋を出て、階段を挟んだ向こうの最初の客室に向かった。
柘榴さんの客室には、睡蓮の名が冠されている。睡蓮の花言葉は確か『純潔』や『甘美』それから『滅亡』というのもあったはずだ。同じ花の中に『純潔』と『滅亡』が同居するのは何故なのか。そんなどうでもいい疑問を持ちながら、僕は扉をノックした。応答はなかった。まさか柘榴さんまで殺されたのかと懸念しながら、今度は強くノックをした。
すると、少しして室内から苛立ったような声が聞こえた。
「煩いな。鍵は開いているから勝手に入ってきてくれ」
言われてドアノブを回すと、玄関は問題なく開いた。室内には何事も無く、やはり文豪のような恰好をした柘榴さんが座っていた。どうやら僕の杞憂だったようだ。二人も殺されて、どうにもナーバスになっているらしい。
「一体何の用事だ」
「貴島……高城麻美さんの事でちょっと話をしたいんです」
「どうして警察でもないあんたに、そんな事をしなきゃならないんだ」
相変わらず他人を見下し様な目をしながら、柘榴さんが尊大に言った。僕は苧環さんと同様に、怒りをぶつけられるのを承知で柘榴さんを挑発した。
「仰る通りです。でも、僕もこのまま何もせずに殺されるのは御免です。だから自衛のために、自分なりに犯人を突き止めようかと考えまして。高城さんについては、苧環さんが警察に話しているので、僕も大まかな事は把握しています。なので、今更隠し事をしてもあまり意味は無いと思いますし、それに事件について何も疚しい事がなければ、少しくらい平気ですよね」
僕の言葉に、柘榴さんは眉を顰めた。先ほどの苧環さん以上に、憎しみと敵意が籠った表情だったが、思惑通りにこちら話に乗ってきてくれた。
「中々口が達者だな。いいぜ。そこまで言うなら喋ってやるよ。それで、一体何が聞きたいんだよ」
「柘榴さんは、貴島さんが顔を変えた高城さんだと気付けなかったんですか?」
「顔を変えてるんだぞ。無理だな」
「でも、柘榴さんが強姦した相手なんですよね。そこらの女性よりは、記憶に残っている女性だと思うんですけど」
「そりゃあ忘れちゃあいないさ。けどな、だからって八年も前の相手の顔を、そこまで鮮明に分かるわけがない。それに、顔を見たのだって全部で十回あるかどうかだ。悪いが俺は親父と違って頭の出来が良くないんでな、その分記憶力や認識力も乏しいんだよ。だから整形なんてされたら、貴島薊と高城麻美が同一人物なんて結びつくわけがない」
溜め息交じりに言ったその様子が、僕の神経を逆撫でしていた。冷静にならなければならないのに、今度は僕が柘榴さんのペースに呑まれてしまいそうだ。
「どうして貴島さんを強姦なんてしたんですか?」
思わず、そんな質問をしていた。それは事件とはまったく関係ない、僕個人の疑念だ。
「先に言っておくが、女には別段困ってはなかった。金をちらつかせれば大体の女は落とせからだ。けどな、当時の薊は違った。あいつは整形前から相当に美人だったんだ。初めて見た時に俺は、何とかして手に入れたいと思ったよ。だけど金じゃあアイツは靡かなかった。それどころが、そうした方法しか取れないような俺を憐れんだ。それが許せなくて、思い知らせてやったのさ。粋がっていると痛い目を見るってな。知ってるか? レイプ事件ってのは、法廷なんかでのセカンドレイプだったり、犯人の顔を見て恐怖したりする精神的苦痛を避けるために、案外泣き寝入りする奴も多いんだ。俺は親父の裁判で、そんな女を腐るほど見てきたよ。薊も気丈に振る舞って起訴したはいいが、結局はセカンドレイプに耐えられなくなって裁判も取り止め、臆病風を起こして逃げ出しだんだ。それでも整形して俺たちに近づいて来たって事は、もしかしたら一念発起して、俺たちに復讐しようと考えてたのかもな。それでも、殺せたのは親父だけだ。その後で自分が誰かに殺されてたら世話ないぜ」
僕に喧嘩を売るような下卑た笑いを浮かべながら、柘榴さんは言った。貴島さんへの過去の行いに対しての罪悪感など、微塵もないような態度だ。本当に反吐が出る。今すぐにでも、目の前の男を殺したい衝動に駆られた。もし罪に問われずに殺害する方法が存在するなら、僕は迷うことなくそれを行使するだろう。
腹の中に渦巻くそんな黒い感情を必死に抑え込みながら、静かに言った。
「あなた、最低だな。出来ればこの手で殺して、地獄に落としてやりたいよ」
「奇遇だな。俺もあんたの事を殺してやりたいよ。今のあんたは、あの糞親父と同じ目をしてやがる。腐った卵を見るみたいに、心の底から俺の事を見下している目だ。その目が、この世で一番気に入らなんだよ」
これ以上ないくらいに、柘榴さんは表情を歪めている。僕はもう柘榴さんと会話をする気は無くなっていたので、挨拶もせずに部屋を後にした。
頭を冷やすために、僕は再度ラウンジに向かった。冷房の風が、頭を覚ましてくれているようだ。ロビーに漂う気の香りを感じながら深呼吸をすると、多少は気分が落ち着いたような心地になった。
僕は、先ほどの柘榴さんの発言について考えていた。あまり思い出したくは無かったが、会話の中で、違和感のある部分があったのだ。貴島さんを侮辱していた柘榴さんは、最後の方で、妙な台詞を口にしていた。
『それでも、殺せたのは親父だけだ』
この言い方が怪しい。柘榴さんはまるで、四葩さんを殺したのが貴島さんであると確信しているみたいだ。確かに柘榴さんにとっては、今回の旅行は貴島さんが復讐のために仕組んだと考えるのはごく自然の事である。なので、言葉の綾と言えばそれまでなのかもしれない。だが、妙に断定的に発したこの言葉を、簡単に無視する事も出来なかった。
もしかすると柘榴さんは、僕と同じように貴島さんが四葩さんを殺害するトリックが可能な事を気付いていた。そうして、復讐に気付き、殺される前に殺した。
それが正解であると思いたいが、反面、絶対にそうではないという事は気が付いている。それは密室の作り方だ。貴島さんのトリックに気付いたなら、まだ犯人が判明していなかったあの状況では、柘榴さんは当然同じ方法を使うはずである。そうすれば犯人を、四葩さんの事件と同一人物だと思い込ませ、捜査を撹乱できるからだ。それなのに、あんな密室トリックにもなっていない、キーホルダーを外した鍵を下から入れただけの手法を用いた。四葩さんと貴島さんの殺害が本当に同一犯である場合には、別に犯人が居ると思わせるので有効かもしれない。だが、四葩さんを殺したのは貴島さんだ。ならば、柘榴さんが貴島さんを殺した犯人である場合、あの行為には必然性が無さ過ぎる。
喉に魚の小骨がつっかえた時のように、何かがずっと思考の奥底に引っかかっているような感覚があった。けれど、それが何かがわからない。名探偵のような鋭い閃きが、僕には足りていないようだ。
そうして推理の進展に悩んでいると、背後から突如、声を掛けられた。
「こんなところに居たんですね」
振り返ると、それは釣鐘さんだった。
「今朝申し上げていたように、部屋が空いたのでそちらに移動してもらいます。元の部屋の鍵は私どもの方で返却しておきますので、東雲さんは荷物だけを持って、三階まで来てください」
用件だけ告げて、釣鐘さんは去っていった。僕は言われた通り、荷物を取りに部屋に戻った。朝顔の間には、既に苧環さんの姿と荷物が消えていた。一足早く三階に向かったようだ。僕も自分の旅行鞄を持って部屋を出た。三階に上がると、北側の三番目にある客室の前に釣鐘さんが立っていた。どうやらそこが僕たちの新しい部屋のようだ。名札を見ると『水仙の間』と彫られていた。
苧環さんだけでなく、柘榴さんも加わることを憂鬱に思いながら、僕は部屋に入った。居間では、二人が対角線になるように座っていた。苧環さんがバルコニー側の左隅で、柘榴さんが廊下側の右端だ。互いが互いを睨め付けている。その視線が、最後にやって来た僕に向けられた。僕は気にせず、バルコニー側の右端に腰かけた。全員が、自分以外の二人に犯人が居ると牽制した。
「それでは、鍵はこの籠に入れておきます。再度注意させて頂きますが、くれぐれも旅館の外には出ないように。もしどうしてもその必要がある場合はお手数ですが、誰でも構いませんので警官に一声かけるようにしてください。それでは、失礼します」
言って、釣鐘さんは鍵を置いて出て行った。
直後、苧環さんが少し前の時みたく、独り呟き始めた。
「そうか……そうだったのか。なるほど、だったら……」
どうやら何かを閃いたらしい。
僕は気にせず、バルコニーに出て、柵に凭れ掛かった。真夏とは思えない爽やかな風が全身を通り抜ける。太陽の光を反射させた木々が、時折眩しく映った。
気分を変えて、一旦思考をリセットし頭の中を整理するには、丁度いい眺めだった。その景気を望みながら、僕は一から事件と思い出した。
三日前、貴島さんの企画発案の取材旅行のため、僕たち五人はこの旅館に訪れた。一日目は何事もなく終わったが、翌日の朝、密室のような状況で、心臓にナイフを突き立てられたて死んでいる四葩さんが発見された。警察の検証により四葩さんは他殺であると判断されたが、即刻の解決を見る事は叶わなかった。だがその日の夜遅く、僕は貴島さんが犯人であるという可能性を見出した。この時、僕がすぐに警察に連絡をしていれば、あるいは結果が変わったのかもしれない。だが何もせずに思い悩んだ挙句、今朝、貴島さんの死体が発見された。体中をボールペンで刺されるという、悲惨な死に方だった。やはり遺書のようなものは無く、釣鐘さんが確認したところ、鍵も室内にあった。けれどそれは、密室殺人と呼ぶにはおこがましい雑な手法が用いられていた。そして警察が貴島さんの荷物を探っていた所、彼女が偽名を使用しており、本名が高城麻美であると判明するに至った。
貴島さんが誰かに殺された事により、僕は四葩さんの殺人も実は別の人間が犯人ではないかという疑惑を持った。そして、安易な発想と都合の良い仮定により、僕は仲居さんに犯人が居るのではないかと考え始めた。けれど、それはまったくの的外れだった。そうなった今、現状で可能性があるのは最初に考えた、四葩さんは貴島さんが殺し、貴島さんは別の誰かに殺されたという推理だ。当初動機は不明だったが、現在はそれが復讐のためだったと見当がつく。しかしそれでも、この推理には幾つもの疑問が残る。それを紐解けば、あるいは別に道が見えるかもしれない。そう思った僕は、頭の中でその疑問を羅列した。
現状での大きな疑問点は四つ。館での殺人という状況、四葩さん密室トリックそのもの。五人の部屋割り。そしてあの雑な手法を含めた、貴島さんの事件のそのもの。その他にも、小さなものであれば僕というイレギュラーの存在、保険証、そして殺す順番というのもあるが、四葩さんは貴島さんが殺し、貴島さんは別の誰かに殺されたというのが真実である時、特に不可解になってくるのは先の四点だ。
それらについてしばらく考え込んでみたものの、未だ妙案は浮かばなかった。僕は、あるいはどこかで根本的に間違っているのかもしれない。もしそうならば、僕が何かを見落としているはずなのだ。それが分かれば、頭の底に沈殿している引っ掛かりも解消する気がする。
再度、この三日間の流れを想起した。自分の記憶力を頼りに、より鮮明に、より詳細に、頭の中で記憶を再生して、名探偵のように思考を飛躍させ、推理を発展させるように努めた。そうして静かに思考を続けて、遂に僕は、ある一つの可能性を見つけた。
――ああ、そうか。そういう事も、有り得るのかもしれない。
それはまったくの荒唐無稽であるように思うが、けれど、決して不可能ではないはずだ。
僕はあることを確かめたくなった。バルコニーから居間に戻ると、室内から苧環さんの姿が消えていたのに気が付いた。だが、今はどうでもいい。それを無視して、僕は廊下に出た。二階に降りると、部屋から居なくなっていた苧環さんが釣鐘さんと何やら会話をしているのが視界に入った。
「実はちょっと聞きたいことがあるんです。貴島の事件現場の廊下に、争った形跡はありましたか?」
「そんな事を聞いてどうするんですか?」
「実は俺なりに事件の推理をしていて、それでちょっと関係があって」
「そういうのは私たちの仕事です。事件について推理をするのは勝手ですが、あまり出過ぎた真似はなさらないでください」
「出過ぎた真似って、冗談じゃない。不本意だが、俺たちは事件に関わってるんだ。だったら、多少はそういった情報を知る権利はあるはずですよね。それに、もし警察の捜査に抜かりがあった場合、冤罪で逮捕されちまう可能性だってあるんです。万が一にもそういった事が有ったら困るから、俺だって自分なりに事件についてあれこれと考えているんです。それの何が悪い事なんですか」
中々引き下がらないことから察するに、もしかすると苧環さんなりに何か良い推理が浮かんだのかもしれない。その気迫に押し負けるように、釣鐘さんは渋々と質問に答えた。
「ふう、わかりました。今回だけ、特例です。ですが、決して無暗に誰かに喋ったりしないと約束してください」
「わかってますよ」と、苧環さんが勝ち誇った顔をしていた。
「貴島さんの部屋が荒れていたのは居間だけで、廊下には争った様子はありませんでした」
「やっぱりそうか」
嬉しそうな表情を見せた苧環さんが、振り返って僕を見つけた。
「おお、葉月。良い所にきたな。お前にも少し聞きたいことがあるんだよ」
言って、苧環さんは僕に近づいてきた。苧環さんもどうやら、事件の推理が完了したようだ。質問の内容は、自分の推理に間違いが無いかの確認をするためのものだった。僕の返答に満足した苧環さんは、僕と釣鐘刑事に言った。
「事件の謎が解けまして。これから推理を披露するから水仙の間に集まってください。葉月は、あの仲居を連れて来てくれ」
あの仲居というのは、五十鈴さんの事だろう。これからロビーに降りるつもりだったので、僕はそれを素直に聞き入れた。
一階に降りて、受付で五十鈴さんを呼び出してもらった。
「あら、東雲さん。どうしたんですか?」
「ちょっと二つ程お願いがありまして」
「何ですか?」
「実は、僕と一緒の部屋で寝泊まりしてた苧環さんが、事件が解決したから、今から推理を披露するみたいなんです。それで、五十鈴さんにも来てもらいたいそうで」
「本当に犯人が分かったんですか?」
五十鈴さんは驚いたように目を丸くしていた。無理もない。まさか警察ではなくただの宿泊客が事件を解決するなんて、そんなフィクションみたいな出来事が起きるなんて夢にも思っていなかったはずだ。
「そうみたいです。後、もう一つお願いが。実は……」
僕のお願いに、五十鈴は再び目を丸くした。今度は驚きではなく、疑問で。
「これは今すぐじゃなくて、推理が終わった後で大丈夫なんですけど、無理ですか?」
「いえ、それは問題ないんですけど、どうしてそんな事を?」
「まあ、ちょっとした疑問ってやつですかね」
僕は笑って誤魔化した。